矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

アナリストオピニオン
2016.03.04

戦略的な経営を実現するクラウドERP NetSuiteが支える企業変革

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イノベーションが求められる市場の概況とIT投資の実態

昨今世界的な経済の混乱も懸念されており、企業を取り巻く環境変化は著しい。生き残りをかけた競争が一層熾烈になる中で、イノベーションの重要性は高まっている。タクシー業界にUberが、ホテル業界にAirbnbが登場したことに象徴されるように、ビジネスモデルの革新、プロセスの革新を図った企業が大きな成長を遂げ、業界に影響を与えている。サンフランシスコでは最大のタクシー会社Yellow Cab社が、Uber出現後の市場の変化によって倒産に追い込まれるといったケースが実際に起こっている。

しかし、まだ多くの企業がイノベーションに踏み出せていないという現実もある。矢野経済研究所が2015年に行った企業のIT投資に関する調査で、IT予算(社内人件費を含む)の内訳として「戦略的な投資」「システム維持運用のための投資」「業務効率化のための投資」の比率を聞いたところ、戦略的投資の比率が16.5%、システム維持運用のための投資が63.0%、業務効率化のための投資が20.4%となった。IT予算の多くをシステムの運用という「守り」のために費やしている実態が見て取れる。この傾向は、企業規模によっても大差がない。

市場で勝ち抜く優位性を得るためには、いうまでもなくITの利活用が鍵を握る。IT予算の配分を変える有効な方法の一つはクラウドの利用だ。特にITリソースを豊富に持てない中堅中小企業は、クラウドの拡張性やリアルタイム経営、セキュアな運用などの付加価値を戦略的に活用したい。コストの面でも、システムの維持運用コストの削減やシステム導入費用の短縮が期待でき、より多くのIT投資を「攻め」の投資に振り向けることができるだろう。

【図表:売上高別戦略的IT投資の比率】

【図表:売上高別戦略的IT投資の比率】

出所:矢野経済研究所「2015 国内企業のIT投資実態と予測」2015年12月発刊

PeachのNetSuite活用事例

革新的な企業はERPにおいても積極的にクラウドを活用している。ここではLCC(Low Cost Carrier)のPeachの事例を取り上げる。航空業界という古い業界にありながら、Peachは「業界の常識」を次々と変える新しいビジネスモデルを築いているイノベーターである。

【図表:Peach Aviation 株式会社の概要】

【図表:Peach Aviation 株式会社の概要】

矢野経済研究所作成

2011年設立のPeachは、日本におけるLCCの草分けであり、大阪の関西国際空港を本拠地として2012年に就航を開始した。2路線からスタートして順調に事業を拡張し、2016年2月現在で国内14路線、国外10路線を運航している。海外は香港、台湾(台北、高雄)、韓国(ソウル、プサン)への路線がある。
日本のLCCはキャリアの数は増えたが、全体的にみると事業は好調とはいえない。主要企業の経営状態を比較すると差が見えてくる。Peachは利益面の好調ぶりで際立っており、2015年度決算(2016年3月期)で3期連続黒字を達成し、累積損失を解消する見通しである。
成功の要因は、低価格と高付加価値を両立させる独自の事業運営ポリシーにあると考える。間接コスト削減による低価格を実現するとともに、乗客には価格以上の価値を提供する。最も基本的で重要な価値はまずは欠航しないことだが、一般にLCCはこの点が弱いと言われる。Peachは、拠点とする関西国際空港は24時間使える滑走路を2本備えているので便に多少の遅れが出ても欠航することなく運航ができる。Peachの就航率は99.1%とレガシーキャリアを含む航空業界でトップである。

【図表:LCC各社の最近の決算データ】

【図表:LCC各社の最近の決算データ】

矢野経済研究所作成

経営の背景を、財務・法務統括本部長の岡村 淳也氏と経理マネージャの三牧 達也氏に聞いた。岡村氏は、「LCCの経営において最も重要なのは収益性の管理だ。間接費5%以下を目標としており、そのために事業構造もマネジメントもシンプルにしている。」と説明する。国内線、国際線の全便において利用する機材はAIRBUS A320型の1種類のみ、シート数は単一クラスで180席、搭乗する乗務員は機長や客室乗務員ら合計で6名である。燃費、部品、人件費等のコスト構造が全便で共通しているため、路線収支評価を行う際の費用配賦がシンプルになり、売上は販売席数で一目瞭然に把握できる。乗客へのサービスもシンプルだ。「LCCのサービスは電車と同じ。チケットは自分で購入する、飲食は有料で購入する、出発時間に遅れた乗客を待たない。余計なものは徹底して排除する。それらを利用者に理解してもらうと同時に、付加価値をより高めていく方針だ。」

Peachらしいユニークな取組の一つが、2015年に「段ボールチェックイン機」だ。樹脂製などと比較して単純に材料費が安いというだけではない。軽量で一人でも持ち運び可能で輸送の費用が抑えられる、専用端末ではなく汎用の安価なPCを中に入れられる、設置や配線の費用も不要など、様々な面でコストを削減でき、通常の専用端末型のチェックイン機と比較して設置費用を1/5程度に抑えられたという。同時に乗客へのサービス改良も工夫されており、視認性が高いデザインやモニターサイズへの変更、表示言語(日本語、英語、中国語、韓国語)の自動切り替えも行う。乗客がスムーズにチェックインできれば、顧客満足度が高まると同時に、搭乗までの時間が短縮され、定時運航にも寄与する。
この新しいチェックイン機を考案したのは情報システム部門にあたるイノベーション統括部だ。IT部門が戦略部門として機能しているとともに、新しいアイデアが受け入れられるオープンな環境があることを示している。
Peachの経営理念は組織に浸透しており、社員が率先して変革に取り組んでいる。価値観や企業文化など表面的には見えないものが競争力の源泉にある企業は強い。Peachは、経営の模倣困難性を高めながら成長を続けている。

NetSuiteが貢献する成長企業の経営管理

Peachは事業開始と同時にNetSuiteを導入している。ERP選定においてNetSuiteが優位だった点はネイティブなクラウドERPであることだ。Peachは情報システムを極力持たない、情報システム部門は戦略的な役割を担うという方針で、クラウドを積極活用している。また、短期導入も重要な要素であり、NetSuiteの導入プロジェクトは開始から本番稼働まで3ヶ月だったという。
NetSuiteの運用は、経理マネージャの三牧氏が自ら担当している。「NetSuiteはIT部門を担当に付けなくても運用できる。便ごと、路線ごと、全社などレベルに応じた収支のレポートを必要に応じて出せるため、経営の根幹である厳密なコスト管理に役立っている。レポートの項目の追加や変更を自分でできるのが良い。」と評価する。シンプルな会計管理の成果として、レガシーキャリアでは1ヶ月程度かかる月次の路線別の収支レポートを2週間以内に出せ、迅速な経営判断に活かされている。
便数の増加や海外路線の就航といった急速な事業の成長や大きな変化に対しても、コンフィギュレーション機能を使った変更や追加で対応でき、NetSuiteの拡張性も有効だったという。
改善を希望する点には「アップデートが定期的に年2回発生し、機能が変わることがある。追加機能の説明などをもっとわかりやすくしてほしい。」とコメントした。NetSuiteのようなSaaSを利用する際には、全ユーザ共通のアップデートとなり画面や機能が変更されることは避けらない。このようなクラウドERPの特性を理解して利用することが求められる。

クラウドERPの有効性

Peachのようなイノベーティブな企業での活用事例は、クラウドERP市場の進展を予想させる。矢野経済研究所では、クラウドERPの利用は今後順調に伸びていくと予測している。現時点におけるERPの利用形態でクラウドの利用率は1割に満たないが、2015年頃からトレンドに変化が見られ、順調に伸びていくと考える。
クラウドERPを選択する企業の最大の関心は、資産を持たないこと、運用のアウトソースによるハードウェアの管理やバージョンアップ等の手間からの解放、運用コストの抑制、導入と展開を迅速に行えることなどにある。NetSuiteの場合は、SIerやシステム専任者の力を借りずとも、ユーザが自律的にシステムを利活用できることもメリットとして挙げられる。
事業規模や企業規模の拡大に伴う変化に追随しやすく、迅速な経営判断に貢献するツールであることも、中堅中小規模の成長企業にとって重要なポイントとなるだろう。

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