矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

Daily column

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2025
【今週の"ひらめき"視点】イスラム市場への参入障壁を解消し、新たな市場開拓を!
当社代表が最新のニュースを題材に時代の本質、変化の予兆に切り込みます。   11月5日、当社とインドネシア最大のハラール認証機関LPPOM(本部:ボゴール)はハラール認証の総合サービス機関「一般社団法人LPPOM-YANOハラール協会(LPPOM-YANO Halal Solution)」の設立に合意、記者会見を開催するとともにLPPOMを通じて既に認証を取得している企業や認証の取得を準備中の企業を招いて情報交換会を開催した。 新組織はLPPOMが別途国内に設立する監査・認証発行機関と連携し、2026年4月を目途に日本企業向けに本格的なワンストップサービスをスタートさせる予定である。提供されるサービスは国際的な品質基準ISO/IEC17065:2012に準拠したハラール適合性評価であり、インドネシア国内はもちろん世界70ヵ国7万7千社以上への監査実績を有するLPPOMの信用と知見が提供される。 情報交換会にはLPPOMのムティ・アリンタワンティ総裁をはじめ日本企業に対する監査実績も有する第一線の監査員が来日、招待企業の担当者と活発な意見交換を行った。とりわけ、認証発行が政府機関(BPJPH)に一本化されたインドネシアにおける制度運用の詳細やマレーシアやタイなどとの相互認証の在り方等について実務的な質疑応答が交わされるとともに、日本語によるグローバルワンストップサービスに対する期待の大きさを表明いただいた。 今、グローバル経済は大きな転換点にある。自由貿易はまさに危機的状況だ。それだけにTPPの存在感が高まる。昨年末に承認された英国も含め加盟国は現在12ヵ国、世界のGDPの15%を占める。中国、インドネシア、UAE(アラブ首長国連邦)をはじめ加盟申請中または交渉中の国は9ヵ国にのぼる。韓国も検討に入った。とは言え、海外市場とりわけイスラム圏への進出、輸出に二の足を踏む日本企業は少なくない。市場調査やフィジビリティスタディでは解決できない“ハラール”というハードルをLPPOMと連携することで乗り越え、大手・中堅企業はもちろん地方企業の新たな販路開拓、成長機会の創出に貢献してゆきたい。 ■株式会社矢野経済研究所はLPPOMと「日本でハラール適合性評価サービス事業」で合意(2025年11月5日) 今週の“ひらめき”視点 11.2 – 11.6 代表取締役社長 水越 孝
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2025
ジャパンモビリティショー2025 注目企業の取組②-Global Mobility Service社のFinTechで実現する「車を持つ選択肢」-
前回に引き続き、ジャパンモビリティショーで印象に残った企業を紹介します。今回は Global Mobility Service株式会社(以下、GMS) です。   ■GMSの技術とサービス概要 GMSは2013年に設立された企業で、モビリティと金融を融合したFinTechサービスを提供しています。中核となるのは、車両に搭載する遠隔通信制御機器であるIoTデバイス 「MCCS」(Mobility Cloud Connecting System) です。このデバイスは遠隔起動制御機能を備え、走行状況や速度などの車両データを収集します。さらに、金融機関と連携して取得した支払い状況などの金融データと組み合わせて分析することで、ドライバーの信用力を可視化します。 この仕組みにより、従来の与信審査に通過できなかった人でも、MCCSを設置することを条件に、ローンやリース契約が可能になります。契約者が支払いを滞納した場合には、車両を安全に遠隔制御し、支払い完了後に再び利用できる仕組みとなっています。   ■サービスがもたらす価値 このサービスは、単にお金を借りやすくするだけではなく、車を使えるようにして生活や仕事の選択肢を広げます。具体的には、契約者・金融機関・販売店のそれぞれにメリットがあります。 ・契約者:車を持てなかった人が車を利用できるようになり、仕事や生活の選択肢が広がる ・金融機関:貸せなかった層に融資でき、貸出機会が増える ・販売店:売れなかった車が売れることで販売台数が増加する 結果として、車の利用により仕事ができる幅も増えるなど所得向上や生活改善につながる可能性があります。GMSはこうした課題解決を目指し、すでに海外法人を設立するなど、グローバル展開にも力を入れています。   ■盗難防止への応用 MCCSは、車両盗難防止にも活用できるとされています。GMSは、株式会社Secualと三井住友海上火災保険と提携し、「Secual Smart Security」という新しいセキュリティサービスを共同開発したと発表しています。背景には、近年急増しているとされる電子的な盗難手口があります。例えば、車両の電子制御信号を不正に操作してドアを開けたりエンジンを始動させる「CANインベーダー」と呼ばれる手法などです。警察庁によると、2024年の自動車盗難認知件数は6,080件で、その7割超が施錠中の車両を狙った犯行とされ、最短1分で盗まれるケースも報告されています。 また、損害保険の支払いも増加しており、日本損害保険協会によれば、2024年には1件当たり平均281.5万円の支払いが発生したとのことです。こうした状況を踏まえ、3社は「防犯×モビリティ×保険」による新たなモデルで、盗難ゼロ社会の実現を目指すとしています。   ■展示会での印象 GMSの取り組みは、「車を持てない人に持つ手段を提供する」という社会課題解決型のビジネスと言えます。払えないから諦めるのではなく、どうすれば使えるようになるかを考え、その利用が生活改善につながる仕組みを構築しているように感じました。経済的な理由で車を持てない層にとっては、こうした仕組みが新しい選択肢になり得ます。また、生活だけでなく、仕事や移動の幅を広げるという点で、GMSの挑戦は非常に興味深いです。(小田 沙樹子)
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2025
ジャパンモビリティショー2025 注目企業の取組-Cuebus社の技術と自動物流道路構想 -
2025年10月29日(水)、ジャパンモビリティショーに参加しました。本コラムでは、展示会で印象に残った企業の取り組みを紹介します。今回は Cuebus株式会社 です。   ■Cuebus社の技術とは?リニアモータで実現する新しい物流システム Cuebusは、リニアモータを活用した都市型立体ロボット倉庫 「CUEBUS」 を提供しています。この技術の核となるのは、床面に設置したリニアモータユニットによって棚を直接動かす仕組みです。これにより、棚側にはモータやバッテリーが不要となり、耐久性が高く、メンテナンス負荷も軽減されます。さらに、通路を不要とし、天井ギリギリまで収納できるため、倉庫スペースを極限まで活用できます。 加えて、すべての棚を即座に動かせることで、ピッキングや入出庫の処理速度を飛躍的に向上させる「高スループット」性能を実現。複数の棚を同時に、最短経路で移動できるため、従来のロボット倉庫よりも効率的です。 この技術は倉庫内の効率化にとどまらず、物流全体の仕組みを変える可能性を秘めています。背景には、荷物の小口化による取扱量の増加や、ドライバー不足、さらに2024年問題に伴う労働時間規制の影響で輸送力の低下が懸念されるといった課題があります。   ■従来の発想との違い こうした状況に対して、これまで物流の効率化といえば、自動運転の実現に向けた取り組みが一般的でした。私自身も、輸送力不足への対応はこの方向が中心だと思っていましたし、場合によっては鉄道や空路など、既存の代替手段を組み合わせることも検討されていると考えていました。実際、こうした取り組みを進める企業もあります。 しかし、Cuebusの提案は全く異なります。「移動体を使わず、荷物そのものを専用レーンで動かす」という発想です。リニアモータで貨物を直接搬送する仕組みは、物流の概念を根本から変える可能性があります。   ■自動物流道路構想との接点 今回の展示でCuebusが紹介していたのは、国土交通省が構想する 自動物流道路(Autoflow Road) への技術応用です。自動物流道路とは、道路空間に物流専用レーンを設け、クリーンエネルギーを電源とする無人・自動化輸送手段で貨物を運ぶ仕組みを指します。もしこの仕組みが実現すれば、ドライバー不足の解消や荷待ち時間の削減、積載効率の改善に加え、CO₂排出ゼロによる環境負荷低減が期待されます。さらに、専用レーンと電力供給が整えば、24時間稼働による幹線輸送の効率化も可能になります。   ■展示会での印象 正直、「荷物だけを動かす」という発想は目から鱗でした。国交省の構想とCuebusの技術が結びつけば、物流の未来像は大きく変わるかもしれません。インフラ整備やコスト回収など課題はあると思いますが、今後の動向を注視したい企業の一つとなりました。
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2025
PayPay、デジタル商品券を送れる『PayPayギフト』の提供を開始
2025年10月16日、PayPayは対象加盟店で利用可能なデジタル商品券を友達や家族に送れる「PayPayギフト」の提供を開始した。 https://about.paypay.ne.jp/pr/20251016/02/   送り手はPayPayアプリの「送る・受け取る」機能から、プレゼントしたい加盟店の商品券の金額を1円単位で自由に設定し、任意のメッセージとデザインとともに送ることができる。送られたPayPayギフトは「PayPay商品券」として受け取ったユーザーのアプリ内の支払手段に自動登録される。1度の利用で使い切る必要はなく、余った分は次回の支払で利用できるほか、PayPay商品券以外の支払手段との併用も可能になっている。   友人や家族に気軽にギフトを送れるサービスとしては「LINEギフト」がある。私自身も同サービスでギフトを送ったり、貰ったりした経験があるが、LINEの連絡先さえ知っていれば送ることができるため利便性が高く、若年層を中心にかなり定着している印象を持っている。 現状、今回発表された「PayPayギフト」の送り先としては、「PayPayの連絡先を知っている(≒過去にPayPay残高を送受したことがある)」または「電話番号を知っている」相手となっており、個人的にはLINEより若干ハードルが高いように感じる。送ってから利用されるまでのプロセスがPayPayで完結し、日常の決済と同様の操作で簡単に利用できるという価値を通じて、個人間ギフトの新たな定番となれるか、今後の利用状況を注視したい。

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