JR東日本をはじめとするJR各社と大手私鉄、PASMO協議会など計11事業者・団体は2012年12月18日、それぞれが発行する10種類の交通系ICカード の相互利用を、2013年3月23日に開始すると発表した。共通のシンボルマークを作成し、駅などで掲出し、相互利用の告知を進めている。
相互利用を開始する10種類の交通系ICカード は、JR各社が発行する「Kitaca」「Suica」「TOICA」「ICOCA」「SUGOCA」、首都圏の私鉄などで利用できる「PASMO、関西の私鉄などで利用できる「PiTaPa、名古屋市交通局と名古屋鉄道の「manaca、福岡市交通局の「はやかけん、西日本鉄道の「nimoca」となっている。現在の発行枚数は約8,000万枚、全国の鉄道では52社、バスでは96の事業者で利用可能など、相互利用ができる枚数としては大規模なものとなる。
矢野経済研究所推計
注:2013年3月23日のサービス開始時点(鉄道:52事業者、バス:96事業者の合計142事業者)
すべてのエリアの乗車で、各ICカードが利用できるようになることに加えて、9種類のカード(「PiTaPa」を除く)では、各交通系カードの加盟店約20万店舗で、電子マネーによるショッピングが可能になる。
相互利用が可能になることで、普段通勤や通学で利用しているICカードを、旅行先や出張先で利用することが可能になるなど、ユーザの利便性が向上することが期待されている。
相互利用が始まることにより、北海道から鹿児島までの幅広い範囲で交通系の電子マネー経済圏が構築されることになる。今後も、鉄道事業者を中心に駅ナカの加盟店開拓が進み、バス事業者を中心に街ナカの加盟店開拓が進でいくなど、線と面の両面から加盟店開拓が進んでいくであろう。
そこで、今後の可能性として考えられるのが、全国の交通系ICカード による共通ポイントカードの発行である。現在、それぞれの事業者が個々にポイントサービスを展開しているため、簡単には共通ポイントを発行することは難しい面もある。しかしながら、各事業者が持っている記名会員の購買データや行動履歴を集約して、分析することが可能になれば、そこに大きなビジネスチャンスが生まれる。私としては、ただ単に相互利用が出来るようにするだけではなく、そこに集まる膨大なデータを活用して、どのようなイノベーションが生まれるかに期待をしていきたい。
さらに究極的には、ETCカードや位置情報サービスと連携して、都市総合分析モデルを構築することが可能になるのではないか。具体的な人の行動履歴と購買履歴を集積し、精緻に分析することで、大規模な投資に対する費用対効果のその測定に利用できる可能性を秘めている。例えば、高速道路を開通した際に、道路の交通量や新幹線の利用にどのような変化が出るか、高層ビルを建築した際にどの程度人の流れが変わるか、などを分析したり、予測することが可能になる可能性がある。
そうなると、今まで以上に公共投資や大規模な事業に対する費用対効果を分析することが可能になり、より効果的な投資をすることが出来るようになるのではないだろうか。
交通系ICカード は様々な可能性を秘めている。世界最先端をいく、日本の都市交通サービス機能が、10年後、20年後にどのようなサービスを生み出していくのかを期待せずにはいられない。
(高野淳司)
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