矢野経済研究所 ICT・金融ユニットでは、研究員がリレー形式でコラムを執筆しています。 今年度のコラムのテーマは「IT×○○」です。「IT×金融」のFinTechをはじめ、多くの「IT×○○」が誕生しています。 研究員が、今まで耳にしたなかで面白かった「IT×○○」や、あったら面白そうな「IT×○○」について綴ります。 1人目の投稿者はユニット長の忌部です。
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矢野経済研究所はさまざまな分野を調査フィールドにしているが、入社する若手社員に希望を聞くと、悲しいことにITは人気が低い。どうやらその要因は、姿・形が見えにくいことにあるようで、確かに、化粧品や産業機械に比べれば、ERPやクラウドなんてものは、抽象的で掴みどころがなく、論理的で無機質な印象を持たれても不思議ではない。
せめてこの無機質な印象だけでもなんとかならないかと、たまに思うのが、香りである。IT×香りと書いてしまうと、焼き鳥の匂いをITを使って遠隔地で再現するというような話に思われるかもしれないが、そうではない。ITそのものに香りが欲しい、という趣旨である。工場には工場の匂いや香りがあるように、システムから、いかにもそのシステムらしい香りが漂うようなことがあれば、少しは無機質なシステムの印象が和らぐのではないだろうか。スイート製品だと、いろいろな香りが混ざって、気持ち悪くなるかもしれないが…。(忌部佳史)
本展示会では専門技術セミナー(有料)も充実しており、専門の講師の講演を聴講する事が可能で、最新の技術やマーケット動向を知る事が出来る。コネクテッドカー、MaaS(Mobility as a Service)、自動運転/ADAS、EV/FCV(燃料電池車)といった、自動車業界注目のトピックを扱う専門技術セミナーが全80講演(同時開催展除く)開催された。
今回の取材は、「スマートシティ」「車載HMI」「自動運転カーによるシェアリングサービス」等のセミナーについて実施した。
■スマートシティ
トヨタ自動車が「CES2020」にて、東富士工場の跡地で新たにスマートシティを建設することを発表したため、それを受けて今回の講演でもスマートシティにふれる企業が複数あった。
だがどの企業もトヨタ「ウーブン・シティ」や、グーグル「IDEA」のような具体性はなく、「スマートシティ内を走行するモビリティーとはどのようなものになるか」「MaaSの先に見えるスマートシティ」というレベルにとどまっていたのではないか。
■車載HMI
ボッシュでは「スマートシティでのモビリティーとは、個人データ収集とその解析・活用」として、液晶ディスプレイとカメラ、AIからなる革新的なサンバイザー「バーチャルバイザー」をアピールしていた。
■自動運転カーによるシェアリングサービス
RIDECELL社は、当初「2020年までには無人走行車(レベル4以上の自動運転カー)が動いている」といわれていた予測に比べて、現実はかなり遅れてしまっている」というところから話し始めた。
だが「無人走行車が、EVになり、シェアリングサービスで活用されるようになった場合、そこから普及の可能性は広がっていく」という趣旨で述べていた。
今回の展示会、専門技術セミナー講演を通して感じたことは、間違いなく訪れるCASE時代を生き伸びるために、各社が単独でがんばるのではなく、相互に補完関係を築きあげられる相手との企業提携・企業再編に乗り出す具体的な動きであった。
ただし、この世界的な自動車市場減少と、コロナウイルス被害による影響が、大きな重荷となって自動車及び周辺産業にのしかかり、それがCASE時代到来の時期をかなり遅くしてしまうのではないか・・・・・・という危惧がある。
だが、ビジネスは形が整ってから参入したのでは成功しない。「限られる投資をどこに向けるべきなのか」を見すえたうえで、CASEの未来をうまく掴んでほしいと願っている。(森健一郎)
オートモーティブワールド2020~各社の展示状況
■CASE時代サバイバルのための企業再編
日本電産(Nidec。次の写真)はもともと自動車におけるモーター専門メーカーとして、Tier1に納品してきたTier2である。ただし2014年にホンダエレシス(現・日本電産エレシス)を、2019年にオムロンオートモーティブエレクトロニクスを買収。それまでの車載モーターだけの自動車関連事業から、「アクティブセーフティ」や「ボディ電装」「EPS」「電源制御」などの、より大きなユニットベースでの受注が可能となったことで一気に急成長の流れに乗った。さらにCASEにおける「E」の部分、EV車両に搭載されるトラクションモータシステム「E-Axle」を、2019年に中国の自動車メーカー・広州汽車の量産 EV「Aion S」に提供した模様。 同社のモーター専用メーカーから、ユニットベースでのカーエレメーカーへのシフトは、前述したようなM&Aにより実現したといえる。CASEに向けての新機軸は、自社保有技術力だけで実現できるとは限らない。同社のようなM&Aこそがもっとも効率よくCASE時代に適合した部品メーカーになりうる手段といえるのかもしれない。2019年には車載事業を専門とする日本電産オートモーティブを設立した。
企業再編で一気に次世代に向けて動き出したのは日本電産ばかりではない。ケーヒンはもともと本田技研工業のTier1としてパワートレイン、シャシー、エアコンなどの部品を手掛けていたホンダ系列の部品メーカーであった。しかし、2019年に日立製作所と本田技研工業は、ケーヒンを他のホンダ系部品メーカ2社(ショーワ、日信工業)と共に、日立オートモーティブシステムズ(日立AS)と統合化すべく踏み切った。4社の統合により売上高1兆7000億円規模の巨大サプライヤが誕生。また日立グループと本田技研工業との間には強いパイプができた模様。具体的にはCASEにおける「A」の部分、自動運転向け開発のために、IT、ソフトウェア、パワトレ、シャシー、ボディ、ADASという要の部分を一体化できることになったのだ。
CASE時代を前に動いた部品メーカー再編はこればかりではない。
ここ2年の間に国内のTier1らが大きく動き出している。アイシン精機とアイシン・エィ・ダブリュとの経営統合。アルパインとアルプス電気との経営統合。富士通テンのデンソーグループ入り。デンソーとアイシン精機が設立した電動駆動モジュール開発会社「BluE Nexus(ブルーイー ネクサス)」。目立つところだけでもこのように数多い。
さらに再編は国境を越えてカルソニックカンセイと仏マレリの合併、クラリオンの仏フォルシアグループ入り、もある。
CASE対応のためには大きな投資が必要であり、より大きなユニット、より大きなソリューションでのビジネスが求められるようになる。そのための部品メーカー再編が今回の展示の中でも目についた。
■車載ソフトウェアでも進む企業提携・企業再編
CASEを前にした企業再編はハードウェアだけではない。ソフトウェアメーカーにも及んでいる。
CASEでは「C(コネクテッドカー)」はもちろんのこと、「A」「S」「E」の全てがコネクテッドとなり車両側とクラウド側とがつながる事で成立する。そして、クラウド側でのAI解析や、車載側での決済、車載センサの高速AI処理など、ソフトウェア技術が自動車の重要な部分を担うようになっていく。そして、ソフトウェアにおける激烈な競争に打ち勝つためには単独の技術だけでは不足するため、技術提携や企業買収が巻き起こることになる。
今回の展示会場にも、ソフトウェア企業における多くの企業再編の跡が見え隠れしていた。ただしソフトウェアの場合は工場ラインが存在しないため、もう少し自由にゆるやかに企業提携というスタイルが多い印象だ。
次の写真は、検証サービスベンダであるVERISERVE がCASEの「S」であるモビリティーサービスの検証ビジネスに参入したことを表したものである。同社は元々SCSKの子会社として設立され、その後自動車のテスト事業で大きく成長したが、2019年に再びSCSKによるTOBが成立した。
海外からも、思いもかけないITベンダが自動車市場に向けて参入してきた事例がある。下記の写真はマイクロソフトが自社ブースにおいて映していた「MaaS発展に向けた支援策」の一部である。CASEのS(シェアカー。MaaSサービス)を重要視していることは明らかでありながらも、「自らはサービス事業者にも、プラットフォーマーにもならない。」としている。
取り組み内容としては、MaaS版リファレンスアーキテクチャーをパートナー企業と開発して、それを無償提供し、次世代MaaSプラットフォーマーを人材面、技術面で支援していく試みとなる模様。その上で、MaaS分野におけるパートナーとのエコシステムを強化し、自社ビジネスはそこから生み出すということだ。
マイクロソフトは誰もが知るPCのOS「Windows」で1980年代から大きく成長した企業である。OSを中核として、様々なアプリケーションが生まれ、発展し、インターネット関連ビジネスの普及へとつながっていった。
現在、自動車のECUの世界においても、PCの「Windows」や、スマートフォンの「iOS」「Android OS」のように標準化・プラットフォーム化を推進しようという動きが出てきている。そのひとつが欧州から始まったプラットフォーム「Autosar」である。
国内でもAutosar仕様に準拠したソフトウェアプラットフォームを開発・販売している企業がある。前述のSCSKもその1社だ。
また名古屋大学の高田広章教授が中心となって設立したAPTJも同じく、オールジャパンで日本独自のソフトウェアプラットフォームを立ち上げようと、「Julinar SPF」を開発した。2018年から6社のパートナーソフトウェア企業(ヴィッツ、キヤノンITソリューションズ、サニー技研、東海ソフト、富士ソフト、菱電商事)を通して販売している(下記写真)。
デンソーが立ち上げたオーバスでも、AutosarのAP(Adaptive Platform)で用いるサービス指向通信(SOME/IP)をCP(Classic Platform)でも対応できるようにする「AUBIST SOME/IP」のデモンストレーションを披露していた。2020年度内にプロトタイプを提供し、2021年度の正式提供を目指している模様。
オーバスは2016年に設立されたデンソー、イーソル、日本電気通信システムとの合弁会社である。2019年にはデンソーから、パートナーであるイーソルに向けて、出資が行われている。
自社だけの技術力では覚束ない。国内の、海外の、ハードウェアの、そして今後自動車の中核となるITソフトウェアの互いを補えあえる相手を見つけての企業提携・企業再編こそが、CASE時代の自動車産業でのサバイバルに備えるために必要なのだ(森健一郎)。
※:CASE
Connected=つながるクルマ
Autonomous=自律運転
Shared=共有するモビリティ
Electric=電動車・EV
■開催概要
「オートモーティブ ワールド 2020」は、2020年1月15日~17日の3日間、東京ビッグサイトにて開催された。同展示会は「第34回 ネプコン ジャパン」等と同時開催されており、来場者数は単独で38,992名、同時開催展と合計で67,169名となった。自動車関連展示会では世界一の1,017社が出展した。
期間中は展示会とあわせてコネクテッドカー、MaaS、自動運転/ADAS、EV/FCV(燃料電池車)といった、自動車業界注目のトピックを扱う専門技術セミナーが全80講演(同時開催展除く)開催された。今回の講演も満員が相次ぎ、特に基調講演では会場内に聴衆が入りきれず、別会場にて同時ビデオ講演が実施された。
■コロナウイルス感染拡大中も続いているCASE対応
2020年4月現在、コロナウイルス「感染」拡大を防ぐため、多くの展示会やセミナー、講演会が中止・延期となっている。今回のテーマ「オートモーティブ ワールド 2020」はわずかに開催時期が早かったため、講演会は前述したように満員御礼が相次ぐ盛況で取り行われた。現在から考えると夢のような状況に思える。もちろん今後できるだけ早く回復することで、これが当たり前な状況に戻ることを願ってやまない。
自動車産業でもコロナウイルス「感染」の影響は甚大で、世界の多くの自動車工場が生産停止に追い込まれており、これでは販売台数の悪化も避けられない。しかし、注意すべきは、コロナウイルス「感染」以前の2019年から世界の自動車市場は既にダウンしていたということだ。
2019年の世界新車販売台数は9,100万台と対前年比95%程度に減少した。特に中国新車販売台数は2,570万台と対前年比93%に減少した。期待の新興国においても同様である。インドが370万台と対前年比84%。ASEAN5か国でも335万台と対前年比97%。日本・米国・西欧はほぼ横ばい推移だったものの、これからモータリゼーションの盛り上がりが期待されていた新興国が減少したのである。たしかに2019年には米中貿易戦争、中国の自動車不況、英国のEU離脱など、世界経済にマイナス影響を与える多くの出来事があった。
自動車業界関係者からは「コロナウイルスの影響で20年も世界販売台数減少となりそうだ」「目先の自動車が売れなくなってはCASEの未来に思いをはせることもできない」などの声も出てきた。
さらには「販売台数減少がCASE対応によるOEMのコスト増に重くのしかかってきた」「新車販売台数減少にはMaaSシフト(CASEのS。Shared。クルマを買わずにシェアして使用すること)による影響もある」「新車が売れない状況下でOEMがCASE関連スタートアップ企業への投資を引き上げるのではないか」という具合に現状、自動車産業にとってCASEは逆風的な存在となっているのかもしれない。
だが逆に、ここで誰も彼もがと押し寄せてきていたCASEプレーヤが選別され、強い逆風に耐えられる強い企業がわかり、本当のCASEの姿が見えてくるかもしれない。長期的視点で見ればCASEこそは間違いなく10年後、20年後の自動車産業・自動車向けIT産業の目玉となることは今も変わらないのだから。
既に世界の自動車販売が減少化しつつある中で、それがCASEに向けてどの様に影響していくのかを把握し、どうすればその影響下でも自動車産業を成長させていけるかを考える必要がある。
ここではコロナウイルス「感染」直前の「オートモーティブワールド2020」展示会・セミナーにおける各社のCASE関連動向をまとめた。1月開催の展示会を記事にするのにはやや遅れた感があるが、コロナウイルスの影響が収まった時、再びCASEに対する熱い視線が戻ってくるものと考え書いていく。(森健一郎)
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矢野経済研究所の代表取締役社長 水越が明日28日(火)の朝に、モーニングCROSSにコメンテーターとして出演します。ご覧になった方は感想などもお寄せ下さい。
■日時:2020年4月28日(火)午前7:00~8:00(全時間)
■番組名:TOKYO MXテレビ「モーニングCROSS」(毎朝のニュース・情報の生ワイドショー)
http://s.mxtv.jp/morning_cross/
■チャンネル:地上波9チャンネル(091ch)
■出演内容:コメンテーターとして全時間出演
※他の共演者:ちゃんもも◎氏(作家/歌手)
■MC:堀潤氏、宮瀬茉祐子氏
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新型コロナの感染拡大に伴い、外出自粛が続いている。多くの店舗で店頭の売上高が減少している一方で、ECにおける売上高は増加傾向にあるようだ。たとえば、ユナイテッドアローズの2020年3月における売上高は、実店舗では前年同月比61.2%、ネット通販においては前年同月比123.8%となっている。
今回の外出自粛を契機にECに取組む事業者が増え、今後EC化率は一層上昇する可能性があると考える。
EC化の現状は、経済産業省が実施した「平成30年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」に記載されている。この調査によると、2018年の日本国内のBtoC-EC(消費者向け電子商取引)市場規模は18.0兆円(前年比8.96%増)であり、BtoCにおけるEC化率は6.22%(前年比0.43ポイント増)となっている。
https://www.meti.go.jp/press/2019/05/20190516002/20190516002.html
また、EC化が一層進展すれば、ECを中心に決済手段を提供するオンライン決済サービスプロバイダーの市場も拡大していくだろう。アフターコロナの時代における、ECおよびEC関連市場の動向を注視していきたい(井上圭介)。
AI(人工知能)がやがて人間の仕事の多くを代替していくって本当でしょうか。でも、AIにもできない仕事があるのでは?
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2019年、車載IT担当の筆者は10~20年先のCASEばかりを追いかけていたのですが、現実の目の前の世界の新車販売台数ダウンを突き付けられました。そして2020年が明けたら、コロナウイルスによる世界経済ダウンにより、新車販売ばかりでなく、中国における部品生産が滞ることになり、さらに自動車産業に悪影響が出てしまいました。
先ばかり見ていると、足元の石に躓くことがあります。将来の大学入試や、入社試験や、自分の進路ばかり考えていたら、目の前の彼女にふられて何もやる気がしなくなったとか・・・。目の前のアルバイト先で出会った人の影響で、自分の未来が大きく開けたはずなのに、その機会を逸してしまっていたとか・・・。
AIはビッグデータから未来を予測してくれるかもしれませんが、「今今の現実にかぶりつけ」とは教えてくれない。今にかぶりつく(深く立ち入る)ことで開ける未来もあるかもしれないのに……。
50年ほど前の映画で、やせマッチョの中国人空手家がヒモでつながった2本の棒をブンブン振り回して強大な敵に戦いを挑むのですが、彼は強くなる奥義を聞かれてこんな風に答えます。「考えるな。感じるんだ」(イラストあり)
AIにできない仕事のヒントはこの辺りにあるかもしれません。(森 健一郎)
先日、早速ですが山手線の最新駅「高輪ゲートウェイ」に行ってきました。報道で色々斬新な取組がなされていることを見ていたので、開業を楽しみにしておりました。
実際訪れてみると、駅の各所に受付端末としてサイネージが設置されており、駅の案内を音声認識機能付きのAIがしてくれます。
また、構内のあちらこちらにロボットが設置されており、同じく来訪者への案内や不審者がいないかの見回りなども行っています。
何より私が利用したかったのが、構内にある無人コンビニです。天井に設置されたカメラの画像解析で自動でお客と買ったものを紐づけ、お客が商品をもったまま無人のレジに行くと、そこに設置されたディスプレイに自分が棚から取ったものが表示されている仕掛けです。表示されている商品と数に間違いがなければ、そのままSuicaでタッチして店外へという流れです。
残念ながら私は意地悪なので、店内を意味もなくうろうろし、商品を取ったり戻したりして結局ドリンク1本とナッツ1袋の2つのアイテムを購入することにしました。しかし、実際にレジに行ってモニターを見てみると、ナッツを3つ買ったことになっており、またドリンクに関しては認識されていませんでした。
この場合は、3つのナッツの数量を1に変更し、新たにドリンクのバーコードを読ませて認識させるという、正しい処理をお客が自分でしなければなりません。
こういったトラブルに備えて、レジの出口にはサポート役の女性がいて、お客がわからなければ操作を教えてくれるはずなのですが、その方は生憎あまり慣れていらっしゃらなかったようで、認識されていないドリンクのバーコードを読ませる方法がわからず、結局私が教えた形になってしまいました。
商品アイテムや在庫の数も決して多くなく、時折システムのリセット等も必要なようで、通常のコンビニのようにはなかなかうまくはいかないようです。始まったばかりの取組なのでまだまだ課題は多いようですが、日本のお店の未来を感じさせる貴重な体験でした(野間博美)。
AI(人工知能)がやがて人間の仕事の多くを代替していくって本当でしょうか。でも、AIにもできない仕事があるのでは?
おそらくは読者の皆様の職場と同じく、市場調査会社でもコロナウイルスの影響で、Web会議使用頻度が増加しています。それも互換性の問題からか、ビデオ映像のない会議が多くを占めます。音声とプロジェクター表示だけの会議になりますが、1時間程度のミーティングでも、思ったよりどっと疲れることがわかりました。慣れてないせいでしょうか?
テーブルを囲んでのあるプロジェクトの会議の場合、たとえば会議参加者が8人いたとした場合、Aさんがリーダーとして会議を進行していて、Bさんが最も内容的に最も深く関わっていて、Cさんがプロジェクトの経理と根回しをやっていて、Dさんが他部門から聴講と刷り合わせに来ており、EさんはBさんの内容と隣り合う分野に詳しく補完の役目を果たしており、Fさんは同じ内容の欧米の状況に詳しく、Gさんは同じく中国の内容に詳しく、Hさんは期待の新人で勉強のためと世代間ギャップの発言を求められて……という具合いに立場や役割りが分かれます。
通常のテーブルを挟んでの会議の場合、発言した各人の顔と声が一致するので、常に誰が誰に対してモノを言っているかがわかり、「あ、Aさんは今方向性について迷っている」「BさんとGさんは意見の対立をしている」などとわかります。しかし、Web会議ではまず声と顔とを一致させるところから頭を働かせなければなりません。さらに各人がどんな感情をもっているかについても、表情が見えないので、声のトーンや話す速さなどから感情を推測しなくてはなりません。このように頭を余計に使わねばならず、同じ時間でもテーブルごしミーティングの何倍も疲れてしまうようなのです。
顔の表情がわかるビデオ会議はもちろんですが、AR/VR技術(イラストあり)で参加者の全身の動きや視線の方向がアバターで表示されてわかるWeb会議があるといいと思いました。それもPCででき、低価格で、IT弱者にも使いやすく、できれば多言語同時通訳機能付きでほしいです。もしAR/VRが難しいなら、参加している各人の感情をイラストで表現したり、発言回数や時間のカウンターがあったり。これらはウイルス対策として非常に重要であるし、もしかすると、これによってこそITが次の段階にステージアップできるなんてことはないでしょうか。
こうしたWeb会議の活用データ(音声など)を、AIは吸収して、それらをとりまとめた結論を出したり、方法論を出したりできるかもしれません。
しかし、現実にはWeb会議が終わったあと、Fさんが「Bさんはちょっと米国寄りすぎる発言が多くありませんか?」と中国通のGさんに相談したり、Cさんが「とてもこれではコストが採算割れしてしまいます」とAさんに泣きついたり、DさんとFさんの感情がもつれたり、……という「裏会議」が催されていることでしょう。
AIはWeb会議システムに流れなかった「裏会議」を想定して、それまでをデータに流し込んで解析するということはできないでしょう。感情のもつれ、しこりまでを理解できないだろうし。今回は否定され、あるいはWeb会議では発言されなかった「裏会議」の発言の中に、未来を切り開くヒントがあるかもしれず、AIはそれを活用できないでしょう。
AIにできない仕事のヒントはこの辺りにあるかもしれません(森健一郎)。
学生時代の教室を思い浮かべると、黒板の上には学校目標や校歌の歌詞が、黒板の脇には行事予定や給食の献立が壁を埋め尽くすように掲示されていませんでしたか?
最近の小中学校では、教室の前面に掲示物を貼らず、黒板周辺をすっきりさせる取組みが行われています。その理由は、児童・生徒の集中を黒板以外に分散させないため。視界に入る情報を最低限にすることで、黒板の内容に集中できる環境を整備しています。
現在、新型コロナウイルス感染防止の目的から在宅勤務を導入する企業が増えています。私も在宅勤務を始めるにあたり、業務に集中できる環境づくりの一つとして「視界」に着目してみました。
テーブルを壁際に寄せ、仕事に必要なものだけを机上に置くことで、目に映る情報を最低限にしました。つい気になる部屋の汚れやスマホも、視界に入らなければあまり気にならないような…。しばらく続けてみようと思います。
皆さまも集中できる環境づくりとして「視界」に着目してみてはいかがでしょうか?(星 裕樹)
矢野経済研究所では、独自に収集したマーケットデータを1,000円で提供しております。
弊社が発刊する年間約250タイトルのマーケットレポートごとに、一部の内容をまとめたショートレポートです。
マーケットレポートに比べて詳細な内容は掲載されていませんが、その要約版、入門的な情報として活用できる内容となっております。
毎月10~20タイトルのレポートが随時追加されていきますので、是非ご期待ください。
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詳細は下記URLよりご覧いただけます。
https://www.yano.co.jp/shortreport/index.php
矢野経済研究所ICT・金融ユニットでは、研究員が日々ICT関連分野の調査/研究をしています。「平成を振り返って/未来に想いを寄せて」をテーマに、リレーコラム形式でICT・金融ユニットのメンバーが順に綴っていきます。15人目は、5Gやスマートフォン、VRなどの分野を担当している賀川です。
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個人的に数年前に存在を知って以降、本格普及を期待してやまないテクノロジーは「ワイヤレス充電」です。公衆無線LAN(WiFi)と同様、手軽に扱えて無線で充電が可能な技術が実現すれば、世の中にある「バッテリー問題」の多くが解消されるだけでなく新しい考え方の機器やビジネスが生まれてくるからです。
…とは言え、現状は「おくだけ充電」に代表されるQiがせいぜいで、真のワイヤレス化は技術面をはじめとして多くの課題を抱えています。特に電磁波や人体への影響も考慮せねばなりません。
一時期の盛り上がりと比べて大きくトーンダウンしてしまった「ワイヤレス充電」ですが、その前段として次世代バッテリーをはじめとする電気をより効率的に利用する様々な仕組みが具現化していくのではないでしょうか?(賀川勝)
矢野経済研究所ICT・金融ユニットでは、研究員が日々ICT関連分野の調査/研究をしています。「平成を振り返って/未来に想いを寄せて」をテーマに、リレーコラム形式でICT・金融ユニットのメンバーが順に綴っていきます。15人目は、5Gやスマートフォン、VRなどの分野を担当している賀川です。
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現在ではとても信じられない事ですが、私が入社した2000年頃の移動体通信サービスはNTTドコモの「iモード」に代表されるモバイルインターネットサービスが急速に普及し始めた頃で、通信速度は最大64kps(cdmaOne)また固定網はISDN方式64kbps定額サービスが主流でEコマースが普及し始めた時期でもありました。
そんな当時、私が取り組んだある調査のテーマが「モバイルEコマースの可能性」でした。当時は通信環境がプアで、しかも携帯電話(ガラケー)のモノクロ画面で買い物をする行為が本当に普及するのか?懐疑的な目で見ていた人が主流でした。
しかし、調査を進めてみると当時既にモバイルEコマースの市場は急速に拡大しており、特に「チケット」「アクセサリ」「CD・書籍」を販売する事業者は確かな手応えを掴んでいました。様々な業界を調査したところ、出てくる証言はポジティブなものばかりで、課題として挙げられた事象についても楽観的でした。
「市場の将来性」は、他の調査に類をみないほどポジティブな内容で結んでおり、そういった点でも強く印象に残りました(賀川勝)。
矢野経済研究所の代表取締役社長 水越が明日2日(木)の朝に、モーニングCROSSにコメンテーターとして出演します。ご覧になった方は感想などもお寄せ下さい。
■日時:2020年4月2日(木)午前7:00~8:00(全時間)
■番組名:TOKYO MXテレビ「モーニングCROSS」(毎朝のニュース・情報の生ワイドショー)
http://s.mxtv.jp/morning_cross/
■チャンネル:地上波9チャンネル(091ch)
■出演内容:コメンテーターとして全時間出演
※他の共演者:調整中
■MC:堀潤氏、宮瀬茉祐子氏
2020年3月にチューリッヒ保険および広島大学発ベンチャーのミルテル社が業務提携、乳がんリスクの早期発見を可能とする乳がんリスク検査「乳がん ミアテスト®」を付帯した保険商品「がん保険 ミエルケア®」を発表した。
従来、厚労省の指針でマンモグラフィー検診は40歳以上の女性を対象としてきたが、ミルテルの提供するミアテストでは、6ccの採血で診断でき、40歳以下での早期発見が可能とされている。今回、チューリッヒ保険と協業することで、毎年1回、追加の費用負担なしで提携医療機関にて受けられるという。
実際に同テストで高リスク判定が出た際には、提携医療機関を案内、診療や画像診断を受けられるほか、実際に「疑いあり」の場合には精密検査などを通じて罹患の有無を確認、早期治療に着手できるとしている。
こうした診断~早期治療、保険の支払まで一貫してカバーした疾病管理プログラムや、健康増進型保険は画期的な保険商品である反面、販売チャネルの確保も含めて苦労しているのが実情。直販チャネルや代理店チャネルなど、どのようなチャネル戦略を展開していくのか注目したいところである。(山口)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000011.000042390.html
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【ご参考】「生命保険会社におけるInsurTech市場の実態と展望 2019」
矢野経済研究所では、企業様からのご依頼に基づき、オリジナルの市場調査の業務も行っております。
弊社の既存レポートでは知りたい内容が充分に満たせない、単なる調査結果だけではなくコンサルテーションも頼みたい、といった要望にも対応いたします。
HPやメール、お電話等でご相談頂ければ、担当者からご連絡させて頂きます。費用の見積もりまでなら無料で対応いたしますので、市場データの収集やコンサルティングなどでお困りの方は是非お気軽にご相談ください。
詳細は、下記をご覧ください。
http://www.yanoict.com/service/service_e
両社の実践では、「ABW(Activity Based Working)」のワークスタイルであることが共通している。ABWとは、従業員が業務内容に合わせて労働場所を自由に選択する働き方であり、オランダのコンサルティング企業が1990年代から提唱し、日本でも導入が進み始めている。
ABWのメリットの一つに生産性の向上が挙げられる。業務内容に応じて適した空間を選択できるため、従業員は各業務を最も効率の良い状態で進められる。日本マイクロソフトもSCSKも、一人で集中できるスペース、少人数で打ち合わせできるスペース、リラックスできるスペースなど多くの空間を設け、従業員が自律的に選択できる環境が整備されている。
働き方改革の文脈では、法規制等の影響から総労働時間の削減が注目されがちである。しかし、最も重要な視点は、限られた時間の中で最大限の能力を発揮できること、つまり高い生産性である。両社は、オフィス環境の側面からアプローチを実施し、従業員の生産性向上に寄与している。
日本の時間当たり労働生産性(就業1時間当たり付加価値)は、46.8ドルで、OCED加盟国36か国中21位、主要先進7か国では最下位である※2。働き方改革に取り組む企業が増加する中で、総労働時間の削減だけでなく一人ひとりの生産性に着目し、従業員が最大限の能力を発揮できる環境づくりが求められる(星裕樹)。
※2:公益財団法人日本生産性本部「労働生産性の国際比較2019」(2019年12月)
全文は以下よりご覧いただけます
SCSKでは2009年当時の社長が現場に危機感を抱いたことが働き方改革推進のきっかけだった。そこからトップダウンで労働環境の改善に向けた数々の取り組みが行われ、現在では働き方改革先進企業の1社となっている。同社では、働き方改革の3つの柱として「スマートワーク・チャレンジ」「健康わくわくマイレージ」「どこでもWORK」を実施してきた。
■スマートワーク・チャレンジで労働環境を改善
2013年4月に、月間平均残業時間を20時間以内に削減し、年次有給休暇取得日数を20日、つまり100%取得させる取り組みを実施した。2008年時点での平均残業時間は35.3時間、有給休暇取得日数は13日だった。残業時間の削減で浮いた残業代を社員に全額還元させる施策や、有給休暇の取得推進に向けた全社一斉休暇取得日・取得奨励日の設定など、トップダウンでの施策が行われた。その結果、2017年度実績で平均残業時間が16.4時間、年次有給休暇日数が18.8日となり、労働環境が大幅に改善された。2015年7月からは固定残業手当の制度を導入。残業の有無に関わらず、20時間分の残業代を予め支給することで、残業時間が短い方がインセンティブのある仕組みとした。
■社員一人ひとりの健康が資本
健康な状態で100%の能力を発揮できている状況が重要という考え方から、2015年に「健康わくわくマイレージ」の取り組みを開始した。朝食やウォーキングなどの「行動」と健康診断の「結果」に対し、一定基準を達成した社員にインセンティブを支給する制度で、従業員に対し健康意識の向上を働きかけた。他にも、社員専用の診療所「SCSKクリニック」や、安価でマッサージが受けられるリラクゼーションルームなど、社員の健康に関する施策がいくつも行われている。
■どこでもWORKで柔軟な働き方を
2015年10月より「どこでもWORK」の施策の一つとして、テレワークを導入している。当初はスモールスタートで対象社員や利用回数を限定して実施したが、2017年8月より全社員が月8回まで利用できる制度となった。テレワークの際は自前のPCを活用し、会社で使用しているPCは会社から持ち出さない。自宅以外では、サテライトオフィスを活用することも可能である。どこでもWORKの普及により、産休・育休明けの社員が復帰しやすい環境になったという。
■フリーアドレスでの課題と工夫
ほぼ全社員がフリーアドレスに適用している。フリーアドレスに移行するにあたり、最も苦労したのは紙を捨てることだった。一人に割り当てられたキャビネットは決して大きくなく、必要最小限の荷物にする必要があったため、資料をPDF化するなどして対応した。また、フリーアドレスでは各社員の居場所がわからないため、オフィスに掲示している座席表に名前が記載されたマグネットを置いたり、部門によっては、無線タグを着用し、ブラウザ上で互いの在席状況を確認できるようにしたりしている。
■生産性向上に繋がるオフィスづくり
社員一人ひとりの生産性向上を目的とし、オフィス環境を整備している。パーテーションで囲まれた集中席は、資料作成など集中したい時に活用する。また、リフレッシュする空間として社内にカフェがある。頭の中を整理したい時やリラックスしたい時に使用し、カフェ内では打ち合わせなどの仕事をするのが禁止となっている。
■最高のパフォーマンスに繋がる環境整備
SCSKでは、数々の施策をトップダウンで着実に実行してきた。働き方改革推進の根底にあるのは、同社が掲げる「社員が心身の健康を保ち、仕事にやりがいを持ち、最高のパフォーマンスを発揮してこそ、お客様の喜びと感動につながる最高のサービスができる。」という考えである。
長時間労働では社員の心身は害され、劣悪なオフィス環境では最高のパフォーマンスを発揮できない。高い生産性を発揮できる環境を制度と設備の両面で整備したからこそ、SCSKは残業時間の削減と増収増益を両立させている。
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2019年4月から「働き方改革関連法」が順次施行され、時間外労働の制限や年次有給休暇の取得など、各企業が法規制への対応に追われた。2020年4月からは、時間外労働の制限が中小企業にも適用予定であり、社内制度の見直しや新たなツールの導入など、働き方改革の裾野は更に拡大していくだろう。
また、直近では新型コロナウイルス感染症の影響に伴い、大手企業を中心としてテレワークを実施するとの報道が相次いだ。世間では大きな注目を集めており、テレワークを中心として働き方改革の取り組みが加速する可能性も考えられる。
今回は、ITベンダ4社が実践する働き方改革の事例を「制度」と「設備」の2軸で紹介する。情報通信業のテレワーク利用率は、39.9%(2018年)と全業種の中で最も高く、また、前年比8.8%増と取り組み状況が進展している※1。その情報通信業の中でも先進的な取り組みを行う各社は働き方改革にどう取り組み、どのような成果を上げているのだろうか。前編では、日本マイクロソフトとSCSKの2社を紹介する。
※1:総務省「平成30年通信利用動向調査」(2019年5月)
日本マイクロソフトは、2007年の在宅勤務制度の導入以降、10年以上に渡り、働き方改革の取り組みを継続している。Office 365、TeamsやSurfaceなどの自社製品・ソリューションを活用しながら、最適な働き方をトライアンドエラーで模索し、現在のスタイルを作り上げてきた。
■最大のインパクトは固定電話の廃止
働き方改革を本格的に実践し始めた初期段階で、最もインパクトが大きかったのが、2011年2月に現在の品川オフィスへの移転を機に実施した固定電話の廃止だったという。「場所」の制約が一切なくなったため、テレワークやフリーアドレスの普及に大きく貢献した。現在はインターネット回線を使用し、Microsoft Teamsを通じてPCやスマートフォンに直接架電されるようにしている。
■テレワーク普及までの長い道のり
2007年から在宅勤務制度を導入していたが、当時活用する社員は多くなかった。転機となったのは、2011年3月の東日本大震災。1週間の出社停止となり、必然的に在宅勤務を行う状況になった。Office 365やSkype for Business(現在のMicrosoft Teams)を活用し、在宅勤務で業務や会議を遂行できたことで、従業員の中でテレワークを活用する機運が高まった。
ただ、その後すぐにテレワークが普及した訳ではない。2012年3月に「テレワークの日」を1日設け、全社員が出社せずに働く日とした。2013年はそれを3日に増やし、2014年からは「テレワーク週間」として賛同する複数企業とテレワークを実施した。
そして、2016年5月に就業規則を変更。「フレキシブルワーク」と称してテレワークの利用頻度・期間・場所の制限を撤廃し、利用申請も不要にした。現在では、社員のほぼ100%がテレワークを活用している。会議は「オンライン+Face-to-Face」もしくは「オンラインのみ」の2種類が中心で、オフィスへの出社を前提とした会議のセッティングは行わない。
■テレワークの永遠の課題とは
テレワークの制限がないため、利用頻度は個人のスタンスに起因する。難しいのは、マネージャがFace-to-Faceのコミュニケーションを好む場合、部下のスタンスとは関係なしに部下がオフィス勤務中心になることである。会社としては、個人と組織がポテンシャルを最大限発揮できることが重要であるため、テレワークを推奨する訳でもオフィス勤務を否定する訳でもない。個人の裁量に委ねられる部分は永遠の課題である。
■フリーアドレスの運用で見えてきたこと
フリーアドレスは、社員の約8割に適用している。業務上、専用デバイス/ソフトウェアを活用する必要性が高い部門は固定席となっている。
フリーアドレスを運用する目的は、コラボレーションの促進とコミュニケーションの活発化である。ただ、各自が効率的な働き方を模索する中で、荷物の出し入れが便利なロッカー近くの席が定番席になっていたり、在席確認がしやすいため部署で近くに集まったり、といった傾向が出てきている。フリーアドレスを運用する中で最適化してきた結果とはいえ、本来の目的から離れてきている。このような状況を一度リフレッシュさせるため、2020年実施のオフィスリノベーションを機にフリーアドレスの席を作り替える予定である。
■テレワークが普及する中でオフィスの意義は?
働く場所が多様化する中で、オフィスの存在意義、オフィスに出社する意味は何であろうか。同社では、(1)Face-to-Faceでコラボレーションするため、(2)集中して仕事するため、の2点を挙げ、それらを実現できるオフィス環境を整備している。
電話やテレビ会議で活用する「フォンブース」や3~4人で会議ができる「フォーカスルーム」、他にも「ミーティングルーム」や「ファミレスブース」などのスペースが設けられているが、全スペースに電話会議用のディスプレイとホワイトボードが用意されている点が共通している。設備条件に左右されず、人数や目的、気分に応じて自由にスペースを選択できるようになっている。
品川本社の19階には、全社員に関係する設備が集められた「ワンマイクロソフトフロア」がある。社員食堂やヘルプデスク機能、社内イベント用セミナールーム、ピクニックエリアなどが設けられている。社員食堂の飲食スペースを仕事のデスクとして活用したり、ソファスペースで仮眠を取ったりと各自が自由に利用している。
■トライアンドエラーで最適化
日本マイクロソフトでは、働き方改革の取り組みを開始してから10年以上が経過した。様々な取り組みを実践して定着させてきた同社だが、トライアンドエラーの繰り返しを経て現在の制度や設備となっている。ただ、これが完成形ではなく、同社では今後も個人と組織のポテンシャルを最大限発揮できる環境づくりを継続する。そして、自社実践の経験や学びを顧客と共有し、同社の掲げる「ワークスタイルイノベーション」を推進していく(星裕樹)。
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矢野経済研究所ICT・金融ユニットでは、研究員が日々ICT関連分野の調査/研究をしています。2019年度は「平成を振り返って/未来に想いを寄せて」をテーマに、リレーコラム形式でICT・金融ユニットのメンバーが順に綴っていきます。14人目は、上海現地法人での勤務経験があり、ドローンなどの分野を担当する古舘です。
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多くの企業が参加することで開発競争が進み、テクノロジーの進化が早まるのに加えて、さらなるイノベーションも生まれるでしょう。上記のジョークのような25ドルではタイヤすら買えませんのでそこまでは無理にしても、価格も下がるかもしれません。機能満載でむしろ高価格になる可能性の方が高いでしょうが。
テスラでは、最近サモン(召喚)機能の強化を発表しました。目で見える範囲であれば、スマホへのワンタップで自分のいる場所に呼び寄せることができるとのこと。
EVに限らず、自動車がコネクテッドになり自動化が進むことで、ますます便利になることでしょう。自動車メーカーの計画では、令和の早い時期に完全自動運転車が登場する予定です。眠い早朝や遠出して疲れた帰り道に自動運転で移動できるような時代が早く来て欲しいと願っています。ただし、自動運転車は価格が高すぎて自分では所有できなくなるのかもしれませんが(古舘渉)。
矢野経済研究所ICT・金融ユニットでは、研究員が日々ICT関連分野の調査/研究をしています。2019年度は「平成を振り返って/未来に想いを寄せて」をテーマに、リレーコラム形式でICT・金融ユニットのメンバーが順に綴っていきます。14人目は、上海現地法人での勤務経験があり、ドローンなどの分野を担当する古舘です。
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平成は、Windows 95をはじめとして急速にIT化が一気に進んだ時代でした。
かつて、マイクロソフトのビルゲイツが、「もし、GMがコンピューター業界のような技術開発競争の中にいれば、自動車は1台25ドルでリッター100㎞走るでしょう」と言ったのに対して、GMは、「もしマイクロソフトが自動車を作ったら、頻繁に『不明なエラー』で止って、ドア、シフトレバー、アンテナを同時に触って再起動しなくてはならなくなるだろう」と反論したというジョークがありました。
米国産業の象徴的な存在であったそのGMが経営破綻し、自動車産業はもはや成熟を通り過ぎたと思われたときにテスラが最初の量産電動車(EV)であるモデルSを発表しました。
GoogleやAppleの自動運転自動車開発など、IT企業による自動車が実現しそうな雰囲気すらあります。そして、掃除機で有名なダイソンもEVを計画していると言います(古舘渉)。
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