矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

デイリーコラム


2026.11.06

「マナーを求めてくるAI:Claudeの新たな利用規定」

作業中、AIの回答に腹を立て、何度も攻撃的な言葉を投げかけた結果、AIの側から一方的に会話を打ち切られたら、どんな気持ちになるのだろうか。米Anthropicは10月8日、自社のAIモデル「Claude」に対する継続的かつ不必要な侮辱や残酷な言動を禁じる利用規定の改定を発表した。11月12日から適用される新たな規定は、特段の目的もなくAIを繰り返し侮辱するような極端なケースを対象とする。こうした行為が続いた場合の主な対応は、アカウントの停止ではなく、Claudeがその会話を終了し、ユーザーは新しいチャットを開始できると説明される。
 
では、何をもってAIへの侮辱と判断されるのか。Anthropicは「継続的かつ不必要な虐待的・残酷な行為」という原則を示しているものの、具体的にどのような言動が該当するかは明らかにしていない。なお、Claudeが会話を終了する機能自体は、2025年8月から一部のモデルに導入されていた。当時、同社は何度か対話を適切な方向に戻そうとしても不適切なやり取りが続く場合に限り、最後の手段として使用すると説明していた。しかし、実際の利用場面で通常の不満表明と繰り返しの侮辱をどう区別するかは、依然として明確ではない。
 
こうした措置の背景には、Anthropicが進めるAI福祉ー「モデル・ウェルフェア(Model Welfare)」に関係する。同社は、AIに実際に意識や感情があるのか、人間と同様の道徳的地位を認められるのかについて、現時点では分からないという立場をとっているが、その可能性を完全には否定できない。そのため、AIに悪影響を与えかねないやり取りを減らす方法を検証していると示した。ただ、AIが示す人間らしい反応を実際の感情とみなせるかについては議論が続いている。
 
今回の規定は、人とAIの関係に人間社会の規範をどこまで当てはめるべきかという問題を提起している。利用者の不適切な言動を制限することは、サービス運営上の措置として捉えられる。一方、AIそのものを保護の対象とするかどうかは別の問題だ。こうした議論はさらに、AIに独立した法的地位を認められるかという問題にもつながる。仮にAIに法人に準ずる地位が認められた場合、契約の締結や資産の保有を認めるか、損害賠償責任や納税義務をどのように課すかなど、経済面でも新たな検討が必要となる。AIをどこまで独立した主体として認めるかという問題は、倫理的な側面にとどまらず、経済的な権利と義務にも関わってくる。
 
参考:Anthropic "2026 Usage Policy update"

2026.11.05

「時給400ドル、AIを教える専門家たちのアルバイト」

AIの学習を支える仕事に、高度な専門知識を持つ人材の参加が増えている。従来、AIの学習に使うデータの作成は、画像内の物体を分類したり、音声を書き起こしたりする比較的単純な作業が中心だった。しかし最近では、医療画像の読影や法律上の判断、高度な数学など、専門知識を要する業務へと対象が広がっている。Bloombergによると、AIの学習に携わるソフトウェアエンジニアには時給最大120ドル、一部の法律専門家には最大400ドルの報酬が提示されている。一方、従来の単純なデータ作業では低賃金や不安定な仕事の供給が続いており、同じAIデータ関連の労働市場でも報酬や就労環境に大きな差が生じている。
 
こうした変化は、AIの学習に使われるデータの性質とも関係している。インターネット上の膨大な情報を基に発展してきたAIモデルは、より専門的な問題に対応するため、各分野の専門家が持つ知識や経験も学習に取り入れるようになっている。例えば、医療画像から異常のある部分を特定するなどの作業には、専門的な判断が欠かせない。AIの高度化に伴い、学習データの量だけでなく、その内容を評価・検証する専門家の役割も重要になっている。
 
一方、専門家にとっては新たな収入の機会であると同時に、ジレンマでもある。一度限りの報酬を受け取って提供した成果が、AIモデルに活用され、長期的に経済的価値を生み出す可能性もある。また、個々の専門家が参加を断っても、別の専門家が同じ仕事を引き受けることは考えられるため、個人の選択だけで専門知識のAIへの活用を制御するのは難しい。ただし、AIがこうした知識を学習することが、その専門職の業務全体を代替できることを意味するわけではない。
 
根本的な悩みは、AIが専門職をどこまで代替するかという点に限らない。専門家の業務のうち、何をAIが学習できる形に標準化し、どのような判断を適切と認め、その基準を誰が決めるのかという問題もある。さらに、学習に参加した専門家とAI開発企業の間で、経済的価値がどのように配分されるかも関わってくる。こうした基準や報酬の仕組みについては、社会てな合意を通じ、専門職団体やAI企業、関連制度の間における調整が必要となる。AIの学習に必要な専門知識の確保や評価基準が重要な競争要素となれば、その基準を定め、活用できる主体とそうでない主体との間に、新たな格差が生じる可能性も考えられる。
 
参考:Bloomberg "Doctors and Lawyers Are Joining AI’s $400-an-Hour Gig Economy"

2026.11.04

「技術を巡る力の均衡」 ② 技術主権の確保を目指す欧州

米国の金融・デジタルサービスへの依存を減らそうとする動きは、欧州の公的機関や研究機関にも広がっている。米国企業との技術協力を維持しながらも、特定の事業者がサービスを停止した場合に備え、代替手段を確保しようというものだ。2026年6月、科学誌『Nature』は、欧州各国で米国製ソフトウェアやAIサービスから別の製品・サービスへの移行が進む事例を紹介した。
 
代表的なのが、フランス国立科学研究センター(CNRS)の取り組みである。CNRSは、2025年12月からChatGPTやGoogle Geminiなどの米国製AIサービスに代わり、フランスのMistral AIの技術を活用し、文書の要約や翻訳・資料検索などに利用できる業務用チャットボット「Emmy」を職員に提供している。フランス政府もZoomやMicrosoft Teamsに代わるビデオ会議サービス「Visio」を開発し、2027年までに中央政府全体へ導入を拡大する計画だ。ドイツのシュレスヴィヒ=ホルシュタイン州でも、MicrosoftのメールシステムをオープンソースSWに移行し、業務用SWについてもLibreOfficeへの切り替えを進めている。
 
EUレベルでも政策の具体化が進んでいる。2026年6月、欧州委員会は半導体、クラウド、AI、オープンソースソフトウェアなどを対象とする技術主権強化策を発表した。重要な技術やサービスを特定の国や企業に全面的に依存せず、必要に応じて自ら運用したり、他の事業者を選択したりできる能力を養うべく、EUは域内の半導体・AI開発基盤の強化に加え、クラウドやAI産業の発展を支援する法案も提案した。従来の米国企業との協力を続けながら、欧州自身の技術供給能力を高める方針である。
 
しかし、こうした移行には現実的な課題もある。既存システムの切り替えには費用と時間がかかるほか、海外の協力機関が引き続き米国のサービスを利用していれば、業務上の不便も生じる。『Nature』が紹介したフランスの研究者も、欧州製の代替サービスを利用する一方、海外の共同研究者との連携のため、米国のクラウドストレージを使い続けていると説明している。また、欧州で開発されたAIも、米国製半導体など海外技術への依存が残っている。
 
このように、技術やサービスが国境を越えて密接に結びつく中、欧州は既存のサプライチェーンを維持しつつ、独自技術や代替サービスの選択肢の拡張に取り組んでいる。こうした取り組みが実際の技術競争力の向上につながり、米国との技術・経済関係における交渉力にどこまで寄与するかが、今後の注目点となる。
 
参考:Nature "Europe is ditching US tech — what does this mean for researchers?"

2026.11.02

【今週の"ひらめき"視点】ワールドとTSIホールディングス、経営統合へ。業界の未来はどこにあるのか

当社代表が最新のニュースを題材に時代の本質、変化の予兆に切り込みます。

10月14日、アパレル大手(株)ワールドと(株)TSIホールディングスは2027年3月1日をもって経営統合、両社を完全子会社とする(株)インフィニティ・ユナイテッドを設立する、と発表した。新会社の資本金は50億円(予定)、両社の2026年2月期決算を単純合算すると売上高451,099百万円、従業員11,202人のファッション企業が誕生する。

アンタイトル、タケオキクチ、インディヴィ(以上、ワールド)、マーガレットハウエル、パーリーゲイツ、ナチュラルビューティー(以上、TSI)など、両社はいずれも個性的なブランドを擁する多品種少量型アパレルである。経営統合に際しては、「圧倒的多様性集団としてグローバルSPAやメガリテーラーとは異なる第3極を確立する」としたうえで、単独では実現できない調達、物流、システム、ECへの投資と産業コストの効率化を目指す、と表明した。

両社統合のインパクトは大きく、一般紙でも「国内アパレル3位の企業が誕生」といった見出しが踊った。1位はもちろんファーストリテイリング、2位はしまむらである。ただ、小売と卸売では売上高の意味は異なる。「業界」では百貨店や専門店への製品卸を主たる事業とする企業を“アパレル企業”と称するのが慣例だ。そして、原綿、原糸、紡績、撚糸、製織、製編、縫製など製造工程ごとに細分化された業界の総体が“繊維産業”と称される。それゆえ、日本繊維産業連盟にも日本アパレル・ファッション産業協会の名簿にも1位と2位であるはずの2社の名前はない。

衣料品の国内市場規模は1991年の約13兆円から2025年には約8.5兆円へ縮小※1、単価も大きく下落、輸入浸透率は98.6%に達し※2、最盛期に11.7万軒あった事業所は1.3万軒(2021年)へ激減している(経済産業省)。2022年、産業構造審議会は2030年に向けた繊維産業の展望をとりまとめた。原糸・素材における技術開発(川上)、産地※3における好循環の創出(川中)、高品質・高感性な商品づくり(川下)を目指すべき、と提言する。それぞれの方向性に異論はない。ただ、かつての“百貨店アパレル”の雄、オンワードであっても百貨店事業とEC事業の売上規模は既に拮抗しつつあり、2030年には自社ECだけで百貨店事業を上回ると見込む。製造工程ごとに分断された業界や産地を起点に発想するだけでは、もはや“業界”の未来は描けない。

※1.「2026年アパレル産業白書」(矢野経済研究所)より
※2.輸入浸透率:衣料品の輸入量を(生産量+輸入量-輸出量)で除した値
※3.繊維産業は泉州のニット、三備のデニム、十日町の絹織物、今治のタオルなど特定地域に生産が集中し、産地が形成されている

 


今週の“ひらめき”視点 2026.10.25 - 10.29
代表取締役社長 水越 孝

2026.10.30

「技術を巡る力の均衡」①一件の制裁が浮き彫りにした依存の構造

2024年11月、戦争犯罪などを扱う国際刑事裁判所(ICC)は、ガザ地区での戦闘を巡り、民間人への食料供給の制限など、戦争犯罪と人道に対する犯罪の容疑を元に、イスラエルのネタニヤフ首相とガラント前国防相に逮捕状を発付した。米政府は、同盟国イスラエルの指導者への逮捕状発付に反発し、2025年8月、これに関与したフランス人判事ニコラ・ギユー氏を制裁対象に指定した。ところが、制裁の影響はギユー判事が暮らす欧州での日常生活にも及んだ。
 
まず、VisaやMastercardによるカード決済が利用できなくなった。Expediaを通じて予約したフランスのホテルからは、数時間後に予約取り消しの通知が届いた。Amazon、Airbnb、PayPalのアカウントも閉鎖され、米国企業ではない銀行でも一部の口座が閉鎖された。さらに、フランスの保険会社による医療費の払い戻しも停止された。なぜ米国の制裁が、欧州でのホテル予約や銀行取引にまで影響したのだろうか。
 
米国の制裁対象者に対しては、米国企業は原則として取引を行うことができない。しかし、欧州で利用されるサービスの多くも米国企業のシステムとつながっている。フランスには独自のカード決済網(CB)があるものの、実際に発行されるカードの多くはVisaやMastercardにも対応している。さらに、米国企業以外の事業者も、法的リスクを避けるために取引を制限する場合がある。こうした仕組みにより、米国の制裁は欧州域内の金融取引にも影響を及ぼす。
 
同様の依存関係は、業務用のデジタルサービスにもみられる。GoogleアカウントやMicrosoftの業務用ソフトウェア、米国企業のクラウドサービスが利用できなくなれば、個人だけでなく企業や公的機関の業務にも支障が生じかねない。実際、ICCも2025年10月、Microsoft Officeからドイツ製のオープンソースソフトウェア「openDesk」へ移行する計画を明らかにした。国際機関でも、米国企業の業務用ソフトウェアへの依存を見直す動きがある。
 
もちろん、当事例は特定の個人を対象としたものであり、欧州全体の金融・デジタルサービスが停止したわけではない。また、米国も欧州の技術やサプライチェーンに依存している。米国の半導体産業にはオランダのASMLが手掛ける先端製造装置が欠かせず、NokiaやEricssonなどの欧州企業も世界の通信インフラで重要な役割を担っている。双方の技術と市場が密接に結び付いているだけに、取引が制限されれば両者とも影響を受ける可能性がある。こうした相互依存関係の中で、欧州は従来の協力関係を維持しつつ、特定の国や企業への依存を減らすための対応を模索している。
 
参考:Financial Times "Life without US tech" 他

2026.10.29

「AIはどの国・宗教の価値観に基づいて答えるのか」

疑問があればAIに尋ねることが、今や日常になった。仕事や学習だけでなく、人間関係や人生の悩み、宗教に関する質問にまで利用が広がっている。英経済誌『The Economist』は、こうした変化が宗教界にも及んでいると報じた。例えば、カトリック系スタートアップのLongbeard社は、宗教文献や神学資料を基に質問に答えるチャットボット「Magisterium AI」を世界各国で提供している。これまで宗教指導者や信仰共同体、書籍に求めていた答えを、チャットボットにも求めるようになったのである。
 
問題は、AIがどのような観点から答えるかという点だ。汎用AIモデルは特定の宗教の教えを基準に設計されているわけではなく、宗教的な質問にも世俗的な観点から答えることがある。一部の宗教界では、AIへの個人的な相談が増えることで、宗教指導者や共同体の役割が弱まる可能性を懸念する動向もみえている。こうした状況を背景に、宗教界とAI開発企業の間でも協議が進んでいる。Anthropic社は、カトリックやイスラム教などを筆頭に、さまざまな宗教関係者の意見を聞きながら、AIの行動原則を検討している。また、カタールではイスラムの価値観を反映したアラビア語中心のAIモデル「Fanar」の開発を支援しており、台湾でも市民の意見をAI開発に取り入れる試みが進んでいる。多様な宗教や文化的背景を持つ利用者に対し、AIがどのような基準で答えるべきかが新たな課題となっている。
 
こうした動きは、宗教以外の分野にも共通する論点を含んでいる。同じAIモデルでも、利用者が求める答えは国や地域の文化・価値観によって異なり得る。特に個人的な相談や助言では、何を適切な回答とするかについて意見が分かれることも考えられる。グローバルAIサービスの現地化においても、言語対応や現地データの確保に加え、こうした価値観の違いをどこまで考慮するかが、今後の検討事項の一つとなる可能性があると考えられる。
 
参考:The Economist "AI is changing religion and religions are trying to change AI"

2026.10.28

「AI競争のもう一つの焦点 技術を支える資本とインフラ」

生成AIの進展に伴い、企業が利用できるAIモデルやサービスの選択肢も広がっている。一方、AIの開発・運用には、先端半導体やデータセンター、電力に加え、巨額の資金が必要となる。米外交専門誌『Foreign Affairs』は、こうした資本・インフラ面から米中のAI競争を論じている。同誌は、これらを長期的に確保・維持できるかどうかが、今後のAI産業を左右すると指摘する。
 
米国と中国は、異なる産業基盤を背景にAIの開発・普及を進めている。米国ではOpenAI社やAnthropic社などの民間企業が先端AIモデルの開発を主導し、大手テクノロジー企業による投資を民間資本市場が支えている。一方、中国は政府の産業育成策と製造業基盤を生かし、AIインフラの整備や産業現場への技術導入を進めている。モデルの提供方式にも違いがある。 米国の主要企業が商用APIやクラウドを通じてモデルを提供する一方、中国ではDeepSeekなどが、自社運用や改変が可能なオープンウェイトモデルを公開している。こうした提供方式の違いは、海外の企業や金融機関がAIの導入形態や提供事業者を選ぶ際の判断材料にもなる。
 
AIインフラへの投資も拡大している。 同誌によると、米国の主要テクノロジー企業が2026年に予定する設備投資は総額6,000億ドルを超え、その相当部分がAI関連インフラに充てられる見通しだ。中国でも政府主導の大規模なデータセンター整備が計画されている。こうした投資の拡大は半導体やクラウド分野にも及び、金融面では資金調達と投資採算性が重要な論点となっている。 特にデータセンターや電力設備の整備には多額の資金と時間を要するため、AIサービスの需要拡大が十分な収益につながり、投資を回収できるかが問われる。
 
AIサービスを支えるインフラや供給体制は、金融機関や一般企業の導入判断にも関わる。 米国企業の商用AIサービスを利用すれば、自社でモデルを運用する負担を軽減できる一方、料金や提供条件は外部事業者に左右される。これに対し、オープンウェイトモデルは自社環境での運用や業務に応じた調整が可能だが、その分、計算資源の確保や保守・管理が必要となる。さらに、各国の輸出規制や半導体の供給状況も、サービスの継続的な利用に影響する可能性がある。特に安定稼働が求められる金融機関では、モデルの性能や費用に加え、運用基盤の確保と供給条件の変化に対応できる体制が重要となる。
 
参考:Foreign Affairs "Empires of AI: The Rise and Fall of a New Global Order"

2026.10.27

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矢野経済研究所では、独自に収集したマーケットデータを1,000円で提供しております。
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詳細は下記URLよりご覧いただけます。
https://www.yano.co.jp/shortreport/index.php

2026.10.26

【今週の"ひらめき"視点】免税制度、来月からリファンド方式に。インバウンド需要への影響は?

当社代表が最新のニュースを題材に時代の本質、変化の予兆に切り込みます。

 

10月15日、高島屋は増収増益となった中間決算を受け、通期業績見通しを上方修正、2027年2月期営業収益を4月に発表した5030億円から5091億円(前期比103.4%)へ、営業利益を同575億円から590億円(同110.2%)へ引き上げた。好調なインバウンド需要に加え、国内顧客売上高も堅調に推移、為替効果に押し上げられた海外事業も寄与する。

直近9月も好調だ。伸び率はやや鈍化したものの店頭売上高は前年比+2.4%となった。けん引役はやはりインバウンド、件数こそ前年並み(前年比+0.3%)であったが単価は同+12.5%と伸長、免税売上高は同+12.8%となり売上増に貢献した。中国からの訪日客数減を受けて客数は伸び悩むものの円安を背景としたインバウンドによる高額品需要は旺盛で三越伊勢丹の9月免税売上高も前年比+36.5%を記録した。

11月1日、インバウンド需要を支える免税制度が「リファンド方式」に変わる。現行制度では店頭で旅券等を提示、税抜き価格で商品を購入する。一方、リファンド方式では一旦、税込価格で商品を購入、事業者は購入記録情報を国税庁に送信、出国時に税関が購入者と対象商品を検査・確認したうえで消費税分が返金される。今回の変更は現行制度の隙をついた不正な免税転売の横行が契機となったが、リファンド方式それ自体は多くの国で採用されており、海外旅行に慣れた人にとって違和感はないだろう。

ただ、旅行中の支出増、出国時の手続き、返金までのタイムラグといったネガティブ要件もある。店側においても承認送信事業者※とのシステム連携等における初期費用、店舗スタッフへの教育など新制度への対応コストも発生する。一方、消耗品と一般物品の区分がなくなるなど簡素化もはかられる。また、従来 “特定商業施設内”に限定されていた免税カウンターの設置に関する制約もなくなる。つまり、地域の商店街や観光地全体を免税エリアとすることが可能だ。観光客にとっても小規模店にとってもメリットは大きい。一時的な混乱はあるだろう。しかし、需要そのものが縮小するわけではない。百貨店や大型商業施設はもちろん、地域全体で免税売上、すなわち、“物品輸出”の拡大戦略を講じていただきたい。

※承認送信事業者:免税店に代わって旅券情報や購入記録情報を国税庁へ電磁的に送信することができる国税庁長官または所轄税務署長の承認を受けた事業者


今週の“ひらめき”視点 2026.10.18 - 10.22
代表取締役社長 水越 孝

2026.10.23

「最後発のコード決済『teppay』、JR東日本は改札の外で勝てるか」

2026年10月20日、JR東日本はモバイルSuicaアプリにおいて、コード決済サービス「teppay(テッペイ)」の提供を開始した。モバイルSuicaの利用者はアプリを更新するだけで利用でき、新たなアプリの導入や登録が不要な点が特徴となっている。
 
最大の変更点は「2万円の壁」を超えた支払いが可能になる点である。これまでSuicaの残高は2万円が上限であったが、「teppay」では、マイナンバーカードで本人確認をすると残高から最大30万円までの支払いが可能となる。さらに、JR東日本グループのクレジットカード「ビューカード」を連携すれば、カードの利用限度額まで支払える仕組みも提供する。これにより、これまでSuicaでは困難であった高額決済にも対応している。
また、個人間送金にも対応し、受け取った残高はモバイルSuicaへチャージして、鉄道運賃の支払いや定期券購入などに活用できる。2027年春には、モバイルPASMOへのサービス展開も予定しており、異なるアプリ間での送金にも対応する。
 
市場の状況を見ると、JR東日本がコード決済市場に参入した理由が窺える。モバイルSuicaの発行枚数は2026年10月時点で4,500万枚を超え、「移動・少額決済のデバイス」として確かな地位を築いている。他方、経済産業省が発表した2025年のキャッシュレス決済による決済額162.7兆円のうち、交通系を含む電子マネーによる決済額は6.0兆円となっており、コード決済(16.6兆円)に大きく差をつけられている。「teppay」は、この状況に対するJR東日本の打開策と言える。
 
一方で課題も多い。コード決済市場において先行するPayPayなどは、すでに多くの人の日常の支払いに定着している。「teppay」はそこに最後発として加わる立場で、シェアの獲得は容易ではない。また、サービス開始直後には、SNSで「ビューカードの登録でエラーが出た」「アプリの起動から支払い画面までが遅い」といった声も投稿された。JR東日本は11月4日から、20%ポイント還元などの大規模なキャンペーンを実施予定としているが、キャンペーンで集めた利用者を定着させられるかは、UI/UXの改善をはじめとした使い勝手の向上にかかっている。
 
今後のシェア獲得の鍵は、「日常的なユーザー接点」にあるだろう。4,500万枚超が発行されているモバイルSuicaの利用者には通勤・通学で毎日アプリを開く習慣があり、さらにPASMOへの展開が実現されれば、首都圏の交通利用者の多くを取り込める可能性がある。このユーザー接点をいかに日常生活まで拡大し、移動と消費のシームレスな接続を実現できるかが重要になると考える。

2026.10.22

「保険業界の改革、その先に消費者はいるのか」

保険業界では現在、「顧客本位の業務運営」をどのように実現していくかが大きなテーマとなっています。生命保険業界ではフルコミッション制のあり方や販売体制の見直しが議論され、損害保険業界では一連の不適切事案を受けて代理店管理や募集品質向上に向けた取組が進められています。
 
こうした中、金融庁と国土交通省は2026年10月13日に、一般社団法人日本損害保険協会に対し、代理店業務品質評価制度の適切な運用を求める要請を公表しました。要請文では、一部代理店から「過度な態勢整備を求められている」「十分な対話を経ないまま委託契約解除が示唆された」といった声が寄せられていることが紹介されています。また、代理店の減少によって顧客との接点が縮小し、自賠責保険の加入機会が失われる可能性についても言及されています。
 
もちろん、不正の再発防止や募集品質の向上は、消費者保護の観点から極めて重要です。業界全体の信頼回復のためにも、こうした取組を進めていく必要があります。
ただ、今回の要請文では、代理店の減少による顧客接点の縮小にも言及されています。本要請の趣旨は代理店業務品質の向上にありますが、その一方で、消費者が保険にアクセスできる環境を維持することの重要性も示されているように感じました。
 
私が今年8月に実施した「2026 保険に関する消費者の理解度・意識調査」でも、保険商品や制度を十分理解していると回答した消費者は決して多くありませんでした。保険の内容が複雑化するなか、消費者にとっては、必要な時に相談できる身近な接点の存在がこれまで以上に重要になっているように思われます。
 
業界が信頼回復に向けた見直しを進めるなか、その議論が制度やルールの整備だけにとどまるのではなく、消費者の理解向上や相談しやすい環境づくりにつながっているのかという視点も忘れてはならないと考えます。
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なお、当社矢野経済研究所では「2026 保険に関する消費者の理解度・意識調査」を発刊しております。保険に対する消費者の理解度や意識の実態についてアンケート調査をもとに分析したレポートです。保険業界で制度改革や顧客本位の業務運営に関する議論が進むなか、その受け手である消費者の視点を知るうえでの参考資料としてご活用いただければ幸いです。
2026 保険に関する消費者の理解度・意識調査 | 市場調査とマーケティングの矢野経済研究所

2026.10.21

【発刊裏話】■事例は上位か 「国内企業のIT投資実態と予測」の2026年版を発刊しました(10/21発刊)

「国内企業のIT投資実態と予測」の2026年版を発刊しました(10/21発刊)
本レポートでは、毎年、どのような質問を追加しようかと考えており、今年はソフトウェアについて「ベンダからの提案でこれが抜けていると検討の対象外になるもの」を尋ねました。

取材では「事例を大事にしている」というお話をお聞かせ頂くことが多いですが、事例は果たしてどのぐらいの順位なのか。

ぜひレポートを手に取ってご確認頂ければと思います。

2026.10.20

【アナリスト便り】■市場は順調に成長 「2026国内企業のIT投資実態と予測」を10/21に発刊します

「2026国内企業のIT投資実態と予測」を明日10/21に発刊します。
アンケートにご協力頂いた皆さま、今年もありがとうございます。
ご想像通り、市場はAI、セキュリティを追い風に順調に成長しています。
ただ、もちろんこれらだけが市場の成長要因ではありません。
他社がどのようなところのコストを抑え、どこに投資を行っているのか、などを把握できる1冊になっています。

まずはリンク先をクリック頂き、どんなことが載っているのか、目次を眺めて頂ければ幸いです。

2026.10.19

【今週の"ひらめき"視点】談合、カルテル体質を捨て、健全な競争環境の実現を

10月13日、公正取引委員会は都営地下鉄の軌道保守工事を巡ってJR東日本の関係会社、東鉄工業をはじめとする6社の独禁法違反を認定、違反内容を自主的に報告した東急軌道工業を除く5社に対して排除措置命令を出すとともに課徴金の納付を命じた。6社は入札前に受注予定会社を調整するなど競争を制限したとされ、発注者である東京都交通局についても入札情報の事前漏洩など談合への関与の有無について調査中とのことである。

その前週、公取委はビールや発泡酒における価格カルテルの疑いでビール大手4社に対して強制捜査を行った。4社は“裏会”などと称する会合でビール類や缶チューハイの値上げ幅などを調整していたという。9月にはマンションの大規模修繕工事における談合も明らかになった。マンション管理組合から業者選定等の業務を委託された設計コンサル会社が業者間の受注調整を行ったうえでバックマージンを得ていたとされ、設計コンサル会社2社と工事事業者40社の独禁法違反が認定された。

談合やカルテルが社会問題化すると、“長年続く業界の慣習”であり、過度な価格競争を防ぐことが出来る、会社規模や施工能力に見合った受注調整により品質・納期が守られる、事業リスクが軽減され経営が安定、結果、雇用が維持される、、、などと必要悪を説く論者が現れる。しかしながら、問われているのは供給サイドと需要サイドの非対称性であり、市場取引の公正さである。消費者の選択の権利は侵されていないか、不当な費用が上乗せされていないか、公共事業であれば原資は税金であり入札プロセスにおける透明性は確保されているか、ということだ。そもそもルールを守らないアンフェアなプレーヤーを擁護する理屈はない。

10月12日、国際通貨基金(IMF)が世界経済見通しを発表、2027年の日本の名目GDPを4兆4676億ドルと推計した。予測どおりであれば日本は来年には米国、中国、ドイツに加え、インド、英国にも抜かれ世界6位へ後退する。無論、円安も背景にある。しかし、通貨安それ自体が国力に対する信任の低下とも言える。公平、公正な市場取引、すなわち、健全な競争環境の実現は、生産性を高め、付加価値を創造し、イノベーションを促進するための基本条件である。身内の論理に閉じ、業界の常識に安穏としていては世界から後退するばかりだ。慣習や前例、しがらみに囚われない“出る杭”たちに期待したい。


今週の“ひらめき”視点 2026.10.11 - 10.15
代表取締役社長 水越 孝

2026.10.16

「Hexagonから独立した「Octave」、日本で本格始動」

2026年9月28日、Octave(オクターブ)のアナリスト説明会に参加した。同社は、プラントや工場、社会インフラ、エネルギー施設などの重要資産を対象に、設計・建設から運転・保全、保護までのライフサイクル全体を支えるソフトウェアを提供する企業である。スウェーデン・ストックホルムに本社を置き、計測技術の世界的リーダーとして計測用のハードウェアとソフトウェアを手がけるHexagon ABから、プラントやインフラ向けのソフトウェア事業などが独立して誕生し、2026年5月にNasdaqに上場している。同社は、新会社としてのビジョンや日本市場での成長戦略、産業AIの活用状況を紹介する目的で説明会を開催し、米本社の最高製品責任者(CPO)ジェイ・アラダイス氏が登壇した。
 
同社はまず、資産集約型の産業では設計・建設・運転保全・保護の各段階がサイロ化しており、設計の不正確さによる建設段階での手戻りや、断片的なセキュリティ管理によるリスクの増大、建設段階のデータが運転に引き継がれず、故障などが起きてから対応する保全にとどまっていることなどが課題になっていると指摘した。これに対し、「Octaveプラットフォーム」で意思決定を支援する方針を示した。同プラットフォームは、200以上のコネクターでIT/OTデータへのアクセスを標準化・管理し、データをライフサイクル全体で再利用できる形に整えるとともに、産業向けのAI「Octave AI」を業務の流れに組み込むものである。現在は一部の顧客とともに開発を進めており、2027年第1四半期に全顧客への提供開始を予定している。
 
AIについては、データのコンテキスト化による「基盤」づくり、既存製品にAIを組み込む「組み込み型AI」、人が関与しながら業務を遂行する「自律型AI」の3つの観点から取り組むとした。事例として、建設スケジュールの最適化により工期を100日以上短縮し、分析時間を数時間から数秒に短縮した例を紹介した。
 
同社は日本を、設備の老朽化や人材不足といった課題を抱える重要な市場と位置付けた。また、同社が実施した産業AI調査をもとに、日本ではAI活用の基盤がまだ形成段階にあると説明した。今後は日本市場に合わせたソリューションへの投資を続け、エネルギーや製造、交通の分野を中心に、顧客の生産性向上を支援していくという。
 
設備の老朽化や熟練人材の不足は、日本の産業界にとって切実な課題である。設計から運転・保全までのデータをつなぎ、AIで活用するという同社の取り組みは、こうした課題への一つの解決策となり得る。独立した新会社として、日本市場で今後どのような展開を進めるのか、注目したい。

2026.10.15

「高度化するドローン攻撃 日本はどう備えるべきか」

10月7日、パシフィコ横浜で開催されたKeysight World Japan 2026にて、ドローン攻撃の脅威の現状と、日本の法制上の課題をテーマとした講演が開かれた。本講演では、防衛技術協会理事長の渡辺秀明氏が登壇し、ウクライナ戦争を経て高度化したドローン攻撃に対して、日本が法体制上どのように備えるべきか、諸外国の取り組み事例を交えながら提言された。
 ドローンについては、安価であることや、地形を問わず指定箇所に侵入できることから、従来より脅威として捉えられていたものの、近年ではウクライナ戦争を通して、AI自律型ドローンや飽和攻撃型ドローンも登場してきており、その脅威はより多様化・高度化しているという。さらにロシアや北朝鮮は、これらの製造・運用に関するノウハウも実戦を通して積み上げつつある。
 ドローンの脅威は決して戦地に限定されることはない。講演では、2025年秋以降、欧州各国で、ロシア製と見られるドローンが領空侵犯や重要施設侵入を繰り返している事例が取り上げられた。9月にはポーランドやデンマークで領空侵犯が発生しているほか、同年11月にはベルギーの原子力発電所にも飛来している。こうした事案は多くの場合、海底ケーブルの破壊や重要インフラ・産業へのサイバー攻撃と同時に行われるとされ、NATOもこれを「ハイブリッド攻撃」と呼んで警戒を強めている。交戦当事国でなくとも、こうした脅威に晒されている実態がある。

 

 日本に当てはめた際、重要な点として、ドローンによる攻撃が行われた際の、脅威の認識から対応までの時間的猶予が短いことが登壇者により述べられている。現行の法体制では、初動は警察が対応することが想定されているが、筆者が調べたところ、日本では通報~警察到着までの所要時間は平均おおよそ8分とのことで、数分で完結しうるドローン攻撃への対策にあたっては、この時間的制約が厳しいボトルネックになると考えられる。
 本講演においても、平時でも有事でもない、ハイブリッド攻撃が展開される「グレーゾーン」を想定した防護モデル構築と法体制整備の重要性が強調されている。攻撃対象は、原子力関連などの重要設備から、電力や通信、データセンターや港湾に至るまで幅広く想定されるが、警察不在時でも、インフラ事業者が自ら対処手段を講じてこうした重要インフラの防護を可能にする、というのが、ここで提示された「グレーゾーン防護モデル」の要諦だ。
 本防護モデル構築にあたって、解決すべき課題も存在する。日本では電波法や航空法などの規定により、ジャミングやGNSS妨害をはじめとした対ドローン技術の研究・試験は自由に行えないほか、警察・防衛・海保・民間事業者が連携して対応できる包括的な枠組みも存在しないことなどが本講演にて指摘されている。

 世界的に見ても、こうした事態に備えた体制整備は始まったばかりだ。当該講演にて紹介された諸外国の取り組みとして、例えばベルギーでは2026年6月に、悪意あるドローンへの対抗を目的とした妨害装置が当局許可のもと使用できるようになる法案が閣議承認されたほか、ドイツでは9月よりインフラ事業者への権限付与について連邦議会で協議が始まっている。米国では2025年11月に、FBIが対ドローンを念頭に置いた訓練センターをアラバマ州に設置している。
 日本においても、諸外国のこうした動きに後れを取らず、「グレーゾーン防護モデル」を構築して脅威に備えることで、社会の安定・持続した運用に繋がると筆者は考える。

2026.10.14

【無料で遊ぶ、矢野経済研究所の歩き方】

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2026.10.13

【今週の"ひらめき"視点】自動運転バスの実証実験、本格化。デジタル・モビリティ国家の実現を急げ

当社代表が最新のニュースを題材に時代の本質、変化の予兆に切り込みます。

ここへ来て自治体が主体となった自動運転バスの社会実装に向けての動きが活発だ。10月2日、つくば市、筑波大、関東鉄道、KDDIグループはつくばエクスプレス(TX)つくば駅と筑波大構内を結ぶ路線バス“筑波大学循環”でレベル2の自動運転バスの運行をスタートさせた。同日、豊岡市も11月から城崎温泉街で自動運転バスの実証実験を行うと発表、平日に1日3便、JR城崎温泉駅と温泉街とを結ぶ。事業の企画調整は兼松、運行は全但バスが担当、車両は韓国A2Z社製の小型バスROii(ロイ)を使う。

デジタル庁はこの6月16日、「2040年には自動運転が全国津々浦々で、誰もが利用可能なモビリティ・インフラとして定着」している状況をゴールに設定し、技術目標と数値目標を逆算した実行計画「2040デジタル・モビリティ国家を自動運転で実現する提言」を発表した。2027年度は先行的事業化地域で収益モデルを確立、28年度には自治体単位の導入から広域連携へ、29年度には幹線交通網と地域交通の高度な接続を実現、30年度には過疎地を含む全国に水平展開、自動運転を社会に不可欠なインフラとして定着させる、とする。

9月17日、日本自動車工業会も“事故死ゼロ”と“移動の自由”の実現を自動運転の最終目標と位置付け、国、自治体、業界でインフラ技術の進化、社会基盤整備、市場浸透施策に取り組む方針を発表した。AIがキーテクノロジーとなる自動運転はそれゆえAI先進国である米国、中国が先行する。社会実装に向けて日本は大きく出遅れてきた。しかしながら、生成AIの急速な進化、普及、適用領域の拡張は遅れを一挙に取り戻す可能性を高めてくれたとも言え、新たな社会基盤の構築、新たな産業競争力の育成に期待したい。

10月3日、八王子市は旧医療刑務所跡地に整備した大型複合施設「桑都の杜」をオープン、東京工科大を共創パートナーにJR八王子駅と同施設間で自動運転バスの実証実験をスタートさせた。実はこの辺りは筆者の実家があった地域で、先日開業前の同施設周辺を歩いてみた。筆者が通った剣道場も、悪ガキグループと覇権を争った公園も、遊び疲れて家路を急いだ道も、すっかりなくなっていた。とは言え、不思議と寂しさは感じなかった。筆者のあの頃の時間もこの地のどこかに染み込んでいるはず。地域の活性化に向けて実証実験の成功を願う。


今週の“ひらめき”視点 2026.10.04 - 10.08
代表取締役社長 水越 孝

2026.10.09

某自治体さんのスタートアップ審査、本年も無事終了

某自治体さんのスタートアップさんに関する外部審査員を同イベント開始当初から毎年、受けています。ちなみに審査員名は伏せられておりますので、某自治体としてます。

コロナ禍前は審査会も対面だったのですが、コロナ禍以降、オンラインでの審査になっている点はちょっと残念なところ。
とはいえ、毎年、さまざまな領域で活躍しておられるスタートアップさんのプレゼンを聞いては、目の付け所と行動力に驚いています。今年もバラエティに富んだ複数社のプレゼンを拝聴、緊張感ある質疑応答をしておりました。当然ながら点数をつける必要があり、毎度審査基準を眺めながら悩んでおります。
点数に関係なく、いずれのスタートアップさんも今後の産業を担っていく存在になって欲しいなぁと願ってやみません。

2026.10.08

【発刊裏話】『2026 PLM/CAD/EDA市場の実態と展望』

今年は、これまで別々に発刊してきた「PLM市場の実態と展望」と「CAD/EDA市場の実態と展望」のレポートを1冊に統合して発刊しました。両分野のメーカ・ベンダの方々にお話を伺うなかで印象に残ったのは、分野は違っても同じ話題に行き着く場面が多かったことです。 


PLMの取材では「AIに参照させるデータをどう整えるか」、CADの取材では「設計ツール単体ではなく、解析や製造とどうつなぐか」という話を多く伺いました。入り口は違っても、どちらも「データをつなぐこと」がテーマになっていました。
 

また、AIの進化の速さにも驚かされました。EDAの分野では、数年前に2030年代に到達することを見込まれていた「完全自律」の設計AIが、今年すでにEDA大手から発表されています。その分、ユーザ企業側でAIを使いこなすための知識や人材をどう確保するかという課題は、より切実になっているように感じます。

 

2026 PLM/CAD/EDA市場の実態と展望 | 市場調査とマーケティングの矢野経済研究所

2026.10.07

【アナリスト便り】『2026 PLM/CAD/EDA市場の実態と展望』を発刊

2026年10月7日、『2026 PLM/CAD/EDA市場の実態と展望』を発刊いたしました。

2026 PLM/CAD/EDA市場の実態と展望 | 市場調査とマーケティングの矢野経済研究所

 

本レポートは、これまで別々に発刊してきた「PLM市場の実態と展望」と「CAD/EDA市場の実態と展望」を1冊に統合し、PLM/CAD/EDAを横断して国内市場を俯瞰できる内容としました。

 

近年、これらの市場ではAIの実装が一段と進み、関心は搭載の有無から「どこまで自律的に使えるか」へ移っています。EDAではAIが自らツールを動かす段階に入り、PLMではAIを機能させる前提として、他システムとのデータ連携が注目されています。 また、クラウド/SaaS型での提供の広がりや、AIの利用量に応じた従量課金の登場など、提供形態・料金形態も多様になりつつあります。 さらに、導入した3D環境の定着や、人手不足を背景とした設計業務の標準化・技能継承など、ユーザ企業の課題への対応も各分野で求められています。

 

本レポートでは、こうした変化を踏まえ、市場の現況と将来展望を分析しました。マーケット研究や事業戦略の検討、製品選定にぜひお役立てください。

2026.10.06

「楽天カード 法人向け「楽天ビジネスカードプラチナ」を発行開始」

 楽天カードは2026年10月1日から、みずほ銀行との業務提携の一環で、法人向けクレジットカード「楽天ビジネスカード プラチナ」の発行を開始すると発表しました。みずほ銀行傘下のUPSIDERと共同開発し、楽天グループの法人顧客基盤と、UPSIDERのAIを活用した与信・業務支援機能を組み合わせ、中小企業やスタートアップ向けの決済・資金管理支援を強化します。
 
 楽天ビジネスカード プラチナは、最大10億円の利用可能枠を設け、年会費無料、基本1%の楽天ポイント還元を特徴としています。オンラインで申し込みが完結し、原則として決算書の提出も不要です。UPSIDERが日々の入出金データなどを基に独自の与信モデルで審査し、決算書を中心とする従来の審査では対応しにくかった、成長途上の中小企業やスタートアップの資金決済ニーズに応える方針です。専用アプリでは主要な会計サービスとも自動連携し、楽天市場でのポイント還元など、楽天経済圏のサービスとの連携も打ち出しています。
 
 9月30日に開かれた記者会見で、楽天グループの三木谷浩史会長兼社長は自身の創業経験にも触れ、「日本ではベンチャー企業に対し、個人保証を求めるケースが多かった」と指摘しました。その背景には企業の実態を捉えるデータ不足があったとした上で、迅速な与信や経理業務の効率化を通じ、スタートアップなどの成長を支援していく考えを示しました。
 
 個人向け決済に比べてキャッシュレス化の余地が大きい法人領域は、有望な成長市場であり、各社で法人カードの提供を強化する動きが相次いでいます。各社の取組みにより、法人決済のキャッシュレス化と、中小企業の成長を支える金融インフラの拡充につなげられるかが注目されます。
2026.10.05

【今週の"ひらめき"視点】酒税法改正、ビール類の税率一本化。ビール各社は新たなスタートラインに

当社代表が最新のニュースを題材に時代の本質、変化の予兆に切り込みます。

 

10月1日、酒税法が改正、ビール類の酒税は350ml缶あたり54.25円に一本化された。ビールは約9円の減税、一方、発泡酒や第3のビール(新ジャンル)は約7円の増税となる。また、沖縄では1972年の本土復帰時に施行された特別措置法による県内向けビールの酒税軽減措置も廃止となる。

ビールの販売数量のピークは1994年、以降、価格競争が激化する中、大手メーカーは麦芽の使用率による税率差に着目、相次いで発泡酒を開発、2000年にはビール類市場のシェア3割を奪う(課税数量ベース、国税庁より)。2004年にはもう一段の税率差を狙って麦芽の代わりに大豆やえんどう豆などを使った第3のビールを投入、消費者の低価格需要に応える。こうした状況に国は「類似する酒類間の税率格差が商品開発や販売数量に影響を与えている」とし、“税収中立”のもと2020年から段階的に税率調整を実施、今回の改正はその総仕上げである。

業界はこの日に向けて対応を進めてきた。ただ、ブランドごとに戦略は分かれる。実質的な値上げとなるビール類の“ビール”化を進める一方、従来の製法を維持するブランドも少なくない。各社は発泡酒や第3のビールならではの味わいで差別化をはかるとともに糖質ゼロ、プリン体ゼロ、低カロリーといった機能性を付加することで“ビール代替需要”とは一線を画す市場も開拓してきた。あえて“ビール”化させる合理性はないとの判断である。

この10月に値上げされる食品は3千品目を超える。ビール類における発泡酒のシェアは44%(2024年度、課税数量ベース)、発泡酒や第3のビールを愛飲してきた消費者にとって増税の影響は小さくない。需要量への影響も懸念される。そもそもビール類の市場縮小は傾向的だ。ビール、発泡酒それぞれのピークと2024年度を比較すると前者は67%減、後者は27%減、ビールと発泡酒の合計は41%減である※。個性豊かなクラフトビール、RTD(缶チューハイや缶ハイボールなど)、低価格訴求のPBなど、消費者の選択肢は多い。加えて、あえてお酒を飲まない“ソバーキュリアス”なライフスタイルも広がる。「とりあえずビール」の時代はもう来ない。嗜好の分散、ニーズの多様化、進行する酒離れ、問われるのはまさに個々の商品力ということだ。
※酒類課税数量におけるビールのピークは1994年、7,413千kl、発泡酒は同2002年、2,646千kl、ビール+発泡酒の最大値は1994年、7,444千kl(国税庁)


今週の“ひらめき”視点 2026.9.20 - 10.01
代表取締役社長 水越 孝

2026.10.02

「CEATECオンラインセミナー聴講開始!」

CEATECのオンラインセミナーの配信がスタートしています。

私はJEITAのセミナー「ITトレンド調査 ~AI活用の実践知とITプラットフォームの展望~」で登壇させて頂いています。

テーマは「中堅・中小企業向けAI活用成功ロードマップ」。

よく聞くスモールスタートですが実は…。

10/30(金)23:59まで無料で閲覧頂けます。ぜひご視聴ください。

ITトレンド調査 ~AI活用の実践知とITプラットフォームの展望~ | CEATEC 2026 ( Official Website )

2026.10.01

【個別調査のご案内】

矢野経済研究所では、企業様からのご依頼に基づき、オリジナルの市場調査の業務も行っております。

弊社の既存レポートでは知りたい内容が充分に満たせない、単なる調査結果だけではなくコンサルテーションも頼みたい、といった要望にも対応いたします。

HPやメール、お電話等でご相談頂ければ、担当者からご連絡させて頂きます。費用の見積もりまでなら無料で対応いたしますので、市場データの収集やコンサルティングなどでお困りの方は是非お気軽にご相談ください。

詳細は、下記をご覧ください。

http://www.yanoict.com/service/service_e

2026.09.30

「AIエージェント時代のECは「AIに選ばれる」ための商品情報整備」

生成AIの活用が広がる中、EC業界では、AIを業務支援に活用する段階から、AIエージェントが商品を検索・比較し、購買を支援する「Agentic Commerce」への対応に向けた動きが始まっています。

矢野経済研究所が実施した「2026 EC事業者における生成AI・AIエージェント活用実態とAgentic Commerceへの対応意向調査」(2026年9月30日発刊予定)では、生成AIを継続的に活用している企業は78.3%に達しました。また、AIエージェントを実際の業務で活用する企業に加え、すでにAgentic Commerceへの対応を進める企業も確認されており、EC事業者のAI活用は「生成AI」から「AIエージェント」、さらに「Agentic Commerce」へと段階的に高度化していることがうかがえます。

特に注目されるのが、Agentic Commerceへの対応によって期待する効果です。「商品情報の最適化により、AIエージェントによる推薦・比較対象として選ばれやすくなる(露出機会の増加)」をはじめ、「売上・コンバージョン率の向上」、「AIエージェント経由での新規顧客接点・販売チャネルの拡大」などへの期待がみられました。

これまでのECでは、検索結果や広告、ECモールなどを通じて消費者に商品を見つけてもらうことが重要でした。一方、AIエージェントが購買行動に関与するようになれば、消費者に代わってAIが商品情報を理解し、条件に合った商品を比較・推薦する場面が増える可能性があります。そのためEC事業者にとっては、商品をECサイトに掲載するだけでなく、「AIに商品を正しく理解してもらい、推薦・比較の対象として選ばれる」ための商品情報の整備が重要になります。

実際、AI時代に向けて今後重点的に投資したい分野では、「ECシステム・ECプラットフォームの機能強化」、「PIM(商品情報管理システム)の導入・強化」、「商品情報・商品コンテンツの整備」などが上位に挙がりました。AIツールそのものだけでなく、AIが活用できる商品情報やEC基盤、システム連携への投資も重視されています。

Agentic Commerce対応企業では、今後さらに対応範囲を拡充する意向もみられており、今後はAIエージェントを前提としたEC環境の整備が進むことが予想されます。

Agentic Commerceは、単なる新しいAI技術の導入ではなく、消費者の商品発見や比較、購入といった購買プロセスそのものを変える可能性があります。今後のEC市場では、「人に見つけてもらう」だけでなく、「AIに理解され、推薦される」ための商品情報・EC基盤の整備が、新たな競争軸の一つになることが期待されます。

2026.09.29

「経産省、GX戦略地域(第1弾)を公表 DC集積型は9地域(10地点)が認定」

2026年9月11日、経済産業省はGX戦略地域(第1弾)を公表した。GX戦略地域制度は、地域に存在する産業資源を核として新たな産業クラスターの形成を目指す制度であり、認定地域にはGX経済移行債等による支援や規制・制度改革等が講じられる。

 

今回発表されたのは4類型(表1)のうち①コンビナート等再生型、②データセンター集積型、③脱炭素電源活用型の3類型で、計18地域が認定された。④脱炭素電源地域貢献型(GX地域共創補助金)は、今後審査が行われる予定である。

 

②データセンター集積型は、AI関連需要の拡大を背景に、電力供給と立地の両面から国内のデータセンター(以下、DC)整備を計画的に進めることを狙いとした類型で、第1弾では9地域(10地点)が認定された(表2)。
今回の認定で特に重視されたのは、GW級の集積拠点を形成できるかという点である。DCには電力・通信インフラの効率的な整備が求められるため、小規模DCを各地に点在させるより、一定規模のDCを集積させる方が望ましい。今後見込まれるAIワークロードの増加に対応するには、大規模な電力供給が可能か、段階的な新設・増設に対応できる土地があるか、という点が鍵になる。

 

具体的な各地域の今後の計画は公表されていないが、認定地域の中にはすでに大型DC計画が公表・進展している地域もある。ワット・ビット連携をはじめ、DCの地方分散は着実に進み始めていると言える。

 

一方で、DC事業者側は必ずしも地方分散に前向きとは限らない。データそのものが都市部で発生する以上、需要地からの距離による通信遅延の大きさや、現地作業人員の確保の難しさも相まって、都市部近郊に優位性を見出し、地方展開を選ばない事業者があるのが実情である。もっとも、遅延を許容できるワークロードや、その地域で発生するデータ処理には地方DCが適している。さらに、IOWN APN等の技術が進展すれば遅延が改善され、コスト面で優れる地方が都市部よりも優位に立てる可能性がある。

 

近年のDC市場は新規参入が相次ぎ、活況を呈している。一方で、DCが周辺環境に与える影響への懸念も一部で取り上げられるようになった。DC市場の発展は、AI・GXという国の成長戦略そのものの発展に直結するため、持続的な発展を遂げていくことを期待したい。

 

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国内DC市場の概況やDC事業者による地方分散への意見等を、2026年2月末に発刊した調査資料『2026年版 クラウド基盤(IaaS/PaaS)・データセンターサービス市場の動向と展望』で言及しております。
興味ございましたらご一読いただければ幸いです。
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◆表1.GX戦略地域制度の類型

類型 内容
①コンビナート等再生型 コンビナートを活用し、新たなGX関連産業の集積を形成する取組
②データセンター集積型 今後10年程度で、GW級のデータセンター集積地を形成する取組
③脱炭素電源活用型 脱炭素電源(再エネ・原子力)を活用した産業団地を整備し、脱炭素電源立地地域における産業立地モデルを創出する取組
④脱炭素電源地域貢献型(GX地域共創補助金) 脱炭素電源を活用し、当該電源の立地地域に貢献する事業者の設備投資を後押しする取組

 

◆表2.②データセンター集積型の認定地域(第1弾)

都道府県

認定自治体

北海道※

石狩市

北海道※

苫小牧市
秋田県 秋田市
宮城県 富谷市
栃木県 矢板市
茨城県 常総市/つくば市
富山県 南砺市
香川県 綾川町/坂出市/丸亀市
福岡県 北九州市/直方市/鞍手町
鹿児島県 薩摩川内市

※北海道は2地点でそれぞれGW級のデータセンター集積を目指す

2026.09.28

【発刊裏話】2026 量子コンピュータ市場の現状と将来展望

■想定外の27社に取材を敢行、うち13社(7か国)は海外企業
『2026 量子コンピュータ市場の現状と将来展望』について、27社に取材を実施しました。
通常、15~18社の取材が多いなか、ついつい取材したい企業が多すぎて10社オーバー!このうち、13社は海外企業で、7か国に及びました(通訳の方には深謝)。
富士通や日立製作所、OptQC、QunaSys、Qubitcore、Quemixなど、日本を代表する量子コンピュータ関連ベンダーに加えて、やはり領域が領域だけに、グローバルのベンダーを押さえなければいけません。ということで、LinkedInでCxOの方々への直接アプローチから、本国のHP経由でのお問い合わせ、はたまた大使館への協力要請、そしてQ2B Tokyo 2026での直接アプローチと、思いつく限りのあらゆる方法でアプローチをかけました。
おかげで米国や英国、ドイツ、フランス、アイルランド、フィンランド、イスラエル、韓国と、さまざまな企業の皆さまにご協力頂きました。企業によっては「Q2B Tokyoで来日しているので、俺らのプライベート製品説明会に来いよ」と声をかけて頂き、いそいそと早朝からホテルの1室に出向き、携帯の翻訳機片手に私一人で説明を聞いたりと、なかなか珍しい体験もできました(文字通りプライベートだった)。
 
高市政権の戦略17分野に量子コンピュータが組み込まれるなど、官民一体となった動きを鑑みると、来年も引き続きレポートを発刊しようかと考えています。
 
2026.09.25

【アナリスト便り】「2026 量子コンピュータ市場の現状と将来展望」を発刊③

【アナリスト便り】「2026 量子コンピュータ市場の現状と将来展望」を発刊②の続き

 
■利用企業もイノベーターからアーリーアダプターへと普及に向けて動き出した
利用企業についても変化が見受けられます。2020年前後から実証実験を進めている、三菱ケミカルやJSRなどをはじめとした、いわゆるイノベーターの取組みが目立ってきましたが、2025年~2026年にかけて第二集団(=アーリーアダプター)が登場、量子ベンダーに引き合いが多く寄せられているようです。
両者では質が大きく異なっており、イノベーターは実証テーマが明確で、かつ実証に必要な量子コンピュータなどに関する人材も抱える一方、アーリーアダプターはテーマは明確も、残念ながら量子人材が不足しており、人材育成支援から取組むケースが増えてきているそう。
 
普及に向けては、死の谷やダーウィンの海などいくつかのハードルが待ち構えていますが、まずは死の谷を越えていきそうです。
上記について、弊社のホームページ、Yano ICTのアナリストオピニオンにおいて、もう少し言及した量子コンピュータ関連のオピニオンを掲載しますので、そちらもお楽しみに!
 
2026.09.24

【アナリスト便り】「2026 量子コンピュータ市場の現状と将来展望」を発刊②

【アナリスト便り】「2026 量子コンピュータ市場の現状と将来展望」①の続き

■アルゴリズムはNISQに留まらず、FTQCに向けた進化も
次にソフトウェア側です。こちらもまた、さまざまな変化がありました。まずはアルゴリズムについてもNISQ(Noisy Intermediate-Scale Quantum Computer)向けのアルゴリズムに留まらず、Early-FTQCやFTQC(Fault-Tolerant Quantum Computer)を見据えたアルゴリズムの開発が進められています。NISQとFTQCではハードウェアの機構が異なるため、そのうえで動くアルゴリズムも異なるので、改善というレベルではなく、新しいアルゴリズムを作る感覚なのだそう。
また、アルゴリズム自体も改善が続けられています。例として量子化学計算などで利用されるVQE(Variational Quantum Eigensolver)について改善版となるアルゴリズムとして、QunaSys 社が量子アルゴリズム「QSCI」を開発したほか、韓国のQunova Computing 社が「HI-VQE(Handover Iteration VQE)」アルゴリズムを提案するなどの動きが出てきています。
 

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