矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

アナリストオピニオン
2016.03.10

Apple Pay、2016年中に日本で導入か?

アメリカ、イギリスをはじめ、カナダ、オーストラリア、中国でも導入が進んでいるApple Payの日本への導入が現実味を帯びてきた。日本におけるApple Payの導入時期は、2017年以降と推測していたが、2016年中、早ければ2016年9月に導入される可能性が出てきている。2016年9月にiPhoneの新機種が販売されると予想されており、早ければ、それに合わせて、日本への導入を発表することになりそうだ。また、同時期に大手コンビニエンスストアでもPOSの改修のタイミングを迎えており、Apple Payの利用ができる環境を整備する可能性があり、Apple Payの日本市場への導入を後押しするという期待もある

Apple Payが導入に際して、考えなければならないポイントは下記のようなものである。

①Apple Pay対応イシュアになる可能性が高いカード会社
銀行系カード会社では、Apple Pay対応イシュアとなる可能性が高いのは三井住友カード、三菱UFJニコス、ユーシーカードである。信販系のカード会社では、オリエントコーポレーションやジャックスが、早い段階から、非接触IC型のクレジット決済サービスである「Pay Pass」「pay Wave」を搭載したクレジットカードを発行していることもあり、Apple Pay対応イシュアとなる可能性がある。また、楽天カードやイオンなどの流通系のほか、携帯キャリアであるNTTドコモやメーカー系のトヨタファイナンスも、Apple Pay対応イシュアとして名乗りを上げるだろう。
手数料率に関する交渉がまとまれば、上記カード会社のうち3社程度が、Apple Pay対応イシュアとなる。

②関連市場でApple Pay対応が予想される決済サービス
2014年頃から、au Walletやソフトバンクカードといった国際ブランドが搭載されたプリペイドカード(以下ブランドプリペイド)が発行されており、存在感を増している。Apple Payが日本に導入された際には、ブランドプリペイドを発行しているイシュアも、Apple Pay対応イシュアとして、サービスを提供していきたいという意向を持っており、今後の展開が注目されている。
その他では、現在フェリカベースで電子マネーを提供しているJR東日本やセブン・カードサービスが、どのような形でApple Payと連携していくか、も注目されている。

③加盟店インフラの整備
Apple Payの導入にあたり、加盟店インフラの整備は、いうまでもなく、最重要課題である。しかしながら、Apple Payに対応するには、加盟店は、EMVコンタクトレスに対応した端末を設置していく必要があるが、どうしてもコスト負担が増大になってしまうため、そのコストをだれが負担するかがイシューとなっている。
今後、POSを導入している大手事業者から、中小、零細企業まで、EMVコンタクトレスに対応した端末を導入するためにも、安価もしくは無料で、効率的に端末設置することができる事業者の存在が求められている。

④合理的な決済ネットワーク/決済センターの構築
決済端末とは別に、決済ネットワークをどのように構築するか、も非常に重要である。アメリカやイギリスにおいては、Apple Payの導入に際しては、国際ブランドの決済ネットワークを活用して、サービス提供がなされている。日本において、どのような形で決済ネットワークを構築するか、が重要な課題となっている。現時点では、国際ブランドの決済ネットワークとの接続は必須になるとみられる。より合理的な決済センターの構築が求められている。

今後、Apple Pay対応イシュアがAppleに支払う手数料率が何%になるか、Apple Payに対応した端末をいかにして普及させるか、より合理的な決済センターを構築できるか、がApple Payの早期導入および普及に向けてのイシューとなっている。Apple Payが日本で利用されるようになることにより、キャッシュレス化の進展をはじめ、様々な変化が出てくることが予想される。その変化にいかに対応していくか、が決済ビジネスを展開していくうえで重要となるだろう。

高野淳司

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