矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

デイリーコラム


2023.05.15

【銀行が広告業務を提供可能に 銀行法改正②】

出資規制の緩和

金融機関における出資規制は、議決権取得等制限といった規制があり、他の会社の議決権を、上限を超えて取得・保有することが制限されている。上限は形態によって異なり、銀行は5%、銀行持ち株は15%、信用金庫は10%と定められている。例外的に、投資専門会社を通じることで、ベンチャービジネス会社、事業再生会社、事業承継会社、地域活性化事業会社に対しては、上限を超えて出資することが可能であるが、今回の改正によりこれが緩和されることとなった。特に「地域活性化事業会社」においては、従来50%上限だったものが非上場であれば最大100%まで議決権の取得が可能となり、地元産品の販売などを行い、地域経済に寄与する企業への更なる支援が可能となった。

また、投資専門会社の取扱い可能な業務は「出融資とそれに付帯する業務」のみであったが、「投資対象会社に対するコンサルティング業務」が追加されことで、従来より密着した形で事業運営に関わることが可能となる。一方で、コンサルティング業務においては「事業再生の局面などにおいて優越的地位の濫用や利益相反取引のおそれが高まる懸念に留意し、投資専門会社において顧客利益を保護するための体制を適切に整備することが求められる。」との記載もあり、出資先とは適性な関係性を保つことが求められる。

※全文は以下よりご覧いただけます。

https://www.yanoict.com/opinion/show/id/380

2023.05.12

【銀行が広告業務を提供可能に 銀行法改正①】

2021年5月、「新型コロナウイルス感染症等の影響による社会経済情勢の変化に対応して金融の機能の強化及び安定の確保を図るための銀行法等の一部を改正する法律」が成立し、同月26日に公布された。この改正により、銀行および信用金庫における業務範囲規制や出資規制等が緩和されることとなった。

業務範囲の拡大について

銀行が営む事が可能な業務については、銀行法第十条および銀行法施行規則大十三条等よって定められている。その内容は、「預金又は定期積金等の受入れ」「資金の貸付け又は手形の割引」「為替取引」等の基本的な銀行業務に加えて、付随業務が記載されている。
その付随業務に今回の改正によって「地域活性化等業務」が追加されることとなった。「地域活性化等業務」は下記の5つとなる

①経営相談等業務
「他の事業者等の経営に関する相談の実施、当該他の事業者等の業務に関連する事業者等又は顧客の紹介その他の必要な情報の提供及び助言並びにこれらに関連する事務の受託」(銀行法施行規則大十三条の二の五の一)
「銀行取引先企業に対する経営や事業承継、DXに関するコンサルティングが可能となる。
②登録型人材派遣
「高度の専門的な能力を有する人材その他の当該銀行の利用者である事業者等の経営の改善に寄与する人材に係る労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律第二条第三号に規定する労働者派遣事業(経営相談等業務その他の当該銀行の営む業務に関連して行うものであつて、その事業の派遣労働者が常時雇用される労働者でないものに限る。)」(銀行法施行規則大十三条の二の五の二)
銀行取引先企業に対して、銀行員を派遣することが可能となる。例えば、経営状況が悪化した企業に銀行員を派遣することで、企業の経営改善をすることで貸倒リスクの軽減を図ることも可能と考えられる。
③システム関連業務
「他の事業者等のために電子計算機を使用することにより機能するシステムの設計、開発若しくは保守(当該銀行が単独で若しくは他の事業者等と共同して設計し、若しくは開発したシステム又はこれに準ずるものに係るものに限る。)又はプログラムの設計、作成、販売(プログラムの販売に伴い必要となる附属機器の販売を含む。)若しくは保守(当該銀行が単独で若しくは他の事業者等と共同して設計し、若しくは作成したプログラム又はこれに準ずるものに係るものに限る。)を行う業務」(銀行法施行規則大十三条の二の五の三)
例えば、銀行取引先企業に対して、銀行が単独あるいは他の事業者と共同で開発したシステムを提供可能となる。デジタル化を推進したい企業に対して、銀行がシステムを提供することで、業務効率化等を支援可能になると考えられる。
④広告、宣伝、分析業務
「他の事業者等の業務に関する広告、宣伝、調査、情報の分析又は情報の提供を行う業務」(銀行法施行規則大十三条の二の五の四)
例えば、銀行取引先企業の商品・サービスについて、銀行が広告、宣伝を行うことが可能となる。地域の代表者となることも多い地方銀行等に宣伝を依頼することで、販路拡大につながるケースも考えられる。
⑤定期巡回業務
「当該銀行の利用者について定期的に又は随時通報を受けて巡回訪問を行う業務」(銀行法施行規則大十三条の二の五の五)
例えば、銀行利用者に対して、銀行員が定期的あるいは随時訪問することが可能となる。高齢化が進む地域においては、高齢者の安全確認等のニーズがあると考えられる。

これらはあくまで付随業務であり、通常の銀行業務で得た経営資源を効果的に活用するための法改正だと考えられる。「地域活性化等業務」を行うために新たに経営資源を取得する際には「当該銀行の業務の健全かつ適正な遂行に支障を及ぼさないこと」が条件とされており、銀行経営に悪影響を及ぼすほどの業務は想定していないとも考えられる。

※全文は以下よりご覧いただけます。

https://www.yanoict.com/opinion/show/id/380

2023.05.10

スマートドリッパーの活用

先日、スロベニアに拠点を置くコーヒーブランドGOAT STORYの器具を購入しました。これまではハリオやカリタなどの器具を使ってきましたが、今回は初めてスマートドリッパーなるものへ挑戦です。抽出に必要な器具が一体となり、専用アプリで秒数やグラムが測れるという優れものです。また、水出しや紅茶などハンドドリップ以外の抽出にも対応しています。この時点で私にはオーバースペックですが、抽出結果をSNSのようにアプリ上で公開する機能をついています。自身で淹れた1杯のコーヒーを通じて、世界とつながれるとはなんとも不思議な感覚です。果たして私はこのスマートドリッパーを使いこなせるでしょうか。(宮村優作)

※2023年4月上旬時点の近況報告です

2023.05.08

【無料で遊ぶ、矢野経済研究所の歩き方】

無料で、マーケットに関するニュースレターやメールマガジンを受け取ったり、マーケットレポート紹介コンテンツを見ることができる方法をご存知ですか?
もし弊社からの情報が欲しい!という方がいらっしゃいましたら、YRI Webメンバー登録をしてみてください。
ご登録頂きますと、矢野経済研究所発信の各種業界およびマーケットに関するニュースレターやメールマガジン、矢野経済研究所が独自で企画した最新市場調査資料(マーケットレポート)新刊のお知らせ等各種情報の受信、マーケットレポート紹介コンテンツの閲覧等、メンバー限定のサービスを利用することができます。
http://www.yano.co.jp/regist/

2023.05.01

教育データを利活用するには③

このような課題がある一方で既に教育データが活用されている事例もある。コニカミノルタは連絡帳や教材の閲覧などがデジタルで利用できる学習支援サービス「tomoLinks」を提供しているが、2023年春には新たにAIによる学習データを分析する機能を追加する。これは学校独自のテストやドリルを含む様々な学習データをAIが分析することで学習者一人一人に最適な学習を提案するサービスとなっている。大阪府箕面市教育委員会における先行導入では、児童生徒13,000人の9年分の学力調査データと生活状況調査データから学習状況を分析し、予測シナリオに基づく指導改善を実証した。

今後、デジタル化が進むことであらゆるサービスがパーソナライズされていくことが予想される。教育においても同様であり、学習者一人一人に合った教育が実施されるべきである。まだまだ課題が多い教育分野でのデータ利活用ではあるが、将来的には同じ学校で過ごしている生徒同士でも蓄積されたデータに基づき、全く異なる教育カリキュラムが組まれるようになるかもしれない。 また、現在は教育分野におけるデータ利活用が進められているが、これは学校教育に限定していない。ロードマップでは卒業後の社会人や高齢者も含めて生涯学習の提案が掲げられている。マイナンバーカードや情報銀行の活用により生涯を通して学びの機会が提供される仕組みが検討されている。教育以外の分野におけるパーソナルデータと結びつくことで、利用方法はさらに拡大するだろう。教育データの利活用が進めば、現代におけるデジタル人材の育成やリスキルの機会提供も将来はより最適な方法で学ぶことが可能となる。

こうした未来を実現するためには、まずは基盤となるデータの整理と連携を進めていく同時に利用者の理解を得ることが重要である。(今野慧佑)

※全文は以下よりご覧いただけます。

https://www.yanoict.com/opinion/show/id/372

2023.04.28

教育データを利活用するには②

こうした教育データの利活用に取り組んでいるのは国だけではない。例えば、さいたま市教育委員会は2022年10月に内田洋行、日本マイクロソフト、ベネッセコーポレーション、ライフイズテックの4社と連携協定を締結したと発表した。この4社と協力して教育データを活用するダッシュボードの開発を進めていく。このダッシュボードを活用することで学校現場で集められる学習記録や生活記録など様々なデータがまとめて可視化される。教職員はそれらのデータを活用して、学習者一人一人に対して最適な教育を実施する。 このような教育現場の実現に向け、まずは2022年度中にプロトタイプを11の実証校で運用し、データを取りながらダッシュボードの開発を進める。実証を通して研究を進めていき、2023年度にはさいたま市内全校への展開を目指す。

2022年はロードマップに基づき、様々な議論や検討が行われており、少しずつ教育データの利活用の実現に向かって進んでいる。しかし、実装するために必要なことは技術課題の解決や制度の改正だけではない。

ロードマップが公表された際、世論からの意見はネガティブなものであった。大きな原因としては一部メディアの報道によって、教育データの「一元化」という誤った認識が広がったことが挙げられる。その後、実際は「一元化」ではなく、「標準化」であり、データも分散管理であることがデジタル庁によって説明された。ただし、これによって教育データ利活用に関して国民の理解が得られたかというと疑問である。そもそも公表されたロードマップには様々な内容が記載されており、要点を理解するだけでも大変である。そのため、教育データの連携について、個人情報が無断で様々なサービスに連携されるという認識を持ってしまってもおかしくはない。当然、ロードマップではプライバシーの保護や法律に基づく個人情報等の適正な取扱いを確保する旨は記載されている。そのため、データの利用には本人の同意が必要である点や同意に記載されていない利用や組織への提供は行われない。しかし、教育関係機関による横断的な利用が掲げられているため、親としては子どもの個人情報流出に不安を覚えて当然である。

また、教育データにおいては未成年者のデータが多い。そのため、利活用の際には個人の同意を得るだけでは十分ではない。こうした点からも教育データを活用した仕組みを作っていくには利用者に加えて学習者の家族に対しても十分に理解してもらうことが必須となっている。(今野慧佑)

※全文は以下よりご覧いただけます。

https://www.yanoict.com/opinion/show/id/372

2023.04.26

教育データを利活用するには①

2022年1月にデジタル庁が「教育データ利活用ロードマップ」を公表してから1年が経過した。教育データとは、授業の理解度やテストの結果といった学習に関わるデータだけではなく、身体測定や校外のクラブ活動に関するデータなど多岐に渡る。現在、このデータは各学校や各自治体、各家庭などがそれぞれ独自に集め、管理方法も統一されていない。そのため、組織の間でデータを連携したり、データを引き継いで活用するといったことが難しい。子どもの転校や進級の際も、これまで蓄積された教育データが学校の間で上手く引き継がれないケースやデジタルで保存されているデータを一度紙に記載して引き継ぐといった手間が発生している。

こうした実態に対して、各省庁では教育データの利活用に向けたロードマップの策定に着手した。 教育データを適切に流通させるには、まずはこれまでばらばらに集められてきたデータを標準化する必要がある。しかし、教育に関わるデータは学校内外含めて様々な情報があり、全てを標準化させることは不可能である。そこで、標準化の対象となるデータを組織間で共通化できる教育データに限定した。具体的には、学習者・教員・学校の属性等の「主体情報」、学習した内容等の「内容情報」、学習以外も含めた活動である「活動情報」、これら3つが対象となっている。既に各情報の定義は公表されているが、今後も必要に応じて随時更新されることとなっている。

標準化されたデータを活用していくには、データの収集および連携ができる環境の整備を進めていく必要がある。この点についてロードマップでは、まず学習支援システムと校務支援システムのデータの相互流通を確保することが喫緊の課題だと示している。 そこで、デジタル庁は2022年10月に教育関連データの連携実現に向けた実証調査研究に参加する事業者の公募を実施した。この公募では初等中等教育における校務支援システム、学習支援システム、関連する教育アプリとの間の教育データ連携の実施研究が目的とされている。採択された事業者は校務支援システム事業者が10、学習支援システム事業者が8、学習アプリ事業者が25であった。採択事業者は2023年3月までの間に各システムの間でデータ連携の実証を行う。(今野慧佑)

※全文は以下よりご覧いただけます。

https://www.yanoict.com/opinion/show/id/372

2023.04.24

【アナリストオピニオン】奪われるインターネットの信頼と再生を促すWeb3③

データ駆動型社会に潜む危険性

 

リアル/バーチャルといえば、それはSF的な響きもあってどこか心地よい、知的興奮のようなものを感じさせるワードである。しかし実際の社会では、“本物かフェイクか”という問題となろう。そこにあるのは明確な悪意であり、バーチャルをリアルに感じたなどという素朴な感想を言ってる場合ではない。フェイクは排除されなければならない問題であり、その有害性は今後、ますます強まるだろう。 背景にあるのは今後到来するデータ駆動型社会である。データ駆動型社会とは、インプットされるデータに応じてAIなどが判断して次のアクションへとつないでいくような社会である。A社が流すデータを受け取ったB社が、人間を介在させずに判断し、アウトプットを変えるような社会である。つまり、システムを乗っ取らなくても、悪意あるフェイク(偽物)データを流すことで、悪いアクションを引き起こすことができるようになってしまう懸念があるということだ。 そのためにブロックチェーン技術などを使った真正性の証明に期待が寄せられるし、それらが中心的な技術になるのも必然であろうと考える。 こうして考えると、Web2.0で起きたのはインターネットの信頼の毀損であり、Web3がもたらすのはその再生なのかもしれない。(忌部 佳史)

2023.04.21

【アナリストオピニオン】奪われるインターネットの信頼と再生を促すWeb3②

真正性の重要度が高まる

話は変わるが、最近、子供にせがまれて某社の高性能ゲーム機を購入した。私はほとんどゲームをしないのだが、子供が遊ぶ画面をみて、その画質の美しさには驚かされた。子供はサッカーゲームを好んで遊んでいるのだが、隣で見ていると、あたかも本物の日本代表戦を見ているかのような気分になることがある。そのときは、操作しているのは子供なのだが、すっかり日本代表の選手がゴールを決めたような目線で眺めていたのだ。画像がリアルであることの意義、意味を思い知った瞬間でもあった。 目に映ることがリアルではなくて実はバーチャルだったなどという話は、SF映画の世界での出来事だった。しかし、その未来の一端が、このゲーム画面に映し出されている。いまはそういう時代なのだ。(忌部 佳史)

2023.04.19

【アナリストオピニオン】奪われるインターネットの信頼と再生を促すWeb3①

新しいデジタル空間は未開の新大陸か

Web3.0、メタバースというキーワードが注目され、いよいよ“インターネット”を過去のものとしようとする機運を感じるようになった。Web1.0をインターネットとするなら、いまはWeb2.0なのだから既にインターネットは過去のものといえるのかもしれない。しかし、個人的にはWeb3は別モノ感が強く、時代の切れ目は今この瞬間なのではないかと感じている。 Windows95が登場して以来、インターネットは一般大衆にもアクセスできる場となった。私自身が個人でPCを購入したのは96年。ネットスケープナビゲーターを使い、電話回線でアクセスしたのも、もうおおよそ30年前のことになっている。世代とは概ね30年を指すというが、まさに時代の変わり目の真っただ中にいるということなのだろう。(忌部 佳史)

2023.04.17

【猫好きのわがままです】

実家の近くに大きな公園(城沼公園)があります。そこに20匹以上の猫が住み着いています(以前はもっといました)。
数年前までは子猫も多くいたのですが、ここ2~3年は子猫の姿が見えなくなりました。ほとんどの猫の耳がカットされており、不妊去勢手術が済んでいるのでしょう。
公園の管理者や近隣住民からすれば、致し方ないのでしょうが、無責任な猫好きにとっては、何年か後に猫のいない公園になると思うと残念です(早川泰弘)。

2023.04.14

【アナリストオピニオン】国策の後押しもあり、建設現場でのテクノロジー活用が急速に進む!③

今後の見通し、課題

建設業界では、稼動機器全般をITで管理・支援する取り組みが進み、遠隔地から建機・重機を操作・制御するIoTベースの仕組みや、センサーネットワークと連動した情報収集・遠隔監視の仕組みなどが導入されつつある。また近年では、現場データの3次元データへの移行や、ドローンを活用した位置情報/工事の進捗管理、さらにはドローンセキュリティ対応も始まっている。
国交省ではi-Constructionを推進して、ICT活用の取り組みを急ピッチで普及させている。さらに、建設現場の生産性向上に資する革新的技術の公募や技術発表なども行っており、大手ゼネコンや建機メーカーが主導する建設現場のIT化は、今後さらに加速することが考えられる。
ICT活用やIoT導入については、これまで個別システムの導入や技術検証が行われてきたものの、費用対効果面での検証不足、業界での理解の少なさ、デジタルデータの取り扱い経験の浅さ等によって、現場利用の促進につながりづらかった。
しかし既述した通り、建設現場では労働環境の改善・生産性向上などの働き方改革の実現が急務となっていることに加え、現状でも課題の人手不足が、数年後にはさらなる拡大が見込まれる。そのため、いかにi-Constructionを進めることができるかが継続的な業界課題となっている早川泰弘)。

※全文は以下よりご覧いただけます。

https://www.yanoict.com/opinion/show/id/374

2023.04.12

【アナリストオピニオン】国策の後押しもあり、建設現場でのテクノロジー活用が急速に進む!②

建設でのIoTポテンシャル

i-Construction推進に向けたロードマップでは、2025年までに建設現場の生産性の2割向上を目指し、新3K(給与が良い、休暇がとれる、希望がもてる)の魅力ある建設現場の実現、Society5.0(サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会)を支えるインフラシステムの構築を掲げている。
この目標を達成するには、IoTをベースとするITテクノロジーの活用が不可避であり、建設現場の高度化はIoTポテンシャルの向上にも直結する。
i-Constructionを進めるための視点として、建設現場の生産工程等と一体化したサプライチェーンマネジメントの導入がある。これは、原材料の調達、各部材の製作、運搬、部材組立などの現場における作業の最適化につながる効率的なサプライチェーンマネジメントの実現のため、設計段階から全体最適設計の考え方を導入するものである。
また建設分野では、建機大手のコマツが主導する、建設・土木における新プラットフォーム「LANDLOG」がある。これは、建設生産プロセス全体のあらゆるモノ(ショベルカー、ダンプカー、ドローンなど)の管理・解析が可能なデータを集め、そのデータを適切な権限管理のもと多くの建設現場ユーザが利用できる(現在では、多くのプロバイダーがアプリを提供)。2020年には、建設DXとICT施工を推進するランドログマーケティングを設立し、スマートコンストラクション・レトロフィットキット販売や、建設向けDXソリューションのマーケティング実施をスタートしている。

5Gソリューションの可能性

建設業界で想定される5Gソリューションとしては、建機・重機の稼働状況把握、作業現場の高解像度/3D画像、(IoT型の)進捗管理情報の一元管理、リアルタイムでの運用管理ソリューション、拠点に依らない作業実現などが挙げられる。
現在、5G活用に関する実証は始まっているが、商用サービス区域外での施工も多い業界特性から、実運用時には、一時的にローカル5G環境を構築するケースも想定される。
5Gネットワークは、従来ネットワークに比べて低遅延接続が可能なため、モニター映像にタイムラグが生じにくく、リアルタイムかつ安全に遠隔での建機操作を行える。このため、作業員の安全確保、現場災害時の復旧作業における2次災害防止などに役立てることも期待される。
また労働環境の観点では、作業員のバイタルデータ収集・分析による体調不良や精神疲労の予兆把握、労災防止(ヘルスケアモニタリング)、現場での書類作成業務の自動化(台帳ソリューション)などの用途も有望である。このほか、建機稼働率の把握/建機の状態監視による保全コストの圧縮などの可能性も考えられる。
以下には、5G型 IoTソリューションイメージを記載する(早川泰弘)。

※全文は以下よりご覧いただけます。

https://www.yanoict.com/opinion/show/id/374

【図表:期待される5G型 IoTソリューション】
2023.04.10

【アナリストオピニオン】国策の後押しもあり、建設現場でのテクノロジー活用が急速に進む!①

建設業界の現状

国内建設業界の構造は、発注者(施主)と請負契約を締結する建設会社(元請)、さらには工事種別に応じて複数の建設会社が施工を担う体制、いわゆる多重下請構造になっており、建材メーカーなどを含めて多数の関連事業者が存在している。
この事業者数の多さを主因に競争環境は厳しい。また施主意向が反映されやすい商習慣があるうえ、事業者間連携の不十分さもあり、設計変更に伴う工期の遅延や追加コストの発生など、様々な弊害も指摘される。併せて建設投資の減少や競争激化など、建設業の経営を取り巻く環境は厳しい。さらに、現場の技能労働者の高齢化や若年入職者の減少といった問題もあり、中・長期的には建設工事の担い手が不足することが懸念されている。
この課題解決策としては、労働力や収益確保のために、労働環境の改善やITテクノロジーの活用、また生産性向上などによる働き方改革やデジタル技術活用などが急務となっている。

建設現場でのIT活用

前述した建設業界での課題に対し国交省では、i-ConstructionでICT活用を推進。i-Constructionとは、ICTの全面的な活用(ICT土工)などの施策を建設現場に導入することによって、建設生産システム全体の生産性向上を図り、魅力ある建設現場を目指す取り組みである。
具体的には、調査・測量から設計、施工、検査、維持管理・更新までのあらゆる建設生産プロセスに3次元データなどを導入。ICT建機など新技術活用を実現し、コンカレントエンジニアリングやフロントローディングの考え方を取り入れる。そして建設現場を最先端の工場へ発展させることを目指す。
また原材料の調達、部材の製作、運搬、部材組立など、工場や建設現場における作業を最適に行う効率的なサプライチェーンマネジメントの構築もターゲットになる。

ここ数年では、ゼネコン大手や建機大手などが主導して、建設現場でのIT活用が進展している。具体的には、通信環境の整備、センサーシステムによる現場の自動認識、IoTによる情報収集・モニタリング、各種ロボットによる施工支援、そしてAIによる施工評価・計画支援(進捗管理など)などである。先行しているのが、建機全般をITで管理・支援する取り組みで、遠隔地から操作・制御するIoTベースの仕組みや、センサーネットワークと連動させた現場情報の収集・遠隔監視の仕組みなども導入されつつある。
また、ドローンを活用した現場データの2次元から3次元データへの移行や位置情報の把握、セキュリティ対応、ドローンとAIを連動させた進捗管理も始まっている(早川泰弘)。

※全文は以下よりご覧いただけます。

https://www.yanoict.com/opinion/show/id/374

【図表:建設現場を最先端の工場へ】
2023.04.07

【市場調査資料オンライン試読サービス実施のお知らせ】

当社では既に発刊している調査資料のご購入を検討するにあたり、事前に掲載内容を確認したいという方々に向けて、オンライン経由で調査資料の掲載内容をご確認いただけるサービスを実施しています。
これにより、弊社営業担当者とお客様ご自身のPCをオンラインで接続し、購入可否の決め手となる掲載内容を事前にご確認いただくことが可能となります。

ご希望のお客様は、下記のお問い合わせフォームからご連絡いただけますようお願い申し上げます。

https://www.yano.co.jp/contact/contact.php

以下、ご注意点がございます。予めご承知おきください。
※1. ご案内まで、お時間をいただく場合がございます。
※2. ご覧いただくページ数、時間には制限がございます。
※3. お客様の通信環境によっては、不安定な接続になる恐れがございます。

2023.04.05

【パーソナルカラーを踏まえて買い物をするのがよい?】

​洋服や化粧品のネットの口コミに「当方はブルベ夏骨格ストレートなので…」などのコメントをよく見かけます。自分のパーソナルカラーなどをふまえて買い物をする、無駄遣いしない、失敗したくない人が増えているのだとか。私もスマホアプリで診断してからは、なんとなく似合うとされる色を選ぶようにしていました。ところが先日ふと思い立ってやり直したところ、違う結果がでました。今まで選んできた色は間違っていたのか?何が正解なのか?一度プロに診断してもらうべきか。「気にしない、好きな色こそ似合う色」と割り切ってもいい気もしており、迷うところです(小林明子)。

2023.04.03

【無料で遊ぶ、矢野経済研究所の歩き方】

無料で、マーケットに関するニュースレターやメールマガジンを受け取ったり、マーケットレポート紹介コンテンツを見ることができる方法をご存知ですか?
もし弊社からの情報が欲しい!という方がいらっしゃいましたら、YRI Webメンバー登録をしてみてください。
ご登録頂きますと、矢野経済研究所発信の各種業界およびマーケットに関するニュースレターやメールマガジン、矢野経済研究所が独自で企画した最新市場調査資料(マーケットレポート)新刊のお知らせ等各種情報の受信、マーケットレポート紹介コンテンツの閲覧等、メンバー限定のサービスを利用することができます。
http://www.yano.co.jp/regist/

2023.03.31

【だれもがクリエイターになれるCtoCメディアプラットフォーム「note」】②

ICT・金融ユニットのメンバーが、ITをテーマにコラムを順次執筆します。担当している調査領域や、利用しているITツール、関心のある・今後拡大を期待しているITテクノロジーなどについて綴ります。10人目は、コード決済やポイント等の調査に携わってきた井上です。

<本コラムは前回の続きです。前回の内容は以下よりご覧いただけます>

https://www.yanoict.com/daily/show/id/1022

noteの特徴の一つに、投稿コンテンツに広告が表示されない点が挙げられる。これにより、読者はクリエイターの世界に没頭しやすくなる。さらに、ページビューを稼ぐことをのみを目的としたコンテンツの作成や、ページビューを獲得するために炎上行為を起こすといった事態を防いでいる。

また、noteではランキング制度も設けられていない。ランキング制度を設けると、刺激的な見出しがある等、読者の興味をひきやすく、閲覧数が増えやすいコンテンツが上位を占めてしまうようだ。中長期的には投稿コンテンツの均一化を助長させてしまう可能性もある。noteではランキング制度を無くすことで、クリエイターの自由な創作活動を促し、コンテンツの多様性を保っている。

これらの特徴から、noteは従来のブログ等とは異なる性質を持つ。

note株式会社はミッションとして「だれもが創作をはじめ、続けられるようにする。」を掲げており、上場後もクリエイターを支援する取組みをさらに進めていくだろう。

実は私もnoteでコンテンツを投稿したことがあり、累計ユニーククリエイター107万人のうちの1人である。稚拙ながら1クリエイターとして、note上での文章等の創作を続けていきたい(井上圭介)。

2023.03.29

【だれもがクリエイターになれるCtoCメディアプラットフォーム「note」】①

ICT・金融ユニットのメンバーが、ITをテーマにコラムを順次執筆します。担当している調査領域や、利用しているITツール、関心のある・今後拡大を期待しているITテクノロジーなどについて綴ります。10人目は、コード決済やポイント等の調査に携わってきた井上です。

スマートフォンやパソコンから手軽に文章等のコンテンツを読んだり、作成できたりするプラットフォーム「note」をご存知だろうか。noteはCtoCメディアプラットフォームであり、個人をはじめとする全てのクリエイターが、文章に留まらず、マンガ、写真、音声、動画等のコンテンツをnote上で自由に投稿・販売できる。読者はそれらのコンテンツを楽しみ、応援・購読等が可能だ。

サービスを提供しているnote株式会社が、2022年12月に東京証券取引所グロース市場に上場したこともあり、知名度は高まってきている。

noteの実績をみると、2022年11月末時点で公開コンテンツ数は3千万件を超え、月間アクティブユーザーは3,880万人、累計会員登録者数は585万人、累計ユニーククリエイター数は107万人の規模にまで達している(井上圭介)。

<次回へ続きます>

2023.03.27

【ショートレポートのご案内】

矢野経済研究所では、独自に収集したマーケットデータを1,000円で提供しております。

弊社が発刊する年間約250タイトルのマーケットレポートごとに、一部の内容をまとめたショートレポートです。

マーケットレポートに比べて詳細な内容は掲載されていませんが、その要約版、入門的な情報として活用できる内容となっております。

毎月10~20タイトルのレポートが随時追加されていきますので、是非ご期待ください。

---

詳細は下記URLよりご覧いただけます。

https://www.yano.co.jp/shortreport/index.php

2023.03.24

【アナリストオピニオン】組込み型保険の実現に向けた3つの構成要素と課題を乗り越えた際の未来③

課題を乗り越えた先には新たな保険の将来が待っている

組込み型保険について、冒頭で「①APIを介して保険会社とモノやサービスを提供する事業者が連携したうえで、②モノやサービスから得られるユーザーデータを元に(度合いはあるものの)パーソナライズ化された保険商品を、③モノやサービスに組込む形でパーソナライズ保険商品を提供すること」と定義した。

さて、具体的には本稿で指摘した課題を乗り越えた先には、どんな将来が待っているのであろうか。少し筆者の妄想を交えた考察となるため注意頂きたい。例えばさまざまなセンサーを備えた冷蔵庫がある。今やスマートフォンとの連携が当たり前となるなか、冷蔵庫には住んでいる住民の食生活に関する情報が多く入っている。話を単純化するために仮に筆者が独身で極度の野菜嫌い、大の肉好きとしよう。冷蔵庫の中身がデータ化されているとすれば、筆者の食生活を把握しているはずであり、こうしたデータが筆者の健康診断を含めたヘルスケアデータと結びついたとすれば、現状の健康状態から将来的な疾病リスクの予測が容易になるだろう(ここではセキュリティなどの問題は除く)。
さてそうした疾病リスクから冷蔵庫が筆者に対して、「あなたは現状、こうした食生活を続けている場合、将来的に疾病Aの罹患リスクが〇%あります。ついては、健康増進型保険商品A、B、C、もしくは重症化予防に向けた保険商品D、E、Fといった保険商品に加入することを検討してはいかがですか?」などと提案してくる将来も容易に想像できる。
なるほど、そうかと考え、食生活の改善に着手するかもしれない。はたまた近隣の保険ショップに足を運ぶかもしれないし、インターネット上の保険比較サイトで検索をするかもしれない。また冷蔵庫経由で保険商品を購入するのかもしれない。いずれにしても、従来にはない新たな選択肢を提示する機会が創出される可能性があることは確かであろう。

少々、妄想が過ぎたものの、組込型保険の実現によって新たな保険の将来が出てくる可能性は大いにあると考えており、少なくても本稿で挙げた3つの構成要素の動向について注視していきたいと考えている山口泰裕)。

※全文は以下よりご覧いただけます。

https://www.yanoict.com/opinion/show/id/373

2023.03.22

【アナリストオピニオン】組込み型保険の実現に向けた3つの構成要素と課題を乗り越えた際の未来②

構成要素ごとにさまざまな課題が山積

■API連携を巡る課題
さて、構成要素は徐々に揃ってきているものの、やはり課題も山積している。まずはAPI連携について、現状、生命保険会社の多くの基幹システムは、ライフネット生命などのようにオープン系システムをベースとしている生命保険会社を除き、依然としてIBMや日立製作所などによるCOBOLで構築したシステム(メインフレーム)が多くを占める。加えて、保険ごとに契約管理のシステムが異なっているため、各々にAPIを接続するか否かが問題となる。
また、データが分散しているうえ、コールセンターや営業など、部署ごとにマスターデータや管理番号が異なっている可能性もあり、APIの公開に関しては契約件数を多く抱える生命保険会社ほどAPIの効果に向けた対応は難しいものとなる。特に生命保険業界は、M&Aの歴史であるため、システムも複雑化(スパゲッティ化)しているため、オープンAPIへの対応には依然として高い障壁があることは確かであろう。

■データ活用を含めた保険商品の開発に係る課題
保険商品の開発においても課題は山積である。まずは保険商品の開発に係る事業者の側面からみてみたい。従来の保険商品は上述した通り、Excelをベースとした商品開発が行われており、データサイエンティストとの協業とはいうものの、言うは易し、行うは難しの言葉通り、文化も言語も違ううえ、今まで作ったことのない未知の商品である。
加えて、金融庁の認可が仮に通ったとした場合、同保険商品をシステムに登録、管理していくうえでは数億円程度のコストが生じる以上、売上げ見通しが立っている必要がある。このように少なくても文化や言語の問題、未知の商品に対する数億円程度のコストなどの課題を乗り越える必要がある。

また、保険商品を審査する金融庁の側面からもみてみよう。審査の過程においては責任準備金などの観点を含めたアクチュアリーによる審査が入る。詳細な審査基準は未詳であるものの、未知の商品に対する審査基準について従来の物差しで判断してよいのだろうかとの疑問が湧いてくる。保険会社側の創意工夫と併せて金融庁側の審査基準にも一定の変化や柔軟性が求められる可能性が出てくるであろう。

■金融サービス仲介業を巡る課題
金融サービス仲介業を巡る課題について、詳細は2022年7月4日のアナリストオピニオン(「現状3社に留まる金融サービス仲介業、今後の拡大可能性を考える」)に譲るとして、同オピニオンでも指摘したように制度面や商品面、流通チャネルなどの課題があり、今もって残っており、こうした課題を解決していくことが必要となる(山口泰裕)。

※全文は以下よりご覧いただけます。

https://www.yanoict.com/opinion/show/id/373

2023.03.20

【アナリストオピニオン】組込み型保険の実現に向けた3つの構成要素と課題を乗り越えた際の未来①

本稿では、組込み型金融のうち、筆者がみている生命保険の観点から組込み型保険(エンベディッド・インシュアランス)にフォーカスする。ここでは同保険を実現する上での構成要素を3つ挙げたうえで、3つの構成要素がゆっくりではあるものの、整備が始まっている点を示す。また、各構成要素を実現する上での課題を挙げたうえで、そうした課題を乗り越えた先にはどんな将来が待ち受けているのか、少し妄想を交えて考えてみたい。

組込み型保険における3つの構成要素

組込み型保険(エンベディッド・インシュアランス)という言葉は聞かれるものの、まだ明確な定義は存在しないと認識している。そこで本稿では少しチャレンジングではあり、少し強引かもしれないが、簡単に定義してみたい。

少なくても筆者は3つの構成要素が必要と認識している。具体的には「①APIを介して保険会社とモノやサービスを提供する事業者が連携したうえで、②モノやサービスから得られるユーザーデータを元に(度合いはあるものの)パーソナライズ化された保険商品を、③モノやサービスに組込む形でパーソナライズ保険商品を提供すること」と定義したうえで、以下では3つの構成要素について現状と課題に触れていこう。

【組込み型保険(エンベディッド・インシュアランス)の構成要素】
 
①APIを介して保険会社とモノやサービスを提供する事業者が連携したうえで
②モノやサービスから得られるユーザーデータを元に(度合いはあるものの)パーソナライズ化された保険商品を
③モノやサービスに組込む形でパーソナライズ保険商品を提供すること
 

構成要素は徐々に揃ってきている

■構成要素①: API連携
上記の定義に照らした場合、徐々に構成要素が揃ってきていると筆者は考えている。まずシステム面での視点として、「①APIを介した保険会社と事業者による連携」について、生命保険会社の中には徐々に従来のメインフレームを中心としたシステムから一部の情報系を中心にクラウド基盤への移行が始まっている。

例として、第一生命はクラウド基盤「ホームクラウド」を構築しているが、第一生命に限らず大手保険会社各社はFgCFをベースにしたクラウド基盤を構築したうえで、順次、業務システムを移行していく動きが加速している状況にある。中堅規模の生命保険会社においても一部、クラウド基盤を採用する動きもあると聞く。そして、ホームクラウドも将来的にはAPI連携を見据えた仕組みをめざしており、その意味において「①APIを介した保険会社と事業者による連携」は将来的に実現するものとみている。
またAPI連携をサポートするクラウド基盤として、Finatext の「Inspire」やjustInCaseTechnologiesの「joinsure」などが登場、新規で設立する少額短期保険会社を中心に導入が広がってきており、こうした動きも見逃せない。

■構成要素②:パーソナライズ化された保険の開発
次に保険商品面での視点である。「②モノやサービスから得られるユーザーデータを元にした(度合いはあるものの)パーソナライズ化された保険商品」である。この構成要素は後述するように現状の金融庁による審査制度なども含めて課題は多いものの、将来的に乗り越えるための第一歩ともいうべき動きは始まっている。
それがデータサイエンティストの活用である。従来、保険商品を開発するアクチュアリーは基本的に膨大なデータから成るExcelと日々格闘しているが、そこにモノやサービスのデータが新たに入ってきた際には、そうしたデータを保険商品の開発に活かしていくうえでは、アクチュアリーだけでは対応が難しくなる。そうした際に筆者はアクチュアリーとデータサイエンティストが協業した保険商品の開発が出てくるものとみる。

注目すべき動きとして、金融業界のデータサイエンティストを中心にデジタル庁が後ろ盾となった「一般社団法人金融データ活用推進協会(FDUA)」が2022年4月に立ち上がっている。FDUAは金融業界全体のデータ活用水準を 引き上げるための横断的組織として、銀行やカード会社、損保会社のほか、生命保険分野でも日本生命や明治安田生命などの生命保険会社も参画している。日々データ分析コンペやデータサイエンスMeetupなどを開催しており、筆者は今後組み込み型金融の商品開発においても可能性を見出せるのではないかと期待している。
横断的なFDUAと併せて、個々の生命保険会社においてもアクチュアリーとは異なるデータサイエンティストの採用活動について、従来より日本生命や第一生命、明治安田生命、かんぽ生命など大手を中心に取り組んでおり、2021年からは大同生命を筆頭にDX人材の育成に取組むなど、中堅の生命保険会社にも広がりを見せ始めている。こうした人材の側面からみた場合には、パーソナライズ化された保険商品を生み出すための基盤が徐々に整ってきているといえよう。

■構成要素③:流通チャネルとしてのモノやサービスへの組み込み
さて、モノやサービスに組込んで保険商品を提供する上で重要なのがチャネルである。それが3つ目の構成要素である「③モノやサービスに組込む形でのパーソナライズ保険商品の提供」である。

この要素を担う注目すべき動きとして、2021年11月から登録が始まった金融サービス仲介業があると考えている。詳細は2022年7月4日のアナリストオピニオン(「現状3社に留まる金融サービス仲介業、今後の拡大可能性を考える」)に譲るとして、生命保険会社とユーザーを繋ぐモノやサービスの提供事業者が入ることで、エンベディッド・インシュアランスが成立する以上、そうした事業者が保険商品を取扱ううえでは資格が必要となる。そうした役割を担うのが金融サービス仲介業である。
金融庁においても、2022年12月に開催された「Meetup with FSA」において金融庁長官が登壇するなど、非常に力を入れる施策の1つとして位置付ける。筆者自身は従来の金融規制体系に横軸を通すだけの位置づけに留まらず、将来的にエンベディッド・インシュアランスを見据えた動きとみて期待をしている(山口泰裕)。

※全文は以下よりご覧いただけます。

https://www.yanoict.com/opinion/show/id/373

2023.03.17

【読めるけど書けない】

最近はスマートフォンやパソコンに直接メモする生活に慣れてしまい、数週間ペンを握らないということも普通になっています。そんなある日、メモを紙に書く機会があり、説明の中で「たいよ」と言われました。頭に浮かぶのは「賃・貨」で、肝心の「貸」が出てきません。結果的に「貨与」と書いて胡麻化しました。その後、知人に「貨与」を見せながら「たいよ」が書けなかった話をすると、その人も「貨」に引っ張られて「貸」が書けなくなり、スマートフォンで調べるという状態でした。いざという時に漢字が書けないのは恥ずかしいものです。デジタル化もいいですが、たまには文字を書かないと「読めるけど、書けない」が多発してしまいそうです(今野慧佑)。

2023.03.15

【背後で物流が支える】

自宅の近所に区立図書館があり、ときどき本を借りに行っています。読みたい本を区立図書館のデータベースで検索でき、受け取りも予約できます。その区立図書館に所蔵していない本であっても、同じ区の他の図書館にあれば取り寄せることで、いつもと同じように貸し出し・返却でき、大変便利です。

おそらく取り寄せされた本を移動するために、トラックなどの物流網を活用しているのでしょう。EC市場の進展について背後では物流が支えていますが、図書館の利便性においても物流が一役買っているのではないしょうか(井上圭介)。

2023.03.13

【無料で遊ぶ、矢野経済研究所の歩き方】

無料で、マーケットに関するニュースレターやメールマガジンを受け取ったり、マーケットレポート紹介コンテンツを見ることができる方法をご存知ですか?
もし弊社からの情報が欲しい!という方がいらっしゃいましたら、YRI Webメンバー登録をしてみてください。
ご登録頂きますと、矢野経済研究所発信の各種業界およびマーケットに関するニュースレターやメールマガジン、矢野経済研究所が独自で企画した最新市場調査資料(マーケットレポート)新刊のお知らせ等各種情報の受信、マーケットレポート紹介コンテンツの閲覧等、メンバー限定のサービスを利用することができます。
http://www.yano.co.jp/regist/

2023.03.10

【図解して深まる理解】

先日、世のなかのあらゆることを図解化してみたら、という内容のテレビ番組がやっていました。なんとなく見始めただけでしたが、これが思ったより面白く見入ってしまいました。言葉だけで読むと実感が湧きづらいことでも、図解化することで瞬時に分かり理解しやすいと改めて思いました。仕事柄レポートや報告書を作成する機会が多いですが、私が作成するとどうしても文章だけになってしまいがちです。しかし文章に加えて図解することで読み手の理解も深まると改めて思いましたので、今後はもっと図解化できるようトレーニングしていきたいです(小田沙樹子)。

2023.03.08

【AIにできない仕事㉗ AIは偶然の出会いを演出できない】

新人が入ってきました。当社を選んだ理由などを聴いているうちにふと思いました。よく就活生の悩みに「自分の好きなことって何だろう」「自分のやりたいことって何だろう」というのがあります。なにしろ「入社志望動機」を書くためには、自分の側の志向を明確化しなければうまく動機につながらないからです。そのためにいろいろやってみたりするそうです。ボランティアとか、アルバイトとか・・・。どこかに行って、何かを見つけるということでしょう。あるいはAIに「キャリアタイプ診断」を受けたりすることもありそうです。いずれにせよ外に向かって能動的に、新たな道を見つけようとする行為だと思います。

けれど一方で、今生きるのにいっぱいいっぱいなので、そこを何とかしようと、降りかかってくる様々な“やらねばならぬこと”と悪戦苦闘している中で、ふと気が付くとそれがやりたいことになっていた・・・なんてケースもあるのではないでしょうか?

偶然の出会いというか、既にある日常の中にやるべきことがあった、ということです。

この偶然の出会いが作る人生というのは、AI診断や、能動的な思考からはなかなか生まれてこないもののような気がします。そして、案外進路なんて偶然の出会いで決まったりするものなのではないでしょうか(森 健一郎)。

2023.03.06

【福袋の狙い】

福袋を開封する瞬間はドキドキワクワクします。さて、今年はその福袋を買うか悩み、結局は買いませんでした。子供の頃はおもちゃの福袋を買ってもらうこともありましたが、近年は紅茶の福袋を買うことが多いです。悩んだお店の福袋には、紅茶以外にタンブラーなどが入っているとのこと。紅茶だけであれば予約をしていたと思います。もうひとつ、数年に一回買うことがあるのは、バスコスメの福袋。こちらの福袋は、商品容器が硝子なので、とても重く、持ち帰るのは大変ですが、入っていた商品をその後リピートする、ということもあります。お店の狙い通りの行動をとっているような気がします(小山博子)。

※2023年1月上旬時点の近況報告です

2023.03.03

【冬の天気と心】

転職してから初めての冬を迎えました。前職は転勤族で、直近まで雪国におりました。関東の冬はなんて穏やかなのだろう、同じ日本ではないようだと毎日思いながら過ごしております。私は出身も雪国なので、小さい頃は、冬に雪が降るのが当たり前だと思っていました。それから、大学進学に伴い上京し、そのときに「冬晴れ」という概念があることを初めて知りました。よく、小説などで、天気が主人公の心情を表す描写がありますが、現実でもある話だと思います。関東の透き通った青空を見ると、冬の寒さも緩和されるようで、なんだか心が軽くなるような気がします。年末は帰省する予定ですが、雪と寒さに怯えながら荷造りを進めています(山内翔平)。
※2022年12月下旬時点の近況報告です

YanoICT(矢野経済研究所ICT・金融ユニット)は、お客様のご要望に合わせたオリジナル調査を無料でプランニングいたします。相談をご希望の方、ご興味をお持ちの方は、こちらからお問い合わせください。

YanoICTサイト全般に関するお問い合わせ、ご質問やご不明点がございましたら、こちらからお問い合わせください。

東京カスタマーセンター

03-5371-6901
03-5371-6970

大阪カスタマーセンター

06-6266-1382
06-6266-1422