矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

レポートサマリー
2023.12.08

生命保険の販売チャネルに関する調査を実施(2023年)

2022年度の来店型保険ショップの市場規模は前年度比4.8%増。コロナ禍をきっかけにWeb相談の導入が進んでおり、この1年間で約5ポイント拡大している。

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内の生命保険会社及び乗合代理店における販売チャネル戦略や施策を調査し、参入企業の動向を明らかにした。ここでは、乗合代理店のうち、来店型保険ショップの市場規模(新契約年換算保険料)、Web相談の導入実態について、公表する。

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【図表:来店型保険ショップの市場規模(新契約年換算保険料)推移】

【図表:来店型保険ショップの市場規模(新契約年換算保険料)推移】
  • 矢野経済研究所調べ
  • 注:各事業者の会計(決算)年度における新契約年換算保険料ベース
  • 注:2022年度は見込値、2023年度は予測値
  • 注:四捨五入のため、図表データの比率が一部異なる

【図表:Web相談の導入実態】

【図表:Web相談の導入実態】
  • 矢野経済研究所調べ
  • 注:来店型保険ショップ経営企業264社を対象とし、Web相談実施の有無を調査

 

生命保険の販売チャネルのに関する概況

長引くコロナ禍の影響や物価高騰など経済環境悪化で、生命保険の見直しや新たな契約加入ニーズが高まりを見せている。2022年度は物価上昇やステルス増税などの負担増を背景に、顧客の中では生命保険の見直しによる節約や資産形成のニーズが高まった。
来店型保険ショップ経営企業では、従来よりも保障が手厚く保険料が安い医療保険や、一時払い終身保険や米国金利の高騰で注目される外貨建て保険に対する相談が増加した。そうした保険商品への加入が進んだことから、2022年度の来店型保険ショップの市場規模(新契約年換算保険料)は前年度比4.8%増の2,003億円の見込みである。

​2023年度は、顧客の外出状況はコロナ禍前に戻りつつも、Web相談・契約の利便性を求める顧客が多く、来店型保険ショップの大幅な出店増は見込みづらい。来店型保険ショップ経営企業による顧客接点ポイントの強化には、少々時間を要するなどのマイナス要因が考えられる。
​一方、政府の「資産所得倍増プラン」を背景とした資産形成・運用機運の高まりから、保険商品での資産形成を指向する更なる顧客増加のプラス要因もあると考える。
両方の要因を加味し、2023年度の同市場規模を同3.1%増の2,064億円、新規契約件数を204万件になると予測する。市場はコロナ禍前の水準程度までの回復を見込む。

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生命保険の販売チャネルのに関する注目トピック

■オンラインを活用した顧客接点が広がる
来店型保険ショップでは、コロナ禍をきっかけにWeb相談の導入が進んでいる。2023年8月現在、来店ショップ経営企業264社のうち、92社(34.8%)がWeb相談を導入していた。2022年の前回調査では、約30%の企業がWeb相談を導入していたので、この一年間で約5ポイント拡大している。

一方、従来型の生命保険会社においても、営業職員による対面とオンラインのハイブリッド方式への対応を進めている。従来、生命保険会社のメインの販売チャネルである営業職員では、顧客を訪問するなどの対面方式が基本であった。しかし、近年のデジタル化やコロナ禍をきっかけに、生命保険会社は対面とオンラインを融合した営業手法を採り入れ始めており、顧客接点の強化を図ろうと動き出している。

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生命保険の販売チャネルに関する将来展望

保険業界は、社会的情勢として少子高齢化、人口減少問題を抱えており、国内のマーケットは縮小傾向にあると見られている。
一方で、政府の「資産所得倍増プラン」の下、生命保険を資産運用の1つとして捉えはじめ、「長生きリスク」に備える動きも出てきている。さらに物価高、増税といった生活への不安材料も増え、保険を含めた家計の見直しの動きも広がるなど、保険業界を取り巻く環境は混沌としている。

​そうした中で、生命保険会社、専業代理店や乗合代理店双方ともに、「長生きリスク+健康意識の高まり」「資産形成」などの顕在化し始めたニーズの取り込みや、デジタルツールを使いこなすシニア層やZ世代、保険への無関心層への開拓余地が残されている。生命保険加入率は高く飽和状態であるが、こうした ”ブルーオーシャン” の発掘が業界の将来につながるのではないかと考える。

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参考:このレポートに掲載されている主なデータ一覧

  • 販売チャネル
  • 顧客観点から見た多様化する販売チャネル
  • 生命保険業界の年間新規契約の規模推移
  • 生命保険業界の保有規模推移
  • 生命保険業界の新契約年換算保険料
  • 生命保険の世帯加入件数
  • コロナ禍以降の生保の契約動向(新契約年換算保険料)
  • コロナ禍以降の第三分野のシェア(新契約年換算保険料)
  • 生命保険の販売チャネル別新契約年換算保険料構成
  • 来店型保険ショップの市場規模推移(新契約年換算保険料)
  • 来店型保険ショップの年間新規契約件数
  • 業界を取り巻く動向
  • 主な業界動向
  • 生保の乗合来店ショップの誕生
  • 来店ショップの企業の再編、財務基盤強化の状況
  • 参入している異業種
  • 異業種、大手資本企業の取組み
  • 金融機関の取組み
  • 生命保険のチャネル別契約構成の推移
  • 満足度の変化と満足度が増減した項目(2021年調査時点)
  • 事業戦略
  • 事業戦略の課題と今後
  • 各社の差別化策
  • AI、ChatGPTの活用状況
  • 業界におけるWeb相談の導入企業の割合
  • 業界全体のWeb相談導入店舗の割合
  • Web相談などへの取組みと効果、予定
  • 来店ショップ等企業のDX推進の現状
  • Web相談等のメリット、デメリット
  • 個人への訪問の注力状況と影響、新たな取組み
  • 共同募集の有無、メリット・デメリット、注力度
  • 法人への注力状況
  • 保険関連事業の取組み
  • 金融サービス仲介業の意向
  • 介護、住宅ローン、相続相談等
  • FD宣言公表企業数の推移
  • 生命保険会社の多様化する販売チャネル
  • 生損保のメタバース活用
  • 直接販売の取組み
  • 有力生命保険会社のDX戦略
  • 有力生命保険会社のAI導入、サービス事例
  • 間接販売の取組み
  • 生命保険会社、損害保険会社の保険ショップの取組み
  • 代理店への取組み
  • 子会社代理店等の運営戦略
  • 代理店への顧客誘致策
  • 来店ショップへの注力度、期待度
  • オンライン相談、スマホチャネル等への取組み、注力チャネル
  • 子会社等の代理店向けDX
  • 有力生命保険会社の中期経営計画
  • 将来展望
  • 生命保険からみた業界展望
  • 来店ショップ等企業からみた業界の展望
  • 業界展望に対する課題
  • 生命保険会社からみた業界展望の課題
  • 来店ショップ等企業からみた業界の課題
  • 来店ショップ経営企業
  • 生命保険の代理店数推移
  • 損害保険の実在代理店数推移
  • 集合代理店の推移
  • 来店型保険ショップ経営企業の設立時期
  • 来店型保険ショップ経営企業の従業員数構成
  • 来店型保険ショップ経営企業の資本金構成
  • 店舗数の増減変化
  • 規模別に見た店舗数の増減
  • 来店ショップ経営企業の店舗数増減率
  • 来店型保険ショップ経営企業の平均出店店舗数
  • 規模別の店舗増減数
  • 提携保険会社数の動向【平均】
  • 規模別提携保険会社数の動向
  • 全体に占める提携保険会社数が多い上位企業シェア
  • 全体に占める提携保険会社数が多い上位企業シェア
  • 提携保険会社数
  • 収益増減構成の推移
  • 各社の営業収入の推移
  • 各社の当期純利益の推移
  • 2023年内、2024年見通し
  • ターゲット層
  • 新規顧客の開拓策
  • 新規顧客開拓の課題と対策
  • 既存顧客の囲い込み策
  • 既存顧客囲い込みの課題と対策
  • 顧客利便性、顧客体験向上のための施策
  • 生命保険会社の販売動向
  • 生命保険会社の非対面営業の動向
  • 生命保険会社のデジタル化の取組み
  • 顧客へのアプローチ状況、新規・既存の優先度
  • 顧客接点の工夫点
  • 営業職員教育の工夫点
  • 直販における課題と対策
  • 現状の推奨商品と今後の方針
  • 生命保険(個人)の種別構成の推移
  • 損害保険の種別構成
  • 生保の売れ筋、高シェア会社・商品
  • 営業職員チャネルにおける売れ筋商品
  • 代理店チャネルによる売れ筋商品
  • その他チャネルでの売れ筋商品
  • 損害保険の注力方針、販売方針
  • 今後の注目商品
  • 契約者数
  • 保有実績(生保、損保の合算)
  • 新契約実績(生保、損保の合算)
  • 生命保険業界の新契約年換算保険料
  • 生命保険会社のチャネル別(一部)新契約年換算保険料
  • 新契約年換算保険料(生保、損保、その他の合算)
  • 生命保険会社の子会社代理店での顧客動向、ニーズ変化
  • 既存と新規顧客の変化
  • 今後の顧客動向予測
  • 店舗展開地域のイメージ
  • 店舗展開地域と今後の展開
  • (株)アドバンスクリエイト
  • (株)アイリックコーポレーション
  • ブロードマインド(株)
  • (株)オールワンエージェント
  • (株)フィナンシャル・エージェンシー
  • (株)Wizleap
  • 楽天インシュアランスプランニング(株)
  • ライフネットみらい(株)
  • 日本生命保険(相)
  • 第一生命保険(株)
  • 住友生命保険(相)
  • アフラック生命保険(株)
  • ライフネット生命保険(株)

 

乗合代理店(来店ショップ含む)、保険会社の収録内容は以下の通り

 

【乗合代理店(来店ショップ型、オンライン型、訪問型の定性情報】

  • 企業概要:企業名、屋号、住所、代表者、設立年月、代表電話、資本金、従業員数、決算月、拠点・店舗数、資本系列、企業の特徴、事業内容/取扱商品、提携保険会社数、来店・訪問・オンラインの個人・法人の扱いの有無、保険販売以外の事業・サービス
  • 業績動向:保険募集売上・利益動向、2023 年内・2024 年の見込み・予測
  • 事業戦略:現状、現状の課題、今後、他社との差別化策
  • 保険販売での新たな取組み状況・予定:個人への来店・訪問業務・ネット完結・スマホ商品のサービスと取組み、Web 相談の有無・計画・メリット・デメリット、共同募集の有無、メリット・デメリット、法人向けサービスの取組み・注力度合い、保険関連事業・サービス
  • 保険事業以外の事業・サービスの取組みと注力状況・収益性:金融サービス仲介業、介護、住宅ローン、相続相談、資産運用相談、保全代行、がん診断など
  • 業界課題への対策と展望:顧客本位の業務運営への取組み、評価制度見直し、手数料の業界統一基準導入による影響・効果、コロナ前後における存在意義・必要性、集客の在り方、他業態との協業における課題と対策、業界展望(統廃合、マーケット規模、ニーズ、AI 導入など)
  • 営業戦略:ターゲット層(リテラシー、新規加入、既存見直し、年代、他)、既存と新規顧客への注力度、新規開拓策(手法、媒体、他)の方策・課題・対策、既存顧客の囲い込み策、顧客利便性・顧客体験向上のための施策
  • 商品戦略:現状の推奨商品と今後の方針、生保の売れ筋・高シェア会社・商品、損保の売れ筋・高シェア会社・商品、今後の注目商品
  • 顧客動向と属性:既存と新規顧客属性(新契約ベース)の変化、今後の動向予測
  • 店舗運営戦略:店舗展開地域と今後の注力地域、店舗網拡大の意向、訪問型拠点の出店動向、Web 関連計画

 

【定量情報】

  • 業績:2020 年~2023 年(見)の売上(営業収益)、経常利益、当期純利益
  • 契約実績:2020 年~2023 年(見)の保有契約件数、新規契約高、新規契約件数、新契約年換算保険料
  • 店舗展開動向: 2020 年~2023 年(見)の直営・フランチャイズ別店舗数、構成比率

 

【生命保険会社の収録内容】

  • 企業概要:企業名、住所、代表者、設立年月、従業員数、資本金
  • 販売体制:直接販売の取組み・今後の方針、間接販売の取組み・今後の方針・子会社代理店概要
  • 営業職員チャネルの取組み:販売動向、非対面営業の動向、販売におけるデジタル化の取組み、顧客へのアプローチ状況、顧客接点創出で工夫している点・苦労している点、営業職員の教育について工夫している点、課題・今後の取組み
  • 代理店チャネルの取組み:子会社・関連会社代理店についての店舗運営戦略、契約動向変化、顧客ニーズ変化、顧客誘致策、デジタル化の取組みなど、契約代理店・来店ショップに対する期待度・注力度合い、インターネット・スマホチャネルの取組み
  • 商品戦略:売れ筋商品(営業職員、代理店、その他チャネル別)
  • 業界の展望と課題
  • 契約実績:2021 年度~2022 年度の販売チャネル別新契約年換算保険料

 

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関連リンク

■レポートサマリー
生命保険の営業職員アンケート調査を実施(2023年)
来店型保険ショップ市場に関する調査を実施(2022年)
来店型保険ショップ市場に関する調査を実施(2021年)
来店型保険ショップ市場に関する調査を実施(2020年)
来店型保険ショップ市場に関する調査を実施(2019年)

■アナリストオピニオン
アンケート結果からみる生命保険の営業職員の実態

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  • セグメント別の動向
  • 注目トピックの追加情報
    • Web相談導入率は店舗展開数で格差あり
  • 将来展望の追加情報
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調査要綱

調査対象:従来型の生命保険会社、ネット保険会社、来店型保険ショップ経営企業、オンライン型や保険関連サイトを運営する乗合代理店、訪問販売型乗合代理店など、保険募集実績がある企業、新規参入企業等
調査期間:2023年8月~10月
調査方法:当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、ならびに文献調査併用

※来店型保険ショップ市場とは:本調査における来店型保険ショップとは、複数の保険会社と提携した乗合代理店とし、来店型保険ショップ市場規模は同店舗で販売される保険商品について、各事業者における会計(決算)年度の新契約年換算保険料ベースにて算出した。

<市場に含まれる商品・サービス>
個人向け生命保険及び損害保険、法人向け生命保険及び損害保険

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小田 沙樹子(オダサキコ) 研究員
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