1980年代の大学生の頃、ファミリーコンピュータ(ファミコン)が発売された。特にゲーム好きという事ではなかったが(ゲーセンにたまに行く程度)、弟が欲しがったこともあり、取りあえず購入してみた。
当初はゲームソフトが限られており、すぐに飽きてしまった記憶がある。そもそもアクション系ゲームは苦手で、遊べるソフトがあまりなかったと思う。その後、ドラゴンクエストシリーズが発売され、ゆっくり遊べる上にストーリー性もあったことから、ロールプレイング系ゲームを目的として、ファミコン~スーパーファミコン~プレステ3まではずっと購入を続けた。そしてポータブルタイプからは購入をやめた。
元々は家にはいたくないタイプだったが、ドラクエやファイナルファンタジーが発売されると、ほぼ連日ゲーム三昧になった。徹夜もしたと記憶している。今になって思いなおすと、一種の中毒症状だったのかもしれない。
現在では、プロのゲーマー(eスポーツなど)もいるほどで、ゲームは世界的なエンターテインメント競技として認知されている。弊社でも愛好家は少なくない。
子供の玩具と位置付けられていた初期のファミコンでは、パスワード入力でゲーム再開をしていた。たまにパスワードのメモを間違ってしまい、完全に始めからやり直しになるなど、不便ではあったけど、のどかで懐かしい時代だった。
ここ数年、保険業界では個人情報管理や代理店運営に関する課題が取り沙汰されるなど、社会的に注目される出来事が続いています。損害保険業界では中古車販売大手による保険金不正請求問題や、企業向け保険契約での保険料事前調整などが報じられ、業界全体で信頼回復が急務となっています。また、生命保険業界でも、出向先での情報管理体制や販売チャネルのガバナンス強化が求められています。具体的には、代理店管理の厳格化や情報管理体制の見直し、法改正対応など、募集品質を確保するための取り組みが進んでいます。
今回の保険業法改正の動きも踏まえると、今後1年で業界はさらに大きく変化することが予想されます。
特に、保険代理店の再編や外資系代理店・ブローカーの動向が、市場構造にどのような影響を及ぼすのかは最大の焦点だと思います。
今回初めて企業内代理店へのヒアリングを実施しましたが、企業内代理店同士の買収や外資企業による買収など、業法改正をきっかけに事業の見直しや経営判断を迫られる企業が出てきていると実感しました。
企業内代理店の再編や外資系企業の動きは、生命保険の販売チャネルにとどまらず、業界全体の構造変化につながっていきます。こうした動きがどのように進化していくのか、今後も業界関係者様へのヒアリング等を通じてしっかり追っていきたいと思います。(小田 沙樹子)
2025年11月27日、『2025年版 生命保険の販売チャネル戦略と展望 ―直販、Web、来店ショップ、訪問販売の実態―』を発刊いたしました。
昨年版で示した基礎分析を踏まえ、今年は保険業法改正や代理店再編といった構造変化に焦点を当て、生命保険業界全体の販売チャネル戦略をより深く掘り下げています。
本レポートでは、有力代理店へのヒアリング結果に加え、今年初めて企業内代理店へのヒアリングも実施しました。ヒアリングで得られた情報と弊社独自の分析を反映し、保険会社や代理店など市場関係者の皆様にとって業界動向を把握できる内容を取りまとめています。
本レポートが皆様の業務や戦略検討の一助となれば幸いです。(小田 沙樹子)
調査を進める中で印象的だったのは、ポイントを導入している事業者の広がりです。
従来、普段の生活の中でポイントを貯めて、利用できるのはスーパーマーケット、家電量販店、百貨店などをはじめとした小売店がメインでした。
しかし近年は、鉄道や金融機関からリラクゼーション施設まで、サービス業を営む事業者が独自のハウスポイントを導入するケースが増えてきています。また、アパレルなど個人の嗜好により購買行動が左右され、これまではポイントとの親和性が低いとみられていた業界においてもマーケティング効果が認められ始めており、ポイントの導入が拡大しています(私が普段利用するアパレルショップにも共通ポイントが導入され、嬉しく感じています)。
今後もポイントを導入する業種・業態は拡大することが見込まれているため、皆さまが良く利用される店舗・サービスでも新たにポイントを貯めて、使えるようになるかもしれません。(都築 励)
2025年11月27日、「2025年版 ポイントサービス・ポイントカード市場の動向と展望」を発刊いたしました。
幅広い年代層において「ポイ活」が流行・浸透し、ひとつの店舗で複数のポイントを利用可能なマルチポイント化も進む中、ポイント発行事業者各社は、ユーザーから選ばれるポイントサービスを目指してさまざまな施策を展開しています。また、さまざまな業種・業態において、ポイントを単なる集客用途だけでなく、顧客のロイヤリティの向上に活用する動きも活発化している状況です。
このような状況をふまえて本レポートでは、共通ポイント、ポイント交換、ポイントサイト、ポイントソリューションなど関連事業者の事業戦略や取組みを多面的に分析し、市場の今後を展望しています。ポイントを活用したマーケティング施策の検討や、ポイント関連事業の戦略立案の一助となれば幸いです。(都築 励)
筆者が携帯電話を初めて見たのは、1980年代の中頃だったと思います。記憶が定かではないのですが、弁当箱のようなバッテリーと公衆電話の受話器をセットにしたような代物でした(たぶん)。当然、使ったことも購入したこともありません。その後1990年代に入り、今のケータイと同じコンセプト(ポータブルタイプ)の製品が上市され、本格的に普及が始まりました。
筆者は仕事の関係で、比較的初期にノキアのケータイを持ちました。最初は電話する相手もおらず、その利便性がわかりませんでした(当時は公衆電話が町中、至る所にありましたし)。しかしケータイが普及するに従い、驚くほど便利なことを感得しました。
なんとスキーなど遊びに行く際に、綿密な打ち合わせも(集合時間、集合場所、連絡先など)、マップル地図(カーナビは無かったので、なんだかんだ必要でしたが)も、参加者全員への案内状も不要になったのです。トランシーバー以外で、屋外での個人間コミュニケーションを取る手段を入手したのです。
少し大げさですが、ケータイの登場により様々な時間的・空間的な制約から解放され、待ち合わせの柔軟性が劇的に高まったことを記憶しております。(早川 泰弘)
公益財団法人生命保険文化センターは、3年ごとに「生活保障に関する調査」を実施しています。この調査では、生活設計に対する意識や現状、生活保障に対する考え方、生命保険の加入状況など、保障準備の実態を幅広く把握されています。
今回、2025年度の「生活保障に関する調査」の速報版が2025年10月に発表されました。本コラムでは、その中でも「生命保険の加入チャネル」に関する結果に注目したいと思います。
■直近加入契約の加入チャネル
調査結果を時系列※で見ると、2007年以降、「保険代理店の窓口や営業職員」を通じた加入が一貫して増加傾向にあります。2007年には3.8%だったのが、2025年には13.9%にまで上昇しました。
一方、通信販売(インターネット等を含む)は長らく5%台で横ばいが続いていましたが、2022年調査では7.7%、今回2025年調査では8.1%と、緩やかな増加が見られます。
なお、依然として営業職員チャネルが最も多い加入チャネルではありますが、2007年の56.7%から2025年には44.4%へと、10ポイント以上減少しています。
■今後最も加入意向のあるチャネル
今後加入したいチャネルとして最も多かったのは、今回も営業職員チャネルで時系列結果でみると2025年は32.7%でした。引き続き営業職員が主流ではあるものの、他のチャネルへの関心も高まりつつあります。
まず、通信販売チャネルへの意向は、2007年の10.7%から2025年には19.7%へと伸びております。また、「保険代理店の窓口や営業職員」への加入意向も15.4%と、2007年の5.5%から増加しています。特に保険代理店については、街中での店舗展開やテレビCMなどの露出が増え、一般消費者にとって身近な存在になってきたことが背景にあると考えられます。
これらの代理店には、複数の保険会社の商品を扱う乗合代理店も含まれていると推察しますが、前段で触れました実際の加入チャネルとしても利用が進んでおり、意向と行動の間に大きな乖離は見られません。つまり、「代理店を使いたいと思って、実際に使っている」傾向があると言えるでしょう。
一方で、通信販売については、意向は高いものの、実際の加入には一定のハードルがあるようです。損害保険(例:自動車保険)のように契約期間が短く、補償内容も比較的シンプルな商品であれば、通信販売との相性が良いと考えられます。しかし、生命保険はより慎重な検討が求められる商品であり、自分の人生と向き合いながら保障を考える必要があるため、インターネットだけで完結するのは難しいと感じる人が多いのかもしれません。
■おわりに
今回、生命保険文化センターによる「生活保障に関する調査」から、生命保険の加入チャネルに関する動向を見てきました。同調査では、生命保険の加入意向に関して他にもさまざまな結果が掲載されていますので、ぜひ同センターのサイトからご覧いただければと思います。
さて、こうした消費者の意識に対して、事業者側ではどのような取組みが行われているのでしょうか。当社では事業者への取材や文献調査を踏まえた『生命保険の販売チャネル戦略と展望』を毎年発刊しています。事業者側の取組みのほか、生命保険や販売チャネルを取り巻く市場環境などを知ることができます。同レポートでは、特に乗合代理店にフォーカスし、ショップ数や新契約年換算保険料ベースの市場規模、事業者の戦略動向などを整理しています。今年も2025年版を11月末頃に発刊予定です。ご関心のある方はぜひご覧いただけますと幸いです。(小田 沙樹子)
※本コラムで引用しているデータは、公益財団法人生命保険文化センターが実施した「生活保障に関する調査」(2025年度速報版)に基づくものです。なお、時系列比較については、同センターによって調査対象年齢が本来の18~79歳から、過去調査との整合性を考慮して18~69歳に再集計された結果を参照しています。
当社代表が最新のニュースを題材に時代の本質、変化の予兆に切り込みます。
11月21日の閣議決定に向けて調整中の今年度補正予算の一般会計歳出が17兆円を超える見込みだ。物価対策、成長投資、安全保障を柱に昨年の13.9兆円を越える大型補正となる。連立与党内からは「更なる上積みを」との声もあるという。ただ、補正予算とは災害など突発的で緊急性を要する事態に対して必要最小限の予算の“変更”を行うためのものであり、中長期的な国策としての産業政策や防衛戦略は本来“補正”で対応すべき事案ではない。
第2次安倍政権から石破政権まで計13回、計250兆円の国費が補正として支出された。コロナ禍の3期を除いても106兆円を超える。「日本経済再生のための緊急対策」、「未来への投資を実現するための経済対策」、「地方への好循環拡大に向けた経済対策」、「安心と成長の未来を拓く総合経済合対策」などなど、そもそも名称からして“補正”の本意からは遠い。それでも緊急対策として投じられ続けてきた成果が“今”である。はたして国民各層への総花的、一時的な収入補填に終わっていないか。徹底した成果検証をお願いしたい。
さて、補正予算のあるべき論は横に置く。喫緊の課題は物価高であるが、ここが最初の難関である。アベノミクス後遺症からの安定的な着地を目指し金利の正常化を進めたい日銀と、“責任ある”と前置きしつつも積極財政を掲げ、金融緩和の維持を望むとされる現政権のスタンスは相反する。日銀による金利引き上げのタイミングが遅れるとみた市場は直ちに反応、円の対ドル相場は急落、円の信任に対する懸念が高まる。
加えて中国リスクだ。高市発言に対する中国当局の反応は外交上の祖語の次元を越えている。日本経済への影響は小さくない。一方、尖閣問題やコロナ禍を通じて企業の側も構造改革を進めてきたはずだ。危機対応力は向上しており、長期化を視野に冷静に対応したい。1940年代前半、言論統制に迎合し、排外思想を煽り、戦意への高揚を作り上げたのはメディアであり当時の言論人だ。あらためて民主主義の脆弱さを私たち一人ひとりが認識し、健全な言論空間の維持をはかりたい。そして、高市政権には「無責任なポピュリズムに屈しない、大勢に流されない政治家としての矜持と責任」(石破茂氏、「戦後80年所感」より)を期待する。
今週の“ひらめき”視点 11.16 – 11.20
代表取締役社長 水越 孝
本資料の執筆期間中、IT投資の重要テーマである「セキュリティ対策」について、改めて考えさせられる出来事がありました。国内の大企業2社がランサムウェアによるサイバー攻撃を受け、システム障害が発生したのです。これらのニュースは大きく報道され、受注や出荷への影響など、企業活動全体に甚大な影響を及ぼしました。発刊時点においても、両社は完全復旧に至っていません。
本調査では「今後3年間でIT投資が増加するソフトウェア」や「今後3年間におけるIT投資の目的」についても尋ねています。例年、セキュリティ関連は上位に挙がる項目で、今年度もその傾向は変わりませんでした。今後も、これらの事案が自社の対策を見直す契機となり、多くの企業がセキュリティ対策に積極的な投資を行うでしょう。(宮村 優作)
2025年10月31日、「2025年国内企業のIT投資実態と予測」を発刊いたしました。
本資料は、国内民間企業を対象としたIT投資に関するアンケート調査を行い、企業がどのIT領域に、どれくらい投資しているか等、IT投資動向を解説しております。また今回は、内製化の状況や海外拠点におけるIT投資の実態にも焦点を当てました。特に海外IT投資については、2011年9月に発刊した弊社レポート「2011日本企業のグローバルIT戦略」との比較を行い、この十数年における日本企業のグローバルIT投資戦略の変遷にも触れています。本資料を通して、国内企業のIT投資の現状を把握し、今後の事業展開に活かしていただければ幸いです。(宮村 優作)
カーナビが登場したのはいつ頃だったのか?
記憶は定かではないが、1990年前後のバブル期には、既に存在していたような気がする。当時は20代の筆者は、見たことも使ったこともなかった。
当時のドライバーはマップル(道路地図)の携行は必須で、特に初めての場所に行くときには必ず事前確認を行い、大よその道順を覚えたものである(女性を乗せる場合には入念に道順をチェックする)。
それから月日が経ち、1990年代の後半には友達でもカーナビを装着する者も出てきた。ただ当時はCDやDVDを使ったものが多かったので、データが古いナビの場合、ナビ上で道なき道を進む状況も頻繁に見られた。
現在では、スマホ連携タイプなども含めて、当時よりも遥かに精度の高いナビ画面を見ることができる。実際、カーナビ専用機ではなく、スマホを立てかけてナビゲーションを行っている車も少なくない。
さてマップル地図はというと、本屋では今でも健在であった。店員さんに聞いてみると、今でもそこそこは売れるとの事。会社の人に聞いてみると、「突発的な渋滞時の抜け道探索」や「災害時の迂回ルート探索」などでは、依然として紙の地図が有用であるみたいである。
カーナビの登場で苦境にあると思われた紙の道路地図であるが、発災時・有事の利便性や冗長性は、デジタル機器を凌駕する状況が残っているのである。様々なビジネスシーンにおいて、依然として紙台帳などが残っているのも、同じような理由によるものであろうかと考えてしまう。(早川 泰弘)
アマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWSジャパン)は2025年11月5日、日本の金融商品市場の国際競争力強化に向けた取り組みに関する説明会を開催した。米AWSからはグローバル金融事業統括責任者のスコット・マリンズ氏が来日し、グローバルでの先進事例を踏まえ、金融業のミッションクリティカルなシステムをAWS上で稼働させる信頼性や拡張性の高さを強調した。
また、日本取引所グループ(JPX)の常務執行役CIO田倉聡史氏が登壇し、AWSを活用した事業改革やAWSとの連携について説明した。JPXは長期ビジョン「Target2030」で、「グローバルな総合金融・情報プラットフォーム」になることを掲げ、現在はAIやクラウド等の技術による改革に取り組んでいる。その一環として、データ利活用基盤であるデータレイク「J-LAKE」をAWS上に整備し、株式売買システム「arrowhead」やデリバティブ売買システム「J-GATE」等の取引所が擁する多様なシステムのデータを統合する計画を進めるという。さらに、CCoE(Cloud Center of Excellence)の活動基盤として、JPXが定めるガバナンスやセキュリティ、監査などの統制要件を組み込んだ「J-WS(AWS共通基盤)」を構築した。これにより、各業務部門はJPXの統制に準拠した基盤を迅速に利用でき、本来注力すべき業務内容や機能の検討に集中することが可能となった。
JPXがAWSとの連携で特に重視したのは、レジリエンスと説明責任の確保である。金融市場インフラとして、万一インシデントが発生した際には、金融庁や市場利用者に対して詳細な事象報告が求められる。しかし、ブラックボックスとなりがちなクラウドでは、開示可能な情報とJPXが必要とする情報の間にギャップが存在した。そこで両社は情報開示の範囲や要件について協議を重ね、サポートレベルの規定や米国本社とのコンセンサスを得る等、レジリエンス・説明責任の確保に取り組んだ。その結果、JPXはミッションクリティカルシステムの一つであるTDnetをAWS上で構築する道筋が立ち、2027年度にはフルクラウドでの稼働を予定するに至った。今後も、J-LAKEに広範なデータを集約して社内外のデータ利活用を促進していくとしている。
今回のAWSとJPXの取り組みは、金融インフラに求められる厳しい要件と向き合い、クラウドがその信頼性に応えられることを改めて証明したものと言える。金融業界は規制対応や新規参入など環境変化が激しく、既存のシステム維持にIT投資を費やすだけでは競争力を失ってしまう。そのため、最新技術を迅速かつ柔軟に活用する土台としてクラウドは不可欠である。今後の金融業界でプレゼンスを発揮するためには、ミッションクリティカル領域でのクラウド活用に伴う課題と正面から向き合う覚悟が求められる。(宮村 優作)
当社代表が最新のニュースを題材に時代の本質、変化の予兆に切り込みます。
11月10日、国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)がブラジルで開幕した。会期は21日まで、「産業革命前からの気温上昇を1.5度以内に抑える」との目標を採択したパリ協定(2015年、COP21)から10年、残念ながら各国の取り組みは遅れつつある。国連環境計画(UNEP)は「2024年、温室ガス排出量は2.3%増加した。今後、各国の公約が達成されたと仮定しても世界の気温は2.3℃から2.5℃上昇する」との見通しを発表した。
世界各地で異常気象が“災害化”しつつある中、国連のグテーレス事務総長も「危機が加速している」と警鐘を鳴らす。一方、「気候変動は史上最大の詐欺」などと公言してきたトランプ氏にとってパリ協定からの離脱は既定路線だ。「途上国の気候資金として2035年までに官民あわせて1.3兆ドルを拠出する」とのCOP29における合意の実現を米国抜きのシナリオで描くのは容易ではない。COPは先進国と途上国の立場のちがいが浮き彫りになりがちだ。それだけに資金拠出における先進国間での調整難航は取り組み全体の後退に直結する。
トランプ氏に煽られるようにSNSでは気候変動への疑義が溢れる。しかしながら、今、目の前で起こっている気温上昇は2万~10万年単位の周期で繰り返される気候変動の10倍の速さで進行しており(国立環境研究所)、間氷期から氷期への移行は日射量変動から計算される理論値より5万年以上先になるとされる(A. ガノポルスキー他)。「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)も20世紀後半からの急激な気温上昇は人間活動の関与なく説明できないと結論づけており、気候変動を地球本来のサイクルに戻すための行動に是非はあるまい。
環境問題は国家戦略としての産業政策を方向づける要件でもある。10月9日、中国EV大手「比亜迪」(BYD)はブラジルに建設した新たな工場の完工式典でブラジルが国策として進めるサトウキビを原料とするバイオエタノールを使ったPHEVの導入を発表、環境と経済への貢献をアピールする。日本も「COP30ジャパン・パビリオン」(環境省)を現地に設置、脱炭素や気候変動適応における日本企業の先進技術を発信する。健全な競争は歓迎だ。多国間主義への信頼が揺らぐ中、ローマ教皇レオ14世は「気候は共有財であり、利己主義を排し、お互いの未来世代に対する責任を」とメッセージした。各国の勇気ある譲歩と野心的な行動計画に期待したい。
今週の“ひらめき”視点 11.9 – 11.13
代表取締役社長 水越 孝
前回と前々回に続き、ジャパンモビリティショー2025で注目した企業を紹介します。3社目は株式会社T2です。
■T2の取り組み概要
T2は、主要物流拠点間を往復する「レベル4自動運転トラックによる幹線輸送サービス」を2027年に社会実装することを目標に掲げています。これは、ドライバー不足や「2024年問題」による輸送能力不足への対応を狙った次世代ソリューションです。
■レベル4とは
自動運転の基準でレベル4は、特定条件下でシステムが完全に運転を担い、ドライバーが不要になる段階を指します。T2は現在レベル2での商用運行を開始しており、レベル4への移行に向けて実証実験を進めています。同社によると、これまでの実証では無事故を継続しているとのことです。
■なぜ幹線輸送でレベル4が有望なのか
高速道路を中心とした幹線輸送は、信号や複雑な交差点がないため、自動運転の導入に適した条件がそろっていると考えられます。また、幹線輸送で自動運転を実現することで、長距離運転に伴う残業規制への対応にも大きな効果が期待できます。
T2は「高速道路区間は無人運転、出入口付近の切替拠点で有人運転に切り替える」モデルを採用予定で、三菱地所などと連携し、次世代物流センターの整備も進めています。こうした戦略は、休憩管理や労働時間の制約を解消できる点でメリットが大きいと考えられます。
■多種多様な企業が実現に向けて協力
T2の取り組みは、単独ではなく多くのパートナー企業との連携によって進められています。高速道路直結の次世代物流センターや切替拠点の整備では、三菱地所をはじめとする不動産・インフラ企業と協力。さらに、通信会社や車両メーカー、保険会社、IT企業など幅広い業種が参画し、レベル4自動運転の社会実装に向けたエコシステムを形成しています。こうした多様なプレイヤーとの連携は、技術面だけでなく、法制度や安全性の確保の面においても不可欠な要素といえます。
■実現に向けた課題
T2は2027年の実現を目指していますが、展示会で話を聞きながら次のような課題も感じました。
・ETCゲート通過時の減速や割り込み対応
・合流時の安全確保
・法令遵守による速度管理と、周囲の車両との走行調和
また、高速道路では、実際には多くの車が速度を上げがちで、さらに運転にはドライバーの癖や感情も絡みます。こうした環境で自動運転車が自然に溶け込めるかどうかは、今後の鍵になりそうです。
■展示会での印象
T2の挑戦は、物流危機という社会課題に対し、技術で解決策を提示するものです。幹線輸送という限定条件でレベル4を目指す戦略は現実的で、実現すれば物流業界に大きなインパクトを与えると感じました。(小田 沙樹子)
本レポート作成でお聞きした動向の中で、特に印象に残ったのが「オンプレ・クラウド」「IPカメラ・アナログカメラ」の棲み分けがより明確化していることでした。
「オンプレ・クラウド」では、クラウドカメラが急伸する一方で、大規模現場やセキュリティの要求レベルが高い現場などではオンプレ環境の需要が依然として根強く、用途やリスクに応じて最適な運用を提案する必要があり、その提案力も競合他社との差別化のひとつとなっています。また、「IPカメラ・アナログカメラ」では、IPカメラの導入が広がる中、アナログカメラもコストや低遅延性、既設資産の観点から依然として一定の役割を担っており、アナログの減少スピードはさらにゆるみつつあります。
単純な対立構造ではなくなってきている2つの領域の変化を、今後も注目したいと思います。(山内 翔平)
2025年10月31日、「2025年度 監視カメラ/画像解析システム市場の実態と展望」を発刊しました。
映像を「見る」から「活用する」へと進化する潮流の中で、監視カメラ市場は防犯用途を超え、業務効率化・リスク管理・マーケティング支援など多様な分野へと拡大しています。
本レポートでは、中心となるIPカメラ、VCA(画像解析)、クラウドカメラサービスの3領域に、録画機器やVMSを加えた監視カメラ/システム総市場を算出し、技術動向・用途別需要・ベンダ戦略を体系的に整理しました。特に、エッジAIカメラやクラウド連携がもたらす新たな付加価値や、クラウドとオンプレの棲み分けなど、2025年度以降の市場構造の変化を多角的に分析しています。
映像ソリューションの事業企画、製品戦略、マーケット開拓に携わる方々にとって、今後の方向性を見定める一助としてぜひご活用ください。(山内 翔平)
情報セキュリティ分野大手のラック社が、経営者に向けたアドバイザリサービス「経営者のためのセキュリティコンパス」の提供を開始すると発表した(10/30)。
このサービスは、ラック社のセキュリティコンサルタントが、サイバーセキュリティ体制を構築・強化したい経営者に年間を通じて伴走するもので、年2回のアセスメントによるリスクの可視化とその結果に基づいた提言を行うとともに、四半期ごとのアドバイザリ・脅威情報共有セッションを通じて、セキュリティに関するタイムリーな解説をするというもの。いわば、セキュリティの相談役を経営陣のなかに置くようなイメージのものだ。
近年、大手企業も被害を受け、事業停止に追いやられるなどITセキュリティの重要度は無視できないものになっている。他方でトップにIT系出身者がなることは一般的な民間企業ではかなりの少数だ。ゆえに、未だ他人事のようにしているCEOも多いことだろう。
事業継続関係のビジネスは、事故や災害が起きたときにニーズが急伸し、静まるとニーズも冷えることが多い。ITセキュリティについては、そうはならず、常時必要とされる認識が広がることを期待したい。(忌部佳史)
当社代表が最新のニュースを題材に時代の本質、変化の予兆に切り込みます。
11月5日、当社とインドネシア最大のハラール認証機関LPPOM(本部:ボゴール)はハラール認証の総合サービス機関「一般社団法人LPPOM-YANOハラール協会(LPPOM-YANO Halal Solution)」の設立に合意、記者会見を開催するとともにLPPOMを通じて既に認証を取得している企業や認証の取得を準備中の企業を招いて情報交換会を開催した。
新組織はLPPOMが別途国内に設立する監査・認証発行機関と連携し、2026年4月を目途に日本企業向けに本格的なワンストップサービスをスタートさせる予定である。提供されるサービスは国際的な品質基準ISO/IEC17065:2012に準拠したハラール適合性評価であり、インドネシア国内はもちろん世界70ヵ国7万7千社以上への監査実績を有するLPPOMの信用と知見が提供される。
情報交換会にはLPPOMのムティ・アリンタワンティ総裁をはじめ日本企業に対する監査実績も有する第一線の監査員が来日、招待企業の担当者と活発な意見交換を行った。とりわけ、認証発行が政府機関(BPJPH)に一本化されたインドネシアにおける制度運用の詳細やマレーシアやタイなどとの相互認証の在り方等について実務的な質疑応答が交わされるとともに、日本語によるグローバルワンストップサービスに対する期待の大きさを表明いただいた。
今、グローバル経済は大きな転換点にある。自由貿易はまさに危機的状況だ。それだけにTPPの存在感が高まる。昨年末に承認された英国も含め加盟国は現在12ヵ国、世界のGDPの15%を占める。中国、インドネシア、UAE(アラブ首長国連邦)をはじめ加盟申請中または交渉中の国は9ヵ国にのぼる。韓国も検討に入った。とは言え、海外市場とりわけイスラム圏への進出、輸出に二の足を踏む日本企業は少なくない。市場調査やフィジビリティスタディでは解決できない“ハラール”というハードルをLPPOMと連携することで乗り越え、大手・中堅企業はもちろん地方企業の新たな販路開拓、成長機会の創出に貢献してゆきたい。
■株式会社矢野経済研究所はLPPOMと「日本でハラール適合性評価サービス事業」で合意(2025年11月5日)
今週の“ひらめき”視点 11.2 – 11.6
代表取締役社長 水越 孝
前回に引き続き、ジャパンモビリティショーで印象に残った企業を紹介します。今回は Global Mobility Service株式会社(以下、GMS) です。
■GMSの技術とサービス概要
GMSは2013年に設立された企業で、モビリティと金融を融合したFinTechサービスを提供しています。中核となるのは、車両に搭載する遠隔通信制御機器であるIoTデバイス 「MCCS」(Mobility Cloud Connecting System) です。このデバイスは遠隔起動制御機能を備え、走行状況や速度などの車両データを収集します。さらに、金融機関と連携して取得した支払い状況などの金融データと組み合わせて分析することで、ドライバーの信用力を可視化します。
この仕組みにより、従来の与信審査に通過できなかった人でも、MCCSを設置することを条件に、ローンやリース契約が可能になります。契約者が支払いを滞納した場合には、車両を安全に遠隔制御し、支払い完了後に再び利用できる仕組みとなっています。
■サービスがもたらす価値
このサービスは、単にお金を借りやすくするだけではなく、車を使えるようにして生活や仕事の選択肢を広げます。具体的には、契約者・金融機関・販売店のそれぞれにメリットがあります。
・契約者:車を持てなかった人が車を利用できるようになり、仕事や生活の選択肢が広がる
・金融機関:貸せなかった層に融資でき、貸出機会が増える
・販売店:売れなかった車が売れることで販売台数が増加する
結果として、車の利用により仕事ができる幅も増えるなど所得向上や生活改善につながる可能性があります。GMSはこうした課題解決を目指し、すでに海外法人を設立するなど、グローバル展開にも力を入れています。
■盗難防止への応用
MCCSは、車両盗難防止にも活用できるとされています。GMSは、株式会社Secualと三井住友海上火災保険と提携し、「Secual Smart Security」という新しいセキュリティサービスを共同開発したと発表しています。背景には、近年急増しているとされる電子的な盗難手口があります。例えば、車両の電子制御信号を不正に操作してドアを開けたりエンジンを始動させる「CANインベーダー」と呼ばれる手法などです。警察庁によると、2024年の自動車盗難認知件数は6,080件で、その7割超が施錠中の車両を狙った犯行とされ、最短1分で盗まれるケースも報告されています。
また、損害保険の支払いも増加しており、日本損害保険協会によれば、2024年には1件当たり平均281.5万円の支払いが発生したとのことです。こうした状況を踏まえ、3社は「防犯×モビリティ×保険」による新たなモデルで、盗難ゼロ社会の実現を目指すとしています。
■展示会での印象
GMSの取り組みは、「車を持てない人に持つ手段を提供する」という社会課題解決型のビジネスと言えます。払えないから諦めるのではなく、どうすれば使えるようになるかを考え、その利用が生活改善につながる仕組みを構築しているように感じました。経済的な理由で車を持てない層にとっては、こうした仕組みが新しい選択肢になり得ます。また、生活だけでなく、仕事や移動の幅を広げるという点で、GMSの挑戦は非常に興味深いです。(小田 沙樹子)
2025年10月29日(水)、ジャパンモビリティショーに参加しました。本コラムでは、展示会で印象に残った企業の取り組みを紹介します。今回は Cuebus株式会社 です。
■Cuebus社の技術とは?リニアモータで実現する新しい物流システム
Cuebusは、リニアモータを活用した都市型立体ロボット倉庫 「CUEBUS」 を提供しています。この技術の核となるのは、床面に設置したリニアモータユニットによって棚を直接動かす仕組みです。これにより、棚側にはモータやバッテリーが不要となり、耐久性が高く、メンテナンス負荷も軽減されます。さらに、通路を不要とし、天井ギリギリまで収納できるため、倉庫スペースを極限まで活用できます。
加えて、すべての棚を即座に動かせることで、ピッキングや入出庫の処理速度を飛躍的に向上させる「高スループット」性能を実現。複数の棚を同時に、最短経路で移動できるため、従来のロボット倉庫よりも効率的です。
この技術は倉庫内の効率化にとどまらず、物流全体の仕組みを変える可能性を秘めています。背景には、荷物の小口化による取扱量の増加や、ドライバー不足、さらに2024年問題に伴う労働時間規制の影響で輸送力の低下が懸念されるといった課題があります。
■従来の発想との違い
こうした状況に対して、これまで物流の効率化といえば、自動運転の実現に向けた取り組みが一般的でした。私自身も、輸送力不足への対応はこの方向が中心だと思っていましたし、場合によっては鉄道や空路など、既存の代替手段を組み合わせることも検討されていると考えていました。実際、こうした取り組みを進める企業もあります。
しかし、Cuebusの提案は全く異なります。「移動体を使わず、荷物そのものを専用レーンで動かす」という発想です。リニアモータで貨物を直接搬送する仕組みは、物流の概念を根本から変える可能性があります。
■自動物流道路構想との接点
今回の展示でCuebusが紹介していたのは、国土交通省が構想する 自動物流道路(Autoflow Road) への技術応用です。自動物流道路とは、道路空間に物流専用レーンを設け、クリーンエネルギーを電源とする無人・自動化輸送手段で貨物を運ぶ仕組みを指します。もしこの仕組みが実現すれば、ドライバー不足の解消や荷待ち時間の削減、積載効率の改善に加え、CO₂排出ゼロによる環境負荷低減が期待されます。さらに、専用レーンと電力供給が整えば、24時間稼働による幹線輸送の効率化も可能になります。
■展示会での印象
正直、「荷物だけを動かす」という発想は目から鱗でした。国交省の構想とCuebusの技術が結びつけば、物流の未来像は大きく変わるかもしれません。インフラ整備やコスト回収など課題はあると思いますが、今後の動向を注視したい企業の一つとなりました。
2025年10月16日、PayPayは対象加盟店で利用可能なデジタル商品券を友達や家族に送れる「PayPayギフト」の提供を開始した。
https://about.paypay.ne.jp/pr/20251016/02/
送り手はPayPayアプリの「送る・受け取る」機能から、プレゼントしたい加盟店の商品券の金額を1円単位で自由に設定し、任意のメッセージとデザインとともに送ることができる。送られたPayPayギフトは「PayPay商品券」として受け取ったユーザーのアプリ内の支払手段に自動登録される。1度の利用で使い切る必要はなく、余った分は次回の支払で利用できるほか、PayPay商品券以外の支払手段との併用も可能になっている。
友人や家族に気軽にギフトを送れるサービスとしては「LINEギフト」がある。私自身も同サービスでギフトを送ったり、貰ったりした経験があるが、LINEの連絡先さえ知っていれば送ることができるため利便性が高く、若年層を中心にかなり定着している印象を持っている。
現状、今回発表された「PayPayギフト」の送り先としては、「PayPayの連絡先を知っている(≒過去にPayPay残高を送受したことがある)」または「電話番号を知っている」相手となっており、個人的にはLINEより若干ハードルが高いように感じる。送ってから利用されるまでのプロセスがPayPayで完結し、日常の決済と同様の操作で簡単に利用できるという価値を通じて、個人間ギフトの新たな定番となれるか、今後の利用状況を注視したい。
当社代表が最新のニュースを題材に時代の本質、変化の予兆に切り込みます。
10月27日、JR東日本は平均通過人員が1日あたり2000人に満たない“ご利用の少ない線区”の経営情報を開示した。対象となった36路線71区間の収支はすべてが赤字であり、総額は789億円に達する。コロナ禍後の移動需要の戻りやインバウンド効果もあって24区間で改善が見られたものの、54区間で営業費用に対する収入比率が10%を下回った。
航空業界も国内路線は実質赤字状態だ。燃料費、資材の高騰、新幹線やLCCとの競合、利益率の高いビジネス客の減少が収益を圧迫、国際線の利益でこれを補う。路線バス会社の経営も深刻だ。コスト高と運転士不足を背景に2023年度には総延長2496㎞ものバス路線が廃止に追い込まれた(2025年版交通政策白書)。道路、橋梁の老朽化も進む。離島振興法の対象となる254の離島と本土を結ぶ286の定期航路(2022年4月時点)の苦境は言わずもがなである。
採算のとれない地方の公共交通はどうあるべきか。長年この問題に取り組んできた両備グループ(岡山)を率いる小嶋 光信氏は、“補助金に依存しない欧州型の公設民営化が有効”と訴える。この4月、滋賀県の近江鉄道は上下分離方式による公有民営方式の鉄道として新たなスタートを切った。存続ありき、廃止ありきではない。鉄道、バス、BRT(Bus Rapid Transit)、LRT(Light Rail Transit)、それぞれについて費用便益分析を行った結果である。10月1日には両備グループ傘下の両備バスの2路線の公設民営化も実現した。市民、行政、事業者が一体となった取り組みを応援したい。
さて、JR東日本が“ご利用の少ない線区”の経営情報を発表する意図はどこにあるのか。同社は「地域の方々にご理解いただき、建設的な議論を進めるため」と説明する。とは言え、“モビリティと生活ソリューションの二軸によるヒト起点のライフスタイル・トランスフォーメーション”を掲げる同社の経営ビジョン「勇翔2034」のトップメッセージに「地方」というワードは見当たらない。20の赤字路線を7つの黒字路線で支えることで岡山県内の路線バス網を維持し続けてきた小嶋氏の覚悟と凄みは感じられない。公共交通は文字通り公共財であり、社会資本である。地方の縮小が急速に進む今、一企業、一業種、一自治体を越えた次元で国土の未来を構想し、国全体のシステムとして公共交通ネットワークを再設計する必要がある。JRグループこそ、その主役であって欲しい。
今週の“ひらめき”視点 10.26 – 10.30
代表取締役社長 水越 孝
ウイングアーク1stは2025年10月15日、生成AIを全面的に採用したBIツール「MotionBoard」の新バージョンを同年12月20日より提供すると発表した。
新バージョンは、自然言語で指示するだけでAIが最適なダッシュボードを自動生成する機能を核としている。これにより、従来は専門知識が必要でユーザの大きな負担となっていた、データの可視化や分析方法を考えるプロセスを大幅に簡略化する。同社は、生成AIが出力する結果の揺らぎや高コストといった業務利用上の課題に対し、画面生成時にのみAIを呼び出し、一度生成したレイアウトは保存して再利用する独自のアーキテクチャを開発した。これにより、表示の安定性とコスト効率の両立を実現した。さらに、システムの構造化データと現場の非構造化データを統合し、データ入力機能も強化することで、単なる可視化ツールを超えた「データ活用基盤」としての進化を目指す。
「業務アプリなBI」を志向するMotionBoardは提供開始から約14年が経過し、累計導入社数も3,900社を超えた。既存ユーザの多くはオンプレミス版での利用だが、近年同社はクラウド版での導入・刷新を進め、順調にクラウド版が増加している。この生成AIが組み込まれたMotionBoardでは、2026年度で500社の導入目標を掲げ、クラウド版での利用がさらに拡大するだろう。
ブレインパッドは2025年10月16日、第三者検証を手掛けるベリサーブと共同で、生成AIプロダクトの品質を定量的に評価するテストフレームワークについて発表を行った。
この取り組みは、ブレインパッドが提供するAI検索サービス「Rtoaster Gen AI」の品質保証プロセスで実践されたものである。生成AIは、その確率的で予測困難な性質から、従来のソフトウェアテスト手法では品質の網羅的な担保が困難という課題があった。今回ベリサーブの協力を得て行ったテストでは、まず生成AIを用いて多様な入力データを自動生成し、テストケースを大幅に拡充する。次に、出力内容の正確性や関連性、有害性、法令遵守といった複数の観点から自動でスコアリングを行い、客観的な評価を行う。これにより、テストの網羅性を30倍以上に高めつつ、人による確認作業を効率化し、AIの品質を社内外に説明しやすくなった。
生成AIの社会実装が加速する中、その品質と安全性をいかに担保し、企業としての説明責任を果たしていくかは喫緊の課題である。この定量的な評価手法はAIプロダクト開発におけるリスクを管理し、過度なリスク懸念から活用に踏み出せない企業の背中を押す可能性を秘めている。
2025年10月15日、ハードウェアの第三者保守を主力事業とするブレイヴコンピュータ株式会社は戦略発表会を開催した。
一般に第三者保守には、保守パーツの調達やマルチベンダーサポートといったメリットがある。それに加えてブレイヴコンピュータの「つなぎ保守」では、3~5年の保守契約が可能、自社拠点・自社エンジニアによる対応といった強みも持っており、2011年の設立以来、累計75,000台・700社超の保守実績を積み上げ、さらに近年は新規引合数も増加傾向にある。
しかしながら第三者保守の実態として、海外では第三者保守が保守サービスにおける主要な選択肢のひとつである一方、日本では活性化し始めているもののいまだ十分に活用されていない。
このような状況を受け、ブレイヴコンピュータは一般社団法人ひとり情シス協会と提携し、第三者保守の活用シナリオ等を発信することで、認知向上や利用促進を図っていく。
第三者保守に対してユーザー企業が抱くイメージは様々であろうが、ブレイヴコンピュータは真摯な姿勢で第三者保守事業に取組んでいる。今回、あわせて見学させていただいたカスタマ・テクニカルセンター「BRAVE BASE」では、保守パーツの管理・取扱いの現場を目の当たりにし、そのひたむきさを垣間見ることができた。今後の日本における第三者保守のイメージ向上に期待したい。
2025年10月14日~17日に幕張メッセで開催されたCEATEC 2025に参加し、16日に損保ジャパンのセミナーを聴講しました。セミナーでは、「安心・安全・健康・行動で溢れる未来へ」というグループビジョンのもと、SDV(Software Defined Vehicle)、自動運転やライドシェアの社会実装をキーワードに、次世代モビリティ領域における取り組みが紹介されました。
セミナーでは、交通事故の約95%が人為的要因に起因しているという現実や、都市部にまで広がるドライバー不足の課題が示されました。こうした課題に対し、損保ジャパンは保険会社の枠を超えた支援体制を構築しているとのことです。例えば、自動運転専用保険の開発のほか、整備工場との連携によるインフラ支援や事故対応体制の整備など、社会実装に向けた包括的な取り組みが展開されている様子が語られていました。
さらに、セミナーでは、損保ジャパンが10月から展開を開始する次世代モビリティ領域の統合ソリューション「SOMPO MobineX」について詳しい説明がありました。MobineXは、事故の未然防止から事故時対応、事故後の復旧までを包括的に支援する仕組みであり、安心・安全なモビリティ社会の構築を目指すサービスとして設計されています。
具体的には、同社はMobineXを通じて以下のような多様なソリューションを提供していきます。
• 自動運転車両の導入支援(SOMPO ALCS)によるリスクアセスメントや緊急時対応
• ライドシェア導入をワンストップで支援するサービス
• 通信型ドライブレコーダーと車両管理BPOを組み合わせた運行管理
• モビリティデータの利活用による都市計画支援
• EVレスキューサービス
これらの取り組みは、グループ内外の総合力とパートナー企業との連携によって実現されており、交通空白地やドライバー不足といった社会課題の解決に向けた有効な手段として位置づけられていました。
損保ジャパンが保険の枠を超えてモビリティ領域で包括的なソリューションを提供する姿勢は、次世代モビリティ社会の実現に向けた挑戦として非常に印象的でした。
当社代表が最新のニュースを題材に時代の本質、変化の予兆に切り込みます。
10月18日、トランプ大統領の強権的な権力行使に対する抗議デモが首都ワシントン、ニューヨーク、シカゴなど全米50州、2700か所以上で開催された。スローガンは「NO KINGS(王様はいらない)」、700万人を越える米国民が「反トランプ」を訴えた。とりわけ、この2週間前、州兵の派遣が承認されたシカゴでは20万人もの市民がデモに参加、政権による権力の乱用を非難した。
首都ワシントン、ロサンゼルス、メンフィス、、、治安悪化を理由に次々と州兵の派兵が承認される。「犯罪と暴動が蔓延、制御不能な無法状態にある」とされたシカゴもまた然りだ。とは言え、今年上半期の殺人事件は前年比3割減(米刑事司法評議会)、重大犯罪は減少している。結果、裁判所はシカゴへの派兵を差し止めた。しかし、これに懲りる王様ではない。居並ぶ軍の高官を前に「派兵は“内なる敵”との戦いだ。騒乱を鎮圧するためにこれらの都市を訓練場として使いたい。納得できない者はクビだ」などと演説した。
派兵対象となった州・都市はいずれも民主党の地盤である。トランプ支持者はNO KINGSデモを「反米集会」と呼ぶ。政権の意に添わない国民は非国民というわけだ。英国訪問を終えた帰路、トランプ氏は自身に批判的な番組の司会者を名指ししたうえで、そうした番組を放送するテレビ局は免許を取り上げられるべき、と発言した。王様はもはや自身の独裁的志向を隠そうともしない。
米国防省は新たな報道規制に同意しない報道機関の記者証を剥奪した。米国土安全保障省も外国人記者のビザの有効期間も現行の5年から240日に短縮するという。情報は統制され、フェイクがフェイクのまま正当化され、強制される。これこそ強権国家の常套手段だ。国家機密を盾に歴史を隠ぺいしたい政府と真実を国民と共有することこそ国益と信じる記者たちとの戦いを描いたスティーブン・スピルバーグ監督の映画「ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書」(2018公開)の一場面が思い出される。最後に“輪転機”は回った。はたして世界はそこに抗い続けることができるか、他人事ではない。
今週の“ひらめき”視点 10.19 – 10.23
代表取締役社長 水越 孝
富士通は2025年10月6日にソニー銀行の新勘定系システムにおいて、機能開発への生成AI適用を2025年9月から開始したことを発表しました。
2026年4月までに、すべての勘定系システムの機能開発に生成AIを適用していく予定です。
https://global.fujitsu/ja-jp/pr/news/2025/10/06-01
システム開発に生成AIを活用する取り組みは既にあちらこちらで始まっていますが、「銀行」「勘定系システム」という点で市場にインパクトを与えそうです。
システム開発に生成AIを活用する取り組みは今後さらに広がり、開発効率の向上につながっていくと考えます。(小山 博子)
今回のレポートでは、注目動向のひとつに人的リソースへの対応を取り上げました。取材にご協力いただいたベンダーの皆様にも、ユーザー企業の人手不足や人員確保の課題に対する不安の声が届いているようです。その中で進展しているAIによる業務効率化や自動化は、人手不足の観点からも歓迎できる一方、人材育成をどのように行っていくかという問題を突き付けるかもしれません。中・長期的な視点が必要なトピックであり、今後もユーザー・ベンダーの取組を注視したいと考えています。(佐藤 祥瑚)
2025年10月9日に「2025 CAD/EDA市場の実態と展望」を発刊しました。
昨年に引き続き内容のリニューアルを行い、製造業に焦点を当てたCAD/EDA市場に関する調査結果をまとめています。
3D CAD移行、クラウドシフト、AI機能実装が着実に進むとともに、注目が集まる半導体の設計ツールであるEDAが伸長していることで、市場は堅調に推移しています。
今回のレポートでは、世界市場規模および機械系CADにおける業種別・ユーザー規模別の分析を追加しました。マーケット分析やソリューション選定にぜひお役立てください。(佐藤 祥瑚)
https://www.yano.co.jp/market_reports/C67113800
YanoICT(矢野経済研究所ICT・金融ユニット)は、お客様のご要望に合わせたオリジナル調査を無料でプランニングいたします。相談をご希望の方、ご興味をお持ちの方は、こちらからお問い合わせください。
YanoICTサイト全般に関するお問い合わせ、ご質問やご不明点がございましたら、こちらからお問い合わせください。