日立製作所が、製造業の顧客向けに設計業務を支援する「設計ナレッジシステム」を開発し、「HMAX Industry」の新たなラインアップに追加するとともに、提供を開始したことを発表しました(2026年9月10日)。
本システムは、日立のモノづくりの知見を基盤に、形式知化プロセス(AIエージェント)と日立独自の形状認識技術を融合。「暗黙知→形式知→組織の資産」の循環を創出し、設計品質の継続的な向上の実現を目指すものです。近年は、熟練技術者の不足や技術継承を課題とする企業が多く、それらの企業がAIを活用し、暗黙知の形式知化に取り組む動きは見られますが、なかなか成果に結びつかないとも聞きます。
本システムは、日立ハイテクで行ったテストにおいて、曲げ作業や打ち抜き・切断加工が困難な作業の箇所や寸法不備等を自動で100%抽出(板金・製缶図面の検図記録(3年分)の不備案件に対してプロトタイプ版で設計ルールを抽出した結果)し、不具合のある設計データが後工程に流出する回数を減らすなど高い効果を確認したそうです。
ひとつでも多くの熟練者の「暗黙知」が組織の財産になる動きが広がることを期待します。
9/10(木)に、ICT・金融ユニットの金融チームが発刊するマーケットレポートの試読会を開催しました。
今回は弊社東京本社にて、金融・保険関連を中心とした27タイトルのレポートをご用意しました。ご参加いただいた皆様には、レポートを直接手に取って試し読みいただくとともに、私たち研究員との情報交換や交流の場としてもご活用いただきました。
金融・保険領域では初めての試みとなるレポート試読会でしたが、想定を上回る21名の方にご来場いただきました!
ご参加いただいた皆様、また今回はご都合がつかなかったもののご参加を検討いただいた皆様、この場を借りて御礼申し上げます。
当日、ご来場いただいた方から次のようなお声もいただきました。
・隣接テーマのレポートを閲覧できてよかった
・複数のテーマのレポートをまとめて試し読みできてよかった
・担当研究員と直接話ができるいい機会だった
開催にあたっては、運営面での改善点もありましたが、少しでも皆様のお役に立つ機会となっていれば幸いです。
当ICT・金融ユニットでは、エンタープライズや金融、自動車×ITなど幅広いテーマのレポートを発刊しております。今後もこうした機会を設けることができればと考えております。
警察庁は8月28日、警察官がウェアラブルカメラを装着して活動する試行結果を公表した。職務質問や交通取締り等の現場において、カメラの映像が事件の状況確認や公務執行妨害事案での有力な証拠として活用されたことから、同庁は「有用性が認められた」と評価し、本格導入に向けた予算確保や運用ルールの策定作業を進める方針である。
試行では職務執行の客観的検証や若手警察官への指導教材としての効果が確認された一方、装着する警察官からは機器のさらなる軽量化が求められている。また、市民側から「監視」に対する反発や録音・撮影への拒否反応も見られ、記録範囲の画定や撮影データの保存・利用基準といった具体的指針の整備が今後の課題として浮き彫りとなった。
警察官にウェアラブルカメラ、本格導入へ 「有用性を確認」(CNET Japan) - Yahoo!ニュース
ウェアラブルカメラの導入は、法執行の透明性確保と警察官自身の身の安全を守る双方の観点から有用性が高い。北米等の先行市場では不可欠な装備として定着しており、日本市場においても警備・公共安全分野での映像DXの契機となる。
一方で、日本市場ならではの課題も浮き彫りとなっている。街頭防犯カメラの普及状況にも表れている通り、国内では諸外国と比べ「監視されること」への心理的抵抗感が根強く、人口あたりのカメラ設置台数も低水準にとどまる。このことからも、今後はハードウェアの軽量化・長時間バッテリー化に加え、現場での恣意的な録画停止を防ぐ厳格なガイドライン策定や、プライバシー保護とセキュアなデータ管理基盤の構築といった対応が重要となるだろう。
当社代表が最新のニュースを題材に時代の本質、変化の予兆に切り込みます。
9月8日、新宿区の吉住区長は、民泊営業の規制を強化する改正条例案を来年の定例区議会に提出する旨、発表した。具体的には営業日数の上限を年間180日から120日に引き下げるとともに住宅地および学校周辺における民泊の営業を禁止する。騒音やごみ問題など住環境の悪化が背景にある。この7月、観光庁は自治体判断による民泊営業の規制強化を容認する通知を出しており、同様の問題が顕在化している少なからぬ自治体が新宿に追随する可能性がある。
所謂“民宿”ではなく、“民泊”と位置付けられるビジネスモデルは2007年創業の米スタートアップ“Airbnb”のオンライン仲介プラットフォームに始まる。日本では国策としてのインバウンド拡大戦略と規制緩和の流れの中で国家戦略特区法改正(2016年)、民泊新法(2018年)を整備、空き家・空き室の有効活用ニーズとも相まって急速に拡大した。当初から住環境への影響は懸念された。しかし、急増する宿泊需要への対応と新市場育成の視点から利用者側の利便性、快適性の確保が優先された。
深刻化する住環境問題に加え、需要構造も変わった。日本人の利用者が急増し、コロナ前の2019年4-5月期の90,089人から2026年4-5月期には2.6倍の235,591人へ、利用率も26.9%から37.6%へ拡大した。円安を背景にインバウンド市場も変わりつつある。メインターゲットは富裕層、IHG、ハイアット、ヒルトン、マリオットなど外資系ホテルグループのラグジュアリーブランドの開業ラッシュが続く。リピーターの増加は観光目的も変えつつある。東京~富士山~京都~大阪といった“ゴールデンルート”から地方へと広がり、体験型・参加型のコト消費へのニーズが高まる。
2026年7月15日時点で稼働中の民泊は全国で42,070件、うち東京23区が40%を占め、これに札幌、名古屋、京都、大阪を加えると58%が都市部に集中する。全国的には前年比125%と拡大基調にあるが、一方、廃業率は全国平均で36%、とりわけ都市部で高く、東京23区と地方・郊外の主要自治体(保健所設置市)を合わせた対象地域の廃業率は44%に達する。今、民泊市場は大きな転換期にある。まずは供給サイドの意識改革が必要だ。宿泊サービス業は単なる“遊休不動産の利活用ビジネス”ではない。宿泊事業者としての経営ビジョン、マーケティング戦略、ガバナンスを確立することが健全かつ持続的な成長への条件である。
※民泊に関するデータは“民泊制度ポータルサイト”(国土交通省)より
今週の“ひらめき”視点 2026.9.6 - 9.10
代表取締役社長 水越 孝
矢野経済研究所では、企業様からのご依頼に基づき、オリジナルの市場調査の業務も行っております。
弊社の既存レポートでは知りたい内容が充分に満たせない、単なる調査結果だけではなくコンサルテーションも頼みたい、といった要望にも対応いたします。
HPやメール、お電話等でご相談頂ければ、担当者からご連絡させて頂きます。費用の見積もりまでなら無料で対応いたしますので、市場データの収集やコンサルティングなどでお困りの方は是非お気軽にご相談ください。
詳細は、下記をご覧ください。
今回『2026 高精度測位補正サービスの市場動向』において、初めて高精度測位補正サービス市場を担当しました。 調査を始めた当初は、正直なところサービスの全体像をイメージすることが難しく、補正方式にもさまざまな種類があるため、理解するまでに苦労した部分もありました。
現在の主な活用分野は建設や農業で、建機の自動制御や測量、スマート農業などで既に実用化が進んでいます。市場の将来性を考えたとき、大きな鍵を握るのは自動運転分野だと感じています。
もちろん課題もあります。衛星信号を利用する以上、トンネル内や都市部の一部環境では位置測位が難しくなる場面もあります。また、電子基準点網の整備状況など、海外とのインフラ環境の違いも含め、実用化に向けて乗り越えるべきハードルは少なくありません。
本レポートで整理した通り、足元では自動車メーカー各社がカメラやLiDARを優先していると考えられ、需要創出の見通しは不透明です。しかし、高精度地図やLiDARなど他の技術と組み合わせながら活用が進めば、将来的には自動運転を支えるインフラの一つになる可能性を秘めていると個人的には見ています。建設・農業に続く成長分野として立ち上がる時期を、今後も注視していきたいと思います。
▼高精度測位補正サービスについて整理した調査レポートです
2026年8月28日に『2026 高精度測位補正サービスの市場動向』を発刊いたしました。
本レポートでは、GNSSによる測位で生じる誤差を補正する情報を提供し、センチメートル級の高精度な測位を実現する「高精度測位補正サービス市場」の動向を整理しています。
高精度測位補正サービスは、建設分野におけるICT施工や測量、農業分野におけるスマート農業を中心に活用が進んでいます。
市場参入事業者は限られており、今後どのような用途で需要が拡大するのかが注目されています。本レポートでは主要事業者の動向に加え、市場規模の推計や将来展望についても取りまとめました。
今後の市場動向を読み解くうえで、本レポートをご活用いただければ幸いです。
また、本取り組みにて構築されるDCは、超高発熱サーバーの冷却にも対応できる「液冷方式」を採用している。発熱体(GPUチップ等)の上に設置された金属板(コールドプレート)に、冷媒となる液体を循環させてサーバーを冷却する。最新のGPUは、高性能化に伴い消費電力量も発熱量も大きくなっており、従来の空冷方式のみでは冷却性能に限界があった。液冷方式を空調設備と併用することで、最新のGPUサーバーの冷却にも対応する。
今回の取り組みが奏功し、「分散型DC」というモデルが確立されれば、これまでDCに求められていた要件のうち、広大な用地面積は必須ではなくなる。これはDC建設においてより多くの立地の選択肢をもたらすが、一方で電力確保は引き続き重要な要件となる。狭くとも十分な電力が確保できる土地(変電所や送電線に近い等)が新たな適地として価値を帯びてくるならば、データセンターの建設競争は新たな局面を迎えると考えられる。(熊谷 波留弥)
当社代表が最新のニュースを題材に時代の本質、変化の予兆に切り込みます。
8月28日、厚生労働省は人口動態統計速報を発表、2026年1-6月期の出生数は342,068人、前年同期比+0.8%、上半期としては11年ぶりに前年を上回った。出生率※はコロナ禍による婚姻数減の影響を受けて2022年から2024年にかけて前年比▲5%台の減少が続いてきたが、2025年は▲2.2%と下げ止まった。2024年以降、婚姻数が持ち直したことが背景にある。
とは言え、出生率1.14は過去最低、前年比マイナスは10年連続だ。2023年に国立社会保障・人口問題研究所が発表した将来推計人口の中位推計は2025年の出生率を1.25に置いていた。悲観シナリオとされた低位推計は1.10、現実はむしろこちらに近く、出生数の減少トレンドは中位推計に対して15年程度先行している。出生数と死亡数の差である自然増減は19年連続でマイナス、2025年は2年連続で▲90万人を超えた。人口減少に歯止めはかかっていない。
こども家庭庁はこの5月から8月にかけて15歳から39歳までの男女を対象に「若者10万人の総合調査」を実施、8月31日、その途中経過を公表した。設問は生活満足度や社会参画意識など広範に及ぶが、結婚に関する集計結果には驚かされた。未婚者のうち「結婚するつもりはない」との回答者は35.1%に達する。“収入への不安”や“自由時間の減少”が結婚に対するハードルの上位にあがるが、そもそも「結婚したいと思わない」との回答がそれらを上回り、「結婚するつもりはない」人の53.1%、未婚者全体の18.6%に達している。既に若者人口が減っている現状にあってこれでは出生率は上がるまい。
2021年、国土交通省は「国土の長期展望」の最終とりまとめを発表、2050年には居住地域の約5割が少子高齢化地域となり、全市区町村の約3割が人口半数未満となること、全人口の7割が災害リスクの高い地域に居住していることを前提とし、「コンパクト+ネットワーク」による持続可能な地域づくりの必要性を訴える。人口減少を所与の条件と受け止め、そのうえで地域の豊かさを実現する必要があるということだ。首都の優位性、東京の経済力、TOKYOの先進性の取り込み競争(副首都構想)では解決しない。優先すべきは“多様な豊かさ、多彩な個性をもった新たな地域生活圏の形成”と“自然災害と人口減少に応じた国土の適正管理”である。
※出生率(合計特殊出生率)とは、1年間における15歳から49歳までの女性の各年齢別の出生率を合計した数値で一人の女性が一生に産む子どもの数の平均値。人口を維持するためには2.07が必要となる。
今週の“ひらめき”視点 2026.8.30 - 9.3
代表取締役社長 水越 孝
8月27日、NTTドコモビジネスは東京電力パワーグリッドと提携し、液冷式コンテナ型DC(データセンター)を用いたDC分散化に向けた取り組みを開始すると発表した。NTTドコモビジネスはコンテナ型DCを複数設置・運営可能な「コンテナDCパーク」を東京23区内に展開し、東京電力パワーグリッドは保有する設備や電力技術・ノウハウをNTTドコモビジネスに提供する。その第一弾として、東京都大田区にコンテナ型DCパークを展開し、2027年秋にサービス開始を目指す。
生成AIの利用拡大に伴い、データセンターへの需要は急増している。外部システムとの連携やリアルタイム処理が求められるビジネス用途では、通信時の遅延を少しでも減らす必要があることから、利用者の多い都市部に近接することが求められていたが、従来の「建屋型DC」では、用地確保から建設・稼働に至るまでに時間を要することや、大規模な電力確保が必要であることが課題となっていた。
今回の取り組みで主役となる「コンテナ型」には、上記課題にも対応しうる、従来型DCにない特長がある。コンテナ型DCは、文字通りコンテナ(箱)を1単位として、コンテナ1基の中にサーバー、電力、冷却、監視といった基本的な機能をすべて備えている。工場で製造したものを現地に据え付ける方式のため、従来よりも短納期で設置できるほか、コンテナ単位での小規模な増設にも対応可能で、電力容量の確保に向けた調整もしやすくなるのも利点だ。 (熊谷 波留弥)
2026年8月、インターネットイニシアティブ(IIJ)は、「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度」(以下、SCS評価制度)への対応を支援する「IIJ SCS評価制度アセスメントソリューション」を、提供開始したことを発表しました。
矢野経済研究所では、5月に、「2026 AI時代のサイバーセキュリティ市場の現状と展望」(2026 AI時代のサイバーセキュリティ市場の現状と展望 | 市場調査とマーケティングの矢野経済研究所)を発刊しています。SCS評価制度はあっても、「何をどうすれば良いのか」がわからず、関心はあるが対策にはつながらない、そんなユーザーの状況が明らかになりました。
今回IIJが提供するサービスは、まさにそうした課題を解決するサービスで、同社が培ってきたセキュリティサービスの運用実績やコンサルティングの知見を活かし、SCS評価制度の★3および★4取得に向けた現状評価から施策検討までを支援するものになっています。企業のセキュリティ対策の前進が期待できると考えます。
IIJ、セキュリティ対策評価制度への対応を支援する「IIJ SCS評価制度アセスメントソリューション」を提供開始 | IIJについて | IIJ
今回『2026 保険に関する消費者の理解度・意識調査』を発刊するにあたり、保険に関する基礎的な知識を消費者がどの程度持っているのかを調査してみました。私は日ごろから保険業界を見ていることもあり、業法改正の話や保険に関するニュースなどを自然と追っていますし、業界関係者の方と話す際にも当然のようにそうした話題が出てきます。しかし、それは一般消費者にとってどの程度身近な話なのだろうか。そう感じ始めたことが、今回の調査のきっかけでした。今年施行された業法改正、特に比較推奨販売ルールの適正化についても、そもそも顧客自身がこうした変化を認識しているのか、どこに理解のハードルがあるのかを把握したいと考え、アンケートを実施しました。
実際に調査してみると、保険商品や保険用語に関する20問の理解度を測る設問では、平均正答率は55.1%と約半分にとどまりました。また、2026年6月に施行された改正保険業法についても、64.8%が「全く知らなかった」と回答しており、認知度は3割強にすぎませんでした。
さらに興味深かったのは、アンケート回答者が自身の保険加入時の行動について、どのようなタイプだと認識しているかを尋ねた設問です。「自分はしっかり理解して契約している」と考えている層のほうが、「大まかに理解した気になれば契約する」層よりも正答率で下回る結果となりました。理解しているつもりと実際の理解度は必ずしも一致せず、そのギャップが数字として表れる結果となりました。
今回の調査を通じて感じたのは、保険会社や代理店にとって重要なのは説明の「量」を増やすことではなく、「何を説明したか」よりも「何が伝わったか」という視点ではないかということです。制度の運用が本格化するこれからこそ、消費者の理解や受け止め方に目を向けた情報発信やコミュニケーション設計が、より一層重要になっていくのではないかと感じています。
▼最新のアンケート結果を活用した調査レポートです
2026 保険に関する消費者の理解度・意識調査 | 市場調査とマーケティングの矢野経済研究所
2026年8月28日、『2026 保険に関する消費者の理解度・意識調査』を発刊いたしました。
本レポートは、Webアンケート調査を通じて、保険に関する消費者の理解度や意識の実態を明らかにした調査レポートです。
2026 保険に関する消費者の理解度・意識調査 | 市場調査とマーケティングの矢野経済研究所
今回の調査では、保険用語や保険商品に関する20問の設問を用いて理解度を測定し、「全体」「年代別」「自己認識タイプ別」の3つの視点から分析を行いました。どの用語で理解が進んでいるのか、またどの層で誤解や認識不足が生じやすいのかを定量的に把握できる内容となっています。
なかでも注目したのは、「理解しているつもり」と実際の理解度とのギャップです。自己認識タイプ別に分析した結果、自身を「しっかり理解して契約するタイプ」と認識している層のほうが、必ずしも高い正答率を示すわけではないという興味深い結果が得られました。
また、2026年6月に施行された改正保険業法についても、消費者の認知度や受け止め方を独自に調査しています。比較推奨販売ルールの見直しなどによって想定される募集プロセスの変化について、消費者がどのように感じているのかを把握できる内容となっています。
保険会社や保険代理店をはじめ、消費者理解や募集品質向上に取り組む皆さまにとって、参考となる調査結果をまとめています。ぜひご活用いただければ幸いです。
当社代表が最新のニュースを題材に時代の本質、変化の予兆に切り込みます。
2013年、第2次安倍政権のもとでスタートした海外需要開拓支援機構(クールジャパン機構)がいよいよ存続の岐路にある。2026年3月末時点における累積投資額は1,588億円、EXIT済案件の損失55億円(投資額599億円)、投資中案件の減損計上258億円(投資額989億円)、これにファンドの運営経費を加えた累積損失は540億円、2022年に策定した“最低達成すべき投資計画”(累積損失426億円)は未達、政府は令和9年度の財政投融資要求を行わない方針を固めた。
失敗の要因は複合的でありクールジャパン機構の蹉跌に今更驚きはない。所管官庁である経産省はあたかもこれを見越したかのごとく2024年には“エンタメ・クリエイティブ産業政策研究会”を新たに立ち上げ、昨年6月には「コンテンツ産業の海外売上高20兆円に向けた5ヵ年アクションプラン」を策定、8月20日、“クールジャパン機構、廃止へ”との報道が流れる中、「エンタメ・クリエイティブ産業戦略2026」を発表した。
政策目標は「2033年に海外売上高20兆円」を達成する、そのために官民の叡智を結集、予算執行の一元化をはかり、大規模・長期・戦略的な官民投資を実現する。また、事業の執行に際しては「不断に政策の効果検証を継続するとともに、責任を持って成果が出るまでやり抜く」との覚悟も表明、クールジャパン機構“敗戦”へのリベンジの色合いも滲む。IP(知財)の価値を最大化、民間の売上3倍・投資3倍、分野やバリューチェーンを横断した予算配分の全体最適化、高付加価値な海外需要の取り込み、クリエイターへの対価還元、、、散りばめられた威勢の良いポジティブワードそれ自体に異論はない。
とは言え、映画監督の是枝裕和氏が指摘したとおり※1、そもそも創作の動機はビジネスとしての「勝ち筋」だけではないし、世界的にも見劣りする文化・芸術関連予算とのバランスの悪さは否めない。政府予算に占める文化支出額の比率は0.1%、フランスは同0.9%、韓国は同1.2%※2である。数字は2020年のものであるが趨勢は変わらない※3。文化財、芸術、芸能の保全、保護、継承のための財政基盤は極めて脆弱だ。経産省の言葉どおり“創造力で稼ぐ国”を目指すのであれば省庁の枠を越えた次元において“持続可能な文化のバリューチェーン”戦略こそが求められる。それにつけてもまずはクールジャパン機構の総括である。
※1:2026年4月2日、第2回コンテンツ産業官民協議会、資料10より
※2:令和2年度「文化行政調査研究」諸外国における文化政策等の比較調査研究事業より
※3:2026年度の文化支出(予算)は文化庁予算1,073億円に国際観光旅客税から文化庁に配分される224億円の計1,297億円、政府予算(一般会計)に対する文化支出の割合は0.1%
今週の“ひらめき”視点 2026.8.23 - 8.27
代表取締役社長 水越 孝
ワークスアプリケーションズがHUEのパートナー向けに、「HUE認定制度」と育成プログラム「HUE Partner Basecamp」を開始することを発表しました(2026年8月18日)。本制度では、HUEに関する知識と実務経験を有するプロフェッショナルの育成・認定を一体的に支援します。同社は、これにより、HUEを活用した業務変革を担う人材の育成を加速するとともに、パートナーとの共創基盤を強化し、パートナーの競争力向上と、顧客への提供価値向上を目指すと言います(https://www.worksap.co.jp/about/news/20260818-07/)。
矢野経済研究所では8月末にERPのレポートを発刊予定です。その中でもパートナーについて言及しています。AI時代のベンダー、パートナーは互いにこれまでとは異なることも求めているようです。ワークスアプリケーションズが目指す「業務変革を担う人材の育成」加速は、今後の市場にとって非常に重要と考えます。
半導体工場やデータセンターに関して、電力問題とともに水問題もフォーカスされるようになってきました。ITをリサーチフィールドにしている私も、自然と、水資源にも目が行くようになっています。
水が豊富な日本という印象がありますが、8月7日に公表された「令和8年版 日本の水資源の現状」によると、降水量は多いものの、一人当たり年降水量・水資源賦存量でみると、世界平均を下回っているそうです。やはり水は貴重な資源なのだと再認識しました。
また、特に半導体工場では地下水を利用することになると思いますが、地下水は、その挙動等が不透明であり、水量や水質保全に関して地域において合意形成をはかる地下水マネジメントが重要になると指摘されています。
技術進展の速さ、社会・自然との関りの複雑さ、ITを広く理解するにはまだまだ勉強すべきことがあるようです。
当社代表が最新のニュースを題材に時代の本質、変化の予兆に切り込みます。
8月17日、内閣府は4-6月期の国内総生産(速報値)を発表した。実質成長率は前年同期比+0.3%、年率+1.1%、名目成長率は同+1.2%、年率+4.8%、金額換算では実質598兆円、名目688兆円となる。政府は「引き続き中東情勢の影響を注視する必要がある」と前置きしつつも、3四半期連続でのプラス成長について「景気は緩やかながら回復基調にある」との認識を示した。
ただ、内訳をみると必ずしも楽観できない。内需は▲0.2%、民間需要、公的需要いずれもマイナス、これを外需が補った。輸出から輸入を差し引いた外需は+0.5%、中東情勢の悪化に伴う原油輸入の減少と財貨・サービス輸出の伸びが外需を押し上げた。一方、民間最終消費支出(個人消費)は▲0.02%と冴えない。とりわけ、持ち家の帰属家賃を除いた家計最終消費支出は▲0.1%と低調だ。
この春、大手・中小ともに賃上げ率は高水準だった。実際、毎月勤労統計調査(6月速報)の現金給与総額は前年比+3.4%、家計調査でも勤労者世帯の実収入(二人以上世帯、6月分)は名目+3.9%、実質+2.0%となった。ところが、消費支出は名目▲1.5%、実質▲3.3%、実質ベースでの前年割れは7か月連続だ。物価高、社会保険料の増加、住宅ローン金利の上昇、“現役世代”の負担感は高まる。加えて、年金に依存する彼らの“親世代”の購買力もマクロ経済スライドにより実質的に目減りする。全世代で消費が「抑制的」になって然りである。
一方、日経平均株価は最高値を更新、公示地価は5年連続で上昇、経団連が集計した大企業の夏季賞与の平均妥結額は初めて100万円を超えた(従業員500人以上、22業種163社)。まさに好景気だ。では、低迷する個人消費は一体どこに? この夏、筆者はシティバンクのトップトレーダー“ギャリー”の壮絶な半生を回顧した「トレーディング・ゲーム」(ギャリー・スティーヴンソン著、千葉敏生訳、早川書房)を読んだ。そこにこんな一節がある。「平凡で勤勉なふつうの家庭の冨が、金持ちにわたる」「中流階級や政府が貧しくなるほど、金持ちは豊かになる」「答えは格差だ」「それは一時的なものでなく末期症状だ。経済の死だ。癌だ」。“ギャリー”はそこに賭け、大儲けする。
今週の“ひらめき”視点 2026.8.16 - 8.20
代表取締役社長 水越 孝
特に「誤解」は、ベテランと新人作業者間で、深刻な品質格差を生む原因となります。
従来の作業マニュアルでは、「文書内容」と「読み手の解釈」にギャップが生じ、このギャップを自己解釈で埋めてしまうため、結果として不良品の発生や事故が怒ってしまいます。ここで、この課題を解決し現場を変える手法としては、以下のようなものがあると考えます(課題解決策)。
・手順不遵守が品質不良に与える影響の説明:現場作業者に不良の大半を占める「不遵守」のメカニズムを解説し、作業手順を適正化することで、品質のバラつきを抑える
・手順不遵守が起きる原因の解消: 「知らない」、「共有されていない」、「誤解している」という観点から現場リスクを再点検し、点検結果を作業者教育に反映する(再教育)
・標準化対策の改善:「視覚的な情報共有」を活用して、文章・マニュアルでは理解が難しい取り組みを見える化する
・具体的な改善事例の提示:より理解を深めるための施策として、徹底的な事例研究を行う
先月、当ユニットで「2026 フィールドワーク支援ソリューション市場の実態と展望」というタイトルのレポートを発刊しました。
注)弊社で考えるフィールドワーク支援ソリューション(現場作業支援サービス)とは、スマートデバイスを始めとしたIT機器・デバイス及びデジタル技術を活用した、「現場作業者(ユニフォームを着て作業する現場作業者をイメージ)」の業務をサポートする仕組みと規定。そして当該ソリューションは、作業者の負担低減や作業効率の向上/省人化、安全な作業環境の実現、健康管理/ヘルスケアモニタリング、残業時間の縮減といった働き方改革対応、作業者教育・トレーニングのサポート、業務ノウハウ/技術継承支援などの実現を目指すものである。
ここでは、そこで明らかになった「ヒューマンエラーによる品質低下/安全性の低下」にフォーカスした考察を行ってみました。
品質不良の抑制や再発防止の徹底、現場作業者の安全向上を実現する上で、実際の改善が難しいのが「ヒューマンエラー」です。
品質管理において設備や原材料に起因する不良は、新たな投資やスペック変更が必要となり、その対策に莫大なコストや時間がかかります。しかし、力ずくての改善が可能なエラーです。
一方、改善自体は難しいけど、改善余地が大きく、比較的低コストでの対処が可能なのが「ヒューマンエラーの改善」です。
現場作業でのヒューマンエラー要因としては、「手順不遵守」が大きな要因となっています。つまり作業手順の不遵守を解消することが、品質不良の縮減などでは効果が高いと言えましょう。「手順書があるのに、なぜか守られない」、「人によって作業のやり方が違い、品質が安定しない」などなど。
現実問題として、ルールを守るように指示しても、これを守らない作業者が一定数存在します 。この問題の根底にあるのは、個人の意識の問題ではなく「標準化の不足」であると考えます。そして「標準化」が機能しない原因としては、以下の3点が指摘できます。
・標準作業が存在しない(作業が属人化しており、正しいやり方が不明確など)
・標準作業が共有されていない(従業員教育の欠陥、周知が不十分など)
・作業手順を誤って理解している(誤解している)
2026年7月31日、PayPayは、ソフトバンクおよびLINEヤフーとともに、セブン&アイ・ホールディングスおよびセブン‐イレブン・ジャパンとの戦略的な業務提携を発表した。また、PayPayとソフトバンクは、セブン&アイ・ホールディングスとの資本提携にも合意した。セブン&アイ・ホールディングスは三井住友カードとも資本・業務提携を締結しており、ソフトバンク、PayPay、三井住友カードがそれぞれ1,000億円を出資する。
今回の提携の背景には、セブン‐イレブンが持つ店舗での顧客接点と、PayPayなどが持つデジタル上の顧客基盤を結び付ける狙いがある。PayPayは約7,500万人の登録ユーザーを抱え、セブン‐イレブンは国内2万店を超える店舗網を展開している。従来からセブン‐イレブンアプリにはPayPayの決済機能が搭載されていたが、今回の提携により、ID、ポイント、アプリ等まで連携範囲を広げる。
セブン&アイは、かつて独自のコード決済サービス「7pay」を展開したものの、不正利用問題を受けて2019年にサービスを終了した。その後も電子マネー「nanaco」を中心に独自の決済・会員基盤を展開してきたが、nanacoの取扱高は近年減少傾向にある。こうしたなか、セブン&アイは自社単独で決済サービスを拡大するのではなく、国内最大級の決済基盤を持つPayPayと連携することで、決済戦略の再構築を図る狙いがあるとみられる。
具体的には、セブン&アイグループの共通会員基盤である7iDをPayPay IDへ統合し、共通の顧客基盤を構築する。また、セブン‐イレブンのストアポイントとしてPayPayポイントとVポイントを導入するほか、PayPay、LINE、三井住友カードなどのミニアプリをセブン‐イレブンアプリ内で展開することも検討する。さらに、各社が持つIDにひも付く購買・決済データを組み合わせ、利用者の属性や購買行動に応じたクーポンの配信などにつなげる方針である。
電子マネー/コード決済市場においては、ID、ポイント、決済、金融サービスを組み合わせた「経済圏」の強化による顧客獲得競争が続いている。今回の提携によって、PayPayのデジタル上の顧客基盤と、セブン‐イレブンの日常的かつ大規模な購買接点が結び付くことになる。単純合算で、1億人を超える国内最大級の共通顧客基盤が構築される。市場においては、従来の電子マネーのタッチ決済にコード決済を組み合わせ、サービスの利便性向上を図る動きが相次いでいる。今後は、PayPayの利用拡大がnanacoの取扱高に与える影響に加え、今回の提携が市場の競争環境や事業者間の連携にどのような変化をもたらすのか注目される。
2026年7月31日、「2026年版 電子マネー/コード決済市場の実態と展望」を発刊しました。
2026年版 電子マネー/コード決済市場の実態と展望 | 市場調査とマーケティングの矢野経済研究所
キャッシュレス決済の普及が進む中、コード決済市場は利用可能店舗の拡大や、オンライン決済をはじめとする利用領域の広がりを背景に、拡大を続けています。主要事業者では金融・決済事業の再編が相次いでおり、証券や決済などサービス間の連携を進めることで、総合的な金融サービスへの提供に向け、事業領域を拡大しています。一方、交通系電子マネー事業者においても、コード決済の普及を受け、従来のタッチ決済にコード決済を組み合わせ、サービスの利便性向上を図る動きがみられます。
本資料では主要事業者様へのインタビュー調査等を通じて、市場動向を整理しています。さらに、独自Payをはじめとするプリペイド市場の動向にも触れながら、市場規模及び推移、分野別のマーケット分析を行っています。
本資料が事業戦略の検討や市場環境の把握における一助となれば幸いです。
矢野経済研究所は、8月8日(土)から16日(日)まで夏季休業となります。そのため、次の営業日は8月17日(月)です。
皆様、お体にお気をつけてお過ごしください。
日本オラクルがOracle Fusion Applications内でエージェント型アプリケーションを構築・実行するAIネイティブのビルダーエクスペリエンスの説明会を行いました(7月30日)。これにより、顧客とパートナーは、「Oracle Fusion Cloud Applications」内でエージェント型アプリケーション「Fusion Agentic Applications」をネイティブに構築・実行できます。
AIエージェントについては、大別すると、プラットフォームを介す製品と製品内に組み込まれたものとがあり、オラクルは後者です。
すべてのデータが蓄積されたところでAIエージェントが判断する、そうすることで抜け漏れのない意思決定につながる、組み込み型の優位性を知った気がします。一方で、すべてを1社のツールに頼る企業が多くはないことも事実です。AIエージェントの利用は増加していくと予想しますが、その在り方については今後も考えていく必要がありそうです。
SAP NOW AI Tour TOKYOに参加しました(7月29日)。グランドキーノートでは日本郵船の代表取締役 河野氏が登壇。河野氏は、本社および国内外の子会社(船舶保有のための特別目的会社を含む)約350社の会計基幹システムをパブリック版のSAP S/4HANA Cloudへ移行し、全社業務の標準化を実施した時のお話をされました。
導入後すぐにすべての業務が楽になったわけではないということ、導入直後には手間が増えた部分もあったこと(かつてアドオンしていた部分など)、それによる現場からの反発もあったことなどにも言及されたのですが、これらはERPに限った話ではないと考えます。あらかじめこれらを知り、全社的な視点で取り組んでいく。経営者の覚悟と判断もシステム導入/移行にとって重要なファクターであると再確認しました。
LINEヤフーグループのPayPay保険サービスは、PayPayアプリ内で提供する「PayPayほけん」ミニアプリの累計加入件数が、2026年7月20日に1,000万件を突破したと発表しました。サービス開始から約4年7カ月での達成となります。
https://paypay.ne.jp/notice/20260728/f-insurance/
「PayPayほけん」では、「あんしんドライブ」や「熱中症お見舞い金」など、日常生活のリスクに備える商品を提供しています。申し込みから保険金請求までをアプリ上で完結できる点も特長で、加入者アンケートでは「PayPayで支払える」「保険料が安い」「スマートフォンで申し込める」といった点が支持されているそうです。
これまで保険には、「難しそう」「手続きが面倒」といったイメージがありました。PayPayのサービス自体は比較的若年層の利用も多い印象がありますが、その中で保険加入の累計件数が1,000万件まで伸びていることを考えると、これまで保険との接点があまりなかった層も利用している可能性があります。そう考えると、若年層は保険そのものへの関心が低かったというよりも、加入までの手間や心理的なハードルが高かっただけなのかもしれません。
もちろん、1,000万件には短期契約商品やリピート利用も含まれているため、単純に1,000万人が加入しているわけではありません。それでも、保険との接点や加入体験が変わることで、これまで保険に縁のなかった層にも利用が広がっている可能性はありそうです。
熱中症保険や自転車保険などをきっかけに、人生で初めて保険に加入する人もいるはずです。保険商品そのものが大きく変わったわけではありませんが、「スマホで手軽に加入できる」という体験が、保険をより身近なものにしているように感じます。
インフラ保全の課題と方向性①より続く
前述したような現況を踏まえると、2030年に向けての社会インフラ保全では、従来手法(レガシータイプの保全)を踏まえた上で、社会インフラ向けITソリューションとでも言うべき新たなインフラ保全手法を展開せざるを得ないと考えます。
具体的には、IoTやAI、クラウド、5G/ローカル5G、ドローンといったテクノロジーを活用して、従来の人手による目視点検/打音検査中心の保全から、点検・診断の自動化、さらには補修・更新も含めた業務フローにおける意思決定の効率化を図り、限られた人員と予算のもとで保全業務を遂行することになります。これにより点検対象の優先順位を最適化し、より危機的状況にあるインフラの点検・診断を優先した保全対応にするイメージです。
例えば、AIを活用した点検支援ソリューションは、一部でPoCや実装が始まっているものの、精度やコスト、運用負荷といった面での課題もあり、従来の目視点検などを明確に上回る実効性は限定的です。しかし今後は、テクノロジー自体の高度化に加え、データ連携やシステム運用方法の高度化によって、その実効性は着実に高まると見ております。
2030年を展望すると、AIやIoTなどを活用した社会インフラ向けITソリューションは、従来型の点検手法の代替といった観点に加えて、「限られた人員と予算で、点検・診断・補修の優先順位を最適化する仕組み」と位置づけられます。つまり、目視点検を不要にする代替技術ではなく、保全業務全体の効率と精度を底上げするテクノロジーと位置付けられるのです。
そしてこの観点では、インフラ保全の「最適化基盤(デジタルツイン)」がベースになる。そして老朽インフラ対応の持続可能性を確保するには、この最適化基盤こそが最も有効な対応であると考えます。
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