矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

Daily column

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2026
「NTTドコモビジネスのAI SOCから見える、AI時代のサイバー防御の変化」
NTTドコモビジネスは2026年5月20日、AIを活用してサイバー攻撃の脅威分析や自動対処を行う「AI SOC」サービスの提供を開始したと発表し、同日にオンラインで記者説明会がありましたので参加しました。 ※NTTドコモビジネスのAI SOCに関するニュースリリース https://www.ntt.com/about-us/press-releases/news/article/2026/0520.html 今回新たに発表されたAI SOCサービスは、同社が独自に開発したAIエージェントによるログ分析機能を強化した「AI Advisor」と、セキュリティアラートに対して自動で対応を行う「マネージドSOAR」を組み合わせたもので、サイバー攻撃の検知から対処までを一体で行う仕組みになっています。 今回の説明を聞いていて改めて感じたのは、サイバー攻撃のスピードがかなり速くなっている点です。説明会では、調査会社のデータを引用したうえで、攻撃者が侵入してから被害を拡大させるまでの時間(いわゆるブレイクアウトタイム)が平均29分まで短縮しているという話がありました。これだけ短い時間になると、人手で一つひとつ対応していては追いつかない、というのは理解できます。 加えて、同社の説明では企業側のセキュリティ人材の不足も課題として挙げられていました。もともと専門人材が限られている中で、対応すべきインシデントが増え、それも短時間で判断が求められるとなると、従来の体制では難しい場面も増えているのだと思います。 こうした背景を踏まえた今回のAI SOCは、AIによる自動対応を前提とした設計になっている点が特徴的です。AI Advisorでログを相関分析しながら脅威を検知し、その後はマネージドSOARによって自動で対処を行う流れです。説明によると、脅威はおおよそ10分程度で特定され、その後のアラートの約95%は自動で処理されるとのことで、人を介さないことを前提としています。一方で、完全に人が不要というわけではなく、最終的な対応や例外的なケースに備えて専門家が関与する体制も残しています。 AIを使った攻撃に対して、AIで防御するという構図は、少し前まではAIがサポートするところまでの話にとどまっていると思っていました。しかし、今回のNTTドコモビジネスのAI SOCのように、具体的なサービスとして提供されているのを見ると、実際の現場では「AI対AI」の構図が必要になっているのだと感じます。ブレイクアウトタイムも今後さらに短くなっていく可能性があることを考えると、こうした自動化の流れは一層進んでいくのかもしれません。 サイバーセキュリティの領域は、これまで人が判断し対応してきた部分が多い分野でしたが、今後はAIが担う領域が徐々に広がっていくのではないかと感じました。人が行う対応から、AIが前提となる対応へと、少しずつ変わり始めている段階に来ているのかもしれません。 -------- なお、当社矢野経済研究所では、5月下旬に「2026年 AI時代のサイバーセキュリティ市場の現状と展望」を発刊予定です。セキュリティツール導入におけるボトルネックや最新トレンドを整理し、AI時代におけるセキュリティ対策の現状と将来動向について、アンケート調査や取材をもとに分析しています。ぜひお手に取っていただく機会がありますと幸いです。 https://www.yano.co.jp/market_reports/C68100700
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2026
「ENEOSの事例にみる企業による保険代理店事業の見直し」
「ENEOSの事例にみる企業による保険代理店事業の見直し」 保険ブローカー企業であるマーシュジャパンは2026年5月15日、ENEOSホールディングス株式会社からENEOS保険サービス株式会社の株式取得およびENEOSマテリアルトレーディング株式会社の保険代理店事業を取得することで合意したと発表した。 https://www.marsh.com/jp/ja/about/media/2026-marsh-eneos.html --------- 近年、企業における保険代理店事業を手放す動きが相次いでいる。今回のマーシュジャパンは、2025年11月にも三菱電機グループの保険代理店である三菱電機保険サービスの株式取得を完了しており、同様の動きは他の大企業にも広がっている。例えば、三菱ケミカルグループは2024年11月にダイヤリックスが手掛ける保険代理店事業をエーオンジャパンへ譲渡し、三菱マテリアルも2025年11月、グループ会社である菱光サービスの保険代理店事業をエムエスティ保険サービスへ譲渡する方針を決定。また、2024年2月にはジェイテクトがグループ会社の保険代理店事業を豊通保険パートナーズへ譲渡することを発表するなど、同様の再編が進んでいる。 こうした動きの背景としては、保険代理店事業が多くの企業にとって非中核事業であることに加え、制度・規制対応の負担増があるとみられる。保険業法の改正対応やガバナンス強化、顧客本位の業務運営など、対応すべき要件は年々増えており、本業が保険ではない企業にとっては、継続的に体制を維持する負担は小さくない。 その結果として、保険代理店機能を外部の専門事業者へ移管し、自社は本業へリソースを集中させる動きが進んでいると考えられる。一方で、保険の専門事業者側から見れば、顧客基盤をまとめて獲得できる機会でもあり、業界としては集約の流れが一段と進んでいく可能性が高いだろう。
5 20
2026
「トラックショーで見えたトラックの高度化」
2026年5月14日(木)~16日(土)にかけてパシフィコ横浜で開催されていた「トラックショー」を見に行きました。トラック本体から部品、塗装、運送業界向けソリューションまで、幅広い分野の企業が出展しており、業界全体の動向を俯瞰できる展示会でした。 その中でも今回、個人的に印象に残ったのが外資系メーカーのトラックです。自動車の分野ではIT化やデジタル技術の進展が広く知られていますが、トラックにおいても同様の流れが進んでいることを改めて感じました。 例えば、出展していたボルボ・トラックでは、Volvo FHシリーズの新モデルにおいてサイドミラーを廃し、車内モニターで周囲を確認できるカメラモニターシステムが採用されていました。通常ビューと広角ビューの切り替えや、周囲状況を把握するための表示アシストなどが搭載されており、安全性向上に向けたさまざまな工夫が見られます。実際に外観を見るとミラーがない分、車体がすっきりとしているのが印象的でした。 また、「ボルボ・コネクト」と呼ばれるサービスも紹介されておりました。同サービスは、車両の状態や燃料消費、位置情報などをリアルタイムで可視化し、一元的に管理できる仕組みとなっています。トラックは10年以上使用されるケースも一般的であり、こうした機能が標準的に組み込まれていくことで、ドライバーや運送会社が後付けの機器を導入する手間は今後減っていく可能性があります。 一方で、こうした機能がどの程度のコストで提供されるのか、運送事業者にとって負担となるのかといった点も気になるところです。ただ、データの可視化や運行管理の高度化といった観点では、安全運転や経営管理の両面でメリットが期待できる領域でもあります。 自動車分野で進んできたデジタル化・高度化の流れは、トラックにも広がりつつあります。今回の展示会を通じて、トラックも「走るだけの存在」から「データを活用するプラットフォーム」へと変化していく過程にあるのではないかと感じました。
5 19
2026
「PayPay上場後初の決算発表、決済・金融の両輪での成長を継続」
2026年5月7日、PayPayは2026年3月期(FY2025)の決算発表を行った。同社は2026年3月に米NASDAQ市場へ上場しており、今回が上場後初の通期決算発表となる。 https://ir.paypay.ne.jp/jp/   2026年3月期の営業収益は3,807億円(前期比27%増)、調整後EBITDA(利払い/税引き/減価償却前の利益)は1,111億円(同89%増)となった。営業収益のうち、59%を決済手数料等、41%を金融+決済金利が占める構成となっており、両者ともに対前年25%増を超える高成長を実現している。   同社の決済セグメントにおいては、GMV(決済取扱高)が19兆円に達し、内訳としてはPayPay残高が10.8兆円、PayPayクレジットが4.6兆円、PayPayカードが3.5兆円となった。GMVの堅調な拡大に加え、決済手数料率の高いオンライン決済の構成比の増加や、PayPayカードの金融関連残高の増加に伴う金利収入の拡大もあり、セグメント全体で成長基調を継続している。 金融サービスセグメントにおいても、PayPay銀行の預金口座数が1,000万口座を超え、PayPay証券の口座数も173万口座(前年同期比36万口座増)に拡大するなど成長を続けており、金融関連収益の成長率は決済関連収益を上回った。   上記の通り、同社は収益基盤の多様化を進めており、今後も祖業である決済と、新たな柱である金融の両輪での成長を目指している。その第一歩として、PayPay銀行がPayPay加盟店向けのレンディングサービスの本格提供を開始した。同サービスでは膨大な決済データに基づく独自の与信モデルを通じ、必要な資金の即自貸出を実現可能であり、PayPayとしてはこのサービスをデータドリブンなプロダクトの象徴と位置づけている。この一例に限らず、決済・銀行・証券などあらゆる領域でサービスの再定義に取り組んでいく方針である。   近年は、キャッシュレス決済サービス市場の参入事業者各社ともに、決済を起点として銀行・投資・保険といった金融サービスを総合的に提供する取組みに注力している。2025年10月にNTTドコモが住信SBIネット銀行を連結子会社化(2026年8月には「ドコモSMTBネット銀行」へ商号変更を予定)したことで、国内の主要なコード決済事業者のすべてがグループ内に銀行を保有する形となった。その中で、PayPayの好調を示した今回の決算発表の通り、国内のキャッシュレス市場においては決済という「点」に留まらず、多様な金融サービスを含めた「面」での争いの様相がますます強まっていくと見込む。

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2026
2026 AI-DV(AI定義車両)市場の実態と展望 ~SDV/車載ソフト市場の構造大変革、産業OS・都市OS化を目指す未来~
本レポートは従来、『車載用ソフトウェア市場の実態と展望 vol.2 OEM、Tier.1、2編』と題して継続してきたレポートの最新版である。従来の車載ソフトウェア市場の動向を押さえるとともに、2028年以降、クラウドベンダーの存在感が高まってきた際に、車載ソフトウェア市場にどのような影響を与えるのか、OEMやTier.1、2に加えて、クラウドベンダー等との意見交換を通じて、シナリオを検討、2035年までの方向性を提示していく。 特にCASEからSDVへと移り変わるなか、AIエージェントを筆頭にAIを積極的に取入れていく動きが勃興、まだ定義はかなり曖昧ではあるものの、「AI-DV」との言葉が出始めており、タイトルの変更を行った。本レポートでは、OEMおよびサプライヤーの視点から制御系や車載IT系、SDV、今後勃興が想定されるAI-DVの構成比がどのように移り変わっていくのか、また実際のアーキテクチャの変遷を含め、以下4点について明らかしていく。 (1)車載ソフトウェア市場の市場規模 (2)車載ソフトウェア市場における制御系/車載IT 系/SDV/AIDV 別シェア (3)車載ソフトウェア市場における参入企業別シェア (4)車載ソフトウェアに関するアーキテクチャ(2018年/2025年/2028年/2030年)

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