今年3月16日に開催されたNVIDIAのGTC発表では、GPU性能競争そのものよりも、AIデータセンター全体をどう設計し運用するかという議論が浮上した。
https://nvidianews.nvidia.com/
NVIDIAは今回の発表で推論の拡大と、ヴェラ(Vera)CPU、ファインマン(Feynman)プラットフォームなどシステム単位の戦略を併せて打ち出し、チップ供給者の立場からAIインフラ設計者へという移行がより鮮明になったことを示した。その流れには以下のような背景があるとされる。
「AIの5段ケーキ」の底が揺れている:AIサービスをケーキに例えると、最上層から<アプリケーション⇒モデル⇒推論エンジン⇒サーバー⇒チップと接続網(最下層)>となる。これまでは、主に上層での競争が激しかった。しかしデータの往来が急増するにつれ、ボトルネックはチップ内部ではなく、チップ間、サーバー間、ラック間、つまり底で大きくなっている。ヴェラCPUはまさにこの地点、GPUと接続網の間でデータの流れを調整する役割を担う。これにより、CPUとネットワーク、電力効率が再び核心として浮上した。
「光」へ向かう理由は電力だけではない:ここで光通信が重要になる。NVIDIAは3月初旬、Coherent社・Lumentum社と同時に戦略的パートナーシップを発表した。Coherentはシリコンフォトニクス、Lumentumはレーザー部品を供給する米国の光技術企業であり、NVIDIAは両社にそれぞれ20億ドルずつ計40億ドルを投資し、レーザー・光ネットワーク製品に対する数十億ドル規模の複数年契約まで締結した。光通信ベースの接続は電力効率にとどまらず、従来比でエネルギー消費を70%以上削減しながら、信号完全性とネットワーク復元力、導入速度の面でも利点を持つためである。
これは国内でNTTグループが推進するIOWN構想の中心軸であるAPNと類似した方向性を共有している。同グループはAPNを通じて光技術をデバイスからネットワークまで適用し、大容量・低遅延・低電力伝送を目指すと説明している。AIインフラのボトルネックが演算そのものよりデータ移動と電力効率へと移行するなか、「光」は通信網の外ではなくデータセンター内部でも核心技術として浮上している。これを踏まえると、今回のGTCの核心はより強力なGPUだけでなく、そのGPUをつなぐ接続構造の変化にもあると言えるだろう。この転換が加速するほど、光通信市場の構造的な成長可能性も高まることが期待される。
金融システムインフラの中心的な課題の一つが、災害や障害発生時におけるサービス継続性の確保といえる。これに対応するため、銀行は複数の地域にデータセンターを分散させて運用するが、センター間の距離が広がるにつれ、リアルタイムでのデータ同期が技術的に困難になるという制約が生じる。このため金融インフラは事実上、近距離分散にとどまってきており、広域分散構成は性能上の問題から現実的な選択肢になり得なかったとみられる。この制約は以前から金融業界で認識されてきた。
三菱UFJ銀行、NTTデータグループ、NTT西日本の3社は、この制約に対する技術的な解法として、IOWN APN(All-Photonics Network)の金融システムへの適用可能性を検証した。3社はNTT主導のグローバルコンソーシアムであるIOWN GF(Global Forum)の金融ユースケースプロジェクトの一環として、実際のデータセンター環境を想定したPoCを実施し、その結果を2025年12月にホワイトペーパーとして公開した。
当PoCは単発の実験ではなく、2024年7月よりIOWN GFで金融ユースケースと要求性能を定義し、2025年2月にはその実装に向けたアーキテクチャと検証基準を整理していた。その上で実際にシステムを構成し性能を計測した段階にあたり、概念から設計、検証へと続く流れが今回の発表をもって完結している。また、実証の前面に立ったのがMUFGである点は、この取り組みが技術検証の域を超え、金融インフラの需要側における実質的な検討へと移行しつつある可能性を示唆している。
https://iowngf.org/inter-dc-vm-migration-and-long-distance-db-replication-for-financial-industry/
衛星インターネットは災害や戦争などで地上通信網が途絶した際の代替接続手段として注目されてきた。こうした流れの中で、低軌道衛星通信市場を急速に拡大しているサービスがStarlinkである。米SpaceX社は現在、一般向けのStarlink、企業向けのStarlink Business、軍・政府向けのStarshieldなどの形で衛星通信事業を展開している。
今日、多くの国は国家安全保障や公共秩序を理由に、デジタル空間を一定範囲で管理する制度や技術を整備している。しかし衛星インターネットはインフラ自体が宇宙空間に構築されるため、従来の地上通信網とは異なる形での管理や規制が求められる。この構造的特徴から、衛星ネットワークは政治的状況においても一つの変数として現れるようになった。
例えばイランでは、2000年代半ばから「ハラールネット(HalalNet)」と呼ばれる国内ネットワークの仕組みを整備し、外部インターネットとの統制を図ってきた。2026年初頭の反政府デモの際、政府は大規模なインターネット遮断を実施したため、Starlinkが緊急ネットワークを提供し衛星インターネットが通信遮断を回避する接続手段として利用されたことがある。しかし、当局は直ちにディープパケットインスペクション(DPI)、ネットワークフィルタリング、トラフィック制御など、中国の技術を活用した通信統制措置を実施したとみられる。
衛星インターネットが注目される理由は明確だ。災害や紛争によって地上通信網が機能しなくなった場合、迅速な通信復旧の手段となり得るためである。また、開発途上国や遠隔地域で通信インフラを確保し、情報アクセス格差の縮小に活用される可能性も指摘されている。一方で衛星通信は技術的に電波妨害(ジャミング)の対象となり得るほか、関連技術も進展していることから、紛争環境での通信安定性を巡る懸念もある。天体観測に影響を与えるとされる「スターリンク・トレイン」現象への批判や、スペースデブリ問題も課題として挙げられている。
それでも今後の衛星通信市場の成長余地は大きい。国際電気通信連合(ITU)によれば、世界ではまだ約26億人が通信インフラの届かない地域に置かれている(サハラ以南のアフリカ、南アジア、東南アジア、中南米の農村部など)。こうした空白が、今後の低軌道衛星通信市場の成長を支える背景となると考えられる。
当社代表が最新のニュースを題材に時代の本質、変化の予兆に切り込みます。
4月1日、高等学校等就学支援金に関する法律の改正法が施行、就学支援における所得制限が撤廃された。これにより公立高校には生徒1人あたり年間11万8800円、私立高校には同45万7200円を上限に授業料が支援される。進学率が98%に達する高校への就学支援の取り組みは、従来から国あるいは各自治体の施策として段階的に進められてきたが、今回の改正により家庭の経済力を問わずすべての高校進学希望者の授業料負担が免除される。
7日、政府は学校教育法、教科書無償措置法の改正案を閣議決定、デジタル教科書を国の検定対象に加え、小中学校における正式な教科書として無償配布する。タブレット端末を活用した教材の活用は文科省のGIGAスクール構想のもと既に浸透しつつある。しかし、教科書として認められているのは「紙」のみである。政府はデジタル教科書を正規の教科書として認定するとともに、紙の教科書に掲載されている動画等の補助教材にリンクするQRコードの接続先についても検定対象とする。紙、デジタルの選択は各教育委員会に委ねるとし、2030年度の導入を目指す。
高校進学における「機会の平等」は達成した。学校選択の要件は教育の独自性、進学率、設備環境ということになる。結果、優位に立つのは私学であり、一部の伝統校や中高一貫校を除けば公立の不利は言わずもがなである。人気校を巡る受験競争はし烈化、低年齢化し、そこに新たな経済要件が生じる。一方、デジタル化についても課題が残る。デジタル教育の先進国フィンランドでは国際学習到達度調査(PISA)の順位降下を受け、既に「紙」への回帰が始まっている。シンガポールでも2023年に小学生への端末配布を中止した。心身発達への影響や集中力低下に対する懸念が理由である。
公立高校の定員割れは深刻だ。とりわけ地方では統廃合の呼び水となる。一方、赤字の学校が4割を超える私学への実質的な販促支援は都市部における需給バランスも崩す。誰もが学べる社会に異論はない。しかし、議論の軸足は「負担の軽減」や「支援の平等」といった“家計”の問題に偏っており、“公立”の将来ビジョンそれ自体は置き去りにされた感が拭えない。教科書のデジタル化についても同様だ。教科書のペーパーレス化とコンピュータサイエンスは別物である。教育におけるIT活用の効用とIT人材を育成するための教育の在り方についても更なる議論が必要である。
今週の“ひらめき”視点 2026.3.29 - 4.9
代表取締役社長 水越 孝
さらにもう一つの変化が重なっている。戦争そのものが、次第にデータと技術を中心に展開されるようになっている点である。近年の軍事作戦ではAIとデータ分析を活用して意思決定の速度を高めようとする試みが増えている。戦場の速度が上がるほど、情報の生成と拡散の速度もまた速くなる。地政学的事件が経済システムや市場へ伝わるまでの時間も、以前よりはるかに短くなっている。
こうした環境の中で金融インフラも変化圧力を受けている。伝統金融は依然として取引時間、決済構造、規制体系を前提とした運営を維持している。一方で一部のデジタル資産取引では、ブロックチェーン決済、24時間取引、スマートコントラクトによる自動化取引などの仕組みを実験している。ディファイのエコシステムではこうした構造がすでにさまざまな形で実装されており、ステーブルコインを中心とするデジタル決済ネットワークも徐々に拡大している様子が観察される。
戦争は常に経済と市場に衝撃を与える。しかし今回の事態が示したのは単なる価格変動以上の場面であった。市場が停止しているあいだにも出来事は進行し、情報は拡散していく。そして企業や機関はそのあいだで次の市場開場を待つしかない。このギャップをどのように理解し、どう対応していくのか。レガシー金融とデジタル金融、そしてAIによる情報分析が同時に機能する環境の中で、金融インフラと市場構造をどのように再検討していくのかという議論は、今後一つの論点として浮上してくる可能性がある。
参考:Reuters, Financial Times, Bloomberg, Euronews
株式・債券・為替市場の大半は取引時間が定められており、祝日や週末には取引が停止する。しかし、地政学的な出来事は市場の時間に合わせて発生するわけではない。今回の米国・イスラエルとイランの戦争(2026 Iran War)もまた週末に発生した。世界の金融市場の多くが休場する中で事態は進行し、企業や市場参加者は価格変動を即座に確認したり対応したりする手段を持たない状況に置かれていた。
戦争が金融や産業に及ぼす影響は、おおむねよく知られた経路をたどる。エネルギー価格、海上輸送、保険コスト、そしてインフレ圧力である。とりわけホルムズ海峡のような海上の要衝は世界のエネルギー供給網の要となる通路であり、緊張が高まれば原油価格や輸送コストに直接的な影響を及ぼす可能性がある。こうした連鎖構造はこれまで多くの紛争で繰り返し観察されてきたものであり、今回の事態でも改めて注目されている。
しかし今回の状況で注目すべき点は別のところに現れた。金融市場の「時間構造」である。戦争が発生した瞬間、多くのレガシー金融市場は休場状態にあった。とりわけ日本や韓国のように週末取引が存在しない市場では、企業や市場参加者が状況変化を示す価格シグナルを直ちに確認することは難しかった。地政学的事件が発生したにもかかわらず市場価格はまだ形成されておらず、関連情報が拡散する中、市場の状況を把握しづらい状態が続いた。
この空白は単なる技術的問題ではない。出来事が発生した際、状況をいつ、どの経路で把握できるのかという問題である。ここ数年、一部の暗号資産(crypto)やディファイ(DeFi)基盤の市場は24時間取引の構造を背景に、地政学的事件やマクロ経済ニュースに比較的迅速に反応する動きを見せてきた。伝統的金融市場が開く前にデジタル資産市場で価格変動が先に現れる例も観察されており、今回のケースでもビットコインなどの動きを通じ、市場動向を先に読み取ろうとする動きが見られた。
この過程で注目される要素の一つがステーブルコインである。ステーブルコインはドルなど法定通貨に連動する仕組みにより、デジタル資産エコシステムの中で主要な取引・決済手段の一つとして利用されている。世界の一部取引では実際の決済手段として用いられ、デジタル資産市場の取引フローを維持する役割も果たしている。こうした構造は、伝統的金融市場が休場している時間帯でもデジタル市場が継続して動く基盤の一つとして言及されることがある。
もちろん、こうした市場が伝統金融を置き換えると断定することはできない。取引規模や制度基盤、参加者構成などの点で依然として大きな差が存在するからである。しかし事件発生のタイミングと市場取引時間のあいだに存在するギャップが次第に明確になりつつある点は注目に値する。とりわけグローバル企業や金融機関の立場から見ると、情報拡散の速度と市場価格形成のタイミングとのずれに対する認識は徐々に高まっている。
(再掲)イベントのご案内です。
3月11日に車載ソフトウェアに関する最新レポート『2026 AI-DV(AI定義車両)市場の実態と展望 ~SDV/車載ソフト市場の構造大変革、産業OS・都市OS化を目指す未来~』を発刊しましたが、それを踏まえて、株式会社イードさんのセミナーに登壇させて頂くこととなりました。
内容としては、「SDVは本当に儲かるのか?」です。SDVは現在、各OEMともに絶賛開発中の状況にあり、ある程度完成形が見えたとしても、OTAを通じて、常に機能アップデートが求められます。このため開発費は継続的に増えていくなか、回収していくためのビジネスが必要となります。
そこで、OEMやサプライヤー、クラウドベンダーとの意見交換を通じてみえてきた、現時点における「儲けどころ」について共有することで、視聴者の皆さんと一緒に「儲けどころはどこにあるのか」を含めて考える機会になればと思います。
ご興味ありましたら、ぜひお申し込みをご検討頂ければと思います。
2026年3月10日、「2026 マネージドサービスマーケットの実態と展望」を発刊しました。
テーマとして取り上げたマネージドサービスには様々なサービスが内包され、また事業者それぞれに提供範囲が異なります。さらに、ひとつの事業者内でも、複数のマネージドサービスを展開していたり、部門をまたがって運用保守に取り組んでいたりします。
そんな難しい状況の中でも、市場を牽引するベンダーの皆様にこの度取材協力いただきました。
今回のレポートでは、マネージドサービスベンダー各社のサービス特長や戦略動向を取材した企業個票に多くのページをあてていますので、そちらもぜひご注目ください。
2026年3月10日、「2026 マネージドサービスマーケットの実態と展望」を発刊しました。
これまで矢野経済研究所で調査を行ってきたシステム運用保守サービスやITアウトソーシングサービスの内容を踏まえつつ、新テーマとしてマネージドサービスを掲げ、市場の動向や各事業者の取り組みをレポートにまとめています。
今回の取材では、ITインフラ等の運用保守サービスに加えて、運用保守に関するアセスメントや改善活動にも焦点をあてています。現在、運用の高度化に向けた動きは着実に進んでいるようです。
ぜひ、マーケット研究や事業戦略の検討、サービス選定にお役立てください。
福岡市の照葉積水ハウスアリーナ。ライジングゼファーフクオカのホームゲームが開かれた会場の売店で、来場者がレジの前に立つ。財布やスマートフォンの代わりにマイナンバーカードを端末にかざすと、決済はその場で完了する。支払いに使われているのは円ではなく、円連動型ステーブルコインJPYCである。
このシーンは、三井住友カード(SMCC)とマイナウォレットが1月下旬に共同実施したステーブルコイン決済の実証の一部である。両社はマイナンバーカードをウォレットのように利用する決済モデルの検証に向けたの連続的な実証実験プログラムを設計し、初回の実証をライジングゼファーフクオカのホームゲーム会場で実施した。事前にマイナンバーカードで利用者登録と本人認証を済ませた実証参加者は、会場内の売店などでカードを端末にタッチするだけで決済ができる。決済端末には、従来から三井住友カードが展開するstera端末が使用された。
今回の実証の特徴は、ステーブルコイン決済に伴う手続きを大きく圧縮した点にある。通常、ステーブルコインを利用する場合は専用ウォレットアプリのインストール、ウォレット作成、認証手続きなどが必要となる。今回の実験では、こうした工程を新たなアプリや専用端末を導入せずに、マイナンバーカードによる本人認証と既存のカード決済端末インフラを組み合わせる形で実現した。利用者にとっては、従来のカードのタッチ決済に近い操作で利用できる構成となっている。
同実証は今後、商業・観光・公共施設など多様なオフライン環境へと拡大される予定である。また、自治体と連携したデジタル地域通貨の配布や公共料金支払いなど、行政分野での活用可能性についても検討が進められている。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000822.000032321.html
※当社では、日本およびグローバルステーブルコイン市場に関するレポート「2026年版 ステーブルコイン市場の実態と展望」を発刊しており、最新動向の調査・分析を継続しています。
3.この構造において、消費者が体験する決済の形は従来のカード決済と大きく変わらない可能性がある。一方で決済プロセスのバックエンドでは、ステーブルコインウォレットとカードネットワークが接続されることで、ブロックチェーン基盤の資産が既存の決済網と接点を持つ形となる。
ビザは現在、ステーブルコインを活用したオンチェーン精算の可能性も検証している。一部の取引については、USDコイン(USDC)を用いてブロックチェーンネットワーク上で精算する仕組みがすでに運用されており、銀行間送金をブロックチェーン基盤の精算に置き換える実証も進められている。
決済産業では近年、カードネットワーク、オンライン決済インフラ、ステーブルコイン基盤の精算インフラが相互に接続される事例が見られる。今回の取り組みも、ビザとストライプ傘下のステーブルコインインフラ企業ブリッジによる連携の一例と位置付けられる。カード決済ネットワークとステーブルコインインフラの結合は、ブロックチェーン基盤の資産が既存の金融インフラの構造の中へ段階的に取り込まれていく動きの一端として捉えることができる。
※当社では、日本およびグローバルステーブルコイン市場に関するレポート「2026年版 ステーブルコイン市場の実態と展望」を発刊しており、最新動向の調査・分析を継続しています。
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2.近年、ステーブルコインは暗号資産の投資手段というより、国境を越えた資金移動のインフラとして利用される事例が増えている。特に為替変動が大きい、あるいはドルへのアクセスが制限されている一部の国では、ドルの代替手段や海外送金手段として利用されるケースも報告されている。
今回の発表のもう一つの軸がストライプだ。ストライプは米国の決済インフラ企業で、開発者が提供されるAPIを通じてオンラインサービスにカード決済機能を直接統合できるプラットフォームである。電子商取引やSaaS企業が自社で決済システムを構築することなく、決済処理や精算を実行できる環境を提供することで成長してきた。B2B決済インフラに強みを持ち、消費者向け決済プラットフォームで知られるペイパル(PayPal)と並び、グローバルオンライン決済市場の主要事業者として言及されることが多い。
ストライプは、2024年10月ステーブルコインインフラ企業ブリッジを約11億ドルで買収すると発表し、審査を経て2025年2月に買収を完了した。ブリッジはステーブルコインを基盤とした決済・精算インフラを提供する企業であり、今回のビザとの協力拡大も、こうした事業拡張の流れの中で位置付けられる。
こうした動きは日本市場とも無関係ではない。ストライプは日本を含む複数の国で決済インフラを提供しており、日本企業の中にもストライプを通じて海外決済を受け取ったり、オンライン決済システムを構築したりする事例が少なくない。事業者の立場から見ると、「ステーブルコイン連動カード」の拡大は新たな決済手段の登場というより、カードネットワークとブロックチェーンベースの決済インフラが結び付くことで、決済や精算の選択肢が広がる動きと捉えることができる。また日本では2023年、ステーブルコインに関する法制度が整備され、銀行、資金移動業者、信託会社などが発行主体となり得る枠組みが整えられた。近年は主要金融機関がステーブルコインの活用可能性を検討する動きも見られており、海外で進むカードネットワークとステーブルコインインフラの結合事例は、日本の金融市場においても制度や事業モデルの接点を考える上で参考となる可能性がある。
※当社では、日本およびグローバルステーブルコイン市場に関するレポート「2026年版 ステーブルコイン市場の実態と展望」を発刊しており、最新動向の調査・分析を継続しています。
当社代表が最新のニュースを題材に時代の本質、変化の予兆に切り込みます。
3月25日、日本郵船を中心とした官民連合※は横浜港大さん橋埠頭に、世界初の洋上浮体型データセンター(DC)を設置、実用化に向けて実証実験を開始した。生成AIやクラウドサービスの普及・拡大に伴いDC需要が高まる。一方、大型DCは、莫大な電力や耐災害性を確保する必要性に加えて、騒音、景観問題、建設費の高騰といった課題も指摘される。今回の実験は浮体式係留施設(ミニフロート)に太陽光発電システムを備えたコンテナ型データセンターを設置することで、大型DC固有の社会課題の解決を目指す。
実験では太陽光発電システムが採用されているが、将来的には洋上風力発電とのシナジーが構想されている。ちょうど1年前の日本郵船のリリースによると「洋上風力発電所の近くに浮体型DCを設置することで、陸上の電力系統に依存・制限されないグリーンDCを実現、地球環境の保全とデジタルインフラの成長に貢献する」とされる。
洋上風力発電は国のエネルギー基本計画において「再生可能エネルギーの主力電源化に向けての切り札」と位置付けられ、2040年度までに原発30~40基に相当するプラントの稼働が目指される。現在、30海域が候補区域に指定され、順次事業者の公募が進められている。しかしながら、第1ラウンドで秋田県の2区域と千葉県沖を落札した三菱商事連合がコスト高を理由に撤退を表明するなど、計画は決して順風満帆とは言えない。海に囲まれた日本にとって「洋上」の可能性は大きい。イノベーションの基盤となるDCの拡充と電力自給率の向上は経済安全保障の1丁目1番地とも言える。成長戦略の最重要分野として投資を加速させていただきたい。
さて、余談になるが、2008年に清水建設が発表した「GREEN FLOAT」構想を覚えている方はいらっしゃるだろうか。ゼロカーボン、食料自給、廃棄物ゼロ、4万人の住居ゾーンを備えた海に浮かぶ環境未来都市だ。筆者は何度か研究会に参加させていただいたが、とりわけ、筆者が魅かれたのはこの洋上浮体都市が固定式ではなく浮遊式であるという点だ。その後、どうなったのかな?と同社のHPを覗いてみたら、2024年にオランダで開催された浮体都市研究コンソシアムに「アジア企業として唯一参加」とのリリースが目に留まった。そうか、続いていたのか、とても嬉しく思った。
※日本郵船、NTTファシリティーズ、ユーラスエナジーホールディングス、三菱UFJ銀行、横浜市
今週の“ひらめき”視点 2026.3.22 - 3.26
代表取締役社長 水越 孝
1.2026年3月3日、グローバルカードネットワークのビザ(Visa)は、ストライプ(Stripe)傘下のステーブルコインインフラ企業ブリッジ(Bridge)との協力を拡大し、「ステーブルコイン連動カード」を100カ国以上に拡大する計画を発表した。同カードは現在18カ国で運用されており、今後は欧州、アジア、アフリカ、中東などへ適用範囲を広げるとしている。表面的には新たな決済サービスの海外展開のようにも見えるが、既存のカード決済網がステーブルコインを決済インフラの中に取り込み始めた動きという点で注目されている。
ステーブルコインは、米ドルなどの法定通貨の価値に連動するよう設計されたデジタル資産である。準備金や国債などを担保として1ドルと同等の価値を維持する仕組みが採用されるケースが多く、ブロックチェーンネットワーク上で送金や決済ができるため、ステーブルコインは「ドル連動型デジタル資産」と説明されることもある。ただし「デジタルドル」という表現は中央銀行デジタル通貨(CBDC)を指す場合もあるため、民間発行のステーブルコインとは区別して理解する必要がある。
※当社では、日本およびグローバルステーブルコイン市場に関するレポート「2026年版 ステーブルコイン市場の実態と展望」を発刊しており、最新動向の調査・分析を継続しています。
住友電気工業株式会社は、3月2日~5日にスペイン・バルセロナで開催された「MWC(Mobile World Congress)2026」に出展した。
同社は今回、将来の通信インフラとなる6Gやオールフォトニクス・ネットワーク(APN)を見据えた革新的ソリューションを前面に打ち出した。展示する技術は三つ。①5Gミリ波対応分散アンテナシステム(DAS)、②産業用5GエッジAI端末、③APN関連機器である。
DASとは、光ファイバーで信号を分散し小型アンテナから送信する構成により、屋内や地下空間など電波が届きにくい環境でも高速・大容量通信を実現する方式である。産業用5GエッジAI端末は、端末側でAI処理を行うことで通信遅延の抑制とデータ効率の向上を図る構成を示した。
APN関連では、25Gbps級のAPN-T(トランシーバ)および通信経路を切り替えるAPN-S(スプリッタ)を展示した。遠隔での波長制御やモバイルフロントホール(基地局と中枢設備を結ぶ区間)の経路切替デモを通じて、光ベースのネットワーク運用モデルを紹介した。
2026年2月18日、NTTは、自社開発した光通信の基幹技術が米電気電子技術者協会(IEEE)より「IEEEマイルストーン」に認定されたと発表した。IEEEマイルストーンとは、開発から25年以上にわたり国際的に高い評価を受け、社会の発展に寄与してきた技術的業績を顕彰する制度である。電話や無線通信、コンピュータ、インターネットなど、情報通信の歴史において重要な技術がこれまで認定されてきた。
https://group.ntt/jp/newsrelease/2026/02/18/260218a.html
今回認定されたのは、1本の光ファイバに複数の信号を同時に伝送し、それらを波長ごとに正確に分離する役割を担う光部品である。大容量光通信を可能にした基盤技術として位置づけられ、1990年代以降インターネット普及とともに増加した通信産業を支えてきた。同技術は「石英系PLC(平面光波回路技術)を用いたアレイ導波路回折格子(AWG)」と呼ばれ、NTTが1990年代初頭に開発し、1996年に量産化を実現した。
その後も大容量化・高効率化の要求に対応する技術高度化が継続されており、AWGは25年以上にわたり世界各国の通信網で利用されている主要な光部品である。さらに、NTTグループが推進する「IOWN APN(オールフォトニクス・ネットワーク)」においても、大容量通信を実現する主要デバイスとして活用されている。
なお、当社ではIOWNおよび光ネットワーク関連技術に関するレポートを発刊しており、次世代光通信インフラに関する最新動向の調査・分析を継続している。
キンドリルジャパンで開催された体験型勉強会に参加をしてきました(2026年2月)。
本勉強会では、実際にグローバルでも提供されているサイバーインシデント対応シミュレーションワークショップの一部を体験することができました。自分が架空の企業のIT担当や広報、経営層になり、訪れる状況に対し、経営判断をしていきます。大まかな流れは設問が出される→よりよいと思われる選択肢を選ぶ、ということの繰り返しなのですが、選んだ選択肢によって指標が変化します。今回の勉強会では復旧までの日数と、会社の評判が変わりました(写真参照/提供:キンドリルジャパン)。「こういう判断をしなくてはいけない」ということを知ることで、日常的に考えておかなくてはいけないことを発見できるとても良い機会になりましたし、他の参加者の意見を聞くことで、「確かにそういう考えもできるな」と勉強になりました。
今回は、キンドリルジャパンで用意したシナリオに基づいて体験をしましたが、情報提供の量など次第で、より自社向けのシナリオで学ぶことも可能だそうです。サイバーインシデントは起きないことが何よりなことを考えますと、意図的にこうした環境を用意し、いざという時に備える、というのはとても重要なことであると思いました。

当社代表が最新のニュースを題材に時代の本質、変化の予兆に切り込みます。
3月16日、国立環境研究所をはじめとする研究チームは、気候変動緩和策が将来の飢餓リスクに与える影響について大気汚染軽減効果を考慮した研究成果を発表した。気候変動緩和策は、温暖化による作物収量の低下を抑える効果がある一方、バイオエネルギー作物や大規模植林などと土地利用が競合することによる収量減少リスクを伴う。従来、後者が前者を大きく上回るとされてきたが、対流圏オゾン濃度の低下を計算条件に加えると気候変動緩和策によって増加する飢餓リスク人口の約15%が相殺される、とのことである。
気候変動が世界の食料安全保障に与えるメカニズムは極めて複合的、連鎖的であり、産業政策、貿易構造、食文化、生態系、地理的条件からの影響も大きい。また、収量やアクセスの問題のみならず、「主要穀物のタンパク質と微量栄養素の含有量減少による“隠れた飢餓”を誘発させる。また、熱ストレスによる食欲低下といった生理学的な影響も懸念される」という(国際農林水産業研究センター、2025.10.08より)。
気候変動に伴う被害がもっとも早く、そして、深刻化するのは皮肉にもCO2排出量の少ない地域、言い換えれば経済基盤の弱い途上国だ。13日、バヌアツの気候変動大臣は上智大学での講演で「世界の温室効果ガスの0.00016%しか排出していないバヌアツは、激甚化した1つのサイクロンでGDPの64%を失う」と語った。主食である根菜類の生産や漁業への影響も大きい。干ばつ、水不足、疫病、治安の悪化により食料供給システムが崩壊、慢性的な飢饉に苦しむアフリカの温室効果ガスの排出量も世界の4%に過ぎない。
そう、気候変動や食料安全保障の問題は“弱者から”顕在化する。昨年5月、東京科学大学が発表した調査※によると、過去一年間に「栄養バランスの取れた食事をとる経済的余裕がなかった」「同じ世帯の大人が経済的理由で食事の量を減らしたり、抜いたりしたことがある」といったフードセキュリティが脅かされている人(=食料危機層)の割合は43.8%、食料危機層の人ほど猛暑など異常気象のために体調を崩す人の割合も高く、すなわち気候変動に対してより脆弱である。OECDによると日本の相対的貧困率は2021年時点で15.4%、昨今の物価高はこの比率を更に助長しているものと推察される。傾向は他国でも同じであろう。短期的な物価高対策はもちろん、持続的かつ戦略的な気候変動対策が急務である。
※出典:「日本におけるフードセキュリティの実態と気候変動対策への支持」、調査実施者:東京科学大学未来社会創成研究院ウェルビーイング創成センター、実施時期:2025年2月、サンプル:18歳から79歳の全国の男女10,330人
今週の“ひらめき”視点 2026.3.15 - 3.19
代表取締役社長 水越 孝
2026年2月27日 、新刊レポート「2026 AI時代における広告主のデジタル広告運用に関する実態調査」 を発刊しました。
生成AIの普及やAI Overviews(AIによる概要)の登場により、ユーザーの情報接触経路は変化し、広告主の集客施策やデジタル広告の予算配分にも影響が生じつつあります。一方で、生成AIは広告運用におけるクリエイティブ制作やターゲティング最適化などへの活用も進んでおり、広告効果向上の手段として注目されています。
本調査では、AIの導入およびAIを起点とした市場環境の変化が、広告主企業のデジタル広告戦略にどのような影響を与えているかを定量的に把握することを目的として、国内広告主企業(n=600)を対象にWebアンケート調査を実施しました。具体的には、AI活用レベル、年間広告予算規模、業種別の観点から、AIとデジタル広告運用との関係性を分析しています。
本調査を通じて、AIを要因とした広告予算配分への変化や今後の方向性、企業間における対応格差の実態、さらにはデジタル広告市場の将来的な構造変化を明らかにします。
本レポートは、ネット広告業界における最新トレンドに着目した新刊のマーケティング資料であり、広告主、広告代理店、メディアなどの業界関係者が今後のデジタル広告戦略を策定する際の基礎資料となることを目的としています。ぜひご活用いただければ幸いです。
2026年2月19日、日東工業、NTT西日本、NTTドコモビジネスは、IOWN APN(APN:All-Photonics Network)を活用し、約300km離れた関東のデータセンターと静岡県掛川工場を接続した遠隔AI外観検査の共同実証の成功を発表した。画像認識AIによる画像解析およびロボットアーム制御を遠隔環境で実施し、ローカル環境と同等水準の速度・品質での運用が可能であることを確認したとしている。IOWNは、光技術を中心とする次世代のネットワーク・情報処理基盤の実現をめざすNTTの構想である。
https://www.ntt.com/about-us/press-releases/news/article/2026/0219.html
IOWN構想とは:https://group.ntt/jp/group/iown/
製造現場では人手不足や製品の多様化により、外観検査の効率化が求められている。一方でAI検査の導入には工場ごとの設備整備が必要となるため負担も大きかった。今回の実証では、IOWN APNを用いて工場とデータセンターを接続し、AIをデータセンター側で運用する遠隔AI外観検査の有効性を確認した。
実証は掛川工場で撮影した製品画像をデータセンターへ転送→画像認識AI「Deeptector®」で不具合を検出→ロボットがシールを貼付する仕組みで行われた。ネットワークの遅れが検査に影響しないことが確認されたほか、データの一元的管理による運用の効率化や工場間の検査ばらつきの抑制につながる結果を確認した。
IOWN APNを活用した遠隔AI検査は現時点では実証段階にあるが、製造分野におけるデータセンター活用型AI運用の一例として位置づけられる取り組みといえる。製造現場ではロボットや自動化、AIの活用が進む中で、リアルタイム制御やデータ集約を支えるネットワーク要件も高度化しており、IOWN APNはこうした環境を支える基盤技術の一つとして位置づけられる可能性がある。また、弊社ではIOWNおよび光ネットワーク関連動向を整理したマーケティングレポート『2025年版 APN(オール光ネットワーク)の実態と展望』を発刊しており、関連ユースケースを含め継続的な調査を行っている。
冬季オリンピック、時差と戦いながら毎日楽しくTV観戦していました。
話題の「りくりゅうペア」は山一ハガネ製作のブレードを使用しているとのこと。
個人的には「おぉ!」と勝手に親近感。
私は3Dプリンタ(AM/アディティブマニュファクチャリング)の市場も研究していますが、同社はAMにも取り組んでいます。
これを機にAMもまた注目されると良いな、などと思いました。
当社代表が最新のニュースを題材に時代の本質、変化の予兆に切り込みます。
東日本大震災発生から15年と1日が経過した。復興に投じられた予算は41兆5千億円、インフラの復興はほぼ完了、製造品出荷額も震災前を超えた。津波で被災した農地も96%が営農可能だ。福島イノベーションコースト構想など先端技術の拠点づくりも進む。しかしながら、19,782名の犠牲者と2,550名の行方不明者の方々が失った未来、彼らとともにあったはずの時間は取り戻せない。人口減少、高齢化も進む。課題は残る。それでも、15年という時間の中で被災地は新たな時を刻みつつある。
問題は原子力災害だ。計880トンと推計される核燃料デブリの取り出しが困難を極める。これまでに試験採取されたデブリはわずかに0.9グラム、2051年とされる廃炉完了計画の実現は不透明だ。2023年8月、処理水の海洋放出が始まった。2年で13.3万トンが放出された。とは言え、新規発生を差し引くと減少量は8.1万トン、未だ126.6万トンがタンクに残る(2026年2月26日、東京電力)。福島県内の中間貯蔵施設に留め置かれた除染土は「2045年までに県外で最終処分される」と法律で定められている。しかし、候補地の目途は立たない。原子力被災農地の営農再開面積は53%、沿岸漁業の水揚げは震災前の26%、故郷へ帰還できない2.7万人のうち2.4万人が福島県からの避難者である(復興庁)。
15年という月日は、あの日、私たちが共有したはずの「社会の在り方を根本から問い直す覚悟」を希薄化させつつある。与党は2037年を期限とする復興特別所得税2.1%のうち1%を2027年度から防衛予算に転用、減額分を10年の期限延長で相殺する案を税制改正大綱に盛り込んだ。昨年、国のエネルギー基本計画は「可能な限り原発依存度を低減する」との文言を削除した。一方、文科省は廃炉に向けた基礎研究費用の予算要求額を昨年の5,251百万円から4,673百万円へ減額している(実績ベースでは約3%減)。
3月3日、国は高レベル放射性廃棄物の最終処分場選定に向けての文献調査を東京都小笠原村に申し入れた。2026年中の稼働を目指して建設中のフィンランドの最終処分施設“オンカロ”が想定する耐用年数は10万年である。私たちはこの途方もない年月のその先の子供たちに何を残すのか。ネイティブ・アメリカン“オノンダーガ族”オレン・ライオンズ氏の言葉を再度噛みしめたい。「政治の決め事はいつも7世代先の人々を念頭に行う。これから生まれてくる世代の人々が私たちより悪い世界で暮らすことのないように。そのことを片時も忘れたことはない」※。
※「それでもあなたの道を行け」(ジョセフ・ブルチャック編、中沢新一、石川雄午訳、めるくまーる刊)より
今週の“ひらめき”視点 2026.3.6 - 3.12
代表取締役社長 水越 孝
2026年2月27日、「2026年版 クラウド基盤(IaaS/PaaS)・データセンターサービス市場の動向と展望」を発刊いたしました。
昨年もクラウド基盤(IaaS/PaaS)サービス市場を調査しており、その際に書いたコラムではソブリンクラウドやデータ主権の議論について、「外資系クラウドにシェアを奪われている国産クラウド事業者が喧伝しているだけなのでは」と、若干慎重な見立てをしていました。改めて、今回クラウド基盤事業者との対話を通じて、ソブリンクラウドや各種主権確保の必要性を認識するユーザー企業が確実に増加していると実感しました。特に、重要なインフラを担う企業にとって、経済安全保障を巡る環境が変化するなかで、「データをどこに、誰に預けるか」という問いが、優先順位の高い検討事項になってきています。現時点で実運用に至っている企業は限定的ですが、その必要性を議論の対象とする企業は着実に増えています。
もちろん、事業者側がこのトレンドをマーケティング的な施策として活用している側面は否定できません。それでも、各種主権を担保するための技術基盤や運用手法の高度化は進展しています。今後は、これらの必要性を認識する企業に対し、クラウド事業者が技術やサービスを適切に提供していくことが重要となります。こうした基盤が整備・普及することで、国内のデジタル基盤が強化され、日本の国土強靭化に寄与することを期待しています。
2026年2月27日、「2026年版 クラウド基盤(IaaS/PaaS)・データセンターサービス市場の動向と展望」を発刊いたしました。
本資料は、クラウド基盤事業者およびデータセンターサービス事業者を対象にヒアリング調査を実施し、国内市場における市場規模や展望、トレンドについて言及しているほか、事業者ごとの事業戦略やユーザー動向、課題、市場見解などを掲載しております。あわせて、500社の企業・団体にアンケートを行い、クラウド基盤サービスの利用率や年間予算、利用中のサービス等をまとめております。
本資料で取り上げた二つの市場は、経済安全保障や国土強靭化の観点で近年注目を受けている市場です。ユーザー企業からの旺盛な利用意向に加え、政府主導の支援制度もあり、順調に成長しています。
本資料が事業戦略の検討や市場環境の把握における一助となれば幸いです。
2026年2月20日、PLMソリューション「Aras Innovator」を展開するアラスジャパンは、2026年事業戦略発表会を開催した。
まず2025年の同社の取り組みを振り返ると、「Aras Innovator SaaS」提供を大きな原動力として、順調な業績拡大を続けた。
そして迎えた2026年、エンジニアリングAIプラットフォームである「Aras InnovatorEdge」をドライバーとして、PLMの枠を超え、エンジニアリング環境のさらなる改善を進めるべく、AIの本格的な活用に動き出す。
これまでのPLMは、エンジニアリングのマスターデータを管理するデータベースの役割を担っていた。これからはその在り方をAIによって変え、複雑な入力インターフェースを軽減し、データによる分析や提案まで行うことで、エンジニアの業務負担軽減を図っていく。まずは2026年4月の北米コミュニティイベントにて、Aras InnovatorEdgeに関する大々的な発表を行う予定である。
今回の事業戦略発表会で個人的に興味深かったことは、対話型コーディングにより構築時のカスタマイズ対応をユーザー企業が内製化できることで、PLM構築に係る高額費用という課題を改善するスキームである。これは、ユーザーだけではなく、同社の販売パートナーのビジネスモデルにまで影響を与える。今後販売パートナーはエージェント構築等、より高度な支援を行い、同社とユーザーとともに価値を共創していくことになるという。パートナーにとっても大きなインパクトとなる方針であり、Aras Innovatorを中心に築かれるエコシステムの行く先が気になるばかりである。
弊社では、マーケティングレポート「2025 PLM市場の実態と展望 ~製造業エンジニアリング領域を中心としたデータソリューション~」を2025年6月に発刊しており、このレポートの中でもPLM市場のメインプレーヤーの1社としてアラスジャパンを取り上げている。AI活用の取り組みが深化し、ユーザーが機能やインターフェースとして利用するフェーズに入っている中、市場や他ベンダーへの影響を含めて、同社の今後の動向に引き続き注目したい。
3月17日にSBクリエイティブさん主催のセミナー「SDVは市場環境をどう変えるのか― 車載ソフトウェア時代の新規参入と勝者の条件 ―」に登壇させて頂くことになりました。中国のThunderSoft日本支社の副社長、盛峰 氏とともに登壇します。
弊社では、これまでに「車載用ソフトウェア市場の実態と展望」(Vol.1:協力会社編/Vol.2:OEM、Tier.1、2編)や「SDV時代における車載アプリケーション市場の徹底研究」といったタイトルで車載ソフトウェア領域について調査レポートを発刊。市場規模に留まらず、アーキテクチャの変遷を含めてウォッチ、事業者の皆さまとディスカッションをさせて頂きながら実態に近いアーキテクチャを表現すべく精度向上に努めております。
実は!!!2026年3月には同領域の最新レポート「2026 AI-DV(AI定義車両)市場の実態と展望 ~SDV/車載ソフト市場の構造大変革、産業OS・都市OS化を目指す未来~」の発刊に向けて最後の追い込みを図っております。
出来立てホヤホヤの調査結果も踏まえ、最新動向などについてお話しできればと思いますのでお楽しみに!
最後に、本セミナー、何やらオリジナルレポートの進呈もあるそう(これから作ります)ですので、ぜひお時間ありましたらお誘いあわせの上、ご参加いただけますと幸いです。
■イベントのページ
https://www.sbbit.jp/eventinfo/87865
当社代表が最新のニュースを題材に時代の本質、変化の予兆に切り込みます。
月28日、米国とイスラエルはイラン国内の複数拠点を空爆、最高指導者ハメネイ氏を殺害した。その前日、米国とイランの協議を仲介してきたオマーンのバドル外相が「合意に向けて大きな進展があった」と会見で語っていただけに「米、攻撃開始」の第1報には驚かされた。空爆は止まない。米国を後ろ盾とするイスラエルはレバノンへの地上侵攻を開始した。“支配地域の拡大”が作戦の目的であることをもはや隠そうともしない。
ロシアのウクライナ侵攻は5年目に入った。国連安保理常任理事国が仕掛ける“自国の正義”にもとづく軍事行動に“法の支配”の原則が揺らぐ。強権化する2期目のトランプ氏は既に“タリフマン”の域を超えた。27日、ネットフリックスとパラマウント・スカイダンスによるワーナー・ブラザース・ディスカバリーを巡る買収合戦はパラマウントの勝利で決着した。ネットフリックスは撤退理由を「買収金額の問題」と説明するが、トランプ氏からの圧力は周知の事実だ。
トランプ氏の狙いはワーナー傘下のCNNである。かねてから自身に批判的なCNNの報道をフェイクニュースと罵り、ワーナー買収に自ら関与すると宣言していた。パラマウントのエリソンCEOのファミリーはトランプ氏の有力支持者だ。同社は既にCBSを傘下に置く。トランプ氏は「CNNの経営陣は腐っている」とも発言しており、編集方針へのあからさまな介入が懸念される。もちろん、巨大メディアグループ同士の統合には独禁法という壁がある。とは言え、司法省への人事介入も厭わないトランプ氏だけに報道統制は現実味を帯びる。
同じ27日、米政府は、AI開発企業アンソロピック社をすべての連邦政府機関から排除すると発表した。同社のダリオ・アモデイCEOは“人間が介在しない完全自立型兵器の開発”や“米国民の監視”への技術適用を禁じる利用規約の順守を米軍に求めた。トランプ氏はこれに反発、政府機関はもちろん米軍の調達先企業との取引も禁止するよう指示した。2023年、第1回「軍事領域における責任あるAI(REAIM)」サミットの政治宣言を主導したのは米国だ。宣言は国際法とりわけ国際人道法のもとでのAI利用を確保するための法的措置の必要性に言及している。今、米国はその真逆をゆく。世界の予見可能性、法の支配、国際協調への道筋、これらをどう回復するか、日本が貢献すべきは唯一ここである。
今週の“ひらめき”視点 2026.2.22 - 3.5
代表取締役社長 水越 孝
ITインフラモニタリングにおける問題点・課題を考えてみる。インフラモニタリングへのIT技術の導入を考えた場合、以下のような問題点・課題が指摘できる。
①閾値の設定:ITインフラモニタリングでは「定常状態(閾値)」の設定が前提となるが、自然環境(温度・湿度、風、雨量など)やインフラ構造物の素材/材料、周辺環境(交通量、地盤など)の条件が一定でないため、閾値の設定は非常に難しい。そのため現状では、現場技術者の手間を軽減させたり、危険作業/煩雑作業を減らすような業務支援に止まるケースが少なくない(点検業務の代替まではできない)。
➁ITモニタリング以外の点検手法の存在:点検作業を自動化すると、点検ミスの発生を抑制できる(経験の優劣、その日の体調、作業環境などに影響されない)。但し、ITモニタリングよりも、ロボット/ドローンによる点検・検査、非破壊検査といった診断技術を評価する見解も少なくない。例えば、ロボットでは「点検+補修」といった付加価値も期待できる。
③センサー/デバイス開発:インフラモニタリングに向けては、センサー自体の耐久性やインフラモニタリング専用センサーの開発なども求められる。さらに電源問題もポイントで、低消費電力型センサー/デバイスの開発なども求められる。
※続く予定
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