矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

Daily column

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2026
GPUだけでは足りない、NVIDIAがGTCで光通信に投資した理由
今年3月16日に開催されたNVIDIAのGTC発表では、GPU性能競争そのものよりも、AIデータセンター全体をどう設計し運用するかという議論が浮上した。 https://nvidianews.nvidia.com/   NVIDIAは今回の発表で推論の拡大と、 ヴェラ(Vera)CPU、ファインマン(Feynman)プラットフォーム などシステム単位の戦略を併せて打ち出し、チップ供給者の立場からAIインフラ設計者へという移行がより鮮明になったことを示した。その流れには以下のような背景があるとされる。   「AIの5段ケーキ」の底が揺れている :AIサービスをケーキに例えると、最上層から<アプリケーション⇒モデル⇒推論エンジン⇒サーバー⇒チップと接続網(最下層)>となる。これまでは、主に上層での競争が激しかった。しかしデータの往来が急増するにつれ、ボトルネックはチップ内部ではなく、チップ間、サーバー間、ラック間、つまり底で大きくなっている。ヴェラCPUはまさにこの地点、GPUと接続網の間でデータの流れを調整する役割を担う。これにより、CPUとネットワーク、電力効率が再び核心として浮上した。   「光」へ向かう理由は電力だけではない :ここで光通信が重要になる。NVIDIAは3月初旬、 Coherent社・Lumentum社 と同時に戦略的パートナーシップを発表した。Coherentはシリコンフォトニクス、Lumentumはレーザー部品を供給する米国の光技術企業であり、NVIDIAは両社にそれぞれ20億ドルずつ計40億ドルを投資し、レーザー・光ネットワーク製品に対する数十億ドル規模の複数年契約まで締結した。光通信ベースの接続は電力効率にとどまらず、従来比でエネルギー消費を70%以上削減しながら、信号完全性とネットワーク復元力、導入速度の面でも利点を持つためである。   これは国内でNTTグループが推進するIOWN構想の中心軸であるAPNと類似した方向性を共有している。同グループはAPNを通じて光技術をデバイスからネットワークまで適用し、大容量・低遅延・低電力伝送を目指すと説明している。AIインフラのボトルネックが演算そのものよりデータ移動と電力効率へと移行するなか、「光」は通信網の外ではなくデータセンター内部でも核心技術として浮上している。これを踏まえると、今回のGTCの核心はより強力なGPUだけでなく、そのGPUをつなぐ接続構造の変化にもあると言えるだろう。この転換が加速するほど、光通信市場の構造的な成長可能性も高まることが期待される。
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2026
MUFG·NTT、金融システム向けIOWN APN実証結果を公開
金融システムインフラの中心的な課題の一つが、災害や障害発生時におけるサービス継続性の確保といえる。これに対応するため、銀行は複数の地域にデータセンターを分散させて運用するが、センター間の距離が広がるにつれ、リアルタイムでのデータ同期が技術的に困難になるという制約が生じる。このため金融インフラは事実上、近距離分散にとどまってきており、広域分散構成は性能上の問題から現実的な選択肢になり得なかったとみられる。この制約は以前から金融業界で認識されてきた。   三菱UFJ銀行、NTTデータグループ、NTT西日本の3社は、この制約に対する技術的な解法として、IOWN APN(All-Photonics Network)の金融システムへの適用可能性を検証した。3社はNTT主導のグローバルコンソーシアムであるIOWN GF(Global Forum)の金融ユースケースプロジェクトの一環として、実際のデータセンター環境を想定したPoCを実施し、その結果を2025年12月にホワイトペーパーとして公開した。   当PoCは単発の実験ではなく、2024年7月よりIOWN GFで金融ユースケースと要求性能を定義し、2025年2月にはその実装に向けたアーキテクチャと検証基準を整理していた。その上で実際にシステムを構成し性能を計測した段階にあたり、概念から設計、検証へと続く流れが今回の発表をもって完結している。また、実証の前面に立ったのがMUFGである点は、この取り組みが技術検証の域を超え、金融インフラの需要側における実質的な検討へと移行しつつある可能性を示唆している。   https://iowngf.org/inter-dc-vm-migration-and-long-distance-db-replication-for-financial-industry/
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2026
災害と通信断絶から見える衛星インターネット②:スターリンク
衛星インターネットは災害や戦争などで地上通信網が途絶した際の代替接続手段として注目されてきた。こうした流れの中で、低軌道衛星通信市場を急速に拡大しているサービスがStarlinkである。米SpaceX社は現在、一般向けのStarlink、企業向けのStarlink Business、軍・政府向けのStarshieldなどの形で衛星通信事業を展開している。   今日、多くの国は国家安全保障や公共秩序を理由に、デジタル空間を一定範囲で管理する制度や技術を整備している。しかし衛星インターネットはインフラ自体が宇宙空間に構築されるため、従来の地上通信網とは異なる形での管理や規制が求められる。この構造的特徴から、衛星ネットワークは政治的状況においても一つの変数として現れるようになった。   例えばイランでは、2000年代半ばから「ハラールネット(HalalNet)」と呼ばれる国内ネットワークの仕組みを整備し、外部インターネットとの統制を図ってきた。2026年初頭の反政府デモの際、政府は大規模なインターネット遮断を実施したため、Starlinkが緊急ネットワークを提供し衛星インターネットが通信遮断を回避する接続手段として利用されたことがある。しかし、当局は直ちにディープパケットインスペクション(DPI)、ネットワークフィルタリング、トラフィック制御など、中国の技術を活用した通信統制措置を実施したとみられる。   衛星インターネットが注目される理由は明確だ。災害や紛争によって地上通信網が機能しなくなった場合、迅速な通信復旧の手段となり得るためである。また、開発途上国や遠隔地域で通信インフラを確保し、情報アクセス格差の縮小に活用される可能性も指摘されている。一方で衛星通信は技術的に電波妨害(ジャミング)の対象となり得るほか、関連技術も進展していることから、紛争環境での通信安定性を巡る懸念もある。天体観測に影響を与えるとされる「スターリンク・トレイン」現象への批判や、スペースデブリ問題も課題として挙げられている。   それでも今後の衛星通信市場の成長余地は大きい。国際電気通信連合(ITU)によれば、世界ではまだ約26億人が通信インフラの届かない地域に置かれている(サハラ以南のアフリカ、南アジア、東南アジア、中南米の農村部など)。こうした空白が、今後の低軌道衛星通信市場の成長を支える背景となると考えられる。
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2026
災害時物流から見える衛星インターネット①:ソフトバンクのドローン実証
戦争や災害によって道路が寸断され、地域が外部から孤立する状況では、医薬品や食料と同じように外部とつながる通信が重要になる。こうした状況を想定した実証が国内で行われた。 https://www.softbank.jp/biz/news/other/20260306/   ソフトバンクは2025年12月、愛媛県伊方町でドローンを用いて医療物資と衛星インターネット機器を同時に輸送する実証実験を実施した。実験では医薬品輸送を想定した貨物に加え、米SpaceXが運用する衛星インターネットサービスStarlink用の小型アンテナ「Starlink Mini」もドローンで運搬。山間部を含む約3kmの航路で物資を届ける飛行が実運用に近い形で行われた。この実証は、医薬品などの支援物資と同様に通信機器も災害対応に不可欠な資源として扱い、孤立地域へ同時に届ける物流体制を検証することを目的としている。   医薬品などの物資と同様に通信手段を確保する必要性は、すでに戦場でも現実の課題となっている。2022年に始まったロシアによるウクライナ侵攻の初期、攻撃によってウクライナの一部地域の通信インフラが停止した際、Starlink端末が緊急投入された。地上通信網が不安定な状況の中で、衛星インターネットはウクライナ政府や軍、救援機関が外部と接続する通信手段の一つとして利用され、戦場ではドローン運用や指揮通信、現場映像の送信などにも活用されたとされる。通信インフラが途絶した状況において、衛星ネットワークが代替通信手段として機能し得ることを示した事例といえる。こうした状況を背景に、低軌道衛星を用いた通信インフラの重要性が改めて注目されている。

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2026
2026 AI-DV(AI定義車両)市場の実態と展望 ~SDV/車載ソフト市場の構造大変革、産業OS・都市OS化を目指す未来~
本レポートは従来、『車載用ソフトウェア市場の実態と展望 vol.2 OEM、Tier.1、2編』と題して継続してきたレポートの最新版である。従来の車載ソフトウェア市場の動向を押さえるとともに、2028年以降、クラウドベンダーの存在感が高まってきた際に、車載ソフトウェア市場にどのような影響を与えるのか、OEMやTier.1、2に加えて、クラウドベンダー等との意見交換を通じて、シナリオを検討、2035年までの方向性を提示していく。 特にCASEからSDVへと移り変わるなか、AIエージェントを筆頭にAIを積極的に取入れていく動きが勃興、まだ定義はかなり曖昧ではあるものの、「AI-DV」との言葉が出始めており、タイトルの変更を行った。本レポートでは、OEMおよびサプライヤーの視点から制御系や車載IT系、SDV、今後勃興が想定されるAI-DVの構成比がどのように移り変わっていくのか、また実際のアーキテクチャの変遷を含め、以下4点について明らかしていく。 (1)車載ソフトウェア市場の市場規模 (2)車載ソフトウェア市場における制御系/車載IT 系/SDV/AIDV 別シェア (3)車載ソフトウェア市場における参入企業別シェア (4)車載ソフトウェアに関するアーキテクチャ(2018年/2025年/2028年/2030年)

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