矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

デイリーコラム


2026.10.23

「最後発のコード決済『teppay』、JR東日本は改札の外で勝てるか」

2026年10月20日、JR東日本はモバイルSuicaアプリにおいて、コード決済サービス「teppay(テッペイ)」の提供を開始した。モバイルSuicaの利用者はアプリを更新するだけで利用でき、新たなアプリの導入や登録が不要な点が特徴となっている。
 
最大の変更点は「2万円の壁」を超えた支払いが可能になる点である。これまでSuicaの残高は2万円が上限であったが、「teppay」では、マイナンバーカードで本人確認をすると残高から最大30万円までの支払いが可能となる。さらに、JR東日本グループのクレジットカード「ビューカード」を連携すれば、カードの利用限度額まで支払える仕組みも提供する。これにより、これまでSuicaでは困難であった高額決済にも対応している。
また、個人間送金にも対応し、受け取った残高はモバイルSuicaへチャージして、鉄道運賃の支払いや定期券購入などに活用できる。2027年春には、モバイルPASMOへのサービス展開も予定しており、異なるアプリ間での送金にも対応する。
 
市場の状況を見ると、JR東日本がコード決済市場に参入した理由が窺える。モバイルSuicaの発行枚数は2026年10月時点で4,500万枚を超え、「移動・少額決済のデバイス」として確かな地位を築いている。他方、経済産業省が発表した2025年のキャッシュレス決済による決済額162.7兆円のうち、交通系を含む電子マネーによる決済額は6.0兆円となっており、コード決済(16.6兆円)に大きく差をつけられている。「teppay」は、この状況に対するJR東日本の打開策と言える。
 
一方で課題も多い。コード決済市場において先行するPayPayなどは、すでに多くの人の日常の支払いに定着している。「teppay」はそこに最後発として加わる立場で、シェアの獲得は容易ではない。また、サービス開始直後には、SNSで「ビューカードの登録でエラーが出た」「アプリの起動から支払い画面までが遅い」といった声も投稿された。JR東日本は11月4日から、20%ポイント還元などの大規模なキャンペーンを実施予定としているが、キャンペーンで集めた利用者を定着させられるかは、UI/UXの改善をはじめとした使い勝手の向上にかかっている。
 
今後のシェア獲得の鍵は、「日常的なユーザー接点」にあるだろう。4,500万枚超が発行されているモバイルSuicaの利用者には通勤・通学で毎日アプリを開く習慣があり、さらにPASMOへの展開が実現されれば、首都圏の交通利用者の多くを取り込める可能性がある。このユーザー接点をいかに日常生活まで拡大し、移動と消費のシームレスな接続を実現できるかが重要になると考える。

2026.10.22

「保険業界の改革、その先に消費者はいるのか」

保険業界では現在、「顧客本位の業務運営」をどのように実現していくかが大きなテーマとなっています。生命保険業界ではフルコミッション制のあり方や販売体制の見直しが議論され、損害保険業界では一連の不適切事案を受けて代理店管理や募集品質向上に向けた取組が進められています。
 
こうした中、金融庁と国土交通省は2026年10月13日に、一般社団法人日本損害保険協会に対し、代理店業務品質評価制度の適切な運用を求める要請を公表しました。要請文では、一部代理店から「過度な態勢整備を求められている」「十分な対話を経ないまま委託契約解除が示唆された」といった声が寄せられていることが紹介されています。また、代理店の減少によって顧客との接点が縮小し、自賠責保険の加入機会が失われる可能性についても言及されています。
 
もちろん、不正の再発防止や募集品質の向上は、消費者保護の観点から極めて重要です。業界全体の信頼回復のためにも、こうした取組を進めていく必要があります。
ただ、今回の要請文では、代理店の減少による顧客接点の縮小にも言及されています。本要請の趣旨は代理店業務品質の向上にありますが、その一方で、消費者が保険にアクセスできる環境を維持することの重要性も示されているように感じました。
 
私が今年8月に実施した「2026 保険に関する消費者の理解度・意識調査」でも、保険商品や制度を十分理解していると回答した消費者は決して多くありませんでした。保険の内容が複雑化するなか、消費者にとっては、必要な時に相談できる身近な接点の存在がこれまで以上に重要になっているように思われます。
 
業界が信頼回復に向けた見直しを進めるなか、その議論が制度やルールの整備だけにとどまるのではなく、消費者の理解向上や相談しやすい環境づくりにつながっているのかという視点も忘れてはならないと考えます。
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なお、当社矢野経済研究所では「2026 保険に関する消費者の理解度・意識調査」を発刊しております。保険に対する消費者の理解度や意識の実態についてアンケート調査をもとに分析したレポートです。保険業界で制度改革や顧客本位の業務運営に関する議論が進むなか、その受け手である消費者の視点を知るうえでの参考資料としてご活用いただければ幸いです。
2026 保険に関する消費者の理解度・意識調査 | 市場調査とマーケティングの矢野経済研究所

2026.10.21

【発刊裏話】■事例は上位か 「国内企業のIT投資実態と予測」の2026年版を発刊しました(10/21発刊)

「国内企業のIT投資実態と予測」の2026年版を発刊しました(10/21発刊)
本レポートでは、毎年、どのような質問を追加しようかと考えており、今年はソフトウェアについて「ベンダからの提案でこれが抜けていると検討の対象外になるもの」を尋ねました。

取材では「事例を大事にしている」というお話をお聞かせ頂くことが多いですが、事例は果たしてどのぐらいの順位なのか。

ぜひレポートを手に取ってご確認頂ければと思います。

2026.10.20

【アナリスト便り】■市場は順調に成長 「2026国内企業のIT投資実態と予測」を10/21に発刊します

「2026国内企業のIT投資実態と予測」を明日10/21に発刊します。
アンケートにご協力頂いた皆さま、今年もありがとうございます。
ご想像通り、市場はAI、セキュリティを追い風に順調に成長しています。
ただ、もちろんこれらだけが市場の成長要因ではありません。
他社がどのようなところのコストを抑え、どこに投資を行っているのか、などを把握できる1冊になっています。

まずはリンク先をクリック頂き、どんなことが載っているのか、目次を眺めて頂ければ幸いです。

2026.10.19

【今週の"ひらめき"視点】談合、カルテル体質を捨て、健全な競争環境の実現を

10月13日、公正取引委員会は都営地下鉄の軌道保守工事を巡ってJR東日本の関係会社、東鉄工業をはじめとする6社の独禁法違反を認定、違反内容を自主的に報告した東急軌道工業を除く5社に対して排除措置命令を出すとともに課徴金の納付を命じた。6社は入札前に受注予定会社を調整するなど競争を制限したとされ、発注者である東京都交通局についても入札情報の事前漏洩など談合への関与の有無について調査中とのことである。

その前週、公取委はビールや発泡酒における価格カルテルの疑いでビール大手4社に対して強制捜査を行った。4社は“裏会”などと称する会合でビール類や缶チューハイの値上げ幅などを調整していたという。9月にはマンションの大規模修繕工事における談合も明らかになった。マンション管理組合から業者選定等の業務を委託された設計コンサル会社が業者間の受注調整を行ったうえでバックマージンを得ていたとされ、設計コンサル会社2社と工事事業者40社の独禁法違反が認定された。

談合やカルテルが社会問題化すると、“長年続く業界の慣習”であり、過度な価格競争を防ぐことが出来る、会社規模や施工能力に見合った受注調整により品質・納期が守られる、事業リスクが軽減され経営が安定、結果、雇用が維持される、、、などと必要悪を説く論者が現れる。しかしながら、問われているのは供給サイドと需要サイドの非対称性であり、市場取引の公正さである。消費者の選択の権利は侵されていないか、不当な費用が上乗せされていないか、公共事業であれば原資は税金であり入札プロセスにおける透明性は確保されているか、ということだ。そもそもルールを守らないアンフェアなプレーヤーを擁護する理屈はない。

10月12日、国際通貨基金(IMF)が世界経済見通しを発表、2027年の日本の名目GDPを4兆4676億ドルと推計した。予測どおりであれば日本は来年には米国、中国、ドイツに加え、インド、英国にも抜かれ世界6位へ後退する。無論、円安も背景にある。しかし、通貨安それ自体が国力に対する信任の低下とも言える。公平、公正な市場取引、すなわち、健全な競争環境の実現は、生産性を高め、付加価値を創造し、イノベーションを促進するための基本条件である。身内の論理に閉じ、業界の常識に安穏としていては世界から後退するばかりだ。慣習や前例、しがらみに囚われない“出る杭”たちに期待したい。


今週の“ひらめき”視点 2026.10.11 - 10.15
代表取締役社長 水越 孝

2026.10.16

「Hexagonから独立した「Octave」、日本で本格始動」

2026年9月28日、Octave(オクターブ)のアナリスト説明会に参加した。同社は、プラントや工場、社会インフラ、エネルギー施設などの重要資産を対象に、設計・建設から運転・保全、保護までのライフサイクル全体を支えるソフトウェアを提供する企業である。スウェーデン・ストックホルムに本社を置き、計測技術の世界的リーダーとして計測用のハードウェアとソフトウェアを手がけるHexagon ABから、プラントやインフラ向けのソフトウェア事業などが独立して誕生し、2026年5月にNasdaqに上場している。同社は、新会社としてのビジョンや日本市場での成長戦略、産業AIの活用状況を紹介する目的で説明会を開催し、米本社の最高製品責任者(CPO)ジェイ・アラダイス氏が登壇した。
 
同社はまず、資産集約型の産業では設計・建設・運転保全・保護の各段階がサイロ化しており、設計の不正確さによる建設段階での手戻りや、断片的なセキュリティ管理によるリスクの増大、建設段階のデータが運転に引き継がれず、故障などが起きてから対応する保全にとどまっていることなどが課題になっていると指摘した。これに対し、「Octaveプラットフォーム」で意思決定を支援する方針を示した。同プラットフォームは、200以上のコネクターでIT/OTデータへのアクセスを標準化・管理し、データをライフサイクル全体で再利用できる形に整えるとともに、産業向けのAI「Octave AI」を業務の流れに組み込むものである。現在は一部の顧客とともに開発を進めており、2027年第1四半期に全顧客への提供開始を予定している。
 
AIについては、データのコンテキスト化による「基盤」づくり、既存製品にAIを組み込む「組み込み型AI」、人が関与しながら業務を遂行する「自律型AI」の3つの観点から取り組むとした。事例として、建設スケジュールの最適化により工期を100日以上短縮し、分析時間を数時間から数秒に短縮した例を紹介した。
 
同社は日本を、設備の老朽化や人材不足といった課題を抱える重要な市場と位置付けた。また、同社が実施した産業AI調査をもとに、日本ではAI活用の基盤がまだ形成段階にあると説明した。今後は日本市場に合わせたソリューションへの投資を続け、エネルギーや製造、交通の分野を中心に、顧客の生産性向上を支援していくという。
 
設備の老朽化や熟練人材の不足は、日本の産業界にとって切実な課題である。設計から運転・保全までのデータをつなぎ、AIで活用するという同社の取り組みは、こうした課題への一つの解決策となり得る。独立した新会社として、日本市場で今後どのような展開を進めるのか、注目したい。

2026.10.15

「高度化するドローン攻撃 日本はどう備えるべきか」

10月7日、パシフィコ横浜で開催されたKeysight World Japan 2026にて、ドローン攻撃の脅威の現状と、日本の法制上の課題をテーマとした講演が開かれた。本講演では、防衛技術協会理事長の渡辺秀明氏が登壇し、ウクライナ戦争を経て高度化したドローン攻撃に対して、日本が法体制上どのように備えるべきか、諸外国の取り組み事例を交えながら提言された。
 ドローンについては、安価であることや、地形を問わず指定箇所に侵入できることから、従来より脅威として捉えられていたものの、近年ではウクライナ戦争を通して、AI自律型ドローンや飽和攻撃型ドローンも登場してきており、その脅威はより多様化・高度化しているという。さらにロシアや北朝鮮は、これらの製造・運用に関するノウハウも実戦を通して積み上げつつある。
 ドローンの脅威は決して戦地に限定されることはない。講演では、2025年秋以降、欧州各国で、ロシア製と見られるドローンが領空侵犯や重要施設侵入を繰り返している事例が取り上げられた。9月にはポーランドやデンマークで領空侵犯が発生しているほか、同年11月にはベルギーの原子力発電所にも飛来している。こうした事案は多くの場合、海底ケーブルの破壊や重要インフラ・産業へのサイバー攻撃と同時に行われるとされ、NATOもこれを「ハイブリッド攻撃」と呼んで警戒を強めている。交戦当事国でなくとも、こうした脅威に晒されている実態がある。

 

 日本に当てはめた際、重要な点として、ドローンによる攻撃が行われた際の、脅威の認識から対応までの時間的猶予が短いことが登壇者により述べられている。現行の法体制では、初動は警察が対応することが想定されているが、筆者が調べたところ、日本では通報~警察到着までの所要時間は平均おおよそ8分とのことで、数分で完結しうるドローン攻撃への対策にあたっては、この時間的制約が厳しいボトルネックになると考えられる。
 本講演においても、平時でも有事でもない、ハイブリッド攻撃が展開される「グレーゾーン」を想定した防護モデル構築と法体制整備の重要性が強調されている。攻撃対象は、原子力関連などの重要設備から、電力や通信、データセンターや港湾に至るまで幅広く想定されるが、警察不在時でも、インフラ事業者が自ら対処手段を講じてこうした重要インフラの防護を可能にする、というのが、ここで提示された「グレーゾーン防護モデル」の要諦だ。
 本防護モデル構築にあたって、解決すべき課題も存在する。日本では電波法や航空法などの規定により、ジャミングやGNSS妨害をはじめとした対ドローン技術の研究・試験は自由に行えないほか、警察・防衛・海保・民間事業者が連携して対応できる包括的な枠組みも存在しないことなどが本講演にて指摘されている。

 世界的に見ても、こうした事態に備えた体制整備は始まったばかりだ。当該講演にて紹介された諸外国の取り組みとして、例えばベルギーでは2026年6月に、悪意あるドローンへの対抗を目的とした妨害装置が当局許可のもと使用できるようになる法案が閣議承認されたほか、ドイツでは9月よりインフラ事業者への権限付与について連邦議会で協議が始まっている。米国では2025年11月に、FBIが対ドローンを念頭に置いた訓練センターをアラバマ州に設置している。
 日本においても、諸外国のこうした動きに後れを取らず、「グレーゾーン防護モデル」を構築して脅威に備えることで、社会の安定・持続した運用に繋がると筆者は考える。

2026.10.14

【無料で遊ぶ、矢野経済研究所の歩き方】

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2026.10.13

【今週の"ひらめき"視点】自動運転バスの実証実験、本格化。デジタル・モビリティ国家の実現を急げ

当社代表が最新のニュースを題材に時代の本質、変化の予兆に切り込みます。

ここへ来て自治体が主体となった自動運転バスの社会実装に向けての動きが活発だ。10月2日、つくば市、筑波大、関東鉄道、KDDIグループはつくばエクスプレス(TX)つくば駅と筑波大構内を結ぶ路線バス“筑波大学循環”でレベル2の自動運転バスの運行をスタートさせた。同日、豊岡市も11月から城崎温泉街で自動運転バスの実証実験を行うと発表、平日に1日3便、JR城崎温泉駅と温泉街とを結ぶ。事業の企画調整は兼松、運行は全但バスが担当、車両は韓国A2Z社製の小型バスROii(ロイ)を使う。

デジタル庁はこの6月16日、「2040年には自動運転が全国津々浦々で、誰もが利用可能なモビリティ・インフラとして定着」している状況をゴールに設定し、技術目標と数値目標を逆算した実行計画「2040デジタル・モビリティ国家を自動運転で実現する提言」を発表した。2027年度は先行的事業化地域で収益モデルを確立、28年度には自治体単位の導入から広域連携へ、29年度には幹線交通網と地域交通の高度な接続を実現、30年度には過疎地を含む全国に水平展開、自動運転を社会に不可欠なインフラとして定着させる、とする。

9月17日、日本自動車工業会も“事故死ゼロ”と“移動の自由”の実現を自動運転の最終目標と位置付け、国、自治体、業界でインフラ技術の進化、社会基盤整備、市場浸透施策に取り組む方針を発表した。AIがキーテクノロジーとなる自動運転はそれゆえAI先進国である米国、中国が先行する。社会実装に向けて日本は大きく出遅れてきた。しかしながら、生成AIの急速な進化、普及、適用領域の拡張は遅れを一挙に取り戻す可能性を高めてくれたとも言え、新たな社会基盤の構築、新たな産業競争力の育成に期待したい。

10月3日、八王子市は旧医療刑務所跡地に整備した大型複合施設「桑都の杜」をオープン、東京工科大を共創パートナーにJR八王子駅と同施設間で自動運転バスの実証実験をスタートさせた。実はこの辺りは筆者の実家があった地域で、先日開業前の同施設周辺を歩いてみた。筆者が通った剣道場も、悪ガキグループと覇権を争った公園も、遊び疲れて家路を急いだ道も、すっかりなくなっていた。とは言え、不思議と寂しさは感じなかった。筆者のあの頃の時間もこの地のどこかに染み込んでいるはず。地域の活性化に向けて実証実験の成功を願う。


今週の“ひらめき”視点 2026.10.04 - 10.08
代表取締役社長 水越 孝

2026.10.09

某自治体さんのスタートアップ審査、本年も無事終了

某自治体さんのスタートアップさんに関する外部審査員を同イベント開始当初から毎年、受けています。ちなみに審査員名は伏せられておりますので、某自治体としてます。

コロナ禍前は審査会も対面だったのですが、コロナ禍以降、オンラインでの審査になっている点はちょっと残念なところ。
とはいえ、毎年、さまざまな領域で活躍しておられるスタートアップさんのプレゼンを聞いては、目の付け所と行動力に驚いています。今年もバラエティに富んだ複数社のプレゼンを拝聴、緊張感ある質疑応答をしておりました。当然ながら点数をつける必要があり、毎度審査基準を眺めながら悩んでおります。
点数に関係なく、いずれのスタートアップさんも今後の産業を担っていく存在になって欲しいなぁと願ってやみません。

2026.10.08

【発刊裏話】『2026 PLM/CAD/EDA市場の実態と展望』

今年は、これまで別々に発刊してきた「PLM市場の実態と展望」と「CAD/EDA市場の実態と展望」のレポートを1冊に統合して発刊しました。両分野のメーカ・ベンダの方々にお話を伺うなかで印象に残ったのは、分野は違っても同じ話題に行き着く場面が多かったことです。 


PLMの取材では「AIに参照させるデータをどう整えるか」、CADの取材では「設計ツール単体ではなく、解析や製造とどうつなぐか」という話を多く伺いました。入り口は違っても、どちらも「データをつなぐこと」がテーマになっていました。
 

また、AIの進化の速さにも驚かされました。EDAの分野では、数年前に2030年代に到達することを見込まれていた「完全自律」の設計AIが、今年すでにEDA大手から発表されています。その分、ユーザ企業側でAIを使いこなすための知識や人材をどう確保するかという課題は、より切実になっているように感じます。

 

2026 PLM/CAD/EDA市場の実態と展望 | 市場調査とマーケティングの矢野経済研究所

2026.10.07

【アナリスト便り】『2026 PLM/CAD/EDA市場の実態と展望』を発刊

2026年10月7日、『2026 PLM/CAD/EDA市場の実態と展望』を発刊いたしました。

2026 PLM/CAD/EDA市場の実態と展望 | 市場調査とマーケティングの矢野経済研究所

 

本レポートは、これまで別々に発刊してきた「PLM市場の実態と展望」と「CAD/EDA市場の実態と展望」を1冊に統合し、PLM/CAD/EDAを横断して国内市場を俯瞰できる内容としました。

 

近年、これらの市場ではAIの実装が一段と進み、関心は搭載の有無から「どこまで自律的に使えるか」へ移っています。EDAではAIが自らツールを動かす段階に入り、PLMではAIを機能させる前提として、他システムとのデータ連携が注目されています。 また、クラウド/SaaS型での提供の広がりや、AIの利用量に応じた従量課金の登場など、提供形態・料金形態も多様になりつつあります。 さらに、導入した3D環境の定着や、人手不足を背景とした設計業務の標準化・技能継承など、ユーザ企業の課題への対応も各分野で求められています。

 

本レポートでは、こうした変化を踏まえ、市場の現況と将来展望を分析しました。マーケット研究や事業戦略の検討、製品選定にぜひお役立てください。

2026.10.06

「楽天カード 法人向け「楽天ビジネスカードプラチナ」を発行開始」

 楽天カードは2026年10月1日から、みずほ銀行との業務提携の一環で、法人向けクレジットカード「楽天ビジネスカード プラチナ」の発行を開始すると発表しました。みずほ銀行傘下のUPSIDERと共同開発し、楽天グループの法人顧客基盤と、UPSIDERのAIを活用した与信・業務支援機能を組み合わせ、中小企業やスタートアップ向けの決済・資金管理支援を強化します。
 
 楽天ビジネスカード プラチナは、最大10億円の利用可能枠を設け、年会費無料、基本1%の楽天ポイント還元を特徴としています。オンラインで申し込みが完結し、原則として決算書の提出も不要です。UPSIDERが日々の入出金データなどを基に独自の与信モデルで審査し、決算書を中心とする従来の審査では対応しにくかった、成長途上の中小企業やスタートアップの資金決済ニーズに応える方針です。専用アプリでは主要な会計サービスとも自動連携し、楽天市場でのポイント還元など、楽天経済圏のサービスとの連携も打ち出しています。
 
 9月30日に開かれた記者会見で、楽天グループの三木谷浩史会長兼社長は自身の創業経験にも触れ、「日本ではベンチャー企業に対し、個人保証を求めるケースが多かった」と指摘しました。その背景には企業の実態を捉えるデータ不足があったとした上で、迅速な与信や経理業務の効率化を通じ、スタートアップなどの成長を支援していく考えを示しました。
 
 個人向け決済に比べてキャッシュレス化の余地が大きい法人領域は、有望な成長市場であり、各社で法人カードの提供を強化する動きが相次いでいます。各社の取組みにより、法人決済のキャッシュレス化と、中小企業の成長を支える金融インフラの拡充につなげられるかが注目されます。
2026.10.05

【今週の"ひらめき"視点】酒税法改正、ビール類の税率一本化。ビール各社は新たなスタートラインに

当社代表が最新のニュースを題材に時代の本質、変化の予兆に切り込みます。

 

10月1日、酒税法が改正、ビール類の酒税は350ml缶あたり54.25円に一本化された。ビールは約9円の減税、一方、発泡酒や第3のビール(新ジャンル)は約7円の増税となる。また、沖縄では1972年の本土復帰時に施行された特別措置法による県内向けビールの酒税軽減措置も廃止となる。

ビールの販売数量のピークは1994年、以降、価格競争が激化する中、大手メーカーは麦芽の使用率による税率差に着目、相次いで発泡酒を開発、2000年にはビール類市場のシェア3割を奪う(課税数量ベース、国税庁より)。2004年にはもう一段の税率差を狙って麦芽の代わりに大豆やえんどう豆などを使った第3のビールを投入、消費者の低価格需要に応える。こうした状況に国は「類似する酒類間の税率格差が商品開発や販売数量に影響を与えている」とし、“税収中立”のもと2020年から段階的に税率調整を実施、今回の改正はその総仕上げである。

業界はこの日に向けて対応を進めてきた。ただ、ブランドごとに戦略は分かれる。実質的な値上げとなるビール類の“ビール”化を進める一方、従来の製法を維持するブランドも少なくない。各社は発泡酒や第3のビールならではの味わいで差別化をはかるとともに糖質ゼロ、プリン体ゼロ、低カロリーといった機能性を付加することで“ビール代替需要”とは一線を画す市場も開拓してきた。あえて“ビール”化させる合理性はないとの判断である。

この10月に値上げされる食品は3千品目を超える。ビール類における発泡酒のシェアは44%(2024年度、課税数量ベース)、発泡酒や第3のビールを愛飲してきた消費者にとって増税の影響は小さくない。需要量への影響も懸念される。そもそもビール類の市場縮小は傾向的だ。ビール、発泡酒それぞれのピークと2024年度を比較すると前者は67%減、後者は27%減、ビールと発泡酒の合計は41%減である※。個性豊かなクラフトビール、RTD(缶チューハイや缶ハイボールなど)、低価格訴求のPBなど、消費者の選択肢は多い。加えて、あえてお酒を飲まない“ソバーキュリアス”なライフスタイルも広がる。「とりあえずビール」の時代はもう来ない。嗜好の分散、ニーズの多様化、進行する酒離れ、問われるのはまさに個々の商品力ということだ。
※酒類課税数量におけるビールのピークは1994年、7,413千kl、発泡酒は同2002年、2,646千kl、ビール+発泡酒の最大値は1994年、7,444千kl(国税庁)


今週の“ひらめき”視点 2026.9.20 - 10.01
代表取締役社長 水越 孝

2026.10.02

「CEATECオンラインセミナー聴講開始!」

CEATECのオンラインセミナーの配信がスタートしています。

私はJEITAのセミナー「ITトレンド調査 ~AI活用の実践知とITプラットフォームの展望~」で登壇させて頂いています。

テーマは「中堅・中小企業向けAI活用成功ロードマップ」。

よく聞くスモールスタートですが実は…。

10/30(金)23:59まで無料で閲覧頂けます。ぜひご視聴ください。

ITトレンド調査 ~AI活用の実践知とITプラットフォームの展望~ | CEATEC 2026 ( Official Website )

2026.10.01

【個別調査のご案内】

矢野経済研究所では、企業様からのご依頼に基づき、オリジナルの市場調査の業務も行っております。

弊社の既存レポートでは知りたい内容が充分に満たせない、単なる調査結果だけではなくコンサルテーションも頼みたい、といった要望にも対応いたします。

HPやメール、お電話等でご相談頂ければ、担当者からご連絡させて頂きます。費用の見積もりまでなら無料で対応いたしますので、市場データの収集やコンサルティングなどでお困りの方は是非お気軽にご相談ください。

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http://www.yanoict.com/service/service_e

2026.09.30

「AIエージェント時代のECは「AIに選ばれる」ための商品情報整備」

生成AIの活用が広がる中、EC業界では、AIを業務支援に活用する段階から、AIエージェントが商品を検索・比較し、購買を支援する「Agentic Commerce」への対応に向けた動きが始まっています。

矢野経済研究所が実施した「2026 EC事業者における生成AI・AIエージェント活用実態とAgentic Commerceへの対応意向調査」(2026年9月30日発刊予定)では、生成AIを継続的に活用している企業は78.3%に達しました。また、AIエージェントを実際の業務で活用する企業に加え、すでにAgentic Commerceへの対応を進める企業も確認されており、EC事業者のAI活用は「生成AI」から「AIエージェント」、さらに「Agentic Commerce」へと段階的に高度化していることがうかがえます。

特に注目されるのが、Agentic Commerceへの対応によって期待する効果です。「商品情報の最適化により、AIエージェントによる推薦・比較対象として選ばれやすくなる(露出機会の増加)」をはじめ、「売上・コンバージョン率の向上」、「AIエージェント経由での新規顧客接点・販売チャネルの拡大」などへの期待がみられました。

これまでのECでは、検索結果や広告、ECモールなどを通じて消費者に商品を見つけてもらうことが重要でした。一方、AIエージェントが購買行動に関与するようになれば、消費者に代わってAIが商品情報を理解し、条件に合った商品を比較・推薦する場面が増える可能性があります。そのためEC事業者にとっては、商品をECサイトに掲載するだけでなく、「AIに商品を正しく理解してもらい、推薦・比較の対象として選ばれる」ための商品情報の整備が重要になります。

実際、AI時代に向けて今後重点的に投資したい分野では、「ECシステム・ECプラットフォームの機能強化」、「PIM(商品情報管理システム)の導入・強化」、「商品情報・商品コンテンツの整備」などが上位に挙がりました。AIツールそのものだけでなく、AIが活用できる商品情報やEC基盤、システム連携への投資も重視されています。

Agentic Commerce対応企業では、今後さらに対応範囲を拡充する意向もみられており、今後はAIエージェントを前提としたEC環境の整備が進むことが予想されます。

Agentic Commerceは、単なる新しいAI技術の導入ではなく、消費者の商品発見や比較、購入といった購買プロセスそのものを変える可能性があります。今後のEC市場では、「人に見つけてもらう」だけでなく、「AIに理解され、推薦される」ための商品情報・EC基盤の整備が、新たな競争軸の一つになることが期待されます。

2026.09.29

「経産省、GX戦略地域(第1弾)を公表 DC集積型は9地域(10地点)が認定」

2026年9月11日、経済産業省はGX戦略地域(第1弾)を公表した。GX戦略地域制度は、地域に存在する産業資源を核として新たな産業クラスターの形成を目指す制度であり、認定地域にはGX経済移行債等による支援や規制・制度改革等が講じられる。

 

今回発表されたのは4類型(表1)のうち①コンビナート等再生型、②データセンター集積型、③脱炭素電源活用型の3類型で、計18地域が認定された。④脱炭素電源地域貢献型(GX地域共創補助金)は、今後審査が行われる予定である。

 

②データセンター集積型は、AI関連需要の拡大を背景に、電力供給と立地の両面から国内のデータセンター(以下、DC)整備を計画的に進めることを狙いとした類型で、第1弾では9地域(10地点)が認定された(表2)。
今回の認定で特に重視されたのは、GW級の集積拠点を形成できるかという点である。DCには電力・通信インフラの効率的な整備が求められるため、小規模DCを各地に点在させるより、一定規模のDCを集積させる方が望ましい。今後見込まれるAIワークロードの増加に対応するには、大規模な電力供給が可能か、段階的な新設・増設に対応できる土地があるか、という点が鍵になる。

 

具体的な各地域の今後の計画は公表されていないが、認定地域の中にはすでに大型DC計画が公表・進展している地域もある。ワット・ビット連携をはじめ、DCの地方分散は着実に進み始めていると言える。

 

一方で、DC事業者側は必ずしも地方分散に前向きとは限らない。データそのものが都市部で発生する以上、需要地からの距離による通信遅延の大きさや、現地作業人員の確保の難しさも相まって、都市部近郊に優位性を見出し、地方展開を選ばない事業者があるのが実情である。もっとも、遅延を許容できるワークロードや、その地域で発生するデータ処理には地方DCが適している。さらに、IOWN APN等の技術が進展すれば遅延が改善され、コスト面で優れる地方が都市部よりも優位に立てる可能性がある。

 

近年のDC市場は新規参入が相次ぎ、活況を呈している。一方で、DCが周辺環境に与える影響への懸念も一部で取り上げられるようになった。DC市場の発展は、AI・GXという国の成長戦略そのものの発展に直結するため、持続的な発展を遂げていくことを期待したい。

 

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国内DC市場の概況やDC事業者による地方分散への意見等を、2026年2月末に発刊した調査資料『2026年版 クラウド基盤(IaaS/PaaS)・データセンターサービス市場の動向と展望』で言及しております。
興味ございましたらご一読いただければ幸いです。
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◆表1.GX戦略地域制度の類型

類型 内容
①コンビナート等再生型 コンビナートを活用し、新たなGX関連産業の集積を形成する取組
②データセンター集積型 今後10年程度で、GW級のデータセンター集積地を形成する取組
③脱炭素電源活用型 脱炭素電源(再エネ・原子力)を活用した産業団地を整備し、脱炭素電源立地地域における産業立地モデルを創出する取組
④脱炭素電源地域貢献型(GX地域共創補助金) 脱炭素電源を活用し、当該電源の立地地域に貢献する事業者の設備投資を後押しする取組

 

◆表2.②データセンター集積型の認定地域(第1弾)

都道府県

認定自治体

北海道※

石狩市

北海道※

苫小牧市
秋田県 秋田市
宮城県 富谷市
栃木県 矢板市
茨城県 常総市/つくば市
富山県 南砺市
香川県 綾川町/坂出市/丸亀市
福岡県 北九州市/直方市/鞍手町
鹿児島県 薩摩川内市

※北海道は2地点でそれぞれGW級のデータセンター集積を目指す

2026.09.28

【発刊裏話】2026 量子コンピュータ市場の現状と将来展望

■想定外の27社に取材を敢行、うち13社(7か国)は海外企業
『2026 量子コンピュータ市場の現状と将来展望』について、27社に取材を実施しました。
通常、15~18社の取材が多いなか、ついつい取材したい企業が多すぎて10社オーバー!このうち、13社は海外企業で、7か国に及びました(通訳の方には深謝)。
富士通や日立製作所、OptQC、QunaSys、Qubitcore、Quemixなど、日本を代表する量子コンピュータ関連ベンダーに加えて、やはり領域が領域だけに、グローバルのベンダーを押さえなければいけません。ということで、LinkedInでCxOの方々への直接アプローチから、本国のHP経由でのお問い合わせ、はたまた大使館への協力要請、そしてQ2B Tokyo 2026での直接アプローチと、思いつく限りのあらゆる方法でアプローチをかけました。
おかげで米国や英国、ドイツ、フランス、アイルランド、フィンランド、イスラエル、韓国と、さまざまな企業の皆さまにご協力頂きました。企業によっては「Q2B Tokyoで来日しているので、俺らのプライベート製品説明会に来いよ」と声をかけて頂き、いそいそと早朝からホテルの1室に出向き、携帯の翻訳機片手に私一人で説明を聞いたりと、なかなか珍しい体験もできました(文字通りプライベートだった)。
 
高市政権の戦略17分野に量子コンピュータが組み込まれるなど、官民一体となった動きを鑑みると、来年も引き続きレポートを発刊しようかと考えています。
 
2026.09.25

【アナリスト便り】「2026 量子コンピュータ市場の現状と将来展望」を発刊③

【アナリスト便り】「2026 量子コンピュータ市場の現状と将来展望」を発刊②の続き

 
■利用企業もイノベーターからアーリーアダプターへと普及に向けて動き出した
利用企業についても変化が見受けられます。2020年前後から実証実験を進めている、三菱ケミカルやJSRなどをはじめとした、いわゆるイノベーターの取組みが目立ってきましたが、2025年~2026年にかけて第二集団(=アーリーアダプター)が登場、量子ベンダーに引き合いが多く寄せられているようです。
両者では質が大きく異なっており、イノベーターは実証テーマが明確で、かつ実証に必要な量子コンピュータなどに関する人材も抱える一方、アーリーアダプターはテーマは明確も、残念ながら量子人材が不足しており、人材育成支援から取組むケースが増えてきているそう。
 
普及に向けては、死の谷やダーウィンの海などいくつかのハードルが待ち構えていますが、まずは死の谷を越えていきそうです。
上記について、弊社のホームページ、Yano ICTのアナリストオピニオンにおいて、もう少し言及した量子コンピュータ関連のオピニオンを掲載しますので、そちらもお楽しみに!
 
2026.09.24

【アナリスト便り】「2026 量子コンピュータ市場の現状と将来展望」を発刊②

【アナリスト便り】「2026 量子コンピュータ市場の現状と将来展望」①の続き

■アルゴリズムはNISQに留まらず、FTQCに向けた進化も
次にソフトウェア側です。こちらもまた、さまざまな変化がありました。まずはアルゴリズムについてもNISQ(Noisy Intermediate-Scale Quantum Computer)向けのアルゴリズムに留まらず、Early-FTQCやFTQC(Fault-Tolerant Quantum Computer)を見据えたアルゴリズムの開発が進められています。NISQとFTQCではハードウェアの機構が異なるため、そのうえで動くアルゴリズムも異なるので、改善というレベルではなく、新しいアルゴリズムを作る感覚なのだそう。
また、アルゴリズム自体も改善が続けられています。例として量子化学計算などで利用されるVQE(Variational Quantum Eigensolver)について改善版となるアルゴリズムとして、QunaSys 社が量子アルゴリズム「QSCI」を開発したほか、韓国のQunova Computing 社が「HI-VQE(Handover Iteration VQE)」アルゴリズムを提案するなどの動きが出てきています。
 
2026.09.18

【アナリスト便り】「2026 量子コンピュータ市場の現状と将来展望」を発刊①

9/16に『2026 量子コンピュータ市場の現状と将来展望』を発刊しました。ようやっとです。
 
今回は、ハードウェア(量子ビット方式/制御装置)およびアプリケーション(アルゴリズムを含む)を押さえる形で国内外のプレイヤーに取材を実施しました。2021年の発刊以来となりますので、気持ち的にはほぼ新刊といった感覚です。本稿では調査において感じられた前回との変化について簡単に記載しておきたいと思います。
 
■ハードウェアはエラー訂正に加えて、新たな課題の登場や、方式のハイブリッドなど話題満載
まずハードウェアについて、エラー訂正への対応が主たるフォーカスポイントでしたが、今回取材したところ、古典コンピュータ(いわゆるHPC)との連携に際して、新たにデータの入出力問題やキャリブレーションに係る課題が登場するなど、多くの乗り越えるべき課題が登場、世界中の企業が解決に向けて試行錯誤を進める様子をうかがい知ることができました。
また、方式についても新たに中性原子方式が登場したほか、最近ではIBMが超伝導方式と併せて、半導体方式の企業を買収したほか、富士通も以前から超伝導方式に加えてダイヤモンドスピン方式の研究開発を進めるなど、今後、方式同士のハイブリッドの可能性も出てくるなど、益々面白くなってきています。
2026.09.17

「暗黙知を形式知に 日立製作所の設計ナレッジシステム」

日立製作所が、製造業の顧客向けに設計業務を支援する「設計ナレッジシステム」を開発し、「HMAX Industry」の新たなラインアップに追加するとともに、提供を開始したことを発表しました(2026年9月10日)。
 
本システムは、日立のモノづくりの知見を基盤に、形式知化プロセス(AIエージェント)と日立独自の形状認識技術を融合。「暗黙知→形式知→組織の資産」の循環を創出し、設計品質の継続的な向上の実現を目指すものです。近年は、熟練技術者の不足や技術継承を課題とする企業が多く、それらの企業がAIを活用し、暗黙知の形式知化に取り組む動きは見られますが、なかなか成果に結びつかないとも聞きます。
 
本システムは、日立ハイテクで行ったテストにおいて、曲げ作業や打ち抜き・切断加工が困難な作業の箇所や寸法不備等を自動で100%抽出(板金・製缶図面の検図記録(3年分)の不備案件に対してプロトタイプ版で設計ルールを抽出した結果)し、不具合のある設計データが後工程に流出する回数を減らすなど高い効果を確認したそうです。
 
ひとつでも多くの熟練者の「暗黙知」が組織の財産になる動きが広がることを期待します。

2026.09.16

「金融・保険関連のマーケットレポート試読会を開催しました!」

9/10(木)に、ICT・金融ユニットの金融チームが発刊するマーケットレポートの試読会を開催しました。
今回は弊社東京本社にて、金融・保険関連を中心とした27タイトルのレポートをご用意しました。ご参加いただいた皆様には、レポートを直接手に取って試し読みいただくとともに、私たち研究員との情報交換や交流の場としてもご活用いただきました。
 
金融・保険領域では初めての試みとなるレポート試読会でしたが、想定を上回る21名の方にご来場いただきました!
ご参加いただいた皆様、また今回はご都合がつかなかったもののご参加を検討いただいた皆様、この場を借りて御礼申し上げます。
 
当日、ご来場いただいた方から次のようなお声もいただきました。
・隣接テーマのレポートを閲覧できてよかった
・複数のテーマのレポートをまとめて試し読みできてよかった
・担当研究員と直接話ができるいい機会だった
 
開催にあたっては、運営面での改善点もありましたが、少しでも皆様のお役に立つ機会となっていれば幸いです。
当ICT・金融ユニットでは、エンタープライズや金融、自動車×ITなど幅広いテーマのレポートを発刊しております。今後もこうした機会を設けることができればと考えております。

試読会会場の様子
2026.09.15

「警官の装着型カメラ、来年度から本格導入へ」

警察庁は8月28日、警察官がウェアラブルカメラを装着して活動する試行結果を公表した。職務質問や交通取締り等の現場において、カメラの映像が事件の状況確認や公務執行妨害事案での有力な証拠として活用されたことから、同庁は「有用性が認められた」と評価し、本格導入に向けた予算確保や運用ルールの策定作業を進める方針である。

試行では職務執行の客観的検証や若手警察官への指導教材としての効果が確認された一方、装着する警察官からは機器のさらなる軽量化が求められている。また、市民側から「監視」に対する反発や録音・撮影への拒否反応も見られ、記録範囲の画定や撮影データの保存・利用基準といった具体的指針の整備が今後の課題として浮き彫りとなった。 

警察官にウェアラブルカメラ、本格導入へ 「有用性を確認」(CNET Japan) - Yahoo!ニュース 

ウェアラブルカメラの導入は、法執行の透明性確保と警察官自身の身の安全を守る双方の観点から有用性が高い。北米等の先行市場では不可欠な装備として定着しており、日本市場においても警備・公共安全分野での映像DXの契機となる。

一方で、日本市場ならではの課題も浮き彫りとなっている。街頭防犯カメラの普及状況にも表れている通り、国内では諸外国と比べ「監視されること」への心理的抵抗感が根強く、人口あたりのカメラ設置台数も低水準にとどまる。このことからも、今後はハードウェアの軽量化・長時間バッテリー化に加え、現場での恣意的な録画停止を防ぐ厳格なガイドライン策定や、プライバシー保護とセキュアなデータ管理基盤の構築といった対応が重要となるだろう。

2026.09.14

【今週の"ひらめき"視点】新宿区、民泊規制強化。需要構造変化を見据え、地域と共生への道を

当社代表が最新のニュースを題材に時代の本質、変化の予兆に切り込みます。

 

9月8日、新宿区の吉住区長は、民泊営業の規制を強化する改正条例案を来年の定例区議会に提出する旨、発表した。具体的には営業日数の上限を年間180日から120日に引き下げるとともに住宅地および学校周辺における民泊の営業を禁止する。騒音やごみ問題など住環境の悪化が背景にある。この7月、観光庁は自治体判断による民泊営業の規制強化を容認する通知を出しており、同様の問題が顕在化している少なからぬ自治体が新宿に追随する可能性がある。

所謂“民宿”ではなく、“民泊”と位置付けられるビジネスモデルは2007年創業の米スタートアップ“Airbnb”のオンライン仲介プラットフォームに始まる。日本では国策としてのインバウンド拡大戦略と規制緩和の流れの中で国家戦略特区法改正(2016年)、民泊新法(2018年)を整備、空き家・空き室の有効活用ニーズとも相まって急速に拡大した。当初から住環境への影響は懸念された。しかし、急増する宿泊需要への対応と新市場育成の視点から利用者側の利便性、快適性の確保が優先された。

深刻化する住環境問題に加え、需要構造も変わった。日本人の利用者が急増し、コロナ前の2019年4-5月期の90,089人から2026年4-5月期には2.6倍の235,591人へ、利用率も26.9%から37.6%へ拡大した。円安を背景にインバウンド市場も変わりつつある。メインターゲットは富裕層、IHG、ハイアット、ヒルトン、マリオットなど外資系ホテルグループのラグジュアリーブランドの開業ラッシュが続く。リピーターの増加は観光目的も変えつつある。東京~富士山~京都~大阪といった“ゴールデンルート”から地方へと広がり、体験型・参加型のコト消費へのニーズが高まる。

2026年7月15日時点で稼働中の民泊は全国で42,070件、うち東京23区が40%を占め、これに札幌、名古屋、京都、大阪を加えると58%が都市部に集中する。全国的には前年比125%と拡大基調にあるが、一方、廃業率は全国平均で36%、とりわけ都市部で高く、東京23区と地方・郊外の主要自治体(保健所設置市)を合わせた対象地域の廃業率は44%に達する。今、民泊市場は大きな転換期にある。まずは供給サイドの意識改革が必要だ。宿泊サービス業は単なる“遊休不動産の利活用ビジネス”ではない。宿泊事業者としての経営ビジョン、マーケティング戦略、ガバナンスを確立することが健全かつ持続的な成長への条件である。

※民泊に関するデータは“民泊制度ポータルサイト”(国土交通省)より


今週の“ひらめき”視点 2026.9.6 - 9.10
代表取締役社長 水越 孝

2026.09.11

【個別調査のご案内】

矢野経済研究所では、企業様からのご依頼に基づき、オリジナルの市場調査の業務も行っております。

弊社の既存レポートでは知りたい内容が充分に満たせない、単なる調査結果だけではなくコンサルテーションも頼みたい、といった要望にも対応いたします。

HPやメール、お電話等でご相談頂ければ、担当者からご連絡させて頂きます。費用の見積もりまでなら無料で対応いたしますので、市場データの収集やコンサルティングなどでお困りの方は是非お気軽にご相談ください。

詳細は、下記をご覧ください。

http://www.yanoict.com/service/service_e

2026.09.10

【発刊裏話】高精度測位補正サービスの可能性を探る

今回『2026 高精度測位補正サービスの市場動向』において、初めて高精度測位補正サービス市場を担当しました。 調査を始めた当初は、正直なところサービスの全体像をイメージすることが難しく、補正方式にもさまざまな種類があるため、理解するまでに苦労した部分もありました。
現在の主な活用分野は建設や農業で、建機の自動制御や測量、スマート農業などで既に実用化が進んでいます。市場の将来性を考えたとき、大きな鍵を握るのは自動運転分野だと感じています。 
もちろん課題もあります。衛星信号を利用する以上、トンネル内や都市部の一部環境では位置測位が難しくなる場面もあります。また、電子基準点網の整備状況など、海外とのインフラ環境の違いも含め、実用化に向けて乗り越えるべきハードルは少なくありません。 
本レポートで整理した通り、足元では自動車メーカー各社がカメラやLiDARを優先していると考えられ、需要創出の見通しは不透明です。しかし、高精度地図やLiDARなど他の技術と組み合わせながら活用が進めば、将来的には自動運転を支えるインフラの一つになる可能性を秘めていると個人的には見ています。建設・農業に続く成長分野として立ち上がる時期を、今後も注視していきたいと思います。

 

▼高精度測位補正サービスについて整理した調査レポートです

2026 高精度測位補正サービスの市場動向 | 市場調査とマーケティングの矢野経済研究所

2026.09.09

【アナリスト便り】『2026 高精度測位補正サービスの市場動向』を発刊

2026年8月28日に『2026 高精度測位補正サービスの市場動向』を発刊いたしました。

 

本レポートでは、GNSSによる測位で生じる誤差を補正する情報を提供し、センチメートル級の高精度な測位を実現する「高精度測位補正サービス市場」の動向を整理しています。

高精度測位補正サービスは、建設分野におけるICT施工や測量、農業分野におけるスマート農業を中心に活用が進んでいます。

市場参入事業者は限られており、今後どのような用途で需要が拡大するのかが注目されています。本レポートでは主要事業者の動向に加え、市場規模の推計や将来展望についても取りまとめました。

今後の市場動向を読み解くうえで、本レポートをご活用いただければ幸いです。

2026.09.08

「NTTドコモビジネスと東京電力パワーグリッドが分散型DCを展開」②

 また、本取り組みにて構築されるDCは、超高発熱サーバーの冷却にも対応できる「液冷方式」を採用している。発熱体(GPUチップ等)の上に設置された金属板(コールドプレート)に、冷媒となる液体を循環させてサーバーを冷却する。最新のGPUは、高性能化に伴い消費電力量も発熱量も大きくなっており、従来の空冷方式のみでは冷却性能に限界があった。液冷方式を空調設備と併用することで、最新のGPUサーバーの冷却にも対応する。
 今回の取り組みが奏功し、「分散型DC」というモデルが確立されれば、これまでDCに求められていた要件のうち、広大な用地面積は必須ではなくなる。これはDC建設においてより多くの立地の選択肢をもたらすが、一方で電力確保は引き続き重要な要件となる。狭くとも十分な電力が確保できる土地(変電所や送電線に近い等)が新たな適地として価値を帯びてくるならば、データセンターの建設競争は新たな局面を迎えると考えられる。(
熊谷 波留弥)

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