アベノミクス効果がしきりに叫ばれている。そこで弊社では国内民間IT市場へのアベノミクス効果について算出したが、結果は80億円であった(詳細は9月発刊『国内企業のIT投資実態と予測2013』参照)。
正直、80億円と言われてもどの程度のものなのかピンとこない。弊社調査による80億円の市場規模というと2013年度の大容量キャパシタ(電力を電荷のまま蓄えておく装置)の市場規模が80億4,500万円である。一方ではHRMで勢いを持つタレントマネジメントの市場規模(2013年度)の51億5,000万円よりも大きく、カーシェアリング市場(2012年)の市場規模100億円超よりも小さい。
しかし、国内民間IT市場規模はおよそ11兆円で(弊社推計)、80億円はこのうち僅か0.07%である。したがって、アベノミクスの影響は民間IT市場では極めて小さいと言える。
80億円の算出根拠は以下の図の通りである。
矢野経済研究所作成
矢野経済研究所推計
まず、2013年度の社外IT支出が前年度予算101%以上と回答した企業にその理由を質問したところ、「新たに計画された新規IT投資が実施されるため」が26.2%、「予算凍結などで停止していた計画が実施されるため」が3.9%であった。両者を合計したおよそ3割が予定外のIT投資を行うこととなるが、これらの企業は何故予定外のIT投資を行うことになったのか。
矢野経済研究所推計
予定外のIT投資の理由を見ると、アベノミクス効果と捉えることのできる「民間設備投資増加による業績回復(期待含む)」、「公共投資による業績回復(期待含む)」、「円安による業績回復(期待含む)」、「個人消費増加による業績回復(期待含む)」に対する回答が12.3%あった。
本来金額換算をすることは適当ではないが、2013年度の民間IT市場規模10兆9,390億円のうち対前年度増加額2,150億円に予定外のIT支出(増額)を行った30.1%とそのうちアベノミクス効果を感じている12.3%を掛け合わせた結果が80億円である。ただし、算定根拠となる民間IT市場規模の対前年度増加額には公共への投資は含まれていない。
アベノミクスの三本の矢のうち成長戦略の柱にはITが掲げられている。2020年の東京五輪招致に向けたインフラ整備などの面においてIT投資は増加していくのか。80億円以上の効果が生み出されることを期待する。
(小山博子)
■レポートサマリー
●国内企業のIT投資に関する調査を実施(2021年)
●国内企業のIT投資に関する調査を実施(2020年)
●国内企業のIT投資に関する調査を実施(2019年)
■同カテゴリー
●[ICT全般]カテゴリ コンテンツ一覧
YanoICT(矢野経済研究所ICT・金融ユニット)は、お客様のご要望に合わせたオリジナル調査を無料でプランニングいたします。相談をご希望の方、ご興味をお持ちの方は、こちらからお問い合わせください。
YanoICTサイト全般に関するお問い合わせ、ご質問やご不明点がございましたら、こちらからお問い合わせください。