矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

Daily column

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2026
「技術を巡る力の均衡」①一件の制裁が浮き彫りにした依存の構造
2024年11月、戦争犯罪などを扱う国際刑事裁判所(ICC)は、ガザ地区での戦闘を巡り、民間人への食料供給の制限など、戦争犯罪と人道に対する犯罪の容疑を元に、イスラエルのネタニヤフ首相とガラント前国防相に逮捕状を発付した。米政府は、同盟国イスラエルの指導者への逮捕状発付に反発し、2025年8月、これに関与したフランス人判事ニコラ・ギユー氏を制裁対象に指定した。ところが、制裁の影響はギユー判事が暮らす欧州での日常生活にも及んだ。   まず、VisaやMastercardによるカード決済が利用できなくなった。Expediaを通じて予約したフランスのホテルからは、数時間後に予約取り消しの通知が届いた。Amazon、Airbnb、PayPalのアカウントも閉鎖され、米国企業ではない銀行でも一部の口座が閉鎖された。さらに、フランスの保険会社による医療費の払い戻しも停止された。なぜ米国の制裁が、欧州でのホテル予約や銀行取引にまで影響したのだろうか。   米国の制裁対象者に対しては、米国企業は原則として取引を行うことができない。しかし、欧州で利用されるサービスの多くも米国企業のシステムとつながっている。フランスには独自のカード決済網(CB)があるものの、実際に発行されるカードの多くはVisaやMastercardにも対応している。さらに、米国企業以外の事業者も、法的リスクを避けるために取引を制限する場合がある。こうした仕組みにより、米国の制裁は欧州域内の金融取引にも影響を及ぼす。   同様の依存関係は、業務用のデジタルサービスにもみられる。GoogleアカウントやMicrosoftの業務用ソフトウェア、米国企業のクラウドサービスが利用できなくなれば、個人だけでなく企業や公的機関の業務にも支障が生じかねない。実際、ICCも2025年10月、Microsoft Officeからドイツ製のオープンソースソフトウェア「openDesk」へ移行する計画を明らかにした。国際機関でも、米国企業の業務用ソフトウェアへの依存を見直す動きがある。   もちろん、当事例は特定の個人を対象としたものであり、欧州全体の金融・デジタルサービスが停止したわけではない。また、米国も欧州の技術やサプライチェーンに依存している。米国の半導体産業にはオランダのASMLが手掛ける先端製造装置が欠かせず、NokiaやEricssonなどの欧州企業も世界の通信インフラで重要な役割を担っている。双方の技術と市場が密接に結び付いているだけに、取引が制限されれば両者とも影響を受ける可能性がある。こうした相互依存関係の中で、欧州は従来の協力関係を維持しつつ、特定の国や企業への依存を減らすための対応を模索している。   参考: Financial Times "Life without US tech" 他
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2026
「AIはどの国・宗教の価値観に基づいて答えるのか」
疑問があればAIに尋ねることが、今や日常になった。仕事や学習だけでなく、人間関係や人生の悩み、宗教に関する質問にまで利用が広がっている。英経済誌『The Economist』は、こうした変化が宗教界にも及んでいると報じた。例えば、カトリック系スタートアップのLongbeard社は、宗教文献や神学資料を基に質問に答えるチャットボット「Magisterium AI」を世界各国で提供している。これまで宗教指導者や信仰共同体、書籍に求めていた答えを、チャットボットにも求めるようになったのである。   問題は、AIがどのような観点から答えるかという点だ。汎用AIモデルは特定の宗教の教えを基準に設計されているわけではなく、宗教的な質問にも世俗的な観点から答えることがある。一部の宗教界では、AIへの個人的な相談が増えることで、宗教指導者や共同体の役割が弱まる可能性を懸念する動向もみえている。こうした状況を背景に、宗教界とAI開発企業の間でも協議が進んでいる。Anthropic社は、カトリックやイスラム教などを筆頭に、さまざまな宗教関係者の意見を聞きながら、AIの行動原則を検討している。また、カタールではイスラムの価値観を反映したアラビア語中心のAIモデル「Fanar」の開発を支援しており、台湾でも市民の意見をAI開発に取り入れる試みが進んでいる。多様な宗教や文化的背景を持つ利用者に対し、AIがどのような基準で答えるべきかが新たな課題となっている。   こうした動きは、宗教以外の分野にも共通する論点を含んでいる。同じAIモデルでも、利用者が求める答えは国や地域の文化・価値観によって異なり得る。特に個人的な相談や助言では、何を適切な回答とするかについて意見が分かれることも考えられる。グローバルAIサービスの現地化においても、言語対応や現地データの確保に加え、こうした価値観の違いをどこまで考慮するかが、今後の検討事項の一つとなる可能性があると考えられる。   参考: The Economist "AI is changing religion and religions are trying to change AI"
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2026
「AI競争のもう一つの焦点 技術を支える資本とインフラ」
生成AIの進展に伴い、企業が利用できるAIモデルやサービスの選択肢も広がっている。一方、AIの開発・運用には、先端半導体やデータセンター、電力に加え、巨額の資金が必要となる。米外交専門誌『Foreign Affairs』は、こうした資本・インフラ面から米中のAI競争を論じている。同誌は、これらを長期的に確保・維持できるかどうかが、今後のAI産業を左右すると指摘する。   米国と中国は、異なる産業基盤を背景にAIの開発・普及を進めている。米国ではOpenAI社やAnthropic社などの民間企業が先端AIモデルの開発を主導し、大手テクノロジー企業による投資を民間資本市場が支えている。一方、中国は政府の産業育成策と製造業基盤を生かし、AIインフラの整備や産業現場への技術導入を進めている。モデルの提供方式にも違いがある。 米国の主要企業が商用APIやクラウドを通じてモデルを提供する一方、中国ではDeepSeekなどが、自社運用や改変が可能なオープンウェイトモデルを公開している。こうした提供方式の違いは、海外の企業や金融機関がAIの導入形態や提供事業者を選ぶ際の判断材料にもなる。   AIインフラへの投資も拡大している。 同誌によると、米国の主要テクノロジー企業が2026年に予定する設備投資は総額6,000億ドルを超え、その相当部分がAI関連インフラに充てられる見通しだ。中国でも政府主導の大規模なデータセンター整備が計画されている。こうした投資の拡大は半導体やクラウド分野にも及び、金融面では資金調達と投資採算性が重要な論点となっている。 特にデータセンターや電力設備の整備には多額の資金と時間を要するため、AIサービスの需要拡大が十分な収益につながり、投資を回収できるかが問われる。   AIサービスを支えるインフラや供給体制は、金融機関や一般企業の導入判断にも関わる。 米国企業の商用AIサービスを利用すれば、自社でモデルを運用する負担を軽減できる一方、料金や提供条件は外部事業者に左右される。これに対し、オープンウェイトモデルは自社環境での運用や業務に応じた調整が可能だが、その分、計算資源の確保や保守・管理が必要となる。さらに、各国の輸出規制や半導体の供給状況も、サービスの継続的な利用に影響する可能性がある。特に安定稼働が求められる金融機関では、モデルの性能や費用に加え、運用基盤の確保と供給条件の変化に対応できる体制が重要となる。   参考: Foreign Affairs "Empires of AI: The Rise and Fall of a New Global Order"

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2026
2026 EC事業者における生成AI・AIエージェント活用実態とAgentic Commerceへの対応意向調査
国内EC事業者を対象に、生成AI・AIエージェントの活用実態と、Agentic Commerceへの対応状況・今後の意向、AI・デジタル基盤への投資動向を調査・分析した市場調査資料です。 生成AIやAIエージェントの活用が進展する中、EC業界では、商品情報の作成や業務効率化などに加え、AIが商品探索・比較・購入を支援する「Agentic Commerce」への対応が注目されています。 本調査では、生成AIを継続的に活用している企業が78.3%に達したほか、Agentic Commerce対応企業の71.1%が、今後「現在の対応範囲をさらに拡充していきたい」と回答しており、今後のEC市場におけるAgentic Commerceの影響力は拡大していくと見込まれます。 また、Agentic Commerceへの対応で期待する効果では「商品情報の最適化による露出機会の増加」が50.2%で最も高く、今後重点的に投資したい分野では、「ECシステム・ECプラットフォームの機能強化」が50.2%と最も高くなっている一方、「PIM(商品情報管理システム)の導入・強化」が37.1%、「商品情報・商品コンテンツの整備」が31.9%となり、AIエージェントに推奨されるための商品情報やEC基盤の整備が重視されています。 本調査では、AI活用レベル、EC売上規模、BtoB・BtoC、業種、取扱商材などの企業属性別に、生成AI・AIエージェントの活用状況やAgentic Commerceへの対応、AI・デジタル基盤への投資動向を分析するとともに、ECプラットフォーム事業者やAIソリューションベンダーへの期待を分析し、EC市場関係者のマーケティングや事業戦略立案に活用できる情報を提供します。 全301頁。2026年9月30日、矢野経済研究所発行。
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2026
2026 量子コンピュータ市場の現状と将来展望
2020年、2021年に『量子コンピュータ市場の現状と将来展望』を発刊したが、当時、技術進化は日本を含むグローバルで研究開発が猛スピードで進む一方、活用面では手探りの状態にあった。しかしながら5年を経て2026年に調査した結果、研究開発面および活用面において以下のような変化が見られた。 まず研究開発面は急速に進展しており、ハードウェア側についてエラー訂正はもちろん、古典コンピュータとの連携における入出力問題のほか、キャリブレーションなどについても解決に向けて進んでいる。ソフトウェア側もさまざまなアルゴリズムや既存アルゴリズムの改善などに取組んでおり。NISQのみならず、Early-FTQCに向けたアルゴリズムの開発に向けた取組みも進められている。 次に活用面でも試行錯誤が進み、2025年~2026年にかけて本番環境に近い形でのPoCや、実際に量子コンピュータを活用した製品が登場するなど、活用の方向性が徐々に見えてきており、市場が育ってきている状況にある。また、実際に利用企業についても広がりを見せ始めており、いわゆる材料化学や創薬などを中心に初期から取組むイノベーターに加えて、2025~2026年にかけてCAE領域を中心にアーリーアダプターへと普及し始めている。 このように、5年間で急速に進展している量子コンピュータ業界について、市場規模や活用ロードマップなどをアップデートすべく、全27社(うち海外企業13社)に取材を敢行。具体的には、富士通や日立製作所、Jij、QunaSys、Quemix、Fixstars Amplifyなどの日本企業に留まらず、D-Wave、Equal1、Atom Computing、PlanQC、Quantum Machines、Classiq Technologiesなど、米国やカナダ、英国、ドイツ、フィンランド、韓国など、世界各国の注目企業に取材を行った。

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