矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

Daily column

10 ⁄ 22
2026
「保険業界の改革、その先に消費者はいるのか」
保険業界では現在、「顧客本位の業務運営」をどのように実現していくかが大きなテーマとなっています。生命保険業界ではフルコミッション制のあり方や販売体制の見直しが議論され、損害保険業界では一連の不適切事案を受けて代理店管理や募集品質向上に向けた取組が進められています。   こうした中、金融庁と国土交通省は2026年10月13日に、一般社団法人日本損害保険協会に対し、代理店業務品質評価制度の適切な運用を求める要請を公表しました。要請文では、一部代理店から「過度な態勢整備を求められている」「十分な対話を経ないまま委託契約解除が示唆された」といった声が寄せられていることが紹介されています。また、代理店の減少によって顧客との接点が縮小し、自賠責保険の加入機会が失われる可能性についても言及されています。   もちろん、不正の再発防止や募集品質の向上は、消費者保護の観点から極めて重要です。業界全体の信頼回復のためにも、こうした取組を進めていく必要があります。 ただ、今回の要請文では、代理店の減少による顧客接点の縮小にも言及されています。本要請の趣旨は代理店業務品質の向上にありますが、その一方で、消費者が保険にアクセスできる環境を維持することの重要性も示されているように感じました。   私が今年8月に実施した「2026 保険に関する消費者の理解度・意識調査」でも、保険商品や制度を十分理解していると回答した消費者は決して多くありませんでした。保険の内容が複雑化するなか、消費者にとっては、必要な時に相談できる身近な接点の存在がこれまで以上に重要になっているように思われます。   業界が信頼回復に向けた見直しを進めるなか、その議論が制度やルールの整備だけにとどまるのではなく、消費者の理解向上や相談しやすい環境づくりにつながっているのかという視点も忘れてはならないと考えます。 ---------- なお、当社矢野経済研究所では「2026 保険に関する消費者の理解度・意識調査」を発刊しております。保険に対する消費者の理解度や意識の実態についてアンケート調査をもとに分析したレポートです。保険業界で制度改革や顧客本位の業務運営に関する議論が進むなか、その受け手である消費者の視点を知るうえでの参考資料としてご活用いただければ幸いです。 2026 保険に関する消費者の理解度・意識調査 | 市場調査とマーケティングの矢野経済研究所
10 ⁄ 19
2026
【今週の"ひらめき"視点】談合、カルテル体質を捨て、健全な競争環境の実現を
10月13日、公正取引委員会は都営地下鉄の軌道保守工事を巡ってJR東日本の関係会社、東鉄工業をはじめとする6社の独禁法違反を認定、違反内容を自主的に報告した東急軌道工業を除く5社に対して排除措置命令を出すとともに課徴金の納付を命じた。6社は入札前に受注予定会社を調整するなど競争を制限したとされ、発注者である東京都交通局についても入札情報の事前漏洩など談合への関与の有無について調査中とのことである。 その前週、公取委はビールや発泡酒における価格カルテルの疑いでビール大手4社に対して強制捜査を行った。4社は“裏会”などと称する会合でビール類や缶チューハイの値上げ幅などを調整していたという。9月にはマンションの大規模修繕工事における談合も明らかになった。マンション管理組合から業者選定等の業務を委託された設計コンサル会社が業者間の受注調整を行ったうえでバックマージンを得ていたとされ、設計コンサル会社2社と工事事業者40社の独禁法違反が認定された。 談合やカルテルが社会問題化すると、“長年続く業界の慣習”であり、過度な価格競争を防ぐことが出来る、会社規模や施工能力に見合った受注調整により品質・納期が守られる、事業リスクが軽減され経営が安定、結果、雇用が維持される、、、などと必要悪を説く論者が現れる。しかしながら、問われているのは供給サイドと需要サイドの非対称性であり、市場取引の公正さである。消費者の選択の権利は侵されていないか、不当な費用が上乗せされていないか、公共事業であれば原資は税金であり入札プロセスにおける透明性は確保されているか、ということだ。そもそもルールを守らないアンフェアなプレーヤーを擁護する理屈はない。 10月12日、国際通貨基金(IMF)が世界経済見通しを発表、2027年の日本の名目GDPを4兆4676億ドルと推計した。予測どおりであれば日本は来年には米国、中国、ドイツに加え、インド、英国にも抜かれ世界6位へ後退する。無論、円安も背景にある。しかし、通貨安それ自体が国力に対する信任の低下とも言える。公平、公正な市場取引、すなわち、健全な競争環境の実現は、生産性を高め、付加価値を創造し、イノベーションを促進するための基本条件である。身内の論理に閉じ、業界の常識に安穏としていては世界から後退するばかりだ。慣習や前例、しがらみに囚われない“出る杭”たちに期待したい。 今週の“ひらめき”視点 2026.10.11 - 10.15 代表取締役社長 水越 孝

Main Contents Topics

9 ⁄ 30
2026
2026 EC事業者における生成AI・AIエージェント活用実態とAgentic Commerceへの対応意向調査
国内EC事業者を対象に、生成AI・AIエージェントの活用実態と、Agentic Commerceへの対応状況・今後の意向、AI・デジタル基盤への投資動向を調査・分析した市場調査資料です。 生成AIやAIエージェントの活用が進展する中、EC業界では、商品情報の作成や業務効率化などに加え、AIが商品探索・比較・購入を支援する「Agentic Commerce」への対応が注目されています。 本調査では、生成AIを継続的に活用している企業が78.3%に達したほか、Agentic Commerce対応企業の71.1%が、今後「現在の対応範囲をさらに拡充していきたい」と回答しており、今後のEC市場におけるAgentic Commerceの影響力は拡大していくと見込まれます。 また、Agentic Commerceへの対応で期待する効果では「商品情報の最適化による露出機会の増加」が50.2%で最も高く、今後重点的に投資したい分野では、「ECシステム・ECプラットフォームの機能強化」が50.2%と最も高くなっている一方、「PIM(商品情報管理システム)の導入・強化」が37.1%、「商品情報・商品コンテンツの整備」が31.9%となり、AIエージェントに推奨されるための商品情報やEC基盤の整備が重視されています。 本調査では、AI活用レベル、EC売上規模、BtoB・BtoC、業種、取扱商材などの企業属性別に、生成AI・AIエージェントの活用状況やAgentic Commerceへの対応、AI・デジタル基盤への投資動向を分析するとともに、ECプラットフォーム事業者やAIソリューションベンダーへの期待を分析し、EC市場関係者のマーケティングや事業戦略立案に活用できる情報を提供します。 全301頁。2026年9月30日、矢野経済研究所発行。
9 ⁄ 16
2026
2026 量子コンピュータ市場の現状と将来展望
2020年、2021年に『量子コンピュータ市場の現状と将来展望』を発刊したが、当時、技術進化は日本を含むグローバルで研究開発が猛スピードで進む一方、活用面では手探りの状態にあった。しかしながら5年を経て2026年に調査した結果、研究開発面および活用面において以下のような変化が見られた。 まず研究開発面は急速に進展しており、ハードウェア側についてエラー訂正はもちろん、古典コンピュータとの連携における入出力問題のほか、キャリブレーションなどについても解決に向けて進んでいる。ソフトウェア側もさまざまなアルゴリズムや既存アルゴリズムの改善などに取組んでおり。NISQのみならず、Early-FTQCに向けたアルゴリズムの開発に向けた取組みも進められている。 次に活用面でも試行錯誤が進み、2025年~2026年にかけて本番環境に近い形でのPoCや、実際に量子コンピュータを活用した製品が登場するなど、活用の方向性が徐々に見えてきており、市場が育ってきている状況にある。また、実際に利用企業についても広がりを見せ始めており、いわゆる材料化学や創薬などを中心に初期から取組むイノベーターに加えて、2025~2026年にかけてCAE領域を中心にアーリーアダプターへと普及し始めている。 このように、5年間で急速に進展している量子コンピュータ業界について、市場規模や活用ロードマップなどをアップデートすべく、全27社(うち海外企業13社)に取材を敢行。具体的には、富士通や日立製作所、Jij、QunaSys、Quemix、Fixstars Amplifyなどの日本企業に留まらず、D-Wave、Equal1、Atom Computing、PlanQC、Quantum Machines、Classiq Technologiesなど、米国やカナダ、英国、ドイツ、フィンランド、韓国など、世界各国の注目企業に取材を行った。
8 ⁄ 31
2026
2026年版 車載HMI市場動向調査 -AI-DV時代におけるHMIの付加価値競争の行方-
近年、自動車の価値は、単なる「移動手段」から「移動空間における体験価値」へと大きく転換しており、その中核を担う技術が車載HMI(Human Machine Interface)である。デジタルコックピットやIVI(In-Vehicle Infotainment)の進化に伴い、操作インターフェイスはタッチ、音声、ジェスチャーを組み合わせたマルチモーダル化が進展しており、HMIはブランド価値や顧客体験を左右する重要な差別化要素となっている。 また、電動化(EV)、自動運転、コネクテッド化の進展は、車載HMIの高度化を加速させている。特にEV市場では、走行性能に加えて車内体験が競争力を左右する重要な要素となり、OTA(Over-the-Air)による継続的な機能アップデートを前提としたソフトウェア中心の製品開発が一般化しつつある。さらに、Android Automotive OSをはじめとする車載プラットフォームの普及や、生成AI・音声AIを活用したインテリジェントアシスタントの進化により、競争の軸は個別製品からエコシステム全体へと移行している。今後は、ディスプレイの大型化・高機能化、HUD・AR技術の普及、さらにはパーソナライズやウェルネスサービスの拡充を背景に、HMIの役割は一層拡大すると見込まれる。 本資料では、これらの市場環境の変化を踏まえ、車載HMI市場の構造、主要OEM・サプライヤーの戦略、技術トレンドを体系的に整理するとともに、今後の市場機会と事業の方向性について考察する。

YanoICT(矢野経済研究所ICT・金融ユニット)は、お客様のご要望に合わせたオリジナル調査を無料でプランニングいたします。相談をご希望の方、ご興味をお持ちの方は、こちらからお問い合わせください。

YanoICTサイト全般に関するお問い合わせ、ご質問やご不明点がございましたら、こちらからお問い合わせください。

東京カスタマーセンター

03-5371-6901
03-5371-6970

大阪カスタマーセンター

06-6266-1382
06-6266-1422