矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

Daily column

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2025
「SBI日本少短、バイク・自転車向けの車両専用保険が2万件突破を発表」
SBI日本少額短期保険は、2025年4月末時点において、バイク・自転車向けの車両専用保険の保有契約件数が2万件を突破したことを発表した。これは、バイク・自転車向けという比較的ニッチな商品分野において注目すべき実績であり、同社では商品特性とユーザーからの支持が背景にあると説明している。 同社は2014年からバイク・自転車を対象とした車両保険の分野に対して保険提供を開始し、約10年間にわたり多様なニーズに応える商品を展開してきた。特に、事故や盗難時に購入時からの経過年数にかかわらず購入金額を全額補償すること、そして水災被害による車両への補償を行う「車両水災特約」の提供が特徴となっている。これらの商品設計によって、同社の保険は多くのバイク・自転車ユーザーから高い評価と支持を得ているとしている。 SBI日本少短、車両専用保険の保有契約件数2万件を突破(SBI日本少額短期保険)|ニュースリリース|SBIホールディングス 今回のニュースは、まさにニッチマーケティングの成功事例といえる。バイク・自転車という限定的なユーザー層に特化し、さらにハーレーダビッドソンなど特定ブランドのユーザー向けの保険も展開するなど、明確なターゲット戦略が功を奏している。 また、事故や盗難時の購入金額全額補償や、水災特約の単体加入を可能にした商品設計は、ユーザーの潜在的な不安やニーズを的確に捉えたものである。こうした取り組みが、10年という歳月をかけて着実に成果へと結びついたのだろう。 2万件という契約件数について、10年という期間を考慮すると評価が分かれる可能性もあるが、特定ユーザー層に焦点を当てた戦略の有効性を示す事例として評価したい。今後も、こうしたニッチ市場における保険商品の動向には注目していきたい。( 小田 沙樹子)
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2025
「富士通『1FINITY T900』による長距離・低消費電力伝送の実証結果から見る IOWN/APN 構想への実装的接近」
富士通は、フランスの通信事業者Orange S.A.(以下、Orange)との共同実証を通じて、自社の光伝送装置『1FINITY T900』が、約1,600kmの長距離にわたり800Gbpsの伝送速度を維持しつつ、消費電力を150W未満に抑制できることを確認したと発表した。   https://pr.fujitsu.com/jp/news/2025/06/04-01.html   Orangeは、かつて国営企業であったフランス・テレコムから民営化されたフランス最大級の通信事業者であり、欧州・アフリカ・中東にわたる広域通信サービスを展開している。現在は、5G・光通信・DX、持続可能性分野に積極的に投資しており、複数のグローバルベンダーと連携しながら次世代ネットワーク技術の導入を進めている。   本実証は、Orangeの実環境研究インフラにて実施され、富士通は伝送速度条件全てにおいて装置の電力効率が安定していたと説明した。対象装置は、保守性と運用信頼性を確保しつつ、密閉型水冷システムを採用することで冷却効率を向上させる構造を持つ。また、波長あたり最大1.2Tbpsの伝送能力や多様なイーサネット・インターフェースへの対応のような技術的要素は、伝送性能の向上および到達距離の拡大に寄与する可能性があると考えられる。   また、本装置はIOWN Global Forumが提唱する「オール光ネットワーク(APN:All Photonics Network)」構造との技術的互換性を有するとされる。IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)とは、NTT社が主導する次世代通信インフラ構想であり、ネットワーク伝送のみならず、情報処理および制御全体に光技術を適用することで、超低遅延・低消費電力・大容量通信の実現を目指している構想である。APNは、その中核をなす要素技術の一つであり、ネットワークの端点間をすべて光信号で接続することで、従来の電子系ネットワークにおけるボトルネックや遅延の削減を図る構成となっている。   さらに、富士通は、ネットワークプロダクト事業を承継する新会社「1FINITY株式会社」を2024年7月1日付で発足させ、ネットワーク関連事業を統合する方針を示している。今回の実証により、同社装置がIOWN構想の技術的方向性と整合する可能性を示唆する一方で、実際の商用ネットワークへの適用に向けては、ソフトウェア層の統合、他社装置との相互運用性、運用ポリシーへの柔軟な対応など、複数の条件下での追加的な検証も今後の課題であると考えられる。   とりわけ、ネットワーク構造全体の転換を実現するためには、複数機関の協調による実証蓄積と、多様な運用環境における検証事例の積み重ねが不可欠である。また、政策的観点からも、本装置の性能がAPN/IOWNベースのネットワーク転換に実質的に寄与し得るかを評価するための中長期的な視点での分析と検討も、今後の重要な観点となると考えられる。(曺 銀瑚)
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2025
NTTデータ経営研究所、「心の健康」投資拡大に向け、共同事業体を設立
2025年6月5日にNTTデータ経営研究所、シード・プランニングは、産官学のステークホルダーと共に「心の健康」投資拡大に向けた共同事業体の設立を支援することを発表した。共同事業体は2025年7月に一般社団法人として設立される予定になっている。共同事業体は、企業が直面する人や組織の課題を可視化や「心の健康」投資の意義・価値の啓発に取り組む。また、「心の健康」に係るサービスについて効果に関する根拠の蓄積や品質に関する情報開示の促進を目指す。   https://www.nttdata-strategy.com/newsrelease/250605/   現在、企業が従業員向けにストレスチェックを実施するのは一般化している。では、企業の「心の健康」投資は十分なのかというと疑問である。しばしば学生時代の友人に会うが、精神疾患による休職や退職は珍しくなく、企業における十分な対策が取れていないように感じる。リリースにもある通り、ストレスチェックを実施している企業は増えたもののコンプライアンス上の取組に留まっているケースは多い。そうした取り組みだけでは従業員の心の不調を予防できるとは思えず、結果として精神疾患患者の増加につながっているように感じる。 近年では従業員の心の健康の管理にAIやデータ分析を活用するサービスが増えている。投資に積極的な企業はこうしたサービスも利用しているのだろう。しかし、心の状態を管理する点において具体的な効果を測ることは難しく、投資対効果が示しにくいのが課題である。 人口減少により、従業員不足が深刻化している昨今において企業が「心の健康」投資をしていくことは必須になる。まずは取り組みが不十分な企業への啓発が求められる。加えて、今回の共同事業体の活動のように単なる投資ではなく、投資効果を裏付ける根拠の蓄積や品質情報の公開を進める意義は今後さらに高まっていくと見込まれる。

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2025
2025 AIで進化するMEO市場のビジネスモデル分析と将来展望
スマートフォンの普及と共にユーザーの検索行動が、位置情報を活用する形へと変化し、Googleビジネスプロフィール(GBP)の運用は企業にとって必須となっている。2020年以降は、コロナ禍を契機に特に店舗事業者においては、営業時間や営業形態の頻繁な変更に対応するため、正確な情報を即時に反映できる体制の整備が求められるようになり、MEO市場の成長はさらに加速した。 近年では、MEOが単なるローカルSEO施策にとどまらず、ローカルマーケティング全体の最適化へと進化しており、特にリアル店舗を展開する事業者にとっては、「MEO対策」、「口コミ管理」、「SNS連携」、「ローカル広告」をワンストップで最適化する取り組みが主流となっている。さらに、AIを活用したデータ分析や店舗運用の効率向上が加速しており、MEO市場はより高度な進化を遂げている。 一方で、競争激化に伴うMEO施策の価格下落と成果の低下、Googleマップへの依存度が高い市場構造、さらにAI活用の拡大によってMEO施策の差別化が困難になっている点などが、業界全体の課題として認識されている。 本調査では、こうした状況を踏まえ、国内主要MEO事業者の戦略および市場動向を分析し、今後注目される領域と市場の将来性について展望する。

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