矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

Daily column

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2025
カーナビが登場したのはいつ頃だったのか? 
カーナビが登場したのはいつ頃だったのか?  記憶は定かではないが、1990年前後のバブル期には、既に存在していたような気がする。当時は20代の筆者は、見たことも使ったこともなかった。 当時のドライバーはマップル(道路地図)の携行は必須で、特に初めての場所に行くときには必ず事前確認を行い、大よその道順を覚えたものである(女性を乗せる場合には入念に道順をチェックする)。 それから月日が経ち、1990年代の後半には友達でもカーナビを装着する者も出てきた。ただ当時はCDやDVDを使ったものが多かったので、データが古いナビの場合、ナビ上で道なき道を進む状況も頻繁に見られた。 現在では、スマホ連携タイプなども含めて、当時よりも遥かに精度の高いナビ画面を見ることができる。実際、カーナビ専用機ではなく、スマホを立てかけてナビゲーションを行っている車も少なくない。 さてマップル地図はというと、本屋では今でも健在であった。店員さんに聞いてみると、今でもそこそこは売れるとの事。会社の人に聞いてみると、「突発的な渋滞時の抜け道探索」や「災害時の迂回ルート探索」などでは、依然として紙の地図が有用であるみたいである。 カーナビの登場で苦境にあると思われた紙の道路地図であるが、発災時・有事の利便性や冗長性は、デジタル機器を凌駕する状況が残っているのである。様々なビジネスシーンにおいて、依然として紙台帳などが残っているのも、同じような理由によるものであろうかと考えてしまう。 ( 早川 泰弘 )
11 18
2025
「JPXのAWS活用 金融業に求められるレジリエンスの獲得」
アマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWSジャパン)は2025年11月5日、日本の金融商品市場の国際競争力強化に向けた取り組みに関する説明会を開催した。米AWSからはグローバル金融事業統括責任者のスコット・マリンズ氏が来日し、グローバルでの先進事例を踏まえ、金融業のミッションクリティカルなシステムをAWS上で稼働させる信頼性や拡張性の高さを強調した。 また、日本取引所グループ(JPX)の常務執行役CIO田倉聡史氏が登壇し、AWSを活用した事業改革やAWSとの連携について説明した。JPXは長期ビジョン「Target2030」で、「グローバルな総合金融・情報プラットフォーム」になることを掲げ、現在はAIやクラウド等の技術による改革に取り組んでいる。その一環として、データ利活用基盤であるデータレイク「J-LAKE」をAWS上に整備し、株式売買システム「arrowhead」やデリバティブ売買システム「J-GATE」等の取引所が擁する多様なシステムのデータを統合する計画を進めるという。さらに、CCoE(Cloud Center of Excellence)の活動基盤として、JPXが定めるガバナンスやセキュリティ、監査などの統制要件を組み込んだ「J-WS(AWS共通基盤)」を構築した。これにより、各業務部門はJPXの統制に準拠した基盤を迅速に利用でき、本来注力すべき業務内容や機能の検討に集中することが可能となった。 JPXがAWSとの連携で特に重視したのは、レジリエンスと説明責任の確保である。金融市場インフラとして、万一インシデントが発生した際には、金融庁や市場利用者に対して詳細な事象報告が求められる。しかし、ブラックボックスとなりがちなクラウドでは、開示可能な情報とJPXが必要とする情報の間にギャップが存在した。そこで両社は情報開示の範囲や要件について協議を重ね、サポートレベルの規定や米国本社とのコンセンサスを得る等、レジリエンス・説明責任の確保に取り組んだ。その結果、JPXはミッションクリティカルシステムの一つであるTDnetをAWS上で構築する道筋が立ち、2027年度にはフルクラウドでの稼働を予定するに至った。今後も、J-LAKEに広範なデータを集約して社内外のデータ利活用を促進していくとしている。   今回のAWSとJPXの取り組みは、金融インフラに求められる厳しい要件と向き合い、クラウドがその信頼性に応えられることを改めて証明したものと言える。金融業界は規制対応や新規参入など環境変化が激しく、既存のシステム維持にIT投資を費やすだけでは競争力を失ってしまう。そのため、最新技術を迅速かつ柔軟に活用する土台としてクラウドは不可欠である。今後の金融業界でプレゼンスを発揮するためには、ミッションクリティカル領域でのクラウド活用に伴う課題と正面から向き合う覚悟が求められる。( 宮村 優作 )
11 17
2025
【今週の"ひらめき"視点】COP30スタート。パリ協定から10年、多国間主義への信頼回復が急務
当社代表が最新のニュースを題材に時代の本質、変化の予兆に切り込みます。   11月10日、国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)がブラジルで開幕した。会期は21日まで、「産業革命前からの気温上昇を1.5度以内に抑える」との目標を採択したパリ協定(2015年、COP21)から10年、残念ながら各国の取り組みは遅れつつある。国連環境計画(UNEP)は「2024年、温室ガス排出量は2.3%増加した。今後、各国の公約が達成されたと仮定しても世界の気温は2.3℃から2.5℃上昇する」との見通しを発表した。 世界各地で異常気象が“災害化”しつつある中、国連のグテーレス事務総長も「危機が加速している」と警鐘を鳴らす。一方、「気候変動は史上最大の詐欺」などと公言してきたトランプ氏にとってパリ協定からの離脱は既定路線だ。「途上国の気候資金として2035年までに官民あわせて1.3兆ドルを拠出する」とのCOP29における合意の実現を米国抜きのシナリオで描くのは容易ではない。COPは先進国と途上国の立場のちがいが浮き彫りになりがちだ。それだけに資金拠出における先進国間での調整難航は取り組み全体の後退に直結する。 トランプ氏に煽られるようにSNSでは気候変動への疑義が溢れる。しかしながら、今、目の前で起こっている気温上昇は2万~10万年単位の周期で繰り返される気候変動の10倍の速さで進行しており(国立環境研究所)、間氷期から氷期への移行は日射量変動から計算される理論値より5万年以上先になるとされる(A. ガノポルスキー他)。「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)も20世紀後半からの急激な気温上昇は人間活動の関与なく説明できないと結論づけており、気候変動を地球本来のサイクルに戻すための行動に是非はあるまい。 環境問題は国家戦略としての産業政策を方向づける要件でもある。10月9日、中国EV大手「比亜迪」(BYD)はブラジルに建設した新たな工場の完工式典でブラジルが国策として進めるサトウキビを原料とするバイオエタノールを使ったPHEVの導入を発表、環境と経済への貢献をアピールする。日本も「COP30ジャパン・パビリオン」(環境省)を現地に設置、脱炭素や気候変動適応における日本企業の先進技術を発信する。健全な競争は歓迎だ。多国間主義への信頼が揺らぐ中、ローマ教皇レオ14世は「気候は共有財であり、利己主義を排し、お互いの未来世代に対する責任を」とメッセージした。各国の勇気ある譲歩と野心的な行動計画に期待したい。 今週の“ひらめき”視点 11.9 – 11.13 代表取締役社長 水越 孝

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