矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

デイリーコラム


2023.07.26

【脱炭素・ESG経営支援SaaS】

2023年6月21~23日に東京ビックサイトで開催された「日本ものづくりWorld」へ伺いました。②
ここでは製造業DX展で展示していたアスエネ社の「アスゼロ」について紹介します。
企業の脱炭素やESG経営の支援を行う同社の主力は、CO2排出量見える化・削減・報告クラウドサービスの「アスゼロ」です。請求書やレシートをアップロードすると、どれだけCO2を排出したかを使用量から自動で算出・可視化し、削減方法の提案やコンサルティングサービスを実施しています。また、温室効果ガスの算定・報告基準であるGHGプロトコルで規定された、自社で直接排出(スコープ1)・間接排出(スコープ2)したCO2の管理のほか、上流から下流までサプライチェーン全体の排出量(スコープ3)の管理も可能です。
本製品のターゲットはサプライチェーンの広い大企業となりますが、ESGや気候変動への対応をブランディングとして活用したい中小企業での利用も進んでおり、2023年3月末時点で導入社数は3,000社を超えています。
2020年10月、政府は2050年までに温室効果ガス排出量を全体としてゼロにするカーボンニュートラルを目指すことを宣言しました。それから3年程度経ち、上場企業の一部では取り組みの公表が行われていますが、まだ多くの企業では手探りな状態が続いています。
同社は「アスゼロ」以外にも、再エネ調達支援「アスエネ」やESG評価クラウドサービス「ECR」など複数のサービスを展開しており、今年6月にはSBIホールディングスと共同でカーボンクレジット・排出権取引所事業を行う「Carbon EX」を設立しました。
脱炭素・ESG経営支援のプラットフォームになれるか、SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)領域では参入企業が増え、続々と新たなサービスが生まれそうです。
(宮村優作)
2023.07.24

【触らずにスマホ操作】

2023年6月28~30日に東京ビックサイトで開催された「コンテンツ東京2023」へ伺いました。
ここではWearable Devices社の「mudra Band」について紹介します。
 
「mudra Band」はApple Watchのバンド部分のプロダクトで、装着することでiPhoneの画面を一切触らず指の動きだけで操作できるようになります。これは神経を流れる脳からの信号を読み取るセンサを、バンドの手のひら側に搭載し微弱な電気信号を検出しています。操作はタッチやピンチ、ページを戻るなど指の動きで様々なジェスチャー表現できるほか、指をつまむ動作の圧力計測も可能です。「mudra Band」はiPhoneやiPad、MacBookなどと連携することができ、2023年夏以降に199米ドルでの販売を予定しています。また、リストバンド型の「mudra Inspire」ではandroid端末やVRデバイスとの連携も進められています。
開発したのはイスラエルに拠点を構えるWearable Devices社で、共同創業者の3人はもともとインテルでハードウェアや機械学習関連のアルゴリズムを開発していました。将来的には指先の小さなセンサのみで操作できるようになり、ヘルスケアでの活用も見込んでいるとのことです。
 
これまで非接触操作技術は、モニターやタッチパネル側に取り付けられたセンサによる動作検知が一般的でした。それでも比較的新しい技術となりますが、このプロダクトは生体電位の検出によって操作するBMI(ブレイン・マシン・インターフェイス)となり、現在普及している技術とは一線を画します。
脳と機械をつなぐBMIは国内外で様々な研究が進められ、医療用途では臨床試験も始まっています。技術や倫理的な課題があり市場への普及はまだ先ですが、「mudra Band」のように手術を必要としない非侵襲型のデバイスからヘルスケアやエンタメの領域での活用が見込まれます。(宮村優作)
2023.07.21

猫情報②

前版で、実家の近くの公園にいる猫の話を書きました。今回は、その第二段です。 前回は20匹以上の猫がいると書きましたが、その後に改めて数えてみたら、30~35匹ぐらいいました。実際には、もっと多いのかもしれません。 ただ、やはり子猫と思しき猫はおらず、かなりの割合で老猫のようでした(艶がない、歯が黄ばんでいるなど)。 前回、「何年か後に猫のいない公園になると思うと残念です」と書きましたが、残念ながら、想像よりも早く猫のいない公園になりそうです。 最期の一匹を想像すると、切ないですね。(早川泰弘)

※2023年4月上旬時点の近況報告です

2023.07.14

【香りのデジタル化】

2023年6月21~23日に東京ビックサイトで開催された「日本ものづくりWorld」へ伺いました。①
ここでは製造業DX展で展示していた日立産業制御ソリューションズの「香りのデジタル化」技術を紹介します。
 
同社が開発を進める「香りのデジタル化」は嗅覚センサを使用するのではなく、光音響技術で香りをデジタル化します。具体的には香りの元となる対象に振動を起こさせる特殊な光を近距離で照射し、香り分子が振動して発生する音波を読み取るというものです。この技術で香りの成分や濃度の判別が可能になるとのことで、実際の展示ではコーヒーの産地ごとに香りが異なる様子を表現していました。用途は主に食品製造業での品質管理のほか、工場での異臭検知での利用も見込んでいます。特に非接触で香りを検知できるため、衛生面を気にする食品工場での需要が期待されます。
従来、多くの嗅覚センサでは「感応膜」と呼ばれる薄膜に香り分子が付着することで、香りを判別してきました。感応膜は利用回数を重ねることで劣化し、定期的なメンテナンスが必要になりますが、この光音響技術ではそのメンテナンスは必要ありません。
テクノロジーによる人間の感覚器官の再現のうち、最も開発が遅れていると言われているのが嗅覚の表現です。「香りのデジタル化」を達成するために、今後も様々な技術的アプローチが続いていくでしょう。
(宮村 優作)
2023.07.12

【freeeが介護業界の業務を効率化】

freeeが介護領域への進出を本格化する。2023年6月22日より介護事業所向け「freee介護加算」をリリースすると発表した。このサービスでは処遇改善加算の手続きや書類関係の効率化、取得漏れを防げる一覧機能などを提供する。
freeeは「スモールビジネスを、世界の主役に。」をミッションに掲げ、中小規模の事象者向けに会計ソフトや労務管理システムを展開してきた。業界をまたぐホリゾンタルな製品が多かったが、徐々に業界特化型のバーティカルな製品にも注力していく。

今回発表した「freee介護加算」では煩雑だった処遇改善加算の手続きを楽にする。主な機能は計画書の作成、職員への手当自動計算、報告書の作成、取得通知の4つである。freee人事労務とAPI連携して基本情報の転記し、必要項目を埋めるだけで計画書・報告書が効率的に作成できるようになる。また、どの加算を取得できるか一覧化して取得漏れも回避できる。
料金は1ユーザー300円/月で事業所の全職員が対象となる。現在はfreee人事労務とAPI連携のほかに単体での利用も可能で、今後は他の介護請求システムとも連携を予定している。
freeeは今年2月に介護事業者のシフト作成を効率化する「常勤換算キット」を、介護支援事業を行うシューペルブリアンとともに開発している。今回も同社と共同で開発することで、頻繁に制度改定される処遇改善加算に対応したサービスを展開できるようになった。

経済産業省の発表では2035年に79万人の介護人材が不足する※としている。これまで処遇改善加算は申請や報告作業が複雑で大きな負担となっていた。ここを手軽に管理できれば正しく受給できるようになり、賃金の低さが問題となる介護職員の所得改善につながるだろう。(宮村 優作)
※出典:経済産業省「将来の介護需給に対する高齢者ケアシステムに関する研究会報告書」

2023.07.10

【白ナンバーへのアルコールチェック義務化】

2023年12月1日より白ナンバー事業者を対象にアルコールチェックの義務化が施行されることとなった。本来なら昨年10月から施行されるはずだったが、半導体不足や物流停滞によりアルコール検知器の確保が難しく、延期されていたものだ。検知器メーカーによると、半導体不足時は受注から納品まで数ヶ月を要していたが、今では注文を受けたらすぐに発送できる状態まで回復しているという。義務化は安全運転管理者の届け出を行っている事業所が対象となり、2021年3月末時点では約34万事業所※に及ぶ。
※出典:内閣府「令和4年版交通安全白書」第3節 安全運転の確保
 
今回の施行によりアルコール検知器による検査と、検査記録を1年間保存することが義務付けられる。そのため、検知器メーカーは自社開発やベンダー主導で検査結果を記録できるシステムを提供している。特に直行直帰時での検査に対応したモバイルアプリは需要が高く、結果をBluetoothで連携するタイプやOCRで読み取るタイプなど、記録が容易なアプリが展開されている。
しかし、この直行直帰時の記録には課題が残る。アルコールチェックは原則、安全運転管理者との対面での検査が必要だからだ。この点について、昨年のパブリックコメントにより「対面に準ずる方法」として電話やビデオ通話が認められるようになったが、早朝や深夜など安全運転管理者のチェックが難しい時間帯が少なからず存在する。制度上は副安全運転管理者やその業務を補助する人員による対応が認められているが、対応できる管理者がいない状況もゼロではない。このような点呼業務の負担に対しては、パーソルワークスデザインやジェネクストが24時間365日対応可能な代行サービスを提供している。
ドライバーと管理者双方に負担となるアルコールチェックの義務化だが、悲しい事故を起こさないためにも適切な管理が求められる。(宮村優作)
2023.07.07

【400F、ChatGPTを活用したお金に関するチャット相談サービス「AIおかねこ」をリリース】

 Fintech企業の株式会社400Fは、お金に悩みを抱えるユーザーとお金の悩みを解決する専門家をマッチングするサービス『オカネコ』を提供している。今回同サービスにOpenAI社が提供する対話型AI「ChatGPT」を活用した新機能「AIおかねこ」を2023年5月にリリースした。
 『オカネコ』はチャットで気軽に相談することができるオンラインサービスである。ユーザがスマホから居住地や年齢、年収、家族構成などの質問に答えるだけで、オカネコは同地域・同年代の人と比較し、ユーザーの家計状況を診断する。その後、診断結果をもとにファイナンシャルプランナーや金融仲介業者等のお金に関する専門家がアドバイスコメントを届けるというもの。
 『オカネコ』で提供する新機能「AIおかねこ」は、ChatGPTの文章生成機能を活用し、診断をしたユーザーに自動でアドバイスコメントを送ったり、ユーザーの質問に返答する機能である。なお、本機能はOpenAI社の「GPT-3.5」モデルを採用し、オカネコ公式キャラクター“おかねこ”が「にゃ」をつけた猫口調で返答する工夫を施している。
 
 「AIおかねこ」は、リリースから1か月で利用数15,000人を突破したと発表している。お金のことは気になることがあっても意外と相談しにくいものである。こういうときは人よりも意外とキャラクターを被ったAIの方が相談しやすいのかもしれない。(小田沙樹子)
2023.07.05

【オフラインでのパーソナライズ広告】

幕張メッセで行われたInterop Tokyo 2023へ伺いました。
ここではVisionAIExpoブースで展示していた都築テクノサービスの人流マーケティングソリューションを紹介します。

人流マーケティングソリューションはデジタルサイネージにカメラを後付けし、リアルタイムで閲覧している人物の属性に合わせて表示を変更するシステムです。従来多くのデジタルサイネージは時間帯やエリアによって表示するコンテンツを決めて運用されていましたが、このシステムでは実際にサイネージを見た人の性別や年齢などの属性に合わせてパーソナライズされたコンテンツの配信が可能となります。
主に商業施設内の店舗紹介サイネージや案内板での利用を想定しているとのことで、20代男性の私が眼鏡とマスクをした状態で目の前に立ってみたところ、1秒経たずに髭剃りの広告が表示されました。急に表示が変わるため、無意識に広告を目で追ってしまいました。
また、GDPRに適合した独自の属性認証技術を搭載しており、施設内の別カメラに映った個人を特定し、回遊性の分析でも活用できます。

これまでパーソナライズされた広告はオンライン上で展開されてきましたが、センシング技術やクラウドの発展でオフラインでも実施できるようになってきました。商業施設のプロモーションも集客をメインとするPULL型ではなく、顧客それぞれの志向に合わせたPUSH型の販売促進を重要視しています。新型コロナウイルスにより客足が減ってしまった商業施設で新たな顧客体験を提示できるか、次世代のマーケティングとして期待されます。(宮村 優作)

2023.07.05

【Finatext、三井住友海上プライマリーが提供する新商品「AHARA」の開発を支援】

 新しい金融サービスを開発するFintech企業の株式会社Finatextは、三井住友海上プライマリー生命が2023年5月29日から販売を開始した「AHARA(アハラ)」のサービス・システム開発を支援した。
 「AHARA」は、スマートフォンで全ての手続きが完結できる資産形成・運用型の生命保険商品である。同商品の開発にあたっては、Finatextと株式会社みんなの銀行が開発支援に関わっている。APIについては、みんなの銀行が更新系の「口座振替API」と参照系の「本人確認済情報提供API」の2種類を開発・提供している。
 他方、Finatextは、「AHARA」のサービス・システム開発を担った。Finatextは、従前よりSaaS型デジタル保険システム「Inspire(インスパイア)」や証券ビジネスプラットフォームを活用した保険や資産運用サービスの構築を通じて、様々な金融機関のDXを支援してきた実績を持つ。そうしたなか、Finatextによると今回の事例は、生命保険商品のオンライン完結化を初めて手掛けたものとしている。
 
 今回Finatextが開発支援した三井住友海上プライマリー生命の「AHARA」は、資産形成を気軽に始めてみたい顧客のニーズに応えるために開発されたもので、特にY世代・Z世代をターゲットにしているという。今回の三井住友海上プライマリー生命がFinatextやみんなの銀行と協力して開発した新しい保険が顧客のニーズにマッチすれば、今後今回のようなオンライン完結型の保険商品がますます広がっていく可能性がある。(小田沙樹子)
----------------
参考レポート
生命保険領域における国内InsurTech市場に関する調査を実施(2022年) | ニュース・トピックス | 市場調査とマーケティングの矢野経済研究所 (yano.co.jp)
2023.07.03

【防災から回遊性まで、竹芝エリアにおけるデータドリブンな取り組み】

ソフトバンクと東急不動産は2023年6月5日、スマートシティプロジェクト「Smart City Takeshiba」におけるデータを活用した取り組みを共同で発表した。
本プロジェクトの対象となる竹芝エリアは「東京ポートシティ竹芝」や、ホテルや劇場が入る「WATERS takeshiba」など新たな商業施設が開業される注目の再開発エリアである。
「東京ポートシティ竹芝」では最新のセンシングデバイスやエッジデバイスによるデータの収集・解析が行われ、リアルタイムでデータを活用したビルマネジメントや販促支援が可能なスマートビルとなっている。なお、オフィスエリアにはソフトバンクやweworkが入居し、商業エリアでは20店舗以上の飲食店やイベントスペースなどを構える。
 
今回の発表では両社の知見やノウハウを活かした、街の状況をリアルタイムで把握・発信ができる防災サービスの導入、デジタルツイン上での災害シミュレーションを活用した防災力の強化、サイネージやシェアサイクルによる来訪者の回遊性についての取り組みを紹介している。
これまで災害情報は複数媒体での発信により情報がサイロ化され、街や施設の管理者が状況を正確に把握し効率的な避難誘導を促すことが難しいという課題があった。この課題に対し、リアルタイムで街の状況を把握し情報発信が可能な「統合管理UI」を開発し竹芝エリアでの導入を開始した。また、竹芝地区のデジタルツインを構築し、災害時の一時滞在施設への避難/入館時の受け入れ対応の効率化などを検証した。
回遊性向上においては可動式のサイネージに専用のカメラを設置することで、人流や属性データを取得し、各施設の販促に活用するとともに相互送客を促すとしている。
さらに、シェアサイクル「HELLO CYCLING」を提供するOpenStreet株式会社と連携し、移動手段が不足している竹芝エリア内でのモビリティの向上も進めている。
 
ソフトバンクは2025年度を最終年度とする中期経営計画の中で法人事業の成長戦略の一つにAutomous Buildiingをあげており、東急不動産も同様にデジタルエリアマネジメントとして、来訪者の属性や行動データ、サービス・ニーズを分析するデータドリブンなまちづくりを進めるとしている。
本プロジェクトは狭域エリアでの取り組みとなるが、オフィスビルや商業施設を中心としたまちづくりモデルの一つとして、先駆的な事例になるだろう。(宮村優作)
2023.06.30

【一般利用者にも広がる顔認証決済】

ヤフーが運営する「Yahoo!マート by ASKUL代々木上原店」へ伺いました。
この店舗では顔認証で支払いができるセルフレジが導入されており、Yahoo! JAPAN IDに自身の顔写真を登録しPayPayとIDを紐づけておけば誰でも利用可能です。
使い方はセルフレジを使い慣れている人なら簡単で、商品をスキャンした後に支払方法の選択画面で「顔認証支払い」を選択し、モニターの枠内に顔をかざすだけで完了です。
実際に使ってみると、「え、これだけで完了?」と不安になるくらいスムーズに購入することができました。
これまでQRによるキャッシュレス決済を行う際には、対象のアプリを開いてQR画面を表示するというひと手間がありました。それでも現金と比較すると便利さを感じていましたが、今回はさらにその先を行く新たな決済体験となりました。
 
小売業での顔認証決済は、2018年頃から国内で実証実験が行われるようになり、顔認証システムに強いベンダーとコンビニがタッグを組み一部店舗で取り組まれていました。ただ、現在も利用はその一部に限られ、どこのコンビニでも利用できるわけではありません。
普及のためには店舗とユーザー双方にメリットを感じてもらうことが必要です。ユーザー視点に立つと、利用前の顔写真の登録にハードルが存在することがわかります。この登録の容易性は顧客体験に大きく影響を及ぼしますが、今回は案内に従うと1分もかからず完了することができました。気軽に登録でき気軽に使える一連のUXは、ユーザーの拡大に大きく貢献します。
ヤフーが運営するこの店舗は誰でも新たな決済体験ができる貴重な場となりそうです。(宮村優作)
2023.06.28

【なないろ生命、高血圧オンライン診療サービスを付帯サービスとして導入】

 朝日生命グループのなないろ生命は、契約者及び被保険者向け付帯サービスとして、イーメディカルジャパンが提供する高血圧疾患に特化した専門型オンライン診療サービス「高血圧イーメディカル」を2023年6月5日から導入したことを発表した。なお、なないろ生命は、今回のサービスを含め契約者向けの各種付帯サービスを「なないろケア」として提供している。
 新たに付帯サービスとして導入したイーメディカルジャパン社の「高血圧イーメディカル」は、初診からオンラインでの診療、薬も処方される「通院しない便利さ」と、専用アプリと家庭血圧計を使った「継続的な治療サポート」を特徴としている。
 なないろ生命は、付帯サービスに「高血圧イーメディカル」を加えることで、高血圧を原因とした疾病に対して、重症化する前に効率的かつ効果的な対処への寄与を期待している。
 
 高血圧イーメディカルをはじめとした、重症化予防に係る有用な付帯サービスが徐々に増えてきている一方、保険会社各社は、付帯サービスの利用に結び付けていく導線の構築に課題を抱えている。いかに付帯サービスをユーザーに周知し、適切なタイミングで利用を喚起、実際の利用に繋げていけるかがポイントとなる。(小田沙樹子)
2023.06.26

【アニポス、ジェネレーティブAIを活用したAI診療アドバイスの提供開始】

 ペット保険のDXを推進する株式会社アニポスは、ペット保険金を簡単に請求できるスマホアプリ「アニポス」を提供している。今回、同アプリにジェネレーティブAIを使った「AI診療アドバイス」機能を期間限定で追加した。
 AI診療アドバイス機能は、ジェネレーティブAIが保険請求に含まれるペット情報と傷病状況を基に、症状や疾患に対する注意点、ユーザーが知っておくべき情報を診療アドバイスとして個別に生成、ユーザーに対してアドバイス情報を提示するものとなっている。
 アニポスは、サービス開始当初からペット保険請求の簡易化に向けた請求書のデータ化や、保険会社向けの保険金の支払査定の自動化など、AIを活用した課題解決に取り組んでいる。今回のAI診療アドバイス機能について、ユーザーニーズの有無を検証しながら、医療を通じたペットと飼い主の幸福度向上に向けてサービス品質を高めていきたい考えである。
 
 私はペットを飼ったことがないものの、飼い主にとっては注意点や各種必要な情報を教えてくれることは安心感につながる可能性がある。他方で、当該情報の確からしさをどのように担保しているのかも気になるところだ。(小田沙樹子)
 
※ジェネレーティブAI・・・コンテンツやモノについてデータから学習し、それを使用して創造的かつ現実的なまったく新しいアウトプットを生み出す機械学習手法
2023.06.23

【モルフォ社、デンソーのAI運転診断システムに参画】

 画像処理やAI技術の研究開発を行う企業である株式会社モルフォは、株式会社デンソーが開発を進めるAI運転診断システムにおいて動画解析AI技術の開発を支援した。
 AI運転診断システムは、ドライブレコーダーから収集した動画をクラウドにアップロードした後、動画解析を実施する。解析データをもとに、危険運転行為や潜在的なリスク等の結果をユーザーにフィードバックすることで、リスクに結びつく運転特性の改善や事故の抑制を支援するシステムである。
 具体的には、AI運転診断システムは動画解析と運転診断の2つの機能に分けることができる。今回モルフォ社は、動画解析機能を支援した。モルフォ社はAI推論処理の他、独自の画像処理を実装することで、走路認識や物標検出、信号機検出のほか、ドライバー状態推定など、複数機能を実現したという。AI技術と画像処理の組み合わせにより、ドライブレコーダーの動画から走路やドライバーの状態等の情報を高精度に収集し、安全運転のための的確なフィードバックを可能としている。
 
 今回のデンソーが提供するAI運転診断システムは、高齢者を対象とした安全運転支援の実証実験で使用されている。高齢者による交通事故が発生するたびに免許返納の話題が出る。しかし生活に車が必要不可欠な地域もあるのは事実。安全な運転の実現に向けて必要な機能を自社で開発するのか、モルフォ社のような高度な技術を持った企業と協業していくのか。自社の技術力やリソースを見極めながら戦略的に協業を進めていく必要があるだろう。(小田沙樹子)
2023.06.21

【東京海上日動火災保険、コネクテッドカーサイバー保険の提供開始】

 東京海上火災保険は、一般社団法人Japan Automotive ASAC(以下:J-Auto-ISAC)と共同で、J-Auto-ISAC会員向けに、コネクテッドカーサイバー保険団体制度を創設し、2023年6月から「コネクテッドカーサイバー保険」の提供を開始した。
 コネクテッドカーサイバー保険は、コネクテッドカーがサイバー攻撃を受けた際に発生する初動対応に要する各種費用や損害賠償責任等の補償を、一定のセキュリティレベルをクリアしたJ-Auto-ISACの会員企業向けに提供する。
 東京海上日動火災保険とJ-Auto-ISACは、同保険の運営を通じて得られたノウハウを活用して、今後のリスクの高まりが予想されるコネクテッドカー領域のサイバーセキュリティに関するリスク対応能力の向上に努めていくとしている。
 
 現在、コネクテッドカー向けの保険を巡っては、東京海上日動火災保険のほか、損保ジャパンの「コネクティッドカー専用自動車保険 コネぴた」や三井住友海上のコネクティッドカー向け自動車保険「GK クルマの保険 コネクティッド」など、損保会社各社がさまざまな保険を提供し始めており、各社の商品競争の行方に益々注視していく必要がある。(小田沙樹子)
2023.06.19

【ChatGPTの取組み事例②:GMOインターネットグループ】

 2023年5月30日に、保険業界のオープンAPI普及と、協業・共創を推進する、業界横断の有志コミュニティ「GuardTech検討コミュニティ」主催のイベントに参加しました。イベントは「業務に活きるChatGPTの使い方 〜 ビジネスで必要な、「考える、答えあわせする、聞く、書く、広める」を効率化する!~」をテーマに据え、企業の方がChatGPTに関する取組みや考え方についてお話しされていました。
 登壇された企業について今回はGMOインターネットグループ株式会社を取り上げます。
 GMOインターネットグループは、インターネットインフラ事業やインターネット広告・メディア事業、インターネット金融事業、暗号資産事業を手掛ける会社です。
 同社では2023年3月にChatGPTの積極的な業務への活用を開始すると発表しています。業務活用を推進していく施策の1つとして、GMOインターネットグループのグループパートナー(グループ全従業員)を対象に、ChatGPT業務活用コンテスト「AI(愛)しあおうぜ!」を開催しています。
 同コンテストでは、まずChatGPTを始めとしたAI技術に関するイノーベーティブなアイデアや事業案、成果物を募集します。次にエントリーされた応募作ついて、コンテスト事務局の推薦員が、「革新性や新規性、売上や利益への貢献可能性」や「業務効率化の影響範囲や実現性」、「セキュリティ」など様々な視点から審査・評価を行い、月1回の受賞作会議に候補作として推薦します。そして最後に同社の熊谷代表を始めとした幹部から構成された受賞作会議において投票で月間チャンピオンを決定します。
 また、月間だけではなく、四半期に1回、月間チャンピオンの中から熊谷代表および副社長による四半期チャンピオンを決定します。さらに熊谷代表がChatGPTと相談して年間チャンピオンを決定するそうです。
 あくまで社内向けに開催されているので成果物や結果などを知ることができないですが、まずは社員自ら手を動かし、ChatGPTの利活用に対する理解を深めていく良い取組みなのではないかと思います。年間チャンピオンはChatGPTを相談して決定するということで、どのような評価を下すのか気になるものです。
(小田 沙樹子)
2023.06.16

【ChatGPTの取組み事例①:Flora株式会社】

 2023年5月30日に、保険業界のオープンAPI普及と、協業・共創を推進する、業界横断の有志コミュニティ「GuardTech検討コミュニティ」主催のイベントに参加しました。イベントは「業務に活きるChatGPTの使い方〜 ビジネスで必要な、『考える、答えあわせする、聞く、書く、広める』を効率化する!~」をテーマにし、企業の方がChatGPTに関する取組みや考え方についてお話しされていました。

 登壇された企業の中で面白い取組みをされていた2社を紹介します。今回はFlora株式会社を取り上げます(※もう1社は次回)。
 Flora社は、女性特有の健康課題に対してテクノロジーを活用し解決していくFemTech企業です。一般消費者向けには「月経妊活アプリflora」を提供。他方、企業向けには、企業ごとにカスタマイズされたアプリを企業で働く女性職員に使ってもらい、その利用データから当該職員の健康課題を可視化し、原因の報告や解決策の提案を行う「Flora for Biz」を提供しています。
 さて今回のテーマであるChatGPTを活用したサービスも手掛けています。同社はChatGPTを活用し、女性の健康課題に特化したチャットアシスタント機能「Flora AI」を開発しました。具体的には、OpenAIのモデルを活用し、同社のデータセットを連携することで、「Flora AI」が女性の健康に関する正確で安全な情報提供・アドバイスをできるように設計されています。
 例えばAIが学習する範囲は同社が持つ医療系の論文などの情報に限定し、回答する際も出典を提示するようにしているそうです。またユーザーの良き相談相手となるために、回答の仕方にも配慮するようプロンプトを調整しているそうです。

 ヘルスケアに関してはインターネット上に様々な情報があり、どれを信用していいか分からず悩んでしまいます。たとえChatGPTに問いかけたとしても、インターネット上に広がる様々な情報を基に回答するので信憑性に欠けます。しかしFlora社のようにファクトが明示できるように作り込んだChatGPTの利用であれば、ユーザーも利用しやすいだろうと思いました。(小田 沙樹子
2023.06.14

【生命保険会社によるAPI連携の取組み:ネオファースト生命】

 ネオファースト生命は、iChain社が開発・提供する保険管理アプリ「うちの保険」から、ネオファースト生命のマイページにアクセスする際のユーザー認証を不要にし、シングルサインオンをできるようにした。

 iChainは最先端のテクノロジーを活用して保険業界のイノベーションを加速させることを掲げるInsurTechのスタートアップ企業である。今回ネオファースト生命とAPI連携をしたアプリ「うちの保険」は、保険加入後の保険契約者、被保険者とその家族をサポートするための保険管理アプリとなっている。

 同取組みにおいて、シームレスなAPI連携の実現にあたり、NTTデータが生命保険会社や保険代理店などと仕様策定を行った、保険業界における共同利用型API管理基盤であるinsurance API PORT」を活用している。同基盤は、API化に伴い保険会社が抱える、基盤構築のコスト負担やAPI開発の有識者不足等の課題解決を目的とした、保険業界特化型のAPI管理基盤サービスである。

 保険業界、特に生命保険業界では基幹システムを中心にオンプレミスが大半を占めており、徐々にクラウド化に向けた動きが始まりつつある状況にある。今回の共通API基盤を活用したネオファースト生命とiChainの取組みがユーザーにとって利便性をもたらし、新規保険加入率の向上などの成果に繋がると分かった際には、業界としてクラウド化の加速、ひいてはその先のAPI連携の動きまで広がっていくかもしれない。(小田 沙樹子
----------------
参考レポート

生命保険領域における国内InsurTech市場に関する調査を実施(2022年) | ニュース・トピックス | 市場調査とマーケティングの矢野経済研究所 (yano.co.jp)
2023.06.12

【大東建託、社員の安全運転意識向上に取り組む】

大東建託は社用車全6,500台に、三井住友海上火災保険が開発した安全運転支援サービス「F-ドラ」を導入することを発表した。「F-ドラ」は専用の通信型ドライブレコーダーを活用し、走行ルートや最高速度、運転時間などのデータから運転者の運転スキルや運転傾向を判断し一定の衝撃を検知すると専用安否確認デスクに自動通報する機能を有している。

 大東建託は、従来設置していたネットワーク非接続タイプのドライブレコーダーから通信型ドライブレコーダーに切り替えるためコストがかかるものの、事故削減効果による車両損害額の減少や割引率の進行に伴う自動車保険料の減額等で、年間約1.2億円の経費削減効果を見込んでいるという。

 企業にとって従業員の安全運転意識向上は課題である。管理者がいくら指示しようとも、結局のところ安全運転をするかどうかは従業員一人一人の意識によってしまう。今回大東建託は費用を投じてでも、通信型ドライブレコーダーを活用した三井住友海上火災保険の安全運転支援サービスの導入に踏み切った。「F-ドラ」がドライバーとなる従業員の安全運転意識向上に役立つと考えたからである。今回の大東建託の取組みは、従業員の命を守り、会社の信頼を守り、一般人の命も守るまさに三方良しといった取組みになるだろう。(小田 沙樹子
----------------
参考レポート
2023.06.09

【新たな鍵の開け方】

2023年5月25日~26日に東京ビッグサイトで開催された「デジタル化・DX推進展~ODEX~」へ伺いました。②
 
ここでは入退室管理システムを開発しているPhotosynthの「Akerun Pro」について紹介します。
 
Akerun Proは既存のサムターンタイプのカギに対して、強力なテープで後付け設置するだけで鍵のコントロールや入退室管理ができるスマートロックです。本体とICカードリーダー、ドアセンサー、サーバーとの通信を担うAkerun Remoteがセットになっており、最短3日で導入が可能です。
このスマートロックでは入退室情報をそのままクラウドで管理できるほか、勤怠管理システムとも連携して労働時間の適切な管理も行えるようになっています。2023年3月末時点で導入社数は5,000社を超え、オフィス以外でもフィットネスジムや無人店舗での利用も拡大しています。
 
また、ICカードリーダーで読み取れる通信規格は交通系ICで利用されるFelicaとTypeAに対応しており、試しに私が持っているスマートリング(TypeA内蔵)でも反応するかかざしてみたところ、見事に反応しました。さらに、ユーザーの中には自身の手にNFCチップを埋めて使っている方もいるとのことでした。
ガジェット好きの私にとって、手をかざすだけで開錠できる世界はロマンに満ちていてたまりません。(宮村 優作)
2023.06.07

【マイナンバーカードを使いやすく】

2023年5月25日~26日に東京ビッグサイトで開催された「デジタル化・DX推進展~ODEX~」へ伺いました。①

ここではデジタルIDソリューションを提供する「xID」の展示について紹介します。

xIDは「信用コストの低いデジタル社会を、実現する」をミッションに掲げ、マイナンバーカードをもとにしたエンドユーザー向けのアプリや自治体・事業者向けAPIの開発等を行っています。
ユーザー向けアプリではマイナンバーや必要情報を登録することで、本人確認や電子署名が手軽に行えるIDを発行できます。これまでは金融や行政サービスを受ける際には個別に登録・入力が必要でしたが、その手間を省けるとはなんともありがたいサービスです。

自治体向けにはマイナンバーカードの公的認証を効率化するAPIを公開しており、2020年のサービス開始以来、2023年時点で約400社の自治体への導入が進んでいます。また、郵送DXサービスの「SmartPOST」では自治体からのメッセージを住人がアプリ上で閲覧できるようになり、これまでの郵送や電話とは異なりアプリで一人ひとりに向けたコミュニケーションが可能となります。

今後の展開を伺うと、エンドユーザー向けアプリの普及にも注力するとのことでした。確かに自治体で使えるようになっても、ユーザーが少なければ最適な運用は行えません。また、リーチできるユーザーの多さは金融や保険業などの一般事業者に対しても魅力となり、民間での利用も促進されるでしょう。

これまで何度かマイナンバーカードをスマホで読み取り、行政・自治体からサービスを受けたことがありますが、多少なりとも複雑さを感じていました。それが少しでも楽になるのであれば使ってみない手はありません。(宮村 優作)

2023.06.05

弊社研究員への取材記事の掲載について

Sasuke Financial Labが運営する「コの保険」サイトの特集記事において取材記事を掲載頂きました。

研究員による生命保険領域におけるInsurTech市場規模に関する解説や金融サービス仲介業を使ったレイヤー化の話し、妄想を交えた具体例などにも触れております。もしご参考になりましたら幸いです。(山口 泰裕)

2023.06.02

【アナリストオピニオン】変革に向けて動き出す中小企業 ⑤

月額3,900円で様々なハード・ソフトをサポート~リコージャパン

リコージャパンが提供する「情シスおまかせパック」は、同社のエンジニアが顧客の情報システム業務を代行し、様々な障害や疑問に対応するだけではなく、IT活用のアドバイスも提供する。また、本サービスを利用することで、顧客は社内のIT資産管理も可能になる。

本サービスの主な特長は次の3点である。

① マルチサポート PC・サーバだけでなく、ネットワークやアプリケーション、パソコンアクセサリ類に至るまで、購入先に関わらず様々なハードウェア・ソフトウェアをサポート

② ワンストップ支援 電話では伝えにくい内容も、同社のITエンジニアが顧客のPC画面を共有・操作しながら、質問にわかりやすく回答。また、ヘルプデスクがリコージャパンの各保守サービスと速やかに連携し、様々な困りごとの解決の窓口として支援

③ リーズナブル(月額3,900円/税別) 本サービス提供以前は、顧客はまず営業担当と話す機会が多かったと見られる。営業担当もITに詳しいとはいえ、知識の深さなどではエンジニアに敵わない。そのため、ダイレクトにエンジニアに依頼できて月額3,900円というのは、本サービスのコアコンピタンスのひとつと言える。同社は複合機事業を強みのひとつにしている。複合機の引き合いの延長としてITもリコーに任せたい、という顧客は多いと推測する。

最近では、セキュリティや、クラウドサービスへの対応といったところへのニーズが増加しているようである。同社もまたこれらの需要に応えるため、サービスの強化を進めていると推測する。

「情シスおまかせパック」の主なターゲットは従業員数100人以下の企業だが、同社には同101人以上の企業を主なターゲットにする「マネージドITサービス」もある。マネージドITサービスは、ITインフラの構築・運用・保守・サポート業務をアウトソーシングするサービスで、本業に集中することが難しい情報システム部門の管理負担を軽減し、顧客の企業価値・生産性向上に貢献する。マネージドITサービスの顧客は情報システム部門を持つ企業・組織が多く、同社エンジニアが顧客情報システム部門と対話しながら提供サービス内容を定める、という柔軟性がある。

同社は、各企業の組織にあった内容のサービスを展開し、広く顧客の「困った」を解決していく意向である。(小山博子)

※全文は以下よりご覧いただけます。

https://www.yanoict.com/opinion/show/id/381

2023.05.31

【アナリストオピニオン】変革に向けて動き出す中小企業 ④

従量課金で無駄なく最大限の効果~ジェイズ・テクノロジー

ジェイズ・テクノロジーが提供するKaetecは、経験豊富なITスペシャリストが、ITシステム全般のコンサルティングからノンコア業務のアウトソーシングまで、「情シス」業務のトータルソリューションを実現するサービスである。

主な強みは次の3点で、①エンジニア派遣業からスタートし、培ったノウハウを活かし、設計など上流工程から下流工程まで、自社で提供できること、②親会社(セグエグループ)がプライム上場企業であるがゆえの経営基盤、③技術者全員が社員であること、である。③はサービスの品質維持と、情報漏洩のリスクを防ぐことを目的としているとみられる。また、親会社のセグエグループは、ネットワークセキュリティをコアコンピタンスのひとつにする。セキュリティの中でも、より専門的な個所の問題になると、グループのセキュリティ技術者に相談することもあるようで、グループ間連携がサービスの価値を向上させているとみる。

ユーザが同社のサービスを選定する理由のひとつに、コストメリットが挙げられる。なぜなら、同社サービスは、対応件数に応じて課金される従量課金スタイルだからである。同サービスのメニューは多岐にわたるが、利用しなかったメニューに対しては支払いが発生しない(別途、月額基本料金が発生)。本サービスは、無駄なく効果を最大限に得られるサービスと言える。

【図表:Kaetecの主なサービス】 【図表:Kaetecの主なサービス】 出所:ジェイズ・テクノロジー株式会社

本サービスの主な顧客層は、従業員数50~300人未満の企業で、サービスの性質上、注力業種のようなものはなく、公共系でも採用されているようである。

同社によると、最近は中小企業もIT導入に本腰を入れていると言う。同社は“顧客に喜んでもらうこと”を目標に、サービスを展開していく意向である。(小山博子)

※全文は以下よりご覧いただけます。

https://www.yanoict.com/opinion/show/id/381

2023.05.29

【アナリストオピニオン】変革に向けて動き出す中小企業 ③

チーム制の採用で課題を解消~クロス・ヘッド

クロス・ヘッドが提供する「情シスSAMURAI」は、情報システム部門の人手不足や業務の属人化問題、ルールの不足をコンサルティングとアウトソースの2つの柱で支援し、最適な情シス業務環境へと導く、情シス問題解決に特化したサービスである。顧客ごとに必要なサービスが異なるため、提供メニューを定型化するようなことはせず、顧客の環境を事前に把握し、必要なサービスを柔軟に組み合わせ、個社ごとに提供している。定型化すると、どうしても定型化できない業務が出てきてしまうためであろう。同社の顧客に寄り添う姿勢がうかがえる。

中堅以下の企業では、専任の情シスが不在、一人情シスというケースも多く、DXに取組みたくともその余裕がない企業もある。同社は情シスを担う担当者に事業変革を主導する立場としてDXに取組んでもらえるよう、そのサポートをする考えである。ユーザは本サービスを利用することで、DXに取組む時間の確保や、コストの改善を図ることなどができる。

同社サービスの強みのひとつはチーム制を採用していることである。ユーザが本サービスを利用しても、その先の担当者が一人というのでは、属人化は解消されず、また、その一人が体調不良になった場合、自社システムの運用等に不安が出る。チーム制を採ることで、ユーザはそうした課題を解消でき、経験豊富なエンジニアに安価に相談等もできる。さらに、同社もチーム構成をマネージャと若手とすることで人材育成ができるなど、メリットは多い。同社のこのチームは「xF1T(クロスフィット)」と言い、メンバは、改善も代行もできるスキル・ノウハウを持っている。こうした点を評価し、他社サービスから乗り換えてくる顧客もあるようだ。

本サービスの主な顧客層は従業員数100~500人程度である。サービスの性質上、業種は様々で、ターゲットも定めていないと推測する。顧客の利用の始め方として、最初から全社で利用するケース、スモールスタートのケースがあると見る。

最近目立つ需要のひとつに、セキュリティ関連があると同社は言う。同社は、テクマトリックスのグループ会社である。テクマトリックスはセキュリティに強みを持っており、同社もノウハウ等について共有することもあると思われ、それらも活かし、顧客のニーズに応えていると推測する。

同社は今後、DX(業務改革)に関するコンサルティングにより一層注力する意向を持っており、顧客の競争力向上に貢献していくと考える。(小山博子)

※全文は以下よりご覧いただけます。

https://www.yanoict.com/opinion/show/id/381

2023.05.26

【アナリストオピニオン】変革に向けて動き出す中小企業 ②

心的近さも強みにDX実現を支援~キヤノンシステムアンドサポート

中小企業のデジタル化に対する取組みは進展を続けている。しかし、費用対効果の測定が困難であったり、デジタル化を推進できる人材が不足していたりなど、課題が多い。こうした課題の解決を支援し、顧客企業の競争力を強化するため、キヤノンシステムアンドサポートは2023年4月から「まかせてIT DXシリーズ」を拡充する。

これまで提供してきた「まかせてIT DXシリーズ」の「安心パック」「保守運用サービス」の強みのひとつは、最適なITの選定のみならず、専門的な知識と高度な技術を持った同社エンジニアが、導入だけではなく、日常の運用、トラブル発生時の保守対応までをトータルで支援していることである。利用者からは、本来の業務に集中できるようになった、などの声が挙がっている。また、同社はプリンタ・複合機事業などをコアコンピタンスのひとつにするキヤノンマーケティングジャパングループの一員である。全国に広がるプリンタ・複合機ユーザの運用・保守に対応するため、多くの拠点を持っており(全国約160カ所/47都道府県対応可)、オンライン・リアルの双方で顧客をサポートできることも強みになっている。顔が見える、ということは顧客の信頼・安心にも繋がり、この安心・信頼が“尋ねやすさ”にもなる。同社もこれまで数多くの中小企業の悩みに接してきた経験を活かし、丁寧な説明を意識しているものと推察する。その結果、顧客からも「わかりやすい」と高い評価を得ている。

同社が4月以降、提供するのが「経営支援サービス」「教育支援サービス」である。経営支援サービスには、「コーディネートサービス」「営業戦略策定支援サービス」「SFA支援サービス」といった3種類のメニューがある。DX実現のためには経営層からのコミットメントが必要と言われている。しかし、経営層がその意志を持っているにも関わらず、環境等が足かせになり、推進が困難になっている企業は多い。同社はそうした企業のIT投資策定計画を支援するため、現状を把握し、またその現状と目標とのFit&Gapを行い、ITロードマップの作成や、ITシステムの評価・選定などを支援する。サービスの強みに“尋ねやすさ”があることは前述した通りだが、本サービスでは、経営者専用ヘルプデスクサービスも設けている。顧客と同社に信頼関係があり、経営者に的確な回答ができる知見等があるがゆえに提供できるサービスといえる。

また、教育支援サービスは、セキュリティやITリテラシー、ビジネスマナーなど、従業員に必要なコンテンツをパック化して提供するだけでなく、顧客の状況に合わせた個社向けの研修支援サービスも提供する。パックの内容も顧客にアンケートを取ったり、トレンドにあった見直しを予定していたりなど、常に進化していくと見られる。

これらのサービスの提供によって「まかせてIT DXシリーズ」を拡充する同社は、安定したITインフラの構築はそのままに、新しく経営や教育も支援し、顧客企業が全社的にDXに取組める環境を整え、成功へと導いていく。

なお、これらのサービスの主なターゲットは、従業員数300人以下の企業である。どのような業種・業態の企業にも合うサービスであることから、業種によるターゲットは定めていない。同社はITの計画から運用支援、教育支援まで、まさにワンストップで中小企業の課題に寄り添い、顧客の強みを強化していく意向である。

(小山博子)

※全文は以下よりご覧いただけます。

https://www.yanoict.com/opinion/show/id/381

2023.05.24

【アナリストオピニオン】変革に向けて動き出す中小企業 ①

クラウド・ITアウトソーシング市場に関するレポートを発刊

矢野経済研究所では、2023年3月に『2023 クラウド・ITアウトソーシング市場の現状と展望』を発刊した。需要が高まっているにも関わらず、サービス内容が多岐にわたり、市場の定義を明確に定めることが難しく、レポート内で取り扱えなかった市場がある。それが、中小企業を対象にしたIT業務のITアウトソーシングサービスである。中小企業では専任のIT担当者が不在、IT部門がない、というケースもある。そのため、ITに強い人材が不足し、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進したくともできない状況にある企業が多い。また、そもそもDXを推進する前、デジタル化から着手する必要がある企業も目立つ。

中小企業を対象にしたIT業務のITアウトソーシングサービスで提供されているサービスの内容は、セキュリティやヘルプデスクを含む保守運用サービスやコンサルティングサービスまで、多種多様である。また、ユーザがサービスを利用する目的も、他人に任せられる業務を委託し、コア業務に集中する、属人化を防ぎコスト減を図るなど、様々である。提供内容にコンサルティングがあると言及した。コンサルティングと聞くと大仰に捉えてしまうこともあるが、DXを推進するには何をすれば良いか、そうしたところから相談できる。中小企業にとって敷居が低い、身近に感じられるサービスと言える。

こうしたサービスが増え、また認知も広がり始めたことで、利用者も拡大基調にある。既に中小企業も変革に向けて動き出していることがうかがえる。本稿では、中小企業を対象にしたIT業務のITアウトソーシングサービスを提供する注目企業4社の取り組みについてみてみる。(小山博子)

※全文は以下よりご覧いただけます。

https://www.yanoict.com/opinion/show/id/381

2023.05.22

様々な締めの文化

先日友人と夜パフェを食べに行きました。 夜パフェは、お酒や食事の後の締めに食べるパフェで、北海道の文化だそうです。 とはいっても、都内の夜パフェ専門店は人気で、食後の時間帯に行くと行列に並ぶことになってしまうので、夜ご飯を食べる前に行くこととなりました。 締めといったら、ラーメンが主流なのかなと思っていましたが、その話を他の友人にしたら、その友人曰く沖縄では締めにステーキを食べる文化があるそうです。 パフェ、ラーメン、ステーキ…どれも結構ボリュームがあり、ある意味ほろ酔い気分だからこそ食べられるものなのかなと思いました。今度沖縄に行く機会があれば、飲んだ後の締めステーキにチャレンジしたいものです。(小田沙樹子)

※2023年4月上旬時点の近況報告です

2023.05.19

自家用車の進化

自家用車を買い換えました。以前購入してから4年が経ち、車も4年分進化しているわけですが、何より驚いたのは安全技術の向上を肌で感じたことでした。4年前から自動ブレーキや警告音で障害物を知らせてくれる機能などはあり、十分なレベルではありました。しかし、今回購入した車では、ブザーとともに自動的に車速をコントロールし、よりコンピュータの精度が上がっている気がしました。いかに搭乗者を守るか、というところを意識しており、むしろ事故を起こす方が難しいと言わんばかりの充実ぶりです。車は新モデルが出るたびに価格が上がり、購入を渋っていたところ、担当者からの「これだけの先進技術を詰め込んだら価格は上がる、安全を買うと思えば」という営業トークにまんまと乗っかってしまう私でした。(山内 翔平)

※2023年4月上旬時点の近況報告です

2023.05.17

【銀行が広告業務を提供可能に 銀行法改正③】

銀行の広告業への取組みについては、既に住信ネット銀行が、ユーザーに対して広告での個人情報の利用同意に基づくIDベースでの広告配信を行い、広告主から得られた事業収益の一部を生活者に「データ配当金」として還元する「広告エコシステム事業」の提供を発表するなど、実際に取り組む銀行が出てきている。超低金利下において、銀行は収益悪化に苦しんでいる。近年でも地方銀行は合併が多く行われており、生き残りのための方針を模索している状況と言える。そのような中で今回の銀行法改正において、従来の銀行業務と異なった取組みを比較的自由に行える環境となった。「当該銀行の業務の健全かつ適正な遂行に支障を及ぼさないこと」が条件とされているため、本業の経営悪化を補うレベルでの取組みには疑問が残るが、他行との差別化という点において、銀行に新たな選択肢が生まれたと考えられる。

※全文は以下よりご覧いただけます。

https://www.yanoict.com/opinion/show/id/380

YanoICT(矢野経済研究所ICT・金融ユニット)は、お客様のご要望に合わせたオリジナル調査を無料でプランニングいたします。相談をご希望の方、ご興味をお持ちの方は、こちらからお問い合わせください。

YanoICTサイト全般に関するお問い合わせ、ご質問やご不明点がございましたら、こちらからお問い合わせください。

東京カスタマーセンター

03-5371-6901
03-5371-6970

大阪カスタマーセンター

06-6266-1382
06-6266-1422