矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

アナリストオピニオン
2014.10.24

ERPパッケージ顧客満足度調査結果 総合満足度でトップとなったのはSuperStream

導入・利用のしやすさや信頼性で高い満足度

法人ユーザアンケートによるERPパッケージの顧客満足度調査結果をレポートする。

総合満足度で1位となったのはSuperStream(開発元:スーパーストリーム株式会社)であった。項目ごとに見ると、全体的に平均より満足度が高い傾向があるが、導入の容易性、信頼性、機能、性能等において特に高い評価を得ている。他方、導入価格、保守サポート価格等価格面では他製品及び平均との差は小さい。SuperStreamは、価格よりも、導入・利用のしやすさや信頼性において満足度が高いといえる。

【図表:ERP満足度調査結果】
【図表:ERP満足度調査結果】

矢野経済研究所作成
<調査概要>
アンケート実施期間:2013年7~8月
有効回答者数:643社
調査対象:国内中堅~大手企業
顧客満足度の調査条件としては、矢野経済研究所が、ERPパッケージ(基幹業務を統合する情報システムを構築するためのパッケージ)と区分している製品を対象とした。また、満足度調査においては、一定数(10件)以上の回答数を得た主要5製品間で比較している。
評価方法は、1~4の4段階評価で「4=大変満足、3=まぁ満足、2=やや不満、1=大変不満」とした。集計では、各項目及び総合の平均値を算出した。

SuperStreamのポジショニングと特徴

SuperStreamは、会計・人事/給与分野に特化したERPパッケージである。数あるERPパッケージの中でSuperStreamのポジショニングを見ると、単年の売上高シェアで上位には入らないが、2015年に発売20周年を迎えるという実績の長さから、導入企業数が多いことが特徴となっている。
会計分野でのERPパッケージの利用率は7割に達している成熟市場であり、新規導入より他社からのリプレイスが主体となる。そのためベンダー間の競争は厳しく、価格や機能では明確な差は付きにくい。製品の特色、使い勝手、サポート体制等は少しずつ異なるものの、製品選定の段階ではそのような細部は可視化しづらく、顧客満足度は指標の一つとして参考になるだろう。

今回、調査結果を受けてスーパーストリームにヒアリングを行った。高評価を得た背景には、累計導入社数が2014年9月段階で7,400社(内上場企業700社以上)という実績はもとより、厚いユーザ基盤から得た保守収入を製品開発に充てマイナンバー制度やIFRSなど法改正対応を保守の範囲で行っていること、技術者認定制度を設けパートナーの育成に注力していること、ユーザ会やトレーニングでの顧客接点を重視したサービス提供や製品開発を行っていること、などがあるとみられる。

ERP市場で注目すべきトレンドは「クラウド」「グローバル」

矢野経済研究所では、ERPにおける今後の注目動向は、1.クラウド利用の拡大、2.海外導入への対応と考える。企業の中核を担う基幹システムだからこそ、変化しつつあるIT環境に対応し、顧客に新しい価値を提供すべく進化し続けることが望ましい。
以前は「基幹システムをクラウド化するのはセキュリティ面で不安だ」という声も聞かれたが、昨今はクラウドの信頼性が認知され、TCO削減や変化への対応というメリットも享受できると考える企業が増えている。矢野経済研究所は、いずれ多くの企業がクラウドERP(ハイブリッドクラウドを含む)の利用を選択し、オンプレミスのみで保持し続けるユーザ企業は少数派となると予測する。
また、企業の海外進出が加速するのに伴い、海外拠点へのERP導入も拡大している。中堅企業ではExcelや簡易パッケージからのレベルアップ、大手企業ではグローバルでの見える化の実現といったニーズがみられる。

SuperStreamはこれらのトレンドを重視した製品戦略を推進している。クラウドについては、パートナーがSaaSを提供しているほか、AWS(Amazon Web Services)、Microsoft Azure、IIJ GIOといったIaaSを利用することも可能だ。クラウド活用への関心はここ1年程で大きく高まり、新規案件では1割弱がクラウド利用を前提としているという。
また、日本企業の海外拠点での導入を支援するため、海外現地パートナーは2社あり、シンガポールに拠点を置くSCS Globalでは記帳代行を行う会計アウトソーシングサービスも提供している。スーパーストリームによると、グローバル企業の本社は海外拠点の財務状況を正確に把握する意向が強く、現地法人では低コストで効率的に業務を行いたいというニーズがあるという。
今後の市場動向を鑑みれば、クラウド活用、海外導入対応という新しいニーズを抱えるユーザに対してもソリューションを提供できる立場にあることは、有効なアピールポイントとなると考える。

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