生命保険文化センター「2025年度生活保障に関する調査(速報版)」から見る生命保険の加入チャネルの変化
公益財団法人生命保険文化センターは、3年ごとに「生活保障に関する調査」を実施しています。この調査では、生活設計に対する意識や現状、生活保障に対する考え方、生命保険の加入状況など、保障準備の実態を幅広く把握されています。
今回、2025年度の「生活保障に関する調査」の速報版が2025年10月に発表されました。本コラムでは、その中でも「生命保険の加入チャネル」に関する結果に注目したいと思います。
■直近加入契約の加入チャネル
調査結果を時系列※で見ると、2007年以降、「保険代理店の窓口や営業職員」を通じた加入が一貫して増加傾向にあります。2007年には3.8%だったのが、2025年には13.9%にまで上昇しました。
一方、通信販売(インターネット等を含む)は長らく5%台で横ばいが続いていましたが、2022年調査では7.7%、今回2025年調査では8.1%と、緩やかな増加が見られます。
なお、依然として営業職員チャネルが最も多い加入チャネルではありますが、2007年の56.7%から2025年には44.4%へと、10ポイント以上減少しています。
■今後最も加入意向のあるチャネル
今後加入したいチャネルとして最も多かったのは、今回も営業職員チャネルで時系列結果でみると2025年は32.7%でした。引き続き営業職員が主流ではあるものの、他のチャネルへの関心も高まりつつあります。
まず、通信販売チャネルへの意向は、2007年の10.7%から2025年には19.7%へと伸びております。また、「保険代理店の窓口や営業職員」への加入意向も15.4%と、2007年の5.5%から増加しています。特に保険代理店については、街中での店舗展開やテレビCMなどの露出が増え、一般消費者にとって身近な存在になってきたことが背景にあると考えられます。
これらの代理店には、複数の保険会社の商品を扱う乗合代理店も含まれていると推察しますが、前段で触れました実際の加入チャネルとしても利用が進んでおり、意向と行動の間に大きな乖離は見られません。つまり、「代理店を使いたいと思って、実際に使っている」傾向があると言えるでしょう。
一方で、通信販売については、意向は高いものの、実際の加入には一定のハードルがあるようです。損害保険(例:自動車保険)のように契約期間が短く、補償内容も比較的シンプルな商品であれば、通信販売との相性が良いと考えられます。しかし、生命保険はより慎重な検討が求められる商品であり、自分の人生と向き合いながら保障を考える必要があるため、インターネットだけで完結するのは難しいと感じる人が多いのかもしれません。
■おわりに
今回、生命保険文化センターによる「生活保障に関する調査」から、生命保険の加入チャネルに関する動向を見てきました。同調査では、生命保険の加入意向に関して他にもさまざまな結果が掲載されていますので、ぜひ同センターのサイトからご覧いただければと思います。
さて、こうした消費者の意識に対して、事業者側ではどのような取組みが行われているのでしょうか。当社では事業者への取材や文献調査を踏まえた『生命保険の販売チャネル戦略と展望』を毎年発刊しています。事業者側の取組みのほか、生命保険や販売チャネルを取り巻く市場環境などを知ることができます。同レポートでは、特に乗合代理店にフォーカスし、ショップ数や新契約年換算保険料ベースの市場規模、事業者の戦略動向などを整理しています。今年も2025年版を11月末頃に発刊予定です。ご関心のある方はぜひご覧いただけますと幸いです。 (小田 沙樹子)
※本コラムで引用しているデータは、公益財団法人生命保険文化センターが実施した「生活保障に関する調査」(2025年度速報版)に基づくものです。なお、時系列比較については、同センターによって調査対象年齢が本来の18~79歳から、過去調査との整合性を考慮して18~69歳に再集計された結果を参照しています。