株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、5G(第5世代移動体通信システム)の世界市場を調査し、5Gの概要、各国における商用サービスの普及予測、5Gスマートフォンの出荷状況など5Gの将来展望を明らかにした。ここでは、2025年までの世界の5Gサービス契約数を主要国別に予測し、公表する。
5Gの国際標準規格策定作業は4Gと同様、3GPP(Third Generation Partnership Project)及びITU-R(International Telecommunication Union-Radio)を中心に国際標準化団体や国・地域別の業界団体、政府機関、通信事業者、機器メーカー、半導体企業、ソフトウェア企業等、業界全体が一体となって策定された。2018年に5Gの商用化に向けた仕様「リリース16」が策定され、2019年4月に韓国・米国が世界初の5G商用サービスを開始したのを皮切りに、EU市場の一部などで商用サービスが開始されている。世界最大の携帯電話市場である中国でも5G商用サービスの準備は着々と進められており、2019年秋季には商用サービスを開始する計画となっている。2019年の世界の5Gサービス契約数は850万契約になる見込みである。
また、日本でも株式会社NTTドコモ、株式会社KDDI、ソフトバンク株式会社、楽天モバイル株式会社の4社に対して5G免許が交付され、2020年春を目途に5G商用サービスの開始が予定されている。
【図表:5G(第5世代移動体通信システム)主要国別サービス契約数予測】
■5Gは中国が市場を牽引する見通し
2018年の中国における携帯電話サービス契約数は15億7,500万契約に達しており、新規契約数は鈍化傾向にある。中国は4G普及にあたって、インフラ整備に加えて通信事業者間の競争を促す施策を導入することで市場活性化を図り成長を促してきた。更に、中国国内の携帯電話・スマートフォン端末メーカーの育成を図った結果、国際的に製品開発力・コスト競争力に秀でた端末メーカーが多数生まれた。結果的に中国は世界有数のIT産業を有する市場となった。
5Gの導入にあたっても、4Gの成功を踏襲する方針で、政府主導で様々な取り組みが行われている。既存3社の通信事業者に加え新規参入1社を加えた4社に5G免許を交付する方針である。また、インフラ整備についても主要都市への設置は既に完了していると言われる。政府主導で積極的な投資と支援が行われているため、5G商用サービス開始後の契約数は垂直的に立ち上がっていき、2021年の中国における5Gサービス契約数は1億契約になると予測する。その後も、中国のサービス契約数は爆発的に増加し世界市場を牽引していく見通しとなっている。
5Gは2019年4月から韓国・米国で商用サービスが開始されている。2021年から順次世界各国の通信事業者による5Gサービスが開始され普及が進む見通しとなっている。4Gで早期に普及が進んだ米国、中国においては5Gについても早期に普及する可能性が高い。特に中国では5G対応の基地局が既に40万局設置されていると言われており、2019年9月には4社の通信事業者及び端末ベンダーに商用ライセンスが発給される見通しとなっている。中国のインフラベンダーは実績のみならず5G関連の技術的な面に於いて、既に欧米のメーカーを上回っているとされる。一方で、2018年末に米国と中国による貿易摩擦の一環で、中国メーカー製の通信機器導入を排除する動きが広まっている。世界各国の市場で中国メーカー製の通信機器を排除した場合のインフラ構築スケジュールに遅延が出る可能性が高い。
また、通信規格別にサービス契約数をみると、現在では4Gが主流となっており、2022年まで契約数の増加が続く見込みである。翌年から4Gは減少に転じ、それ以降は5Gサービスへの移行が進む見通しである。2025年の世界の5Gサービス契約数は41億3,400万契約になると予測する。
■レポートサマリー
●国内5Gサービス市場の動向調査を実施(2020年)
■アナリストオピニオン
●5Gスマホを復活させたHuaweiは再び浮上するか?
●5G導入を目前に控える国内市場と相次いで参入する中国メーカーの見通し
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調査対象:移動体通信サービス事業者、インフラベンダー、携帯電話・スマートフォン端末メーカー、ODM・EMS企業、半導体メーカー
調査期間:2019年4月~7月
調査方法:当社専門研究員による国内・海外直接面接調査、技術・サービス動向セミナー取材、ならびに文献調査併用
※5G(第5世代移動体通信システム)とは:5G(第5世代移動体通信システム)とは、移動体通信システムの国際標準化策定機関3GPP(Third Generation Partnership Project)他によって策定されたリリース15(2018年6月)以降に策定された通信規格である。第4世代規格(4G)やLTE/LTE-Advancedとの互換性を維持しつつ、6GHzを超えた周波数帯域を使用した新しい無線通信方式を導入している。
21世紀以降の情報通信産業・移動体通信市場では、高速ワイヤレスブロードバンドサービスの普及に伴い、急増し続ける通信トラフィックへの対応が緊急の課題となっている。通信サービスに対するニーズが多様化しており、特にIoT(Internet of Things)と言われる通り、あらゆる「モノ」がインターネットに接続する時代が到来しており、5Gはそれらの多様化するニーズに対応するソリューションとして開発されている。また、5Gは移動体通信規格として初めての全世界共通規格として成立しており、従来の3G、4Gのような複数の通信規格が存在した状況は回避されている。
<市場に含まれる商品・サービス>
5G(第5世代移動体通信システム)、携帯電話、スマートフォン、5Gスマートフォン
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