矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

アナリストオピニオン
2020.04.01

キャッシュレスによる店舗等の支援を

2020年もキャッシュレス決済市場は拡大しており、大きく盛り上がりを見せている。一方で、新型コロナウイルスの影響で、飲食店等をはじめ、様々な業界で壊滅的な打撃を受ける事業者が急増しており、早急に対策を打たなければ、日本経済全体に波及するほどの大きな影響を与えてしまう懸念が出てきている。消費税の減税や現金給付など、様々な施策が検討されており、迅速な対応が求められている。しかしながら、実際にロックダウンが実施された場合、飲食店等の店舗は顧客の来店が見込めず、デリバリーを活用するという選択肢はあるが、ドライバーの確保が出来ない可能性もあり、かなり厳しい状況に追い込まれることになる。数か月後に、仮に経済対策で割引クーポンを配ったとしても、客足が戻るかどうかも不確定であり、現時点での救済策としては、倒産を回避するための融資を受けるしかなく、飲食店等の店舗にとっては、将来の返済負担はかなり大きくなると予測される。

そこで、キャッシュレスを活用した経済の活性化の検討を考えてみてはどうだろうか。プリペイド決済の仕組みを活用した未来の消費の前払いの活用や、投げ銭の仕組みを活用した店舗の支援が有効ではないだろうか。これらの仕組みは、店舗のキャッシュフローを改善するには効果的な策であり、決済サービス提供事業者が一丸となれば、民間主導で迅速に対応できるのではないか。行きたくても行けないお店への支援の輪が広がれば、贔屓にしている、自分にとって大事なお店を応援することが出来るようになる。

支援の規模を更に大きくする場合は、個人が応援したい(落ち着いたら食べに行きたい)お店のプリペイドバリューを購入する資金の半分を国が負担する、もしくは、ふるさと納税の仕組みを利用し、購入した金額分は税制優遇が出来るようにする仕組みを作るという選択肢も可能ではないか。

上記のような施策を展開する際にもっとも重要なのは、購入されたバリューをリアルタイム(遅くとも翌日)でお店に送金する仕組みを構築することである。お店の当面のキャッシュフローが改善されれば、事業を維持することが出来るお店の数も増えるであろう。

【図表:キャッシュレスを活用した店舗支援のイメージ】

図表:キャッシュレスを活用した店舗支援のイメージ

矢野経済研究所作成

新型コロナウイルスにおいては、早期収束が望まれるが、オーバーシュートやロックダウンの可能性も否定できない状況である。仮にロックダウンという事態になったとしても、経済活動が止まらないための行動を国民全体で考えていく必要があるのではないか。キャッシュレスで出来る支援が他にもあるのではないだろうか。

高野淳司

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■アナリストオピニオン
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