矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

レポートサマリー
2024.12.17

生命保険の販売チャネルに関する調査を実施(2024年)

2023年度の来店型保険ショップの市場規模は、前年度比3.0%増。資産形成ニーズの高まりを受けて、2024年度は貯蓄性保険商品の注目が続くと予測。

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内の生命保険会社及び乗合代理店における販売チャネル戦略や施策を調査し、参入企業の動向を明らかにした。ここでは、乗合代理店のうち、来店型保険ショップの市場規模(新契約年換算保険料)について、公表する。

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【図表:来店型保険ショップの市場規模(新契約年換算保険料)推移】

【図表:来店型保険ショップの市場規模(新契約年換算保険料)推移】
  • 矢野経済研究所調べ
  • 注:各事業者の会計(決算)年度における新契約年換算保険料ベース
  • 注:2023年度は見込値、2024年度は予測値

 

生命保険の販売チャネルの概況

2023年5月に新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが5類に移行したことでコロナ禍前の顧客行動が戻りつつあるが、Web相談の利便性を享受する顧客が多く、来店型保険ショップの大幅な新規出店増は見込みづらい状況にある。一方で、資産所得倍増計画を背景とした資産形成ニーズの高まりから保険商品による資産形成を指向する顧客の増加が考えられる。これらの要因を加味し、2023年度の来店型保険ショップの市場規模(新契約年換算保険料)は前年度比3.0%増の2,064億円と見込む。

2024年度は、保険料が安く保障が手厚い医療保険への注目が集まることや、貯蓄性商品の予定利率の引上げや新NISAのスタートなど個人の金融資産による「貯蓄から投資へ」機運の高まりを受けて、外貨建保険等の貯蓄性保険商品が引き続き注目されると予測する。顧客にとってインターネットを通じた保険への新規加入はハードルが高いこともあり、引き続き来店型保険ショップの利用やオンライン相談のニーズが高まると考える。
このようなことを背景に、2024年度の来店型保険ショップの市場規模を前年度比5.3%増の2,173億円と予測する。同市場はコロナ禍前の2018年度の水準程度までの回復を見込む。

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生命保険の販売チャネルの注目トピック

■販売チャネルにおけるオンライン活用の定着とAI活用の可能性
コロナ禍をきっかけとして、生命保険会社では、営業職員向けにWeb会議システムやチャットサービスの導入が進んだ。コロナ禍前の状況に戻りつつある現在も、顧客の要望に応じて対面とオンラインどちらの形式でも顧客をサポートできるような体制にしておくなど、営業職員によるオンラインの活用は定着しつつあるといえる。
乗合代理店でも、コロナ禍を契機としたWeb相談の導入をはじめ、AIを活用した保険見積りや社員向けのトレーニング、コンサルティングサポートなどの活用が見られる。

保険募集においてもAIの活用が期待される。Webサイトからの保険申込を希望する人と、実際にWebサイトから保険を申込みした人の割合には大きなギャップがある。Webサイトにおいて、AI等を活用して商品選択の絞り込みや保険加入に関わる一連の流れを支援するプロセスが構築できた際には、保険業界発展の一歩となる可能性がある。

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生命保険の販売チャネルの将来展望

保険業界は、社会的情勢として少子高齢化、人口減少問題を抱えており、マーケットは縮小傾向にあると見られている。そのため、保険以外の価値提供によって新たに顧客を取り込むことが必要になる。

人生100年時代と言われる中で「リスクに備える」から「健康増進を進めていく」など保険領域を超えた非保険領域を拡充すべく、異業種との協業や買収などの動きは大手生命保険会社を中心に活発になると考えられる。また、商品やサービス購入時に同時に加入できるエンベデッド・インシュアランス(組込型保険)などの動きも徐々に出てくる可能性がある。非保険領域の開拓やエンベデッド・インシュアランスの動きは、従来の生命保険の販売チャネルでは開拓できなかった顧客へのアプローチの糸口になる。
一方、乗合代理店においては、経済環境の変化を背景に顧客のニーズも多様化し、またそのニーズの難易度が上がっている。顧客の求めるニーズに応えていくために、代理店は単なる「保険を売る販売所」の役割から、保険を含めた資産形成のコンサルティングを提供するなど、保険を含めた金融サービスの提供が求められるようになると考える。

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参考:このレポートに掲載されている主なデータ一覧

  • 販売チャネル
  • 顧客接点から見た多様化する販売チャネル
  • 生命保険のチャネル別契約構成の推移
  • 満足度の変化と満足度が増減した項目(2021年調査時点)
  • 業界を取り巻く動向
  • 主な業界動向
  • ポイント会員に向けた生命保険会社の取組
  • 生命保険会社における代理店出向社員による漏洩件数
  • 生命保険業界の年間新規契約の規模推移
  • 生命保険業界の保有規模推移
  • 生命保険の世帯加入件数
  • 生命保険業界の新契約年換算保険料
  • 生命保険の販売チャネル別新契約年換算保険料構成
  • 来店型保険ショップの市場規模推移(新契約年換算保険料)
  • 来店型保険ショップの年間新規契約件数
  • 有力生命保険会社の中期経営計画
  • 生命保険会社の多様化する販売チャネル
  • 生命保険会社、損害保険会社の保険ショップの取組み
  • 有力生命保険会社のDX戦略
  • 子会社生命保険会社一覧
  • 生保の乗合来店ショップの誕生
  • 来店ショップ企業の再編、財務基盤強化の状況
  • 参入している異業種
  • 異業種、大手資本企業の取組み
  • 金融機関の取組み
  • 事業戦略
  • 事業戦略の課題と今後
  • 各社の差別化策
  • 個人への訪問の注力状況と影響、新たな取組み
  • AI、デジタル化の現状
  • 来店ショップ等企業のDX推進の現状
  • 業界におけるweb相談の導入企業の割合
  • WEB相談等への取組みと効果、予定
  • web相談等のメリット、デメリット
  • 共同募集の有無、メリット・デメリット、注力度
  • 外部FP活用の有無、メリット、デメリット
  • 公的保険制度を踏まえた募集の取組み
  • ネット完結保険等の取組状況
  • 保険関連事業の取組み
  • 金融サービス仲介業の意向
  • 介護、住宅ローン、相続相談等
  • ガバナンス体制整備とサービス提供の概念図
  • FD宣言公表企業数の推移
  • FD宣言、自主的KPI公表企業数と構成比(2ヵ年比較)【2023年8月現在】→【2024年8月現在】
  • 代理店の将来展望
  • 来店ショップ等企業からみた業界の展望
  • 生命保険のチャネル別契約構成の推移(再掲)
  • 代理店からみた業界展望に対する課題
  • 来店ショップ等企業からみた業界の課題
  • 生命保険業界の年間新規契約の規模推移(再掲)
  • 生命保険業界の保有規模推移(再掲)
  • 生命保険業界の新契約年換算保険料
  • 生命保険会社のチャネル別(一部)新契約年換算保険料
  • 直販における顧客へのアプローチ状況
  • 顧客へのフォロー
  • 顧客接点の工夫点
  • 新たなチャネル展開
  • 直販における課題と対策
  • 提携代理店への注力度、期待度
  • 営業職員チャネルにおける売れ筋商品
  • 代理店チャネルにおける売れ筋商品
  • 来店ショップ経営企業
  • 生命保険の代理店数推移
  • 損害保険の実在代理店数推移
  • 乗合代理店の推移
  • 来店型保険ショップ経営企業の設立時期
  • 来店型保険ショップ経営企業の従業員数構成
  • 来店型保険ショップ経営企業の資本金構成
  • 店舗数の増減変化
  • 規模別に見た店舗数の増減
  • 来店ショップ経営企業の店舗数増減率
  • 来店型保険ショップ経営企業の平均出店店舗数
  • 規模別の店舗増減数
  • 提携保険会社数の動向【平均】
  • 規模別提携保険会社数の推移
  • 全体に占める提携保険会社が多い上位企業シェア
  • 全体に占める提携保険会社数が多い上位企業シェア
  • 提携保険会社数
  • 収益増減構成の推移
  • 各社の営業収入の推移
  • 各社の当期純利益の推移
  • 2024年内、2025年の見通し
  • ターゲット層
  • 新規顧客の開拓数
  • 新規顧客開拓の課題と対策
  • 既存顧客の囲い込み策
  • 既存顧客囲い込みの課題と対策
  • 顧客利便性、顧客体験向上のための施策
  • 現状の推奨商品と今後の方針
  • (参考)アドバンスクリエイトにおける広告出稿の受注と販売実績
  • 生命保険(個人)の種別構成の推移
  • 損害保険の種別構成
  • 売れ筋生命保険
  • 生保の売れ筋、高シェア会社・商品
  • 売れ筋損害保険
  • 損害保険の注力方針、販売方針
  • 今後の注目商品
  • 契約件数
  • 保有実績(生保、損保の合算)
  • 新契約実績(生保、損保の合算)
  • 新契約年換算保険料(生保、損保、その他の合算)
  • 既存と新規顧客の変化
  • 今後の顧客動向予測
  • 店舗展開地域のイメージ
  • 店舗展開地域と今後の展開
  • 日本生命保険(相)
  • 住友生命保険(相)
  • SOMPOひまわり生命保険(株)
  • アフラック生命保険(株)
  • 楽天生命保険(株)
  • ライフネット生命保険(株)
  • (株)アドバンスクリエイト
  • (株)アイリックコーポレーション
  • ブロードマインド(株)
  • (株)オールワンエージェント
  • (株)フィナンシャル・エージェンシー
  • (株)Wizleap

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関連リンク

■レポートサマリー
生命保険の販売チャネルに関する調査を実施(2023年)
来店型保険ショップ市場に関する調査を実施(2022年)
来店型保険ショップ市場に関する調査を実施(2021年)
来店型保険ショップ市場に関する調査を実施(2020年)

■アナリストオピニオン
アンケート結果からみる生命保険の営業職員の実態

■デイリーコラム
【アナリスト便り】「2024年版 生命保険の販売チャネル戦略と展望ー直販、Web、来店ショップ、訪問販売の実態ー」を発刊
【発刊裏話】2024年版 生命保険の販売チャネル戦略と展望-直販、Web、来店ショップ、訪問販売の実態-

■同カテゴリー
[金融・決済]カテゴリ コンテンツ一覧

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調査要綱

■ポイント(調査対象、期間、方法等を記載)

調査対象:従来型の生命保険会社、ネット保険会社、来店型保険ショップ経営企業、オンライン型や保険関連サイトを運営する乗合代理店、訪問販売型乗合代理店など、保険募集実績がある企業、新規参入企業等
調査期間:2024年8月~11月
調査方法:当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、ならびに文献調査併用

※来店型保険ショップ市場とは:本調査における来店型保険ショップとは、複数の保険会社と提携した乗合代理店とし、来店型保険ショップ市場規模は同店舗で販売される保険商品について、各事業者における会計(決算)年度の新契約年換算保険料ベースにて算出した。

<市場に含まれる商品・サービス>
個人向け生命保険及び損害保険、法人向け生命保険及び損害保険

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小田 沙樹子(オダサキコ) 研究員
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