株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内の民間企業を対象として法人アンケート調査を実施し、ERP及びCRM・SFAといった業務ソフトウェアの利用状況を明らかにした。ここでは、SaaSの利用率の経年比較、SaaSの次回導入予定につき分析結果を公表する。
【図表:SaaSの利用率(2016年調査と2024年調査の比較)】
【図表:新規導入・更新計画「あり」とする企業におけるSaaSの次回導入予定】
2024年6月から10月にかけて、国内の民間企業(有効回答453社)を対象としてERP(財務・会計、人事・給与、販売管理、生産管理・SCM)とCRM・SFAの導入実態に関する法人アンケート調査を実施した。本調査は隔年で同様の調査を実施しており、ここでは、SaaSの利用率の経年比較、SaaSの次回導入予定につき分析結果を公表する。
2024年調査におけるERP(Enterprise Resource Planning)/CRM(Customer Relationship Management)・SFA(Sales Force Automation)の導入形態についてSaaSと回答する企業の割合は、程度の差こそあれ、2016年調査時から増加している。財務・会計は5.7ポイント増、人事・給与は8.3ポイント増、販売管理は3.9ポイント増、生産管理・SCM(プロセス製造業)は5.5ポイント増、生産管理・SCM(加工組立製造業)は0.3ポイント増、CRM・SFAは39.6ポイント増である。導入形態としてSaaSを選択する企業が増加していることが示されている。新機能をいち早く使うことができることなどがSaaSの利用企業増加につながっていると考える。
■次回導入形態でもSaaSが増加
SaaSを選択する企業は今後も増加するとみる。それを裏付けるのが、「新規導入・更新計画あり」とする企業が次回はSaaSを予定していると回答する割合である。生産管理・SCMはn数(回答対象社数)が少なく参考値になるが、同システム以外ではSaaSと回答した企業の割合が2割を超える。
財務・会計は25.6%、人事・給与は32.4%、販売管理は21.2%、CRM・SFAは35.3%である。これまで、販売管理や生産管理・SCM(Supply Chain Management)は自社開発の割合が高かった。しかし、システム運用・保守の負担が少ないSaaSは、人材不足を課題とする企業にとってメリットがあるため、今後はこれらのシステムにおいても自社開発からSaaSへと移行する企業が拡大していくと予測する。
ERP導入時には、不足する機能をアドオン(標準機能以外の機能を追加すること)で補うことが多い。しかし近年は製品/サービスの機能に業務を合わせるFit to Standardの導入方法が選択されるケースも目立ってきた。これによりSaaSが導入しやすい環境が醸成されたとも言える。ただ、現状、100%標準のまま導入するケースはまだ少なく、ある程度は個別要件にも対応するベンダーが多い。
また、多くのベンダーがAPI(Application Programing Interface)連携に注力している。APIを公開していれば互いに異なるシステムとでも連携できることから、不足する機能を開発するのではなく、外部システムと連携することで補うという考え方である。SaaSは参入障壁が低く、スタートアップ企業などを中心にベンダー企業では自社独自の技術を活かし、様々なサービスを提供している。ベンダー企業側からみれば、良いものがあれば開発するよりも、外部システムと連携をする方が利便性が高く、手間もかからない。また、ユーザー企業にとってもより多くの機能を使用することができる。
こうした柔軟性や多様性が今後もSaaSの利用率を押し上げていくと考える。
■クラウドの利用動向
■財務・会計システム
■財務・会計システム
■レポートサマリー
●ERP及びCRM・SFAにおけるクラウド基盤利用状況の法人アンケート調査を実施(2022年)
●ERP及びCRM・SFAにおけるSaaS利用状況の法人アンケート調査を実施(2020年)
●ERP市場動向に関する調査を実施(2024年)
■アナリストオピニオン
●IT業界 2023年を振り返るならもちろん生成AI
●需要が拡大するビル等管理システム
●コロナ禍だからこそシフト管理
●シフト管理システムでつくる働きやすさ
●アルバイト・パートの不足が深刻化
●AIで在庫の適正化を図れるか
●Salesforce World Tour Tokyo
■デイリーコラム
●【発刊裏話】2025 ERP/業務ソフトウェアの導入実態
●【アナリスト便り】「2025 ERP/業務ソフトウェアの導入実態」を発刊
■同カテゴリー
●[ソフトウェア]カテゴリ コンテンツ一覧
オリジナル情報が掲載されたショートレポートを1,000円でご利用いただけます!
調査対象:日本国内の民間企業453社
調査期間:2024年6月~10月
調査方法:郵送アンケート調査(質問票を郵送にて送付、回答は郵送およびWeb回答併用)ならびに文献調査併用
※ERP及びCRM・SFAにおけるクラウド基盤利用状況の法人アンケート調査とは:本法人アンケート調査では、2024年6月から10月にかけて、日本国内の民間企業(有効回答453社)を対象として、ERP(財務・会計、人事・給与、販売管理、生産管理・SCM;Supply Chain Management)及びCRM・SFAといった業務ソフトウェアの導入形態、導入環境、導入時期、更新予定、利用満足度、投資意欲等に関するアンケート調査を実施した。ここでは、SaaSの利用率の経年比較、SaaSの次回導入予定につき分析結果を公表する。
ERP(Enterprise Resource Planning):ERPとは、財務・会計、人事・給与、販売管理、生産管理・SCMなど基幹業務データを統合する情報システムを構築するための基幹業務管理ソフトウェアを指す。 CRM(Customer Relationship Management):CRMとは、企業が顧客管理や顧客サービス向上を行うCRMシステムを構築するためのソフトウェアを指す。 SFA(Sales Force Automation):SFAとは、営業担当者の行動管理や効率化を図るためのソフトウェアを指す。
<市場に含まれる商品・サービス>
財務・会計システム、人事・給与システム、販売管理システム、生産管理システム・SCM、CRM・SFA、クラウドコンピューティング
YanoICT(矢野経済研究所ICT・金融ユニット)は、お客様のご要望に合わせたオリジナル調査を無料でプランニングいたします。相談をご希望の方、ご興味をお持ちの方は、こちらからお問い合わせください。
YanoICTサイト全般に関するお問い合わせ、ご質問やご不明点がございましたら、こちらからお問い合わせください。