矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

Daily column

7 16
2026
「保険業界に広がるサイバーリスク」
アフラック生命保険は2026年6月30日に、自社の顧客向けシステムへの不正アクセスにより、顧客情報が漏えいしたことを公表しました。その後の調査により、7月13日時点で約440万人の顧客情報が漏えいしたことを明らかにしています。 保険会社に対するサイバー攻撃は今回が初めてではありません。2025年には損害保険ジャパンも不正アクセスの被害を公表しており、約1,750万件の情報が漏えいした可能性があると発表しています。   個人情報の漏えいは保険業界に限らず今に始まったことではありません。しかし、保険会社が保有する情報には氏名や住所などの基本情報に加え、保険契約の内容や保険金・給付金の請求に関する情報、生命保険会社であれば健康状態や病歴などのセンシティブな情報も含まれます。 また、保険会社は膨大な契約者情報を保有しているため、ひとたび不正アクセスが発生すると被害規模も大きくなりやすい特徴があります。今回のアフラックや損害保険ジャパンの事案は、その影響の大きさを改めて示した事例といえるでしょう。   さらに近年は、生成AIの発展に伴い、サイバー攻撃の高度化も懸念されています。攻撃者がAIを活用することで、不正メールやフィッシングサイトの精度向上が進み、従来以上に巧妙な攻撃が可能になるかもしれず、企業側には、これまで以上に高度なセキュリティ対策が求められています。 保険業界においては、保険会社だけが対策を講じればよいわけではありません。保険代理店や業務委託先も含めた対応が必要となります。実際、2025年には保険金請求に関する調査業務を手掛ける審調社や、保険代理店大手の保険見直し本舗グループなどにおいてランサムウェアの被害が発生しています。   加えて今回のアフラックの事案で気になったのは、不正アクセスから発覚までに一定の時間を要していた点です。アフラックの公表によれば、不正アクセスが最初に発生したのは6月10日であり、発見されたのは6月25日でした。結果として約2週間にわたり情報が閲覧可能な状態にあったことになります。 サイバー攻撃そのものを完全に防ぐことは、今後さらに難しくなっていくと考えられます。一方で、今回の事案は「防ぐこと」だけでなく、「いかに早く気付くか」の重要性も示したように感じます。保険会社は機微性の高い情報を大量に保有しているだけに、侵入を防ぐための対策に加え、異常を早期に検知し、被害の拡大を最小限に抑える体制づくりがこれまで以上に重要になっていくのではないでしょうか。
7 14
2026
「Paidyが後払い決済サービス協会に加盟、後払い決済はインフラとなれるか」
日本後払い決済サービス協会は、2026年5月28日付でPaidy合同会社が同協会の正会員として加盟したことを発表した。 https://j-bnpla.jp/news_20260529/   日本国内における後払い決済サービスに関しては、2025年7月に国民生活センターから消費者トラブルについての注意喚起がされるなど、市場の健全化・安定化やサービスに対するイメージの向上が業界全体の課題と考えられている。その中で同協会は、関係省庁との意見交換などを通じて、改善に向けた取組みを続けてきた。   後払い決済サービス「ペイディ」を提供しているPaidyは、国内後払い決済市場におけるリーディングカンパニーであり、同社が協会の活動に加わることで、主要プレイヤー間でのルール形成や消費者保護に向けた議論の実効性が高まることが期待される。 具体的には、Paidyの加盟により、同社が持つ加盟店管理、与信、消費者体験などに関するノウハウの共有が可能になり、業界全体の実務水準の底上げにつながると考えられる。また、有力事業者が協会に集まることで、規制対応や運用ルールの整備において、個社対応ではなく業界としての意見発信ができるようになり、行政・関係省庁との対話力の向上にもつながり得る。   一方、加盟はゴールではなく、今後は実効性が問われる。成長を続ける後払い決済サービス市場では、利便性の追求と過剰利用防止のバランスが重要であり、事業者には「責任ある成長」が求められている。Paidyの加盟は、業界が単なるサービス拡大フェーズから、社会的信頼を前提としたインフラ化フェーズへの移行を図っていることを示す象徴的な出来事といえるのではないだろうか。
7 13
2026
【発刊裏話】「2026年版 デジタルマーケティング市場の実態と展望~生成AI/AIエージェントが促すSaaSモデルの再編~」
2026年6月30日に「 2026年版 デジタルマーケティング市場の実態と展望~生成AI/AIエージェントが促すSaaSモデルの再編~ 」を発刊いたしました。 デジタルマーケティング市場を調査する中で、ユーザー企業がAIやAIエージェントの導入意欲を持ちながらも、足踏みしている声が聞こえてきました。新たなシステムやツールのPoCを進めるにあたり、経営層から厳密なROIの提示を求められ、プロジェクトが停滞する事例が見られます。 特にLLMを活用するものは、トークン消費量に応じた推論コストの変動や、モデルのアップデートに伴う仕様変更など、多くの不確定要素があります。そのため、従来のIT投資のように事前評価として正確なコストやリターンを算出することは難しくなっており、これが導入のスピード感を鈍らせる要因になっています。 デジタルマーケティング領域に限らず、生成AI技術の社会実装において重要なのは、初期段階における試行錯誤の許容です。不確実性の高いフェーズにおいて過度なROIの証明を課すのではなく、まずはアジャイルな検証を進めるための柔軟な投資判断基準への転換が、市場全体において求められています。

Main Contents Topics

6 30
2026
2026年版 デジタルマーケティング市場の実態と展望 ~生成AI/AIエージェントが促すSaaSモデルの再編~
デジタルマーケティング市場の最新動向、市場規模、将来予測を網羅した市場調査資料です。 デジタルマーケティング市場は2025年に4,201億円に達しました。矢野経済研究所は同市場が今後も成長を続け、2026年は4,789億円、2029年には6,795億円に達すると予測します。2025年から2029年の年平均気温(CAGR)は12.8%で推移すると見込みます。 顧客体験(CX)の向上に向けた取り組みが進展し、デジタルマーケティングツールは企業の競争優位性を支える基盤となっています。近年、デジタルマーケティング事業者は生成AI技術をツール取り込み、その機能を補完・拡張する動きが見られます。また市場では、自律的に稼働するAIエージェントが登場し、人手不足やスキル不足の解消が期待されています。一方で、AI技術の進展は、デジタルマーケティングツールの提供価値や競争軸に変化の兆しをもたらしています。 本資料では、CRM/SFA、MA、CDP市場を対象に、主要ベンダーの事業概況、ユーザー企業動向、AI技術への取り組み状況を調査します。あわせて、デジタルマーケティングの実務において生成AIやAIエージェントがどのように活用されているか、AI関連サービスベンダーの実態と動向を明らかにします。 全129頁。2026年6月30日、矢野経済研究所発刊。
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2026
2026 AI時代のサイバーセキュリティ市場の現状と展望
近年は、AIによる攻撃が急増しています。被害報告も増える中、経営層のサイバーセキュリティに対する意識は高くなっており、サイバーセキュリティ=「IT部門が担う技術的なもの」から「事業を継続するための経営基盤そのもの」という認識が広がり始めています。本調査レポートでは、各ベンダーの取組から広くサイバーセキュリティ市場について言及するとともに、サイバー保険、IT資産管理、アイデンティティ管理の各市場についても焦点をあてるとともに、実務者へのアンケート結果から得られたリアルな市場の温度感についても触れています。 本レポートは2026年5月に発刊したサイバーセキュリティに関するレポートで、市場規模にはハード、ソフト、サービスを含みます。 調査期間は2026年3月~5月、アンケートは2025年6月~9月に実施しています。 各市場の成長率は下記の通りです。 サイバーセキュリティ市場の2025年度の市場規模は前年度比9.2%増 アイデンティティ管理(IDaaS)市場の2025年度の市場規模は前年度比16.7%増 IT資産管理市場の2025年度の市場規模は前年度比11.7%増 サイバー保険市場の2030年度のCAGR(年平均成長率)は109.4% ※2025年度からのCAGR
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2026
2026 AI-DV(AI定義車両)市場の実態と展望 ~SDV/車載ソフト市場の構造大変革、産業OS・都市OS化を目指す未来~
国内AI-DV(SDV)の最新動向やアーキテクチャ、市場規模、将来予測を網羅した調査資料。 2018年/2025年/2028年/2030年におけるアーキテクチャの変遷と各年におけるプレイヤーの関係性の変化などを記載。今後のAI-DVに対応するうえで必要な情報を収録。 2025年の国内車載ソフトウェア市場は8,766億円を見込み、2030年には2兆円に達すると予測。 2026年3月に矢野経済研究所発行。 本レポートは従来、『車載用ソフトウェア市場の実態と展望 vol.2 OEM、Tier.1、2編』と題して継続してきたレポートの最新版である。従来の車載ソフトウェア市場の動向を押さえるとともに、2028年以降、クラウドベンダーの存在感が高まってきた際に、車載ソフトウェア市場にどのような影響を与えるのか、OEMやTier.1、2に加えて、クラウドベンダー等との意見交換を通じて、シナリオを検討、2035年までの方向性を提示していく。 特にCASEからSDVへと移り変わるなか、AIエージェントを筆頭にAIを積極的に取入れていく動きが勃興、まだ定義はかなり曖昧ではあるものの、「AI-DV」との言葉が出始めており、タイトルの変更を行った。本レポートでは、OEMおよびサプライヤーの視点から制御系や車載IT系、SDV、今後勃興が想定されるAI-DVの構成比がどのように移り変わっていくのか、また実際のアーキテクチャの変遷を含め、以下4点について明らかしていく。 (1)車載ソフトウェア市場の市場規模 (2)車載ソフトウェア市場における制御系/車載IT 系/SDV/AIDV 別シェア (3)車載ソフトウェア市場における参入企業別シェア (4)車載ソフトウェアに関するアーキテクチャ(2018年/2025年/2028年/2030年)

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