矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

デイリーコラム


2025.07.01

NTTデータ経営研究所、「心の健康」投資拡大に向け、共同事業体を設立

2025年6月5日にNTTデータ経営研究所、シード・プランニングは、産官学のステークホルダーと共に「心の健康」投資拡大に向けた共同事業体の設立を支援することを発表した。共同事業体は2025年7月に一般社団法人として設立される予定になっている。共同事業体は、企業が直面する人や組織の課題を可視化や「心の健康」投資の意義・価値の啓発に取り組む。また、「心の健康」に係るサービスについて効果に関する根拠の蓄積や品質に関する情報開示の促進を目指す。

 

https://www.nttdata-strategy.com/newsrelease/250605/

 

現在、企業が従業員向けにストレスチェックを実施するのは一般化している。では、企業の「心の健康」投資は十分なのかというと疑問である。しばしば学生時代の友人に会うが、精神疾患による休職や退職は珍しくなく、企業における十分な対策が取れていないように感じる。リリースにもある通り、ストレスチェックを実施している企業は増えたもののコンプライアンス上の取組に留まっているケースは多い。そうした取り組みだけでは従業員の心の不調を予防できるとは思えず、結果として精神疾患患者の増加につながっているように感じる。
近年では従業員の心の健康の管理にAIやデータ分析を活用するサービスが増えている。投資に積極的な企業はこうしたサービスも利用しているのだろう。しかし、心の状態を管理する点において具体的な効果を測ることは難しく、投資対効果が示しにくいのが課題である。
人口減少により、従業員不足が深刻化している昨今において企業が「心の健康」投資をしていくことは必須になる。まずは取り組みが不十分な企業への啓発が求められる。加えて、今回の共同事業体の活動のように単なる投資ではなく、投資効果を裏付ける根拠の蓄積や品質情報の公開を進める意義は今後さらに高まっていくと見込まれる。

2025.06.30

「みんなの銀行のフルクラウド型銀行システム、三菱UFJ銀行へ初の外部提供が決定」

みんなの銀行は5月27日、同行のフルクラウド型銀行システムが三菱UFJ銀行が新設するデジタルバンクの基幹システムに採用されたことを発表した。このシステムは、みんなの銀行の基幹システムを開発・運営するふくおかフィナンシャルグループ傘下のゼロバンク・デザインファクトリーとアクセンチュアによって開発された、Google Cloud 上で稼働するフルクラウド型の銀行システムである。デジタル専業銀行であるみんなの銀行向けに開発したものをベースとしており、2022年より国内外の金融機関および新たに銀行サービスの導入を目指す非金融事業者に向けて提供を開始している。

 

https://corporate.minna-no-ginko.com/information/corporate/2025/05/27/687/

 

みんなの銀行はデジタルネイティブ世代をターゲットとし、スマホアプリで完結する銀行サービスを提供している。スマホアプリ等のデジタル起点での金融サービス提供には各金融機関が注力しており、本システムへの関心は高いだろう。近年BaaSによる非金融事業者の金融事業への参入が増加しており、今後の広がりを期待したい。

2025.06.27

【発刊裏話】「2025 PLM市場の実態と展望 ~製造業エンジニアリング領域を中心としたデータソリューション~」

今回発刊したレポートは、リニューアルに伴って対象ソリューションを見直しており、よりエンジニアリングチェーンにおけるデータ活用に主眼を置いて調査を行っています。そのため、これまでとは異なる切り口での本文や企業個票に仕上がりました。

CAD/CAM/CAEツール等で生まれたデータを一元管理し流通させることは、単なるデジタル化にとどまらないモノづくりの高度化、つまりDXを推進するために重要なステップです。ただし、PLMの必要性は認識されている一方で、実装が難しく思うようにプロジェクトが進まない実態もあるようです。

この状況をどのように打破できるのか。加えて、モノづくりの高度化実現にあとどれくらいの猶予が残されているのか。それはIT技術が急速に進展する中で、あるいは数年のスパンなのかもしれません。今回の取材でも、ベンダ各社の意欲的な姿勢が印象的でした。ベンダ・ユーザの取組が奏功し、製造業がこれまで以上に発展した近未来の到来が今から楽しみです。(佐藤 祥瑚)

2025.06.26

【アナリスト便り】「2025 PLM市場の実態と展望 ~製造業エンジニアリング領域を中心としたデータソリューション~」を発刊

2025年6月25日に「2025 PLM市場の実態と展望 ~製造業エンジニアリング領域を中心としたデータソリューション~」を発刊しました。
本レポートは、これまで長年発刊している「PLM市場の実態と展望」のリニューアル更新版です。

 

PLM/PDMおよびビューア/DMUソリューションからなるPLM市場は、引き続き拡大しております。
DXの認知やデータ利活用の意識が広く普及したことで、PLMソリューションが改めて注目されており、ベンダ・ユーザ各社において積極的な取組が進んでいるようです。
また今回の取材では、PLMソリューションにおけるAI・生成AIの組込みが特に大きなトピックでした。PLMソリューションとしてどのように生成AIを活用するのが良いか、ベンダによる検討を経て、機能に落とし込まれ実運用するフェーズに入っています。

 

本レポートでは、PLM市場の現況および将来展望をエンジニアリングデータの流通・活用を軸に分析しました。ぜひ、マーケット研究や事業戦略の検討、製品選定にお役立てください。(佐藤 祥瑚)

2025.06.25

「セーフィー、神奈川県藤沢市において駅前広場の再整備に関する検討材料を提供」

セーフィーは2024年10月1日~11月2日に藤沢市においてウェアラブルクラウドカメラ「Safie Pocket2」と、映像解析AIを融合した調査サポートサービス「Safie Survey」を活用した実証実験を実施した。実証実験では、歩行者・車両の滞留や通行量を定量可視化した。これにより、交通量や人流を中心とした駅前の利用状況をデータ化し、駅前再整備の実現と賑わい創出の促進に必要な情報提供を行ったという。

 

https://safie.co.jp/news/4167/

 

スマートシティ事業において人流データの活用が掲げられるケースは多い。本実証実験のような日々の滞留状況を把握する取り組みだけでなく、イベント開催時に混雑状況を明らかにすることで訪問客が快適に楽しめるようするといった取り組みもある。
カメラやセンサーを設置するだけでデータを収集できるため、比較的取り組みやすい点が強みである。一方、そのデータをどう活用するかは課題になりやすい。「駅前の広場に人が集まる傾向がある」「バス停からデパートに向かう人が多いようである」、こうした結果かた新たな施策を生み出すというのは容易ではない。
技術進歩によって、様々なデータを収集できるようになった。今後はデータ活用まで含めた事業が重要になっていく。(今野 慧佑)

2025.06.24

「Q-STARとPlug and Playの量子スタートアップ向けアクセラレータープログラム、一部支援に疑問あり」

一般社団法人量子技術による新産業創出協議会(略称Q-STAR、会員数:114社)とPlug and Play Japanは、日本国内の量子技術に関連するスタートアップ育成を目的とした新たなアクセラレータープログラムを共同で開始すると発表した。
両者は、量子分野のエコシステム強化すべく、国内外の量子スタートアップ向けに資金調達や事業開発、パートナー連携の面から事業拡大支援を実施。また、スタートアップの成長に必要なVCとの接点やQ-STARの会員である大手企業とのビジネスマッチング等を通じて、量子関連スタートアップの成長を後押しするとしている。

https://qstar.jp/archives/7403
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本リリースに触れる前に簡単に現状を振り返っておこう。現在、量子コンピュータ領域は、ハードウェアについて、超電導やイオントラップ、中性子をはじめ、さまざまな方式間で開発競争真っ只中。使い手であるユーザー企業による活用事例として、直近では2025年3月にコーセーがFTQC(Fault-Tolerant Quantum Computer)と思われる量子コンピュータを活用しクレンジング美容液を発売するなどの事例はあるものの、大半はPoCに留まる。
他方、ソフトウェア面では、ハードウェアの方向性が不透明である以上、量子化学や量子金融、量子機械学習をはじめ、量子コンピュータを活用したソフトウェアの開発は進みずらく、一部の企業を除き日本に限らずグローバルでも量子ソフトウェアに関するスタートアップの動きは鈍いのが実情だ。

さて、本リリースについて、評価したい点と疑問符が残る点がある。まず評価したい点として、資金調達がある。先述したように不透明な状況を量子コンピュータ関連のスタートアップが勝ち残る上では、研究開発に際して莫大な調達が必要となる。
資金調達を巡っては、日本において技術評価できるVCは非常に限られており、政府や研究機関と連携したQ-STARのような存在がVCと連携し資金調達を担うことが期待される点で本取り組みを評価したい。

次に、気になる点として事業開発に係る支援がある。ハードウェアの方向性が不透明である以上、ユーザー企業側としてはPoCに留めるのが通常であり、まだまだ多くの企業は量子コンピュータの使い道について考えあぐねているのが実態であろう。ユーザー企業の足が重い状況において、実効性のある事業開発支援ができるかは疑問符が残る。
そうした意味では、個人的にはスタートアップの資金調達支援と併せて、「そもそもどのような業務において量子コンピュータが利用できるのか」を含めた利用環境づくりを進めていく必要があるとみる。例えば、環境構築に向けてQ-STAR内でのアイデアソンやハッカソンなど、ユーザー企業における活用探索に向けた取り組みも並行して実施し、本リリースにあるビジネスマッチングに繋げていくといった事業開発支援が必要ではないだろうか。(
山口 泰裕)

2025.06.23

「発注元企業から情報セキュリティ要請を受けたのは1割程度 ~IPA 中小企業の情報セキュリティ実態を調査」

2025年5月27日 IPAは「2024年度 中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査」報告書を公表した。
https://www.ipa.go.jp/pressrelease/2025/press20250527.html

 

中身はこれから目を通すが、ポイントを眺めると、中小企業においても基本的なセキュリティ対策(OSの最新化など))はある程度定着していることがうかがえるとしている。一方で、ルールの策定や体制など組織的に取り組む必要のあるセキュリティ対策は進んでいないとする。

 

また現状、発注元企業から情報セキュリティに関する要請を受けた経験がある企業は1割強程度であり、その内容は、8割が「秘密保持のための措置」だとする。このあたり、業種によって発注元企業の”睨み”の強さは異なるだろうが、意外と少ない印象だ。

 

当社のIT投資動向調査でも、近年、セキュリティ周りへのユーザ投資は増加傾向にあることが分かっている。マーケットとしてのITセキュリティ分野も調査を強化すべく準備していきたい(忌部佳史)

2025.06.20

「商用移動通信電波とAI解析による屋外人流推定を、NTTと上智大学が共同実証」

https://group.ntt/jp/newsrelease/2025/05/26/250526a.html

 

NTTと上智大学が、商用移動通信の電波に生じる微細な変動を利用し、屋外の通行人数を推定する実証に成功した。本技術は、次世代通信規格である6Gでの導入が期待される「通信とセンシングの統合技術(ISAC:Integrated Sensing and Communication)」の有効性を裏付ける成果として評価される。ISACは、カメラや専用センサを必要とせず、プライバシーに配慮した非接触型センシングを実現でき、夜間や遮蔽物が多い環境でも対象を撮影せずセンシングが可能である点も特長である。

 

これまで、通行人数の把握にはカメラや専用センサの導入が不可欠であったが、本研究では移動通信基地局から定期的に送信される同期信号(基地局が端末に対して送信する制御信号であり、通信開始時に端末側の時刻と周波数を基地局に合わせるための目印となる電波)を活用することで、センサ機器を用いずに通信用の電波の伝搬情報を利用し人数情報を取得できる可能性を示した。

 

本実証は、上智大学四谷キャンパスの4G基地局から送信される電波を対象とし、受信信号強度(RSSI:Received Signal Strength Indicator)およびチャネル状態情報(CSI:Channel State Information)の変化を解析することで、通行人数を推定する手法で実施された。

 

RSSIは電波の強度のみを計測する単純な指標であり、処理負荷が小さく、1秒あたり約100回の測定が可能であることから、時間変化の把握に適している。一方、CSIは周波数帯域別およびアンテナ間の振幅や位相の情報を詳細に含んでおり、豊富な空間情報を提供できるが、データが高次元かつ処理が複雑なため、1秒あたり約1回の測定にとどまる。本実証では、これらの2種類の信号の特性を相補的に活用した。また、受信信号強度とチャネル状態情報を深層学習によるAI解析を通じて時間特徴と空間特徴を抽出し人数推定を行った。さらに、屋外環境においては風や障害物など外的要因の影響を受けやすいため、データ拡張技術を導入することで過学習を防止し、汎化性能の向上を図った。

 

本実証は、既存の移動通信インフラそのものをセンシング装置として活用できる可能性を示したといえる。NTTは、2030年頃の6G商用化を目指し、ISACの早期実用化に向けた技術開発を継続しながら、その成果を3GPP(国際移動通信標準化プロジェクト)に提案し6GでのISAC実用化を進めている。今後、6Gが本格導入される前に、4Gや5Gネットワークを基盤とする生活密着型の無線センシング技術としての応用展開が期待される。(曺 銀瑚)

2025.06.19

「衛星データで災害対応を加速:『日本版災害チャータ』に関する共同研究契約を締結 」

防災科学技術研究所、富士通、衛星データサービス企画、三菱電機の4者は、内閣府と企業が協力し衛星データを活用した災害対処を進める「日本版災害チャータ」の実運用スキーム高度化に向けた共同研究契約を、2025年5月15日に締結した。

「日本版災害チャータ」は、災害発生時に、日本および海外の地球観測衛星を活用して被災地を迅速に観測し、災害対応機関や自治体、民間企業などの要請に応じて解析データを提供する枠組みである。内閣府と企業が連携してこの枠組みによる情報提供サービスの開始を目指しており、実現すれば、ユーザーは被災状況を早期に把握し、迅速な初動対応や効率的な復旧・復興が可能となる。

0522-b.pdf

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本共同研究は、官民連携により、24時間365日体制での衛星データ活用と多様なデータ解析の加速を図る取組である。自然災害の頻発・激甚化が進む日本において、広域災害時の迅速な状況把握は極めて重要だ。

私は日ごろ保険をテーマにしたレポートを執筆しているため、今回はあえて「災害×衛星データ活用」という観点から、保険会社の取組事例を紹介したい。保険業界では、大手損害保険会社を中心に、衛星画像を活用して災害状況を把握し、保険金支払いの迅速化を図る動きがすでに始まっている。

このように、衛星データを活用した迅速な災害状況の把握は、自治体や公共機関にとどまらず、保険会社をはじめとする民間企業にとっても極めて重要な情報といえる。本取組が社会実装へとつながり、実際の災害対応に貢献することを期待したい。

2025.06.18

「NEC、セブン‐イレブンの店舗業務を効率化および高度化する次世代店舗システムを構築」

セブン‐イレブンが推進する次世代店舗システム構築において、店舗業務の効率化および高度化を目指す本格的な変革の中核を成しているのが、NECの価値創造モデル「BluStellar(ブルーステラ)」である。

 

https://jpn.nec.com/press/202505/20250522_01.html

 

従来のSIerとしての枠を超え、顧客に本質的な価値を提供する“Value Driver”へと進化するNECの戦略的姿勢が、本プロジェクトに色濃く表れている。アプリケーションからインフラ、エッジ端末、運用管理までをEnd to Endで包括することで、現場課題に即したシステム刷新を実現。特にGoogle Cloudをベースとしたフルクラウドアーキテクチャの採用により、高い拡張性と柔軟性を備えたシステム基盤が構築されている点は注目に値する。

 

なかでも、NECが強みとする顔認証技術の導入は、セキュリティと利便性の両立を図る象徴的な取組みである。全国の約40万人にのぼる従業員が、非接触かつ高精度な認証を通じて業務へスムーズにアクセスできるようになったことは、店舗オペレーション全体の生産性向上にも寄与する。

 

また、ServiceNowを用いた統合運用管理体制の構築により、マルチベンダー環境下でもシステムの一元的なマネジメントが可能となった点も評価できる。これにより、コールセンターを含む運用プロセスの効率化と可視化が進み、トラブル対応やメンテナンスの高度化にもつながっている。

 

NECとセブン‐イレブンの協業は、単なるIT導入にとどまらず、リテールビジネスの構造変革を見据えた先進的な取り組みとなっている。今後の展開に引き続き注目していきたい。

2025.06.17

「政府は地方創生2.0の基本構想骨子案を公表」

政府は、地方創生2.0の基本構想に関する骨子案を公表した。政策例の一つとして挙げられているのが、関係人口の可視化を目的とした「ふるさと住民登録制度」の創設である。これは、住民票とは別に特定の地域を「第二のふるさと」として登録できる制度であり、地域が継続的に関係人口へアプローチしていくための仕組みとして一定の効果が期待される。
もっとも、制度が実装された際の運用には課題も多いと感じられる。関係人口は、観光客のような一時的な交流にとどまらず、地域とある程度の継続的な関係を築く人々を指す。私自身、旅先で「良い土地だ」と感じた地域はいくつもあるが、その後も定期的に訪れたり、名産品を継続的に購入することは少ない。関係人口を生み出すこと自体が簡単ではなく、効果的な施策を講じるには工夫が求められる。
さらに、一度つながりを持った関係人口を継続的に維持していくためには、定期的な情報発信やイベントの実施など、継続的な働きかけが不可欠である。観光資源や特産物に恵まれた地域であれば比較的取り組みやすいかもしれないが、資源が限られている地域にとっては制度を機能させるためのハードルが高くなる。
このように検討すべき事項は多いが、関係人口の創出は地方における人口減少という構造的課題の解決に資する可能性を持つ。実際、すでに一部の自治体が、観光地の活用や地域限定イベントの実施など、独自の工夫によって地域のファン層を形成しようとする取り組みを進めている。まずはこうした取り組みを積み重ね、成功事例を蓄積していくことが、制度を現実的かつ持続可能なものとする第一歩となるだろう。(今野慧佑)

2025.06.16

「産官学連携で生成AIを活用した持続可能な橋梁管理の実現へ ~診断業務効率化や技術継承を実現する橋梁診断支援AIの実証実施~」

NTTコムウェア、長崎大学、溝田設計事務所、長崎県建設技術研究センターは、橋梁維持管理における診断業務の高度化をめざした連携を開始。2025年4月~5月にかけて、長崎県内の13橋梁を対象に、点検データを基に生成AIを活用して橋梁の健全性や所見などの診断結果案の作成を行う実証実験を実施し、その有用性を確認。本技術により、橋梁診断業務の効率化や技術継承、修繕コスト最適化に貢献し、将来的にはメンテナンスサイクル全体をカバーした効率的な橋梁維持管理の実現を目指す。

 

NTTコムウェア | 産官学連携で生成AIを活用した持続可能な橋梁管理の実現へ~診断業務効率化や技術継承を実現する橋梁診断支援AIの実証実施~

 

主要インフラの一つである橋梁の保全・管理(特に老朽インフラ)は、日本全体での課題である。現状では、道路橋梁の約4割が建設後50年以上を経過しており、この老朽インフラ対応は僅々の課題となっている。この課題解決を図る上で、IoTやAI、ドローンといったテクノロジー活用は不可避で、特に生成AIを活用した次世代保全の実現や保全業務の効率化、ノウハウ継承ソリューション等が注目を集めている。

2025.06.13

改正NTT法 各社がコメントを発表

いわゆる改正NTT法について通信キャリアがコメントを発表した(5/21)。NTTは単独で、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルは3社共同でのコメントとなっている。

 

NTTはこれまで重荷になっていたユニバーサルサービス責務の緩和やNTT東西の業務規制緩和などを歓迎するとともに、グループの機動的・効率的な経営を阻害しないようコメントした。
一方、3社コメントはNTTがこれまで構築した電柱等設備類の公共性を改めて担保されたことに賛同する一方、NTTのグループ一体化について公正な競争環境を阻害するとし、慎重さ政策議論が行われるよう要望した。
https://group.ntt/jp/newsrelease/2025/05/21/250521b.html
https://newsroom.kddi.com/news/detail/kddi_nr_s-39_3922.html

 

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どちらのコメントも従来より各社が主張していたもので特別なものではないが、法改正をうけ、NTTにはIOWN構想を筆頭にグローバルでの活躍が責務といってよいだろう。国内の金のなる木を太らせることに価値はない。(忌部佳史)

2025.06.12

「PayPay、バーチャルカード『PayPay残高カード』を提供開始(05/21)」

PayPay株式会社は、PayPayカード株式会社と提携し、2025年5月21日より、バーチャルカード「PayPay残高カード」の提供を開始した。このカードは、PayPayアプリ上で発行可能であり、Visa加盟のオンラインショップでの利用が可能である。年会費は無料であり、クレジットカードのような審査は不要である。決済額は「PayPay残高」や「PayPayポイント」から即時に差し引かれ、残高を超える決済はできない。

 

https://about.paypay.ne.jp/pr/20250521/01/

 

PayPayによる決済を導入していないオンラインショップにおいてもPayPay残高で決済可能となることで、PayPayの利便性は更に向上するであろう。5月15日には三井住友カード株式会社の「Olive」との連携も発表されており、コード決済のみならず、カード決済、ポイントサービスを強化していく姿勢がうかがえる。(石神明広)

2025.06.11

大日本印刷株式会社、日本加除出版株式会社、株式会社Hexabase(ヘキサベース)、生活者がメタバース上でAIに悩みを相談することの有効性を確認(5/21)

2025年3月、大日本印刷、日本加除出版、Hexabaseは、自治体窓口を三次元仮想空間で再現したメタバース役所において、AI相談員が住民の悩みに応える実証実験を実施した。期間中に105名が来場し、計75件の相談が寄せられた。調査では約85%がAIとの対話を自然と評価し、約65%が心理的負担の軽減を感じた。AI相談員は家庭・離婚分野を強みにしていたが、今後は対象領域を拡大し、幅広い生活課題へ対応する方針である。また、複雑な案件では内容をAIが職員へ引き継ぎ、人とAIの"ハイブリッド"な運用の実現を目指す。

 

https://www.dnp.co.jp/news/detail/20176724_1587.html

 

自治体職員の減少は深刻な課題になっている。そうした中でも現状のサービスを維持・向上させていくためにはデジタルの活用は必須になっている。国も自治体に対して窓口DXの推進を促しており、徐々にデジタル化が進んできている。申請書類の記載をなくす「書かない」、オンライン申請で完結する「行かない」、予約やキャッシュレスによる「待たせない」、案内を分かりやすくする「迷わせない」がキーワードになっている。本実証実験は住民からの相談をAIが仮想空間上で対応するという内容になっており、これらのキーワードを実現する方法になっている。

こうした利便性という点以外にもAI相談員の価値はあると考えている。AIが一次対応を担うことで相談の敷居が下がる場合があるのではないか。例えば、職員に直接打ち明けにくいプライベートな悩みでも、まずAIに相談できれば心理的負担を軽減しやすいということもあるだろう。
また、アンケートではAIカウンセラーによる空間内での相談はどう感じたかという設問を設けている。最も多い回答だったのが「実際のカウンセリングルームのような心地よさを感じた」(40%)だった。これも興味深い点である。相談だけならばチャットで十分だと思っていたが、メタバース上で実施することが利用者の安心感を高める役割を担っているようだ。これはメタバースの強みであり、将来的には内容に応じて空間や相談員のアバターを変化させることで、より相談しやすい環境を提供することも可能だろう。
職員減少が加速している現在、こうした先端技術を活用して住民サービスを向上させることが不可欠になっている。しかし、活用すればよいというものではなく、職員負担の軽減も併せて検討しなければならない。本リリースでも今後の展開として職員への相談内容の引き継ぎについて言及されている。窓口業務において住民から聞き取った内容をデジタル化しても、支援を開始するために職員が別のツールに入力し直していては負担が増えるばかりである。自治体DXではフロントヤードからバックヤードまで一貫したデジタル化という点もポイントになっていく。

2025.06.10

「設立からたった10年で取扱残高が3,500億円を突破」

FOLIOホールディングスの取扱残高が3,500億円を突破したという。

 

■ニュースリリース

FOLIOとAlpacaTechによる多面的なアプローチで金融ソリューションを拡充当社グループの取扱残高が3,500億円を突破(FOLIOホールディングス)|ニュースリリース|SBIホールディングス

 

実は設立前から見知っているFOLIO社のニュースを目にしてついつい取り上げたくなった。きっと上記数値はただの途中経過であり、すぐに超えていくことは分かりつつも、驚異的な成長を遂げる同社について本コラムで取り上げておきたいと思う。

 

本コラムを目にしている皆さんはFOLIOをご存じだろうか。証券会社の方はさておき、簡単に同社のことを本リリースをベースに紹介しておこう。FOLIO社は、主に2つの事業を展開している。まず一般顧客向けにAI投資「ROBOPRO」を提供しており、トランプ大統領就任による荒れ相場ながら2025年5月12日にサービス開始来の最高値を更新したとする。

次に、こうした「ROBOPRO」をベースとした投資一任プラットフォーム「4RAP(フォーラップ)」を銀行や証券会社など向けに投資一任運用ソリューションとして提供している。これまでに運用ソリューションの一部であるAI運用エンジン(子会社のAlpacaTech社と開発)をSBI岡三アセットマネジメントや三井住友DSアセットマネジメントの提供する投資信託に対して提供するなど、導入金融機関が抱える顧客の口座・預り残高を活用した投資一任運用サービスの普及に取り組んでいる。

 

さて、FOLIOは私が『2017 FinTech市場の実態と展望』において初めて取り上げた。が、実は取り上げる以前から創業者である甲斐氏にはお会いしていた。某大手FinTech企業のCFOから「面白いやつがいる」と紹介を受け、設立以前に面談をさせていただいており、当時はまだFOLIOを設立する直前の時期だったと記憶している。「これは成功するだろうな」と直感した。FOLIOは2015年12月に設立なのでちょうど今年で10年。たった10年で脅威的な成長を遂げたのはさすがというほかない。

これまでに数百社に及ぶスタートアップの創業者に取材をしたり情報交換をしているが、倒産した企業や他社に買収された企業、そしてFOLIOのようにとんでもない成長を遂げた企業と、その運命はさまざま。成功の可否に関わらず、日夜生まれているスタートアップが我々の日常をどう変えていくのか、楽しみで仕方ないし、私も1社でも多く、そうした企業を取り上げていきたいと考えている。(山口 泰裕

2025.06.09

「KDDIのRCSサービス開始がもたらすA2P市場の転換」(5/20)

KDDI株式会社とSupership株式会社は、2025年5月20日より法人向けメッセージ配信サービス「KDDI Message Cast」を通じて、日本国内でAndroidおよびiOSの標準メッセージアプリを対象とするRCS(Rich Communication Services)の配信を開始した。KDDIによると、両プラットフォームへの同時対応は国内初であり、従来SMSを中心としてきたA2P(Application-to-Person)型コミュニケーション方式における技術的転換の可能性を示す事例といえる。

https://biz.kddi.com/topics/2025/news/019/

 

従来のA2P SMSは、高い開封率および到達率を背景に、マーケティング、認証、行政通知といった分野で依然として主要なチャネルとして機能している。しかしその一方で、一方向かつテキスト主体という構造的な限界も指摘されてきた。そこでKDDIは、A2P SMSの抱える課題に対する現実解として今回、RCSの配信を開始した。RCSはこうした制約を補完する次世代型のメッセージング技術として注目されており、画像や動画、ボタン型メニューといった視覚的要素や双方向インターフェースを備えている。また、応答を促すボタンや、予約・問い合わせ対応といった機能がメッセージ内で完結することで、従来のコールセンターやWebフォームを介さず、直感的な顧客行動の誘導が可能となる。さらに、企業認証機能により、セキュリティおよび信頼性の向上も期待できる。

 

とりわけ、金融・インフラ・物流など、「リカーリング(Recurring)」が求められる業界においては、RCSを通じて一方的な通知型から、その場でやりとりができる仕組みに変えることで、企業と顧客の関係をより実用的な形に再構築できると見込まれる。例えば、支払いの案内や手続きがその場で処理できるようになることで、企業(配信元)と顧客(受け手)の距離が縮まり、継続的な関係づくりにもつながるだろう。

 

RCSの商用開始は、顧客接点におけるコミュニケーション品質向上を意図した一例と捉えることができるが、一方で、個人の端末や通信環境による安定性の確保、SMSに比するコスト構造、コンテンツやユーザージャーニー設計の複雑さといった課題も存在する。今後、ユースケースの拡大とユーザーの受容状況に応じて、A2P市場におけるRCSの比重が変化していくと考えられる。(曺 銀瑚

2025.06.06

デジタル庁がJPKI導入事業者一覧を更新(05/16)

デジタル庁は2025年5月16日、公的個人認証サービス(JPKI)に対応する民間プラットフォーム事業者の一覧を更新した。JPKIはマイナンバーカードのICチップに搭載された電子証明書を活用し、オンラインでの本人確認や文書の改ざん防止を可能にする仕組みである。本サービスは、銀行口座開設やローン契約など多様な民間サービスに導入されており、2025年4月末時点で717社が利用している。導入理由としては、セキュリティ強化、顧客サービスの向上、事務コスト削減といった点が挙げられる。

 

https://www.digital.go.jp/policies/mynumber/private-business/jpki-introduction

 

JPKIは当初、銀行等の口座開設時の本人確認での利用が大部分を占めていた。この利用方法は現在も拡大中であるが、加えてイベント、マッチングアプリでの活用事例が増加傾向にある。健康保険証・運転免許証のマイナンバーカードへの一本化の影響もなどでマイナンバーカードの普及率が高まっており、JPKIの利用場面の拡大が見込まれる。(石神明広)

2025.06.05

「6G時代におけるネットワーク・ビジョンと実証:『Network for AI』の実現を目指したロボット共同開発プロジェクト」②

3. 「Network for AI」実現に向けたコンセプトロボット開発プロジェクト
ドコモは2024年より『6G Harmonized Intelligence』プロジェクトをスタートし、ロボット・AI・デザイン分野の多様な専門家および企業との協業に取り組んでいる。本プロジェクトは、「Network for AI」の実現に向けた初動的な取り組みであり、将来的に想定されるさまざまなユースケースの実証および技術要件の具体化を目的としている。現在、ドコモを中心とした以下の3社が、6Gの低遅延・高信頼通信技術を活用したロボットの共同開発を実施しており、今後も多くのパートナーの参加が予定されている。

 

・アスラテック株式会社:既存のセンサーやカメラを排除し、外部デバイスとの通信によって制御される「ハーモナイズドセンサレスロボット」を開発
・ピクシーダストテクノロジーズ株式会社(PxDT)と筑波大学:人間とAI・ロボットとのインタラクションを想定した「コンポーザーとグルーバー」を開発
・ユカイ工学株式会社:自然生態系と共生しながら自律的に行動する「DENDEN」を開発

 

4. まとめ
本プロジェクトは、単なる技術的性能の追求を超え、人間のコミュニケーションを模倣・補完し得る通信インフラの必要性を実証することにその意義を持つ。分野横断的な連携や通信基盤の融合によって具現化された本開発事例は、6Gの社会実装に向けた技術的実現性と制度的正当性の両面を裏付ける重要な検証事例として意義を持ち、今後の展開が注視される。

2025.06.04

「6G時代におけるネットワーク・ビジョンと実証:『Network for AI』の実現を目指したロボット共同開発プロジェクト」①

https://www.docomo.ne.jp/binary/pdf/info/news_release/topics_250519_c1.pdf

1. 概要
2030年頃の商用化を目標に研究開発を進めている第6世代移動通信システム(6G)は、単なる技術的進化にとどまらず、社会構造および人間・機械間関係性を根本から再定義するための基盤インフラとして位置付けられている。これに対し、NTTドコモは6Gにおける5つの価値を提唱し、中でも「AIのためのネットワーク(Network for AI)」の価値から、AI・ロボット・機械が人間と共存しながら最大限に性能を発揮できるネットワークインフラの実現を目指している。ドコモはまた、複数の企業と連携して開発した3種のコンセプトロボットを通じて、6Gにおける技術的方向性および実効性の検証を行っている。

 

2. ドコモが掲げる「6Gが目指す5つの価値」
ドコモは、2020年1月に『ドコモ6G ホワイトペーパー』を公表し、2030年の商用サービス実現を見据えた次世代通信システムのコンセプトを公開した。その後、国内外キャリアやベンダーとの協力を通じて、実証実験、標準化、技術要件の策定などを継続的に推進している。ドコモが提示した「6Gの5つの社会的・技術的価値」は以下である。

 

(1)サステナビリティ(Sustainability):IOWN(光電融合を基盤とする低消費電力・高速通信技術)およびAIによるネットワーク制御を組み合わせ、エネルギー効率の最大化とカーボンニュートラルの実現を図る。
(2)効率化(Efficiency):ネットワーク構造の簡素化、運用効率の向上、周波数資源の最適利用などを通じて、コストと性能の両立を目指す。
(3)顧客体験(Customer Experience):感覚伝達型の新しいコミュニケーション、精密な測位・センシング、障害耐性と継続性を備えた通信など、6Gならではの差別化された顧客体験の提供を志向する。
(4)AIのためのネットワーク(Network for AI):AI・ロボット・機械が自律的に学習・判断可能な環境を構築し、人と調和的に共働する「社会的AI」のネットワークレベルでの実現を目指す。
(5)コネクティビティ・エブリウェア(Connectivity Everywhere):衛星通信やHAPSなどの非地上系ネットワークと地上系ネットワークの統合により、場所を問わず安定した接続性を確保する。

 

とりわけ「Network for AI」は、高信頼・低遅延・多接続といった特性が要求される「超知能(ASI: Artificial Super Intelligence)」時代の中核アーキテクチャであり、単なるAI基盤を超えて、人間・機械間協働の基盤を提供する構造として期待されている。

 

2025.06.03

「さくらインターネット、フルマネージドの生成AI向け実行基盤「さくらの生成AIプラットフォーム」を提供開始」(5/14)

さくらインターネットは2025年5月14日、生成AIアプリケーション向けのフルマネージド型実行基盤「さくらの生成AIプラットフォーム」の提供を開始した。

https://www.sakura.ad.jp/corporate/information/newsreleases/2025/05/14/1968219471/

 

本サービスは、ユーザの選択次第で基盤からアプリケーションまで、国産サービスのみで揃えることもできる。

 

ITに関しては海外のサービスを利用するケースが多い。日本の文化、慣習にも強いと推測される国産サービスの発展を期待したい。(小山博子)

2025.06.02

「NEC、自然関連財務情報開示タスクフォース(以下 TNFD)レポートの作成にAgentic AIを活用すると発表」

NECは、年内に開示予定の自然関連財務情報開示タスクフォース(以下 TNFD)レポートの作成にAgentic AIを活用すると発表した(5/20)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000929.000078149.html

 

TNFDレポート作成業務に向けてAgentic AIを適用し、調査、リスク・機会抽出、リスク評価、執筆・レビュー、広報の5つのタスクを実行する機能を開発する。既に一部で活用しており、調査では専門ガイダンス読込にかかる時間を92%削減したという。

 

この取り組みはNECの「クライアントゼロ」(自社をゼロ番目のクライアントとして新技術を実践するもの)として行われる。
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特定業務向けの生成AIサービスは次々に発表されている。今年は情報を追いかけるのも容易ではなくなるペースのようだ(忌部佳史)

2025.05.30

「エヌ・エフ・ラボラトリーズ:Purple Flairを開発」

NTTコミュニケーションズの子会社であるエヌ・エフ・ラボラトリーズは、2025年5月15日、実践型サイバーセキュリティ学習システム「Purple Flair(パープルフレア)」を開発したと発表した。「Purple Flair」はAI技術を活用し、学習者一人ひとりの理解度や進捗に応じた問題を出題するアダプティブラーニング機能を備えている。これにより、個別最適化された学習環境を提供を可能となる。
同システムでは、ワンクリックでクラウド上に実践環境を構築でき、学習者はブラウザーのみで演習に取り組むことができる。AIが操作履歴を解析してスキルを判定し、最適なアドバイスや適切な難易度の演習問題を提供することで、初心者から上級者までスキル向上を支援する。日本のサイバーセキュリティ人材の不足が深刻化する中、実践的なスキル習得のハードルを下げる可能性がある。
お知らせ | N.F.Laboratories Inc.
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「Purple Flair」は、AIを活用したアダプティブラーニングと実践環境の提供により、初心者から上級者まで幅広い層に対応できる点が強みである。企業における研修や教育現場での活用が進めば、サイバーセキュリティ人材の裾野を広げる有力な手段となるだろう。(小田 沙樹子

2025.05.29

「NTTデータ マーケティング系のAIエージェントサービスを発表(5/19)」

NTTデータは、AIエージェントサービス「LITRON Marketing(リトロンマーケティング)」を2025年6月から提供開始すると発表した(5/19)
同社はLITRON Marketingにより、マーケティング業務の負荷を最大6割削減することを見込むという。
具体的には、マーケティング戦略の企画~評価まで一気通貫で自律的に支援・代行するとしている。
https://nttdata.com/global/ja/news/release/2025/051900/
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同社は2027年度末までに、このサービスで累計100億円の売上を目指している。矢野経済の調査では生成AIの利用はまだユーザ企業に浸透しているとはいえないなか、今後の注目はAIエージェントへと移っている。早期の市場確立を期待したい。

2025.05.28

「国立研究開発法人情報通信研究機構、VRで飛行体験をすることで高所恐怖が低減されることを実証(5/14)」

国立研究開発法人情報通信研究機構未来ICT研究所 脳情報通信融合研究センターの研究グループは、VR空間で低空を自由に飛行する体験によって、VRで高所を歩行した際の恐怖反応が低減することを実証した。「自分は飛行できるので落下しても危険ではない」という行動ベースの予測を形成し、恐怖反応を抑える点が特徴であり、新たな恐怖消去法につながる成果となっている。

https://www.nict.go.jp/press/2025/05/14-1.html

本研究はVRを用いている点では曝露療法と共通するが、その核は繰り返しではなく行動予測である。曝露療法は、不安を引き起こす状況を複数回経験させて恐怖を徐々に弱める方法である。本実験は一回の飛行体験で高所恐怖が低減した点が曝露療法とは異なる。

この成果の背景には、最新のVRゴーグルがもたらす高い没入性能があると感じている。私も先日Apple Vision Proを試したが、ゴーグルを装着するだけで現実に近い体験が得られた。これほどの技術なら確かに本当に空を飛べるようになるという感覚を持つことも納得できる。現実世界で空を飛ぶ体験を整備するのはハードルが高い。一方で、VRなら室内で簡便に再現できる。こうした技術進歩が、恐怖症治療の選択肢を大きく広げるだろう。(今野慧佑)

2025.05.27

「NTT西日本グループ:Cybersecurity Primary Careを開始」

NTT西日本グループは、2025年5月より自治体や企業向けに「Cybersecurity Primary Care」を開始する。これは、日常の健康管理という「プライマリ・ケア」の考え方をサイバーセキュリティに取り入れたもので、特別な対策ではなく日常的な管理として捉える発想に基づいている。セキュリティ相談窓口をはじめ、セキュリティ診断、ASM(Attack Surface Management)、SOC(Security Operation Center)などを通じ、総合的な支援を提供する。

この取り組みの背景には、近年高度化するサイバー攻撃と国内のセキュリティ人材不足がある。こうした社会課題に対し、NTT西日本グループは、利用者に寄り添う「セキュリティのかかりつけ医」として、予防から復旧まで一貫した支援を行う。2025年10月からは、段階的に新規提供と既存サービスの拡充を予定しており、「健康管理」「予防」「検査・診断」「治療」といったカテゴリで幅広く展開される計画となっている。

地域社会のサイバーセキュリティ意識を高める「Cybersecurity Primary Care」の取り組み開始について ~NTT西日本グループが「セキュリティのかかりつけ医」として自治体や企業のセキュリティを総合的にサポート~|ニュースリリース|NTTビジネスソリューションズ

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セキュリティ対策を「かかりつけ医」に例えることで、サイバーセキュリティをより身近で相談しやすい体制に構築している点は興味深い。今後、同サービスがどれほど企業や自治体に利用されていくか、注目していきたい。(小田 沙樹子

2025.05.26

【FinTech Journalで月1回、連載してます】

FinTech Journalさんで月1回連載しているのですが、最近新しい記事を掲載頂きました。

生成AIについて、プロンプトなどの「使う技術」にフォーカスが当たることが多い。しかしながら、「ゴミを入れてもゴミしか出てこない」とはよく言ったもので、そもそものデータ自体が整備されていなければ、どんなに使う技術が向上しようと、精度向上には結びつきません。というわけで、本稿ではデータクレンジングを含めたデータマネジメントがより一層重要になるよーというお話を展開してます。

お陰さまで多くの方にご笑覧、共感頂いていると聞いており有難い限りです。少しでも皆さまのお役に立ちましたら幸いです。

 

https://www.sbbit.jp/article/fj/162579

2025.05.23

「相模鉄道、スマートデバイスで移動支援を強化」

相模鉄道は日立製作所の移動制約者ご案内業務支援サービスを2025年5月1日から運用開始した。このサービスは駅係員が車いすや白杖利用者の列車乗降サポート業務をスマートデバイス上で完結できるものである。

ホームドアのICタグにスマートデバイスをかざすだけで乗車位置入力が可能となり、ヒューマンエラーを防止。2026年上期には全駅でホームドア整備が完了予定であり、利用者の安全確保を強化する。

相模鉄道が日立の移動制約者ご案内業務支援サービスを導入:2025年5月12日

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かつて毎日のように利用していた路線において、スマートデバイスを活用した車いすや白杖利用者への支援が進んでいることに感心を覚えた。これからもITの力によって地域の安心・安全な移動環境の整備が進むことを期待したい。(小田沙樹子)

2025.05.22

量子コンピュータ時代に備え、安全かつ高速な電子署名技術が登場(NTT)

日本電信電話株式会社(NTT)は、スイスETH Zurich、米UC Berkeley、フィンランドAalto University、イタリアBocconi University、米JPMorgan社との共同研究により、わずか2ラウンドの通信で複数関係者による署名を安全に実現する世界初の耐量子閾値署名(しきい値署名、threshold signature)方式「Ringtail」を開発した。本技術は、管理者が一人である場合に起こりうる「単一障害点リスク」の排除や、電子投票システム、政府機関における行政サービス、企業システム・財務管理、暗号資産ウォレット、分散型金融(DeFi)、分散型自律組織(DAO)など、次世代Web3.0インフラにおける中核的なセキュリティソリューションとなることが期待される。

 

耐量子(Post-Quantum)とは、今後迫りくる量子コンピュータのアルゴリズムによって解読されないように設計された暗号アルゴリズム的特性を指す。量子コンピュータは、現在の公開鍵暗号方式を従来の古典的アルゴリズムと比べ高速で解読できるため、これに対抗可能な新たな暗号技術が数学的な安全性を担保する形で設計されている。(曺 銀瑚)

 

暗号インフラは一度導入されると後から変更することが極めて困難なため、量子コンピュータの実用化を見据えた事前対策が不可欠である。特に企業や政府システム、金融産業における重要機能を担う閾値署名においては、分散環境と多数承認の要件を満たす必要があり、2ラウンドで高効率・高安全性を実現する「Ringtail」技術の登場は注視すべきだ。

 

従来のシステムでは、単一管理者が全権を握る電子署名方式が持つ限界が指摘されてきた。承認システムの分散化、暗号資産ウォレットにおける単一鍵の分散管理や盗難対策といったニーズに応える手法が閾値署名だ。閾値署名では秘密鍵を複数に分割し、あらかじめ定めた数以上の協力があって初めて有効な署名が生成される仕組みである。

 

今回、NTTが開発したRingtail技術は ▲高い安全性:将来の量子コンピュータによる攻撃に対する耐性を確保 ▲効率性:署名プロセスにおいて関係者間の通信を2ラウンドで完結させて応答遅延を克服し、通信量を最小化することで実用的な速度を確保 ▲グローバル実証:アジア・欧州・北米・南米・オセアニアの5大陸にまたがる環境における署名生成を実証し、分散環境下における高い実用性を確認した。

 

本次世代分散署名技術は多人数承認を必要とするあらゆるセキュリティシステムや、脱中央集権型Web3.0インフラへ適用できると見込まれる。なお、単なる暗号化手段にとどまらず、ネットワークアーキテクチャ全体の信頼性を根本から強化する分散型暗号技術サービスとして、行政・金融・ブロックチェーン分野における基盤インフラとして活躍することが期待される。(曺 銀瑚)

 

https://group.ntt/jp/newsrelease/2025/05/12/250512a.html

 

2025.05.21

ソニー銀行が勘定系システムを刷新、ほぼ全システムがクラウド化へ。その狙いはどこにある?

ソニー銀行は、同社の勘定系システムを刷新、2025年5月から新勘定系システムとして、富士通の勘定系ソリューション「Fujitsu Core Banking xBank(クロスバンク)」を採用、稼働を開始すると発表した。

富士通によると、同ソリューションはクラウドネイティブなアプリケーション構造を持っており、ネット銀行らしくさまざまな商品・サービス、取引機能をマイクロサービス化して実装、ビジネスアジリティの強化を図ったとする。ニュースリリースから察するに従来の勘定系システムはオンプレミスをベースとし、周辺システムのみ先行してクラウド化を進めてきたようだ。今回の新勘定系を契機に、勘定系を含むほぼ全システムのクラウド化を実現したとしている。

新勘定系ソリューションの特徴の1つとして、クラウドべースの強みである、スケーラビリティやマイクロサービスアーキテクチャに加えて、外部APIを挙げており、フロントチャネルの追加や外部接続先の追加が容易になった点を挙げる。

 

■ニュースリリース

富士通のソリューションを採用したソニー銀行様の新勘定系システムが稼働開始 : 富士通

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さて、リリースではシステムの全体像を掲載しているが、外部APIについて、どのようなAPIを公開しているかが気になるところ。通常、銀行のAPIは大きく参照系と更新系に区分され、どのようなAPIを公開するかによって、当該銀行の姿勢が見えるといってもよい。

参照系をメインとして更新系のAPIが少ないとすれば、それは中身がクラウド化されただけで、APIを通じて新たなアプリケーションを構築するサードパーティ側からすれば、メリットは少ないといえる。他方、更新系APIについても積極的に公開しているとすればメリットは大きく、コスト削減等以外でクラウド化した意味があるといえよう。そうした意味では、本システムに刷新した狙いは単にコスト削減やスケーラビリティなどに留まるのか、外部との連携によるイノベ―ティブな取組みなどを見据えたものなのか見えてこず、少し残念なところである。(山口 泰裕)

 

注)

参照系・・・口座情報を参照するためのAPI

更新系・・・口座の振込や振替など、資金移動を伴う取引を行うためのAPI

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