NTTドコモビジネスは2026年5月20日、AIを活用してサイバー攻撃の脅威分析や自動対処を行う「AI SOC」サービスの提供を開始したと発表し、同日にオンラインで記者説明会がありましたので参加しました。
※NTTドコモビジネスのAI SOCに関するニュースリリース
https://www.ntt.com/about-us/press-releases/news/article/2026/0520.html
今回新たに発表されたAI SOCサービスは、同社が独自に開発したAIエージェントによるログ分析機能を強化した「AI Advisor」と、セキュリティアラートに対して自動で対応を行う「マネージドSOAR」を組み合わせたもので、サイバー攻撃の検知から対処までを一体で行う仕組みになっています。
今回の説明を聞いていて改めて感じたのは、サイバー攻撃のスピードがかなり速くなっている点です。説明会では、調査会社のデータを引用したうえで、攻撃者が侵入してから被害を拡大させるまでの時間(いわゆるブレイクアウトタイム)が平均29分まで短縮しているという話がありました。これだけ短い時間になると、人手で一つひとつ対応していては追いつかない、というのは理解できます。
加えて、同社の説明では企業側のセキュリティ人材の不足も課題として挙げられていました。もともと専門人材が限られている中で、対応すべきインシデントが増え、それも短時間で判断が求められるとなると、従来の体制では難しい場面も増えているのだと思います。
こうした背景を踏まえた今回のAI SOCは、AIによる自動対応を前提とした設計になっている点が特徴的です。AI Advisorでログを相関分析しながら脅威を検知し、その後はマネージドSOARによって自動で対処を行う流れです。説明によると、脅威はおおよそ10分程度で特定され、その後のアラートの約95%は自動で処理されるとのことで、人を介さないことを前提としています。一方で、完全に人が不要というわけではなく、最終的な対応や例外的なケースに備えて専門家が関与する体制も残しています。
AIを使った攻撃に対して、AIで防御するという構図は、少し前まではAIがサポートするところまでの話にとどまっていると思っていました。しかし、今回のNTTドコモビジネスのAI SOCのように、具体的なサービスとして提供されているのを見ると、実際の現場では「AI対AI」の構図が必要になっているのだと感じます。ブレイクアウトタイムも今後さらに短くなっていく可能性があることを考えると、こうした自動化の流れは一層進んでいくのかもしれません。
サイバーセキュリティの領域は、これまで人が判断し対応してきた部分が多い分野でしたが、今後はAIが担う領域が徐々に広がっていくのではないかと感じました。人が行う対応から、AIが前提となる対応へと、少しずつ変わり始めている段階に来ているのかもしれません。
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なお、当社矢野経済研究所では、5月下旬に「2026年 AI時代のサイバーセキュリティ市場の現状と展望」を発刊予定です。セキュリティツール導入におけるボトルネックや最新トレンドを整理し、AI時代におけるセキュリティ対策の現状と将来動向について、アンケート調査や取材をもとに分析しています。ぜひお手に取っていただく機会がありますと幸いです。
https://www.yano.co.jp/market_reports/C68100700
「ENEOSの事例にみる企業による保険代理店事業の見直し」
保険ブローカー企業であるマーシュジャパンは2026年5月15日、ENEOSホールディングス株式会社からENEOS保険サービス株式会社の株式取得およびENEOSマテリアルトレーディング株式会社の保険代理店事業を取得することで合意したと発表した。
https://www.marsh.com/jp/ja/about/media/2026-marsh-eneos.html
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近年、企業における保険代理店事業を手放す動きが相次いでいる。今回のマーシュジャパンは、2025年11月にも三菱電機グループの保険代理店である三菱電機保険サービスの株式取得を完了しており、同様の動きは他の大企業にも広がっている。例えば、三菱ケミカルグループは2024年11月にダイヤリックスが手掛ける保険代理店事業をエーオンジャパンへ譲渡し、三菱マテリアルも2025年11月、グループ会社である菱光サービスの保険代理店事業をエムエスティ保険サービスへ譲渡する方針を決定。また、2024年2月にはジェイテクトがグループ会社の保険代理店事業を豊通保険パートナーズへ譲渡することを発表するなど、同様の再編が進んでいる。
こうした動きの背景としては、保険代理店事業が多くの企業にとって非中核事業であることに加え、制度・規制対応の負担増があるとみられる。保険業法の改正対応やガバナンス強化、顧客本位の業務運営など、対応すべき要件は年々増えており、本業が保険ではない企業にとっては、継続的に体制を維持する負担は小さくない。
その結果として、保険代理店機能を外部の専門事業者へ移管し、自社は本業へリソースを集中させる動きが進んでいると考えられる。一方で、保険の専門事業者側から見れば、顧客基盤をまとめて獲得できる機会でもあり、業界としては集約の流れが一段と進んでいく可能性が高いだろう。
2026年5月14日(木)~16日(土)にかけてパシフィコ横浜で開催されていた「トラックショー」を見に行きました。トラック本体から部品、塗装、運送業界向けソリューションまで、幅広い分野の企業が出展しており、業界全体の動向を俯瞰できる展示会でした。
その中でも今回、個人的に印象に残ったのが外資系メーカーのトラックです。自動車の分野ではIT化やデジタル技術の進展が広く知られていますが、トラックにおいても同様の流れが進んでいることを改めて感じました。
例えば、出展していたボルボ・トラックでは、Volvo FHシリーズの新モデルにおいてサイドミラーを廃し、車内モニターで周囲を確認できるカメラモニターシステムが採用されていました。通常ビューと広角ビューの切り替えや、周囲状況を把握するための表示アシストなどが搭載されており、安全性向上に向けたさまざまな工夫が見られます。実際に外観を見るとミラーがない分、車体がすっきりとしているのが印象的でした。
また、「ボルボ・コネクト」と呼ばれるサービスも紹介されておりました。同サービスは、車両の状態や燃料消費、位置情報などをリアルタイムで可視化し、一元的に管理できる仕組みとなっています。トラックは10年以上使用されるケースも一般的であり、こうした機能が標準的に組み込まれていくことで、ドライバーや運送会社が後付けの機器を導入する手間は今後減っていく可能性があります。
一方で、こうした機能がどの程度のコストで提供されるのか、運送事業者にとって負担となるのかといった点も気になるところです。ただ、データの可視化や運行管理の高度化といった観点では、安全運転や経営管理の両面でメリットが期待できる領域でもあります。
自動車分野で進んできたデジタル化・高度化の流れは、トラックにも広がりつつあります。今回の展示会を通じて、トラックも「走るだけの存在」から「データを活用するプラットフォーム」へと変化していく過程にあるのではないかと感じました。
2026年5月7日、PayPayは2026年3月期(FY2025)の決算発表を行った。同社は2026年3月に米NASDAQ市場へ上場しており、今回が上場後初の通期決算発表となる。
https://ir.paypay.ne.jp/jp/
2026年3月期の営業収益は3,807億円(前期比27%増)、調整後EBITDA(利払い/税引き/減価償却前の利益)は1,111億円(同89%増)となった。営業収益のうち、59%を決済手数料等、41%を金融+決済金利が占める構成となっており、両者ともに対前年25%増を超える高成長を実現している。
同社の決済セグメントにおいては、GMV(決済取扱高)が19兆円に達し、内訳としてはPayPay残高が10.8兆円、PayPayクレジットが4.6兆円、PayPayカードが3.5兆円となった。GMVの堅調な拡大に加え、決済手数料率の高いオンライン決済の構成比の増加や、PayPayカードの金融関連残高の増加に伴う金利収入の拡大もあり、セグメント全体で成長基調を継続している。
金融サービスセグメントにおいても、PayPay銀行の預金口座数が1,000万口座を超え、PayPay証券の口座数も173万口座(前年同期比36万口座増)に拡大するなど成長を続けており、金融関連収益の成長率は決済関連収益を上回った。
上記の通り、同社は収益基盤の多様化を進めており、今後も祖業である決済と、新たな柱である金融の両輪での成長を目指している。その第一歩として、PayPay銀行がPayPay加盟店向けのレンディングサービスの本格提供を開始した。同サービスでは膨大な決済データに基づく独自の与信モデルを通じ、必要な資金の即自貸出を実現可能であり、PayPayとしてはこのサービスをデータドリブンなプロダクトの象徴と位置づけている。この一例に限らず、決済・銀行・証券などあらゆる領域でサービスの再定義に取り組んでいく方針である。
近年は、キャッシュレス決済サービス市場の参入事業者各社ともに、決済を起点として銀行・投資・保険といった金融サービスを総合的に提供する取組みに注力している。2025年10月にNTTドコモが住信SBIネット銀行を連結子会社化(2026年8月には「ドコモSMTBネット銀行」へ商号変更を予定)したことで、国内の主要なコード決済事業者のすべてがグループ内に銀行を保有する形となった。その中で、PayPayの好調を示した今回の決算発表の通り、国内のキャッシュレス市場においては決済という「点」に留まらず、多様な金融サービスを含めた「面」での争いの様相がますます強まっていくと見込む。
当社代表が最新のニュースを題材に時代の本質、変化の予兆に切り込みます。
5月5日、日本と欧州連合(EU)は“日EUデジタルパートナーシップ閣僚会議”を開催、プラットフォーム事業者に対する監督体制の強化、信頼性のあるデータの流通、個人情報保護、海底ケーブル防護などについて高いレベルで緊密な協力体制を構築するとの共同声明を発表した。
プラットフォーマー規制については“安全なオンライン環境”、とりわけ、オンライン上における未成年者保護の重要性が強調された。EUでは利用者の保護や違法コンテンツへの対応を既にプラットフォーム事業者に義務付けており(デジタルサービス法、2024年)、日本でも個人の権利を侵害する情報の削除を求める法律が施行されている(情報流通プラットフォーム対処法、2025年)。
しかしながら、有害コンテンツの規制だけで子供たちの権利、健康、安全を守ることはできない。無限スクロールや昼夜を問わない通知など、アクセス数に応じて収益が発生するSNS固有のビジネスモデルそのものが中毒性を誘発する有害技術であり規制すべき、との声も高まる。昨年暮れには豪州で、今年3月にはインドネシアで16歳未満のSNS利用が禁止された。仏、デンマーク、ノルウェー、トルコ、ギリシャ、マレーシアでも禁止に向けた議論が進む。日本でもSNSに起因する被害児童は1566人に達しており(令和7年、警察庁)、10代の7%にSNSの病的利用の疑いが認められる※という。対策は急務である。
人類が誕生して600万年、産業革命から200年、初代iPhoneから19年、LINEがサービスを開始して15年、ChatGPTのリリースから3年半だ。イノベーションの速度はあまりに急激で、産業構造が変わり、暮らし方が変わり、社会と個人の関係も変わった。そして、そこに馴染めない人は社会不適合とされる。見渡せば誰も彼もがスマホ片手にSNSだ。いつの日か各国のSNS規制などなんらの効果もなく、SNS依存者が世界に溢れ、やがて人類の首が15度下向きに進化した未来に、そうならなかった人はSNS適応障害などと病人扱いされるのであろうか。いやそれはご免だ。
※出所:「ネット・ゲーム使用と生活習慣に関する実態調査(2024)」、独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター
今週の“ひらめき”視点 2026.5.3 - 5.14
代表取締役社長 水越 孝
今後のビジネスシーンにおいて、IoT活用の拡大が見込まれる領域での方向性を「保有」を軸として考えた。
生産機械・設備や物流機器・設備、自動車、医療/医療機器などでは徐々に自社保有が減少して、中期的には「サービス提供」、「コト売り」、「サブスク型」のビジネスにシフトすると見る。つまりIoTベースの仕組みになることで、遠隔での稼働監視が可能になり、自前で維持管理・運用を行う必要性が薄れてくる。そうなると保有する意味も薄れ、結果として「保有を前提としない新たなサービスモデル」が増えると考える。ここでのイメージは、カーシェアや従量課金タイプのビジネスモデル(MFPモデルなど)などが想定される。またエネルギー分野や社会インフラ(鉄道、道路、空港など)、水道事業などでは、保有と運用管理を切り分ける形が増えており、これも保有が減る流れである。この場合、運用管理を担うのは、IoTベースの仕組みを提供する事業者が予想される。
このように、IoTが社会基盤化するのに伴い、「保有」を前提とした社会が変容し、「持たざる社会」が広がっていくのではないかと愚考する。
コロナ禍の最中である2022年3月頃から始まった円安基調は、4年が経過した2026年5月現在でも継続し、同年5月8日現在では1㌦が155~160円の超円安である。
為替変動の影響はグローバル企業の業績に大きな影響があるが、近年の海外事業は現地生産型が増えたので、国内生産&輸出時代よりは為替の影響は減っている。尚、為替動向を見る場合、国際決済はドル主体なのでドル円動向に注目する。
為替変動の影響を円高と円安に分けて考察する。
円高では、鉱物資源や原油、部品・半製品などの原材料調達コストが低下する。そのため、輸入や輸入品を扱う企業にはメリットは大きい。しかし輸出企業では逆風になる。現地価格を維持しようとすれば、輸出価格(製品価格)を下げる必要があり、企業の利益は減る。また外貨建て資産を円にしようとした場合、円高では資産が目減りすることになる。
一方で円安では、原材料や輸入品価格の上昇があり、特に輸入品を扱い且つ、値上げが難しい業界やエネルギー企業、原材料消費型産業(運輸・物流業、素材メーカーなど)にはデメリットが大きい。その一方で、輸出企業の利益アップ効果は大きい。またインバウンド系産業(旅行業、観光業、宿泊業、外国人向けサービス業など)では、円安による訪日外国人客の増加効果が見込まれる。
以前は「円安=経済には追い風」であったが、日本メーカーの海外生産が増えたこともあり、以前ほどの円安メリットは受けていない。またGDPの国際比較を考えた場合、通常は米ドル換算となるため、単純化すると「円高で日本のGDPが増える」、「円安で日本のGDPが減る」といった事が起こる。
2023年に「日本とドイツのGDP逆転劇」も、ドイツ産業の高い生産性といったファンダメンタルに加えて、円安による名目GDPの目減り(ドル建て換算)が大きな要因であった。
少し前になりますが、4月に東京ビッグサイトで開催されていた海事産業の展示会「Sea Japan 2026」に参加してきました。きっかけは、ホルムズ海峡を巡る緊張など、地政学リスクを背景に船舶の航行が滞り、物流に影響が及ぶニュースを目にする機会が増えたことです。日本は輸入依存度が高い国であり、海運の安定性が揺らぐことによる影響は決して小さくありません。こうした理由を背景に、近年の海事産業の動向を確認したいと思い、会場を訪れました。
会場では、環境対応や自動化、デジタル化など、様々なテーマで企業が出展していましたが、全体を通じて特に印象に残ったのが「セキュリティ」というキーワードでした。外航分野では、Starlinkに代表される低軌道衛星通信の活用が進んでおり、従来の静止衛星通信と比べて、陸上に近い感覚で常時通信が可能になりつつあります。船舶が「つながる」ことは、運航管理や効率化の面で大きなメリットをもたらす一方で、新たなリスクも生み出していると感じました。
船舶はAISなどにより位置情報が可視化されています。もし通信やシステムがサイバー攻撃を受け、誤った情報が伝達されるような事態が起これば、船舶の安全運航だけでなく、物流全体に深刻な影響を及ぼす可能性があります。戦争や紛争によって航路が止まるケースとは異なり、サイバーリスクによって「見えない形で物流が止まる」可能性が、現実のものとして意識されるようになってきました。
地政学リスクを完全に回避することは難しい一方で、サイバーセキュリティについては、技術や運用によってリスクを下げる余地があります。輸入依存度の高い日本にとって、海運の安定は経済活動の基盤です。Sea Japan2026は、海事産業におけるセキュリティ対策の重要性が、今後さらに高まっていくことを改めて認識させる展示会でした。
現在、量子コンピュータ市場についてレポートを制作中です。
2020年、2021年と発刊して以降、間が空いておりましたので、関連文献を読み漁ったり、取材などを進めるなかで技術動向や政策動向のキャッチアップを進めています💦
さて、量子コンピュータといえば、さまざまな国の企業への取材も多く、前回はカナダや米国、英国、仏国、スペインなどの企業に取材を進めてきました。今回は左記の国に加えて、インドやオーストラリアをはじめ、さまざまな国の企業に取材依頼を進めるなか、同領域に対する各国の関心の高まりと本気度を感じています(国からの出資や補助金などを受けたうえ、当該国のトップクラスの大学からのスピンアウト企業も多く、まさに国の威信をかけて挑んでいる感じがする)。
こうした海外企業と取材をしていますと、時折、「貴方もコチラに来なさい、美しい場所がたくさんあるぞ。通訳くらいしてやるよ」と素敵な申し出を頂くことがあります(笑)
今年は何か国にバーチャル訪問(=オンライン取材)できるでしょうか。7月末発刊となっておりますので、お楽しみに☆
4月28日にSAPジャパンがリニューアルオープンした「SAP Experience Center Tokyo」の見学会を開催しました。
本センターは、クラウドおよびAIを活用したSAPの最新ソリューションを体験型で紹介する施設です。
今回のリニューアルでは、Industry 4.0の実践を体現するラボである「S.Factory」を刷新(他に2つの体験型エリアがある)。
同社社長の堀川氏は、冒頭の説明の中で、日本企業のグローバル競争力強化に必要な5つの視点(ヒト・組織・業務プロセス・データ/システム)について言及しましたが、このラボではこれら5つの視点を実際に感じることができました。
人手不足、熟練者の退職は多くの企業が抱えている課題のひとつです。データ/システムで「ヒト」がこうした方が良い、まで示してくれた結果に驚きました。
仮に熟練度が不足していた場合、そこを補うことができるようになれば褒めてくれる結果も出るようです。
データ/システムも褒めて伸ばしてくれる世界になってきました。「ヒト」も含まれたIndustry 4.0の世界が見えたような気がします。
※写真は今回体験した事例に基づいてシステムが出してくれたレポートの一例

2026年4月27日、セールスフォース・ジャパン(以下、Salesforce)はAgentforceユーザー企業の活用事例を紹介するプレス・アナリスト向け説明会を開いた。Salesforceは近年、中堅・中小企業への展開を進めている。2025年11月に中堅・中小企業向けに無料で使えるCRM「Free Suite」の提供を開始し、2026年3月にはAI機能を標準搭載した「Agentforce in Suites」やSlackで完結するCRM「Slack CRM」等のラインナップを拡充している。Salesforceのグローバル全体の傾向をみると、中堅・中小企業領域の伸びが大きいという。この領域では、変化に対して前向きに挑戦し、試行錯誤を重ねながら機動的に改善サイクルを回す企業が多く、そうした特性がAgentforceの展開を後押ししているようだ。
当日は、ユーザー企業として中古住宅のリノベーションを手掛けるスクールバス空間設計株式会社の田中氏が登壇した。スクールバス空間設計には1名のインサイドセールスが在籍しているが、約3,000件ものリードが追いかけられておらず、試算すると年間8.1億円もの機会損失が生じていた。この課題解決の手段として選んだのがAgentforceで、AI営業エージェント「Frank」として実装した。Frankにより既存スタッフでは追いきれなかったリードに対し、24時間365日、顧客の状況に寄り添いながらアプローチし続ける仕組みを実現した。導入からわずか3カ月で、資料請求数は211%増、AI経由の商談化率は75%に達し、2,650万円の成約を獲得した。スクールバス空間設計は、Frankを導入した時点で完成された万能な存在とは捉えておらず、定期的なチューニングを重ねながら育てていくチームメンバーとして迎え入れて活用しているという。
人手不足は企業規模を問わない共通課題だが、中堅・中小企業にとっては事業継続そのものを左右する深刻なリスクである。AIエージェントが担う役割は、単なる業務効率化にとどまらず、人が足りないために逃してきた商機の回収と、事業成長の両輪を支えるものへと広がりつつある。中堅・中小企業へのAI活用が着実に裾野を広げていくなかで、人手不足を一因とする企業倒産の減少にも期待したい。
当社代表が最新のニュースを題材に時代の本質、変化の予兆に切り込みます。
4月21日、アムネスティ・インターナショナルは世界の人権の現状に関する年次報告書を発表した。イスラエルのガザにおけるジェノサイド、ヨルダン川西岸への違法入植の拡大、ロシアによるウクライナの民間インフラへの空爆、米イスラエルのイランへの武力行使等を列挙したうえで、国際法を無視し、多国間体制に背を向け、力による支配と収奪を試みるこれらの国々の指導者を“政治的・経済的捕食者”と非難した。
また、米国、中国、ロシアといった大国に加え、アジア、中東、アフリカ、南米の多くの国で政権に対する異議申し立てを犯罪化し、抗議者を不当に拘束するなど、市民に対する暴力的な弾圧が拡大していると指摘、「彼らの行動原理は異論を封じ込め、“他者”とみなした者を非人間化することに基づく」と断じる。
世界の民主主義の達成度を示す指標にEIU民主主義指数(英エコノミスト誌)とヨーテボリ大学のV-Dem(スウェーデン)があるが、いずれも民主主義の停滞、後退を示す。EIUによると2024年時点で完全な民主主義国家は世界の15%、人口ベースで6.6%に過ぎない。V-Demは「2025年の自由民主主義指数は1970年代後半の水準まで低下、世界の至る所で強権的指導者が生まれ、権威主義化が進んでいる」と指摘する。とりわけ、米国の自由民主主義指数は2024年の0.79から2025年に0.57へ急落、「自由民主主義」国家の区分から脱落した。
政治・経済・軍事力を振りかざし、あからさまに自国利益を追求する大国の振る舞いが世界の空気を一変させる。国連憲章、国際法への信頼が霞む中、世界中がそれぞれの政治的立場、地政学的条件において“ますます厳しくなる安全保障環境”を自国の物語に変換、これが強権化の土壌となる。「政治的・経済的捕食者たちは、多国間体制は死んだという。しかし、彼らがそう主張するのはそれが非効率だからではなく自身の覇権と支配に資していないから」とアムネスティのカラマール事務総長は看破する。世界は法の支配にもとづく秩序を取り戻せるか、私たちは大きな岐路にある。
今週の“ひらめき”視点 2026.4.19 - 4.30
代表取締役社長 水越 孝
2026年3月、主にEC事業者に対してオンライン決済サービスなどを提供するStripeは、ECで事業を展開している国内企業を対象に、エージェンティックコマースへの対応の準備状況に関する調査を実施し、調査結果を明らかにした。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000117.000077879.html
エージェンティックコマースとは、商品の検索や比較から購入まで、オンラインショッピングにおける一連の購買行動を、AIエージェントが代行する仕組みを指す。2025年9月、OpenAIは米国において、ChatGPTとの会話内で商品の購入まで完結させる「インスタント・チェックアウト」と、EC事業者側との連携仕様である「エージェンティック・コマース・プロトコル(ACP)」を公開した。また、2026年には、GoogleがAIエージェントと各種システムをつなぐ標準プロトコル「ユニバーサル・コマース・プロトコル(UCP)」の展開を開始し、米国のGoogle検索のAIモードやGeminiアプリを通じて、「Etsy」や「Wayfair」といった提携ブランドでの直接購入を可能にしている。このように、米国においてエージェンティックコマースは実用段階に入りつつあり、日本国内においても将来的な本格展開が見込まれる。
本調査は、日本国内においてEC事業を展開する従業員1,000名以上の企業を対象に実施された。Stripeは、「約6割の企業が導入を検討していると回答。その内、64.4% の企業が3年以内の導入を計画。」という調査結果を発表している。
この調査結果からも、日本におけるエージェンティックコマースの本格稼働は近づいていると言える。また、それに伴い、消費者の購買行動だけでなく、EC事業やオンライン決済事業の様相も変化すると考える。例えば、AmazonのようなECプラットフォームの在り方が変化する可能性があるし、EC事業者に対して各種決済手段との接続代行サービスを提供する決済代行業者は、今後GeminiやChatGPTなど複数のAIエージェントとの接続を代行する役割も求められるようになる可能性もある。当社は国内の主要決済代行業者への取材を定期的に実施しているため、取材の中でエージェンティックコマースへの対応に関する動向も積極的に追っていきたい。
ドローン活用における課題の一つとして、オペレータ確保が挙げられる。ドローン操縦には、国家資格である「無人航空機操縦者技能証明」の取得が必要などの要件がある。特に、産業用途での活用が進む中、高度な操縦技術とデータ処理スキルを兼ね備えた人材が不可欠で、十分な数のオペレータを確保できるかどうかはドローンサービスの拡大では重要である。
またドローン活用が進むにつれ、ドローンの衝突を避けるなど、ドローンを安心・安全・効率的に活用するための制度や配慮も必要となる。2023年4月、日本発のドローン運行管理システム(UTM)に関する国際規格が発行された。ここではUTMに必要な機能と各機能の構造、相互の関連性、関連用語の定義等が整理されており、一定空域内を飛行する全てのドローンの機体情報を共有し、衝突事故の防止を支援する役割などを持つ。
この他にも、安全保障上の観点から、国産もしくは欧米製ドローンへのシフトが推奨されている。しかし現実には、中国製ドローンとの価格差は大きく、すぐに転換できる状況にはないと考える。
以下には、ドローン活用における問題点・課題を記載する。
【図表:ドローン活用における問題点・課題】
ドローン活用による業務改善イメージを大別すると、以下の通り。
①見える化/データを基礎とした現場把握、効率化/コスト削減/省人化
②判断支援/シミュレーション機能の向上
現在のドローン活用では、航空測量の代替や人手不足対応に代表される前者(①)に主眼が置かれている。しかしドローン活用シーンの拡大や、画像解析能力に優れたAIテクノロジーの進展により、今後は後者が主体となる見通しである。そして5~10年といった時間軸では、ドローンを基盤としたCPS/デジタルツインの実現がターゲットの一つになるであろう。
また近年の機体価格の低廉化は、当該ビジネスの敷居を下げる効果がある。
さらにAIを始めとしたテクノロジー活用は、ドローン活用サービス/ソリューションのビジネスモデルに大きな変化を起こしている。具体的には、「従来のモノ売りビジネス(機体販売/運用代行/保守・メンテナンスサービス)」から、「コト売り(完全自動運行やデータ解析を付随したソリューション販売)」へと業態転換が進んでいる。その結果、ドローン活用サービスといったサービスカテゴリーが、「ソリューションサービス業」あるいは「ソリューション提供サービス業」といった業態になる蓋然性が高い。
このような変革が進む根底には、一貫した社会課題である「人手不足に起因した業務効率化/省人化志向」、「働き方改革の実践(就労環境の改善)」といった外部環境、社会的な要請もある。
尚、日本政府は、経済安保の観点から、国産ドローンの拡大を支援する方針で、2030年までに年産8万台の体制整備を目指している模様である。
ドローン活用を考えた場合、高解像度情報を取得できることや取得データのリアルタイム性、対応の柔軟性などから、AIとの親和性が高い。
例えば、橋梁などのインフラ点検においては、ドローンの機動性と近接撮像力とAIの画像解析力を組み合わせれば、より高度な点検(劣化診断/高頻度点検など)を行える。さらに、現場や建物周辺の高精度監視など、監視カメラだけでは対応が難しいケースにおいても、「ドローン×AI」の座組を使えば、リアルタイム&柔軟&高精細に状況識別が可能になる。
このように「ドローン×AI」の座組は、ドローン活用を高度化するポテンシャルがある。言い換えればドローンは、「AI向けの現場データ収集プラットフォーム」と言えよう。
以下にはドローンとAIの親和性を整理した。
【図表:ドローンとAIの親和性について】
日本では、2010年代前半からドローン活用サービス/ソリューションが様々な分野で始まり、電力鉄塔/送電線などのインフラ設備点検、農薬・肥料散布、被災エリアでの状況確認といった災害支援用途などを中心に浸透が進んだ。
その後、法規制/運用面での追い風が強まった2020年前後からはドローンの社会実装が加速し、通信鉄塔/送電鉄塔の点検、太陽光発電設備点検、橋梁点検(高速道路、鉄道など)、農薬・肥料散布、各種測量業務などでは広く実運用フェーズに入っている。そして2026年3月時点では、先行した通信鉄塔/送電鉄塔点検や農業向けを中心に、ドローン活用は急速に進展している。
尚、ドローンと競合する人工衛星や航空機、ヘリコプター、人手作業との対比におけるドローン活用サービスの強み・特徴としては、以下の点が指摘できる。
上述したように、現状ではライフライン系(電力・通信鉄塔点検、ケーブル点検など)、農業(肥料・農薬散布など)、防災(被災状況監視・把握、発災時対応支援など)、民間インフラ系(高速道路・鉄道の橋梁点検/トンネンル点検、コンクリート構造物点検など)でドローン実装が先行している。
この他にも、建設・土木(現場の進捗管理など)、公的インフラ系(港湾、空港、ダム、河川、上下水道などでの点検業務等)といった領域でも、PoCから実装への移行が進みつつある。
さらにドローン活用は、利便性やコスト優位性などから、従来は航空機やヘリコプター、人工衛星などが提供していたサービス(土地家屋調査、ナラ枯れ調査、被災エリアでの損害確認など)からの代替も進んでいる。以上の点を踏まえた上で、以下にはドローン活用サービス/ソリューションの適用イメージを記載した。
【図表:分野別のドローン活用サービス/ソリューション】
SAPジャパンの2026年ビジネス戦略説明会に参加しました(3/26開催)。
個人的な目玉は、4/1から新社長に就任される堀川氏の登壇です。
主に、2025年の振り返りは現社長の鈴木氏から、将来に向けての話は堀川氏から説明がありました。
皆さん何となく感じられているように、2026年はAIエージェントの効果を体感できる年になりそうです。
しかしながら、ITの話では度々、日本は欧米と比較すると後れている、という話を耳にします。
今回もやはり同様の話が話題に出ました。
日本は欧米と比較し、カイゼンが優れている。
ゆえに部門最適のAI活用は進んでも、全社横断ではゆるかやな進みとなっている。
AIの進化がすさまじい今、ITは経営者が考える課題のひとつです。
部署によって異なるデータ、異なる判断では競争力の加速は難しいでしょう。
全社横断は欠かせないと考えますし、それにはトップの力も必要です。
今回、堀川氏からは、「早く進められるところは早く、じっくり考えるべきところには時間をかける」というお話がありました。
SAPにはさまざまな事例やフレームワークがあります。
これらを活かしながら、早く進められるところは早く、考えるべきところはSAPやそのパートナーととことん考える、それが競争力の向上、効果の体感につながると思いました。
2026年3月30日に「2026年版アフター標準化に向けた自治体ソリューションの実態と展望」を発刊いたしました。
本レポートを執筆する中で、自治体におけるスモールスタートの難しさを改めて実感しました。新たな施策に取り組む際、段階的な導入から始めるスモールスタートのアプローチは、民間企業においても広く採用されています。小さく始めて成果を確認しながら拡大していく進め方は、リスクを抑えるうえで合理的な手法です。
しかし自治体の場合、事情が異なります。機能を最小限に絞って導入した結果、利便性が十分に確保されず利用率が伸びない。利用が広がらなければ費用対効果を示せず、次の機能拡張や全庁展開に向けた予算確保がさらに難しくなる。こうした悪循環に陥るケースが少なくありません。加えて、広報・宣伝にかけられる予算が乏しく、住民への周知やサービスの認知拡大を図るノウハウも十分に蓄積されていないため、せっかく導入したサービスがスケールしないままになってしまうという現状もあります。
もっとも、スモールスタートが有効であることは変わりません。持続可能な施策を展開するためには、システムの提供・導入にとどまらず、利用促進の設計や効果の可視化、次の投資につながるストーリーづくりまでを一緒に考えられるITベンダの存在が、これまで以上に重要になってくるでしょう。
2026年3月30日に「2026年版アフター標準化に向けた自治体ソリューションの実態と展望」を発刊いたしました。
本レポートは、基礎自治体(市区町村)を対象としたアンケートをもとに、基幹業務システムの統一・標準化の状況をはじめ、自治体DXの取組実態と今後の意欲について調査・分析したものです。特にフロントヤード改革・庁内業務DX・地域社会DXの各領域では、施策ごとの取組状況や今後の注力意向を詳細に整理するとともに、自治体が直面している課題を踏まえ、支援するITベンダに求められる役割についても考察しています。
基幹業務システムの標準化は2025年度末に一つの節目を迎えます。しかし、特定移行支援システムへの対応や運用コストの増大など、標準化にまつわる課題は依然として山積しています。そのような状況においても、自治体はフロントヤード改革・庁内業務DX・地域社会DXといった幅広い領域での取組を着実に前進させる必要があります。
アフター標準化期に入る今こそ、自治体が次に何を必要としているかを把握し、支援の方向性を見定める好機です。本レポートが、自治体業務を支援する皆様のビジネスの一助となれば幸いです。
当社代表が最新のニュースを題材に時代の本質、変化の予兆に切り込みます。
4月14日、小池都知事は地方交付税の偏在是正に関する国の方針に対して「制度そのものに問題がある」と異議を表明した。地方自治体が担うべき“標準的な”行政サービスを“全国一律”の基準で算出し、そこを上限に税収見込み額との差額を補填する現行制度は、自治体自らの努力で支出削減や税収増を実現すると差額が縮小、つまり、交付金は減少する。確かにこれでは改革への意欲は削がれかねない。一方、資本と人口が国内外から集中する東京の優位もすべて“都政”の成果に帰するものではない。現行制度の改革はもちろんであるが、東京もまた“首都”としての立場から国土の在り方を論じていただきたい。
高度成長期以来、国土開発の基本理念は「均衡ある発展」であった。しかし、東京一極集中は是正されず、地域間格差も拡大した。国が主導する予算分配型施策の限界は地方の側も認めるところである。とは言え、面的な平準化への呪縛は国と地方、双方に残る。まずはここからの意識改革が必要だ。都市と地方が補完し合う動的ネットワークを掲げた“滞留促進型国土構想”(2014年、国交省)、人口減少を所与の条件とし、地域の特性に応じた稼ぐ地域の実現を目指した“地方創生2.0”(2025年、石破内閣)。これらをどう継承し、“その土地ならでは”を実現するか、ここが地域再生の鍵となる。
先週、筆者は“たま未来・産業フェア”会場にてご縁をいただいた(株)東京山側DMCの幹部のお二人、みちくさの達人“サクちゃん”こと櫻澤裕樹氏と修験道の修了者でもある西川佳克氏に、同社の自然体験フィールド「あきる野市」を案内いただいた。秋川流域は約3億年から1.5億年前の秩父帯、1.1億年から7千年前の四万十帯、1500万年前の日本列島形成期の地層で出来た五日市盆地など複数の地層が重なり合う稀有なジオパークであり、それぞれの地質の特徴が独自の景観と人々の営みを特徴づけてきた、とのことである。
同社にとっての“マチヅクリ”はその土地固有の「風土」を理解することが出発点となる。「風土」の価値を発掘し、事業として実装できる人材を育成し、各地の行政、DMO、DMCとの連携を通じて自律分散型のネットワークを築くこと、これが同社の目指す地域創生のゴールである。そんな同社が企画する探求型自然体験スクールの参加者は年間3万人を越える。自己判断力を高め、生き抜く人間力を向上させる多様なプログラムは企業研修としても人気が高い。「風土」の再生を軸に都市と地域を関係づける同社の地域創生事業を応援したい。
参考:東京山側 / TOKYO YAMAGAWA DMC – 東京山側DMC
※6月28日(日)、同社は東京都あきる野市五日市の田んぼにて「お田植え神事」を開催するとのこと、ご興味のある方は是非どうぞ。
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今週の“ひらめき”視点 2026.4.12 - 4.16
代表取締役社長 水越 孝
今年3月16日に開催されたNVIDIAのGTC発表では、GPU性能競争そのものよりも、AIデータセンター全体をどう設計し運用するかという議論が浮上した。
https://nvidianews.nvidia.com/
NVIDIAは今回の発表で推論の拡大と、ヴェラ(Vera)CPU、ファインマン(Feynman)プラットフォームなどシステム単位の戦略を併せて打ち出し、チップ供給者の立場からAIインフラ設計者へという移行がより鮮明になったことを示した。その流れには以下のような背景があるとされる。
「AIの5段ケーキ」の底が揺れている:AIサービスをケーキに例えると、最上層から<アプリケーション⇒モデル⇒推論エンジン⇒サーバー⇒チップと接続網(最下層)>となる。これまでは、主に上層での競争が激しかった。しかしデータの往来が急増するにつれ、ボトルネックはチップ内部ではなく、チップ間、サーバー間、ラック間、つまり底で大きくなっている。ヴェラCPUはまさにこの地点、GPUと接続網の間でデータの流れを調整する役割を担う。これにより、CPUとネットワーク、電力効率が再び核心として浮上した。
「光」へ向かう理由は電力だけではない:ここで光通信が重要になる。NVIDIAは3月初旬、Coherent社・Lumentum社と同時に戦略的パートナーシップを発表した。Coherentはシリコンフォトニクス、Lumentumはレーザー部品を供給する米国の光技術企業であり、NVIDIAは両社にそれぞれ20億ドルずつ計40億ドルを投資し、レーザー・光ネットワーク製品に対する数十億ドル規模の複数年契約まで締結した。光通信ベースの接続は電力効率にとどまらず、従来比でエネルギー消費を70%以上削減しながら、信号完全性とネットワーク復元力、導入速度の面でも利点を持つためである。
これは国内でNTTグループが推進するIOWN構想の中心軸であるAPNと類似した方向性を共有している。同グループはAPNを通じて光技術をデバイスからネットワークまで適用し、大容量・低遅延・低電力伝送を目指すと説明している。AIインフラのボトルネックが演算そのものよりデータ移動と電力効率へと移行するなか、「光」は通信網の外ではなくデータセンター内部でも核心技術として浮上している。これを踏まえると、今回のGTCの核心はより強力なGPUだけでなく、そのGPUをつなぐ接続構造の変化にもあると言えるだろう。この転換が加速するほど、光通信市場の構造的な成長可能性も高まることが期待される。
金融システムインフラの中心的な課題の一つが、災害や障害発生時におけるサービス継続性の確保といえる。これに対応するため、銀行は複数の地域にデータセンターを分散させて運用するが、センター間の距離が広がるにつれ、リアルタイムでのデータ同期が技術的に困難になるという制約が生じる。このため金融インフラは事実上、近距離分散にとどまってきており、広域分散構成は性能上の問題から現実的な選択肢になり得なかったとみられる。この制約は以前から金融業界で認識されてきた。
三菱UFJ銀行、NTTデータグループ、NTT西日本の3社は、この制約に対する技術的な解法として、IOWN APN(All-Photonics Network)の金融システムへの適用可能性を検証した。3社はNTT主導のグローバルコンソーシアムであるIOWN GF(Global Forum)の金融ユースケースプロジェクトの一環として、実際のデータセンター環境を想定したPoCを実施し、その結果を2025年12月にホワイトペーパーとして公開した。
当PoCは単発の実験ではなく、2024年7月よりIOWN GFで金融ユースケースと要求性能を定義し、2025年2月にはその実装に向けたアーキテクチャと検証基準を整理していた。その上で実際にシステムを構成し性能を計測した段階にあたり、概念から設計、検証へと続く流れが今回の発表をもって完結している。また、実証の前面に立ったのがMUFGである点は、この取り組みが技術検証の域を超え、金融インフラの需要側における実質的な検討へと移行しつつある可能性を示唆している。
https://iowngf.org/inter-dc-vm-migration-and-long-distance-db-replication-for-financial-industry/
衛星インターネットは災害や戦争などで地上通信網が途絶した際の代替接続手段として注目されてきた。こうした流れの中で、低軌道衛星通信市場を急速に拡大しているサービスがStarlinkである。米SpaceX社は現在、一般向けのStarlink、企業向けのStarlink Business、軍・政府向けのStarshieldなどの形で衛星通信事業を展開している。
今日、多くの国は国家安全保障や公共秩序を理由に、デジタル空間を一定範囲で管理する制度や技術を整備している。しかし衛星インターネットはインフラ自体が宇宙空間に構築されるため、従来の地上通信網とは異なる形での管理や規制が求められる。この構造的特徴から、衛星ネットワークは政治的状況においても一つの変数として現れるようになった。
例えばイランでは、2000年代半ばから「ハラールネット(HalalNet)」と呼ばれる国内ネットワークの仕組みを整備し、外部インターネットとの統制を図ってきた。2026年初頭の反政府デモの際、政府は大規模なインターネット遮断を実施したため、Starlinkが緊急ネットワークを提供し衛星インターネットが通信遮断を回避する接続手段として利用されたことがある。しかし、当局は直ちにディープパケットインスペクション(DPI)、ネットワークフィルタリング、トラフィック制御など、中国の技術を活用した通信統制措置を実施したとみられる。
衛星インターネットが注目される理由は明確だ。災害や紛争によって地上通信網が機能しなくなった場合、迅速な通信復旧の手段となり得るためである。また、開発途上国や遠隔地域で通信インフラを確保し、情報アクセス格差の縮小に活用される可能性も指摘されている。一方で衛星通信は技術的に電波妨害(ジャミング)の対象となり得るほか、関連技術も進展していることから、紛争環境での通信安定性を巡る懸念もある。天体観測に影響を与えるとされる「スターリンク・トレイン」現象への批判や、スペースデブリ問題も課題として挙げられている。
それでも今後の衛星通信市場の成長余地は大きい。国際電気通信連合(ITU)によれば、世界ではまだ約26億人が通信インフラの届かない地域に置かれている(サハラ以南のアフリカ、南アジア、東南アジア、中南米の農村部など)。こうした空白が、今後の低軌道衛星通信市場の成長を支える背景となると考えられる。
当社代表が最新のニュースを題材に時代の本質、変化の予兆に切り込みます。
4月1日、高等学校等就学支援金に関する法律の改正法が施行、就学支援における所得制限が撤廃された。これにより公立高校には生徒1人あたり年間11万8800円、私立高校には同45万7200円を上限に授業料が支援される。進学率が98%に達する高校への就学支援の取り組みは、従来から国あるいは各自治体の施策として段階的に進められてきたが、今回の改正により家庭の経済力を問わずすべての高校進学希望者の授業料負担が免除される。
7日、政府は学校教育法、教科書無償措置法の改正案を閣議決定、デジタル教科書を国の検定対象に加え、小中学校における正式な教科書として無償配布する。タブレット端末を活用した教材の活用は文科省のGIGAスクール構想のもと既に浸透しつつある。しかし、教科書として認められているのは「紙」のみである。政府はデジタル教科書を正規の教科書として認定するとともに、紙の教科書に掲載されている動画等の補助教材にリンクするQRコードの接続先についても検定対象とする。紙、デジタルの選択は各教育委員会に委ねるとし、2030年度の導入を目指す。
高校進学における「機会の平等」は達成した。学校選択の要件は教育の独自性、進学率、設備環境ということになる。結果、優位に立つのは私学であり、一部の伝統校や中高一貫校を除けば公立の不利は言わずもがなである。人気校を巡る受験競争はし烈化、低年齢化し、そこに新たな経済要件が生じる。一方、デジタル化についても課題が残る。デジタル教育の先進国フィンランドでは国際学習到達度調査(PISA)の順位降下を受け、既に「紙」への回帰が始まっている。シンガポールでも2023年に小学生への端末配布を中止した。心身発達への影響や集中力低下に対する懸念が理由である。
公立高校の定員割れは深刻だ。とりわけ地方では統廃合の呼び水となる。一方、赤字の学校が4割を超える私学への実質的な販促支援は都市部における需給バランスも崩す。誰もが学べる社会に異論はない。しかし、議論の軸足は「負担の軽減」や「支援の平等」といった“家計”の問題に偏っており、“公立”の将来ビジョンそれ自体は置き去りにされた感が拭えない。教科書のデジタル化についても同様だ。教科書のペーパーレス化とコンピュータサイエンスは別物である。教育におけるIT活用の効用とIT人材を育成するための教育の在り方についても更なる議論が必要である。
今週の“ひらめき”視点 2026.3.29 - 4.9
代表取締役社長 水越 孝
さらにもう一つの変化が重なっている。戦争そのものが、次第にデータと技術を中心に展開されるようになっている点である。近年の軍事作戦ではAIとデータ分析を活用して意思決定の速度を高めようとする試みが増えている。戦場の速度が上がるほど、情報の生成と拡散の速度もまた速くなる。地政学的事件が経済システムや市場へ伝わるまでの時間も、以前よりはるかに短くなっている。
こうした環境の中で金融インフラも変化圧力を受けている。伝統金融は依然として取引時間、決済構造、規制体系を前提とした運営を維持している。一方で一部のデジタル資産取引では、ブロックチェーン決済、24時間取引、スマートコントラクトによる自動化取引などの仕組みを実験している。ディファイのエコシステムではこうした構造がすでにさまざまな形で実装されており、ステーブルコインを中心とするデジタル決済ネットワークも徐々に拡大している様子が観察される。
戦争は常に経済と市場に衝撃を与える。しかし今回の事態が示したのは単なる価格変動以上の場面であった。市場が停止しているあいだにも出来事は進行し、情報は拡散していく。そして企業や機関はそのあいだで次の市場開場を待つしかない。このギャップをどのように理解し、どう対応していくのか。レガシー金融とデジタル金融、そしてAIによる情報分析が同時に機能する環境の中で、金融インフラと市場構造をどのように再検討していくのかという議論は、今後一つの論点として浮上してくる可能性がある。
参考:Reuters, Financial Times, Bloomberg, Euronews
株式・債券・為替市場の大半は取引時間が定められており、祝日や週末には取引が停止する。しかし、地政学的な出来事は市場の時間に合わせて発生するわけではない。今回の米国・イスラエルとイランの戦争(2026 Iran War)もまた週末に発生した。世界の金融市場の多くが休場する中で事態は進行し、企業や市場参加者は価格変動を即座に確認したり対応したりする手段を持たない状況に置かれていた。
戦争が金融や産業に及ぼす影響は、おおむねよく知られた経路をたどる。エネルギー価格、海上輸送、保険コスト、そしてインフレ圧力である。とりわけホルムズ海峡のような海上の要衝は世界のエネルギー供給網の要となる通路であり、緊張が高まれば原油価格や輸送コストに直接的な影響を及ぼす可能性がある。こうした連鎖構造はこれまで多くの紛争で繰り返し観察されてきたものであり、今回の事態でも改めて注目されている。
しかし今回の状況で注目すべき点は別のところに現れた。金融市場の「時間構造」である。戦争が発生した瞬間、多くのレガシー金融市場は休場状態にあった。とりわけ日本や韓国のように週末取引が存在しない市場では、企業や市場参加者が状況変化を示す価格シグナルを直ちに確認することは難しかった。地政学的事件が発生したにもかかわらず市場価格はまだ形成されておらず、関連情報が拡散する中、市場の状況を把握しづらい状態が続いた。
この空白は単なる技術的問題ではない。出来事が発生した際、状況をいつ、どの経路で把握できるのかという問題である。ここ数年、一部の暗号資産(crypto)やディファイ(DeFi)基盤の市場は24時間取引の構造を背景に、地政学的事件やマクロ経済ニュースに比較的迅速に反応する動きを見せてきた。伝統的金融市場が開く前にデジタル資産市場で価格変動が先に現れる例も観察されており、今回のケースでもビットコインなどの動きを通じ、市場動向を先に読み取ろうとする動きが見られた。
この過程で注目される要素の一つがステーブルコインである。ステーブルコインはドルなど法定通貨に連動する仕組みにより、デジタル資産エコシステムの中で主要な取引・決済手段の一つとして利用されている。世界の一部取引では実際の決済手段として用いられ、デジタル資産市場の取引フローを維持する役割も果たしている。こうした構造は、伝統的金融市場が休場している時間帯でもデジタル市場が継続して動く基盤の一つとして言及されることがある。
もちろん、こうした市場が伝統金融を置き換えると断定することはできない。取引規模や制度基盤、参加者構成などの点で依然として大きな差が存在するからである。しかし事件発生のタイミングと市場取引時間のあいだに存在するギャップが次第に明確になりつつある点は注目に値する。とりわけグローバル企業や金融機関の立場から見ると、情報拡散の速度と市場価格形成のタイミングとのずれに対する認識は徐々に高まっている。
(再掲)イベントのご案内です。
3月11日に車載ソフトウェアに関する最新レポート『2026 AI-DV(AI定義車両)市場の実態と展望 ~SDV/車載ソフト市場の構造大変革、産業OS・都市OS化を目指す未来~』を発刊しましたが、それを踏まえて、株式会社イードさんのセミナーに登壇させて頂くこととなりました。
内容としては、「SDVは本当に儲かるのか?」です。SDVは現在、各OEMともに絶賛開発中の状況にあり、ある程度完成形が見えたとしても、OTAを通じて、常に機能アップデートが求められます。このため開発費は継続的に増えていくなか、回収していくためのビジネスが必要となります。
そこで、OEMやサプライヤー、クラウドベンダーとの意見交換を通じてみえてきた、現時点における「儲けどころ」について共有することで、視聴者の皆さんと一緒に「儲けどころはどこにあるのか」を含めて考える機会になればと思います。
ご興味ありましたら、ぜひお申し込みをご検討頂ければと思います。
2026年3月10日、「2026 マネージドサービスマーケットの実態と展望」を発刊しました。
テーマとして取り上げたマネージドサービスには様々なサービスが内包され、また事業者それぞれに提供範囲が異なります。さらに、ひとつの事業者内でも、複数のマネージドサービスを展開していたり、部門をまたがって運用保守に取り組んでいたりします。
そんな難しい状況の中でも、市場を牽引するベンダーの皆様にこの度取材協力いただきました。
今回のレポートでは、マネージドサービスベンダー各社のサービス特長や戦略動向を取材した企業個票に多くのページをあてていますので、そちらもぜひご注目ください。
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