矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

Daily column

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2024
【アナリストオピニオン】生成AIの活用が進むデジタルマーケティング市場②
生成AIが市場拡大に影響 今後も市場が拡大していく要因の1つとなっているのが生成AIの存在である。これまでAIは技術の難易度が高く、自社開発はおろかAIが組み込まれたサービスを利用するのもハードルが高かった。しかし、こうした状況も生成AIの登場によって一気に変化した。 生成AIの代表的なサービスの1つであるChatGPTも高性能でありながら利用が無料であったり、低価格によるAPI連携が可能である。もちろん、ファインチューニングなど追加の調整・学習には作業が必要であるため、その場合はコストが発生するが、それでも従来のAIと比較すれば低コストで活用することが可能である。これは自社で提供するサービスにAI機能を追加することが容易になっているということでもある。 これまで先端技術が活用されるようなツールは導入に係るコストが大きく、投資可能な大企業による利用が中心であった。しかし、生成AIに関しては中小企業向けのコンパクトなツールであっても機能を設けることができる。例えば、中小企業を主なターゲットとしてCRMプラットフォームを展開しているHubSpotも2023年9月に生成AIを搭載した新機能群「HubSpot AI」を発表した。生成AIの活用よってコンテンツの下書き作成、画像の制作、ブログ記事のアイデア出し、ウェブサイト構築、レポート作成といった作業をわずかな時間で完了させるという。 また、国内でMAを展開するシャノンも2024年2月にChatGPTと連携したコンテンツ作成を支援する「シャノン コンテンツアシスタント」の提供を開始した。利用に応じた専用のテンプレートが設けられているため、誰でも簡単にコンテンツのたたき台を作成することができる。サービスプランは月額12,000円/15,000円/20,000円の3つとなっており、安価に利用することができる。 企業規模によらず、ツールが活用されるようになっていく中でも特に効果が大きいのは中小企業だろう。中小企業においてはこれまで全くデジタルマーケティングを行ってこなかったという企業も少なくない。こうした企業がツールを導入すれば、それだけでも効果は大きいが、加えて生成AIを活用すればデジタルマーケティングに関する知見が少なくても最適なコンテンツの生成が行えるようになる。 このように利用が拡大されていくことが予想されるデジタルマーケティングツールだが、ベンダが生成AIの機能を設ける際に重要になるのは、ユーザーが使いこなせる機能になっているかという点だろう。生成AIの特徴の1つに誰でも簡単に自然言語によって指示を出せるという点がある。しかし、それでもChatGPT等の対話型AIや各画像生成AIではそのプロンプトの内容によって出力の精度は大きく異なる。生成AIは出てきて間もない技術であり、その活用には慣れていないケースがほとんどである。こうした状況の中で高度なスキルを要する機能が設けられてもユーザーとしては手に負えない。そのため、セールスフォースのようなワンクリック自動生成やシャノンのような専用テンプレートが設けられているのは重要である。 デジタルマーケティングツールの導入は大企業に加えて、デジタル化を推進する中小企業にも広がっている。この流れは生成AIの登場によってさらに加速してく。更なるCX向上を目指す企業や新たな施策を開始する企業が現れることで、ツールの導入も増加するため、今後も市場は堅調に伸びていくと予想する。 ※全文は以下よりご覧いただけます。 https://www.yanoict.com/opinion/show/id/405
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2024
【アナリストオピニオン】生成AIの活用が進むデジタルマーケティング市場①
セールスフォース・ジャパンが新たな生成AIサービスを発表 2024年1月にセールスフォース・ジャパンが、2月より新たなセールス向け生成AI機能の提供を開始すると発表した。今回、提供が開始されるのはSales Cloudの生成AI機能となっている。 1つ目がワンクリックでメールを自動作成する「セールスメール」である。生成AIの登場以来、文書の自動生成は注目されており、様々なサービスが提供されている。しかし、このサービスは単にメール文が生成されるのではない。CRM上に蓄積されたデータからパーソナライズされたメールを生成できるのである。 2つ目の機能は通話記録を簡潔にまとめる「通話サマリー」である。このサービスは通話の要点をまとめるだけでなく、顧客センチメントや次のステップを特定し、営業の商談をサポートする。 3つ目が「通話探索」であり、顧客との音声やビデオ通話をCRMに記録し、自然言語による検索や通話内容の要約を可能にする。 このようにセールスフォースは2023年3月にCRM向け生成AI「Einstein GPT」を発表してから、継続して生成AIを活用したサービスを展開している。こうしたデジタルマーケティングツールにおける生成AIの活用はセールスフォースだけではない。例えば、アドビも2023年3月に生成AIサービス「Adobe Sensei GenAI」を発表している。アドビによれば、このサービスによってマーケターやカスタマーエクスペリエンスの担当部門に副操縦士(co-pilot)を提供、生産性を高め、CXの提供、管理を再定義するという。 生成AIはメール文やコピーといったコンテンツの自動生成によって迅速で最適な顧客対応が可能になる。加えて、蓄積された顧客情報を組み合わせることで従来以上にパーソナライズされた顧客体験の提供を実現する。こうした観点から生成AIとデジタルマーケティングは非常に相性がよいのである。 国内デジタルマーケティング市場規模 矢野経済研究所では『 2023年版 デジタルマーケティング市場の実態と展望 』において国内のデジタルマーケティング市場規模推移予測を発表している。当社の調査では、2022年の国内のデジタルマーケティング市場規模(事業者売上高ベース)は、2,828億円と推計した。また2023年の同市場規模は、3,167億5,000万円に成長すると見込む。 市場拡大の背景には新型コロナウイルス感染症が拡大して以降続いているユーザーのデジタルシフトが挙げられる。従来、CRMやMAといったツールはデジタルマーケティングに対して積極的に投資を行うことができる大企業を中心に導入が進んでいた。しかし、新型コロナウイルス感染症の流行を機に中小企業でも営業活動のデジタル化が進められ、ツールの導入が進んでいる。 ※全文は以下よりご覧いただけます。 https://www.yanoict.com/opinion/show/id/405
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2024
【総合インフラマネジメント事業 始動発表】
 2024年 2 月 16 日の記者発表会にて、JR 西日本・NTT コミュニケーションズ・みずほ銀行・三菱 UFJ 銀行・三井住友銀行・日本政策投資銀行の6社より、「総合インフラマネジメント事業『JCLaaS』(ジェイクラース)」の始動が宣言された。  日本において、1960 年代から整備された多くのインフラは、社会の発展と人々の豊かな生活を支えてきた。現在、それらのインフラは老朽化が進み、対策が急がれている。しかし、 人口減少による担い手不足や財源不足といった課題が顕在化し、個別・小規模な事業単位で インフラ老朽化を解決することは難しい状況がある。この現状に対し統合的・複合的・広域的に向き合い、将来世代へ再構築したインフラを継承していくための共通基盤プラットフォームが「JCLaaS」である。  「JCLaaS」では、道路、河川、橋、上下水道といったインフラを単独ではなく複合的に捉えた上で、ソリューションを検討し提供することと想定している。そして、自治体の状況・ 要望にあわせて、DX 推進や資金アレンジも含めた機能を提供することが、今回の異業界6 社参画のポイントである。例えば、NTT コミュニケーションズでは、データ連携基盤の整備や AI・IoT といった先進技術を活用した支援を行いながら、効率的なインフラ事業体系のモデル化を行うというビジョンがある。さらに、プラットフォーマーの6社だけではなく、 地域に根差す事業者との協業・提携や市民参画も進め、官・民・市民がともに未来を創る仕組みを「JCLaaS」では目指していくそうだ。  大変スケールの大きな事業である。推計の市場規模は日本で 9〜12.9 兆円、世界では 200 兆円とのことで、2030 年までに 100 件超の事業展開を目標としている。しかし、本記者発表がキックオフであり、具体的な案件化と仕組みづくりはまだ先のようだ。まずは、ビジョンに共感する自治体や事業者が集まり、ようやく「JCLaaS」の本格始動が可能になるのだろう。今後の事例成果報告を心待ちにしている。(佐藤祥瑚)

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