矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

Daily column

11 26
2025
生命保険文化センター「2025年度生活保障に関する調査(速報版)」から見る生命保険の加入チャネルの変化
公益財団法人生命保険文化センターは、3年ごとに「生活保障に関する調査」を実施しています。この調査では、生活設計に対する意識や現状、生活保障に対する考え方、生命保険の加入状況など、保障準備の実態を幅広く把握されています。 今回、2025年度の「生活保障に関する調査」の速報版が2025年10月に発表されました。本コラムでは、その中でも「生命保険の加入チャネル」に関する結果に注目したいと思います。   ■直近加入契約の加入チャネル 調査結果を時系列※で見ると、2007年以降、「保険代理店の窓口や営業職員」を通じた加入が一貫して増加傾向にあります。2007年には3.8%だったのが、2025年には13.9%にまで上昇しました。 一方、通信販売(インターネット等を含む)は長らく5%台で横ばいが続いていましたが、2022年調査では7.7%、今回2025年調査では8.1%と、緩やかな増加が見られます。 なお、依然として営業職員チャネルが最も多い加入チャネルではありますが、2007年の56.7%から2025年には44.4%へと、10ポイント以上減少しています。   ■今後最も加入意向のあるチャネル 今後加入したいチャネルとして最も多かったのは、今回も営業職員チャネルで時系列結果でみると2025年は32.7%でした。引き続き営業職員が主流ではあるものの、他のチャネルへの関心も高まりつつあります。 まず、通信販売チャネルへの意向は、2007年の10.7%から2025年には19.7%へと伸びております。また、「保険代理店の窓口や営業職員」への加入意向も15.4%と、2007年の5.5%から増加しています。特に保険代理店については、街中での店舗展開やテレビCMなどの露出が増え、一般消費者にとって身近な存在になってきたことが背景にあると考えられます。 これらの代理店には、複数の保険会社の商品を扱う乗合代理店も含まれていると推察しますが、前段で触れました実際の加入チャネルとしても利用が進んでおり、意向と行動の間に大きな乖離は見られません。つまり、「代理店を使いたいと思って、実際に使っている」傾向があると言えるでしょう。 一方で、通信販売については、意向は高いものの、実際の加入には一定のハードルがあるようです。損害保険(例:自動車保険)のように契約期間が短く、補償内容も比較的シンプルな商品であれば、通信販売との相性が良いと考えられます。しかし、生命保険はより慎重な検討が求められる商品であり、自分の人生と向き合いながら保障を考える必要があるため、インターネットだけで完結するのは難しいと感じる人が多いのかもしれません。   ■おわりに 今回、生命保険文化センターによる「生活保障に関する調査」から、生命保険の加入チャネルに関する動向を見てきました。同調査では、生命保険の加入意向に関して他にもさまざまな結果が掲載されていますので、ぜひ同センターのサイトからご覧いただければと思います。   さて、こうした消費者の意識に対して、事業者側ではどのような取組みが行われているのでしょうか。当社では事業者への取材や文献調査を踏まえた『生命保険の販売チャネル戦略と展望』を毎年発刊しています。事業者側の取組みのほか、生命保険や販売チャネルを取り巻く市場環境などを知ることができます。同レポートでは、特に乗合代理店にフォーカスし、ショップ数や新契約年換算保険料ベースの市場規模、事業者の戦略動向などを整理しています。今年も2025年版を11月末頃に発刊予定です。ご関心のある方はぜひご覧いただけますと幸いです。 (小田 沙樹子)   ※本コラムで引用しているデータは、公益財団法人生命保険文化センターが実施した「生活保障に関する調査」(2025年度速報版)に基づくものです。なお、時系列比較については、同センターによって調査対象年齢が本来の18~79歳から、過去調査との整合性を考慮して18~69歳に再集計された結果を参照しています。
11 25
2025
【今週の"ひらめき"視点】財政、金利、為替、中国、大きな声に流されず冷静なかじ取りを
当社代表が最新のニュースを題材に時代の本質、変化の予兆に切り込みます。   11月21日の閣議決定に向けて調整中の今年度補正予算の一般会計歳出が17兆円を超える見込みだ。物価対策、成長投資、安全保障を柱に昨年の13.9兆円を越える大型補正となる。連立与党内からは「更なる上積みを」との声もあるという。ただ、補正予算とは災害など突発的で緊急性を要する事態に対して必要最小限の予算の“変更”を行うためのものであり、中長期的な国策としての産業政策や防衛戦略は本来“補正”で対応すべき事案ではない。 第2次安倍政権から石破政権まで計13回、計250兆円の国費が補正として支出された。コロナ禍の3期を除いても106兆円を超える。「日本経済再生のための緊急対策」、「未来への投資を実現するための経済対策」、「地方への好循環拡大に向けた経済対策」、「安心と成長の未来を拓く総合経済合対策」などなど、そもそも名称からして“補正”の本意からは遠い。それでも緊急対策として投じられ続けてきた成果が“今”である。はたして国民各層への総花的、一時的な収入補填に終わっていないか。徹底した成果検証をお願いしたい。 さて、補正予算のあるべき論は横に置く。喫緊の課題は物価高であるが、ここが最初の難関である。アベノミクス後遺症からの安定的な着地を目指し金利の正常化を進めたい日銀と、“責任ある”と前置きしつつも積極財政を掲げ、金融緩和の維持を望むとされる現政権のスタンスは相反する。日銀による金利引き上げのタイミングが遅れるとみた市場は直ちに反応、円の対ドル相場は急落、円の信任に対する懸念が高まる。 加えて中国リスクだ。高市発言に対する中国当局の反応は外交上の祖語の次元を越えている。日本経済への影響は小さくない。一方、尖閣問題やコロナ禍を通じて企業の側も構造改革を進めてきたはずだ。危機対応力は向上しており、長期化を視野に冷静に対応したい。1940年代前半、言論統制に迎合し、排外思想を煽り、戦意への高揚を作り上げたのはメディアであり当時の言論人だ。あらためて民主主義の脆弱さを私たち一人ひとりが認識し、健全な言論空間の維持をはかりたい。そして、高市政権には「無責任なポピュリズムに屈しない、大勢に流されない政治家としての矜持と責任」 (石破茂氏、「戦後80年所感」より) を期待する。 今週の“ひらめき”視点 11.16 – 11.20 代表取締役社長 水越 孝

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