矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

レポートサマリー
2025.05.26

衛星データ活用サービス市場に関する調査を実施(2025年)

2030年度の衛星データ活用サービス市場規模を340億円と予測。民需での利用拡大や国策での宇宙関連ビジネス強化を背景に、市場は高伸長が継続する見通し。

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内の衛星データ活用サービス市場を調査し、関連市場規模、需要分野別の動向、将来展望などを明らかにした。ここでは、衛星データ活用サービス市場規模推移・予測について、公表する。

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【図表:衛星データ活用サービス国内市場規模推移・予測】

【グラフ:衛星データ活用サービス国内市場規模推移・予測】
  • 矢野経済研究所調べ
  • 注:衛星データ・衛星画像販売(光学衛星画像、SAR衛星画像など)、衛星データ活用ソリューションサービス(データ分析・解析サービスやコンサルティングサービスなど)などを対象として、事業者売上高ベースで算出した。
  • 注:2024年度は見込値、2025年度以降は予測値

 

衛星データ活用サービス市場の概況

従来、人工衛星から得られる画像や各種データは利用料(販売価格)がかなり高額であった上に、データ品質面や機能面での限界もあり、需要先は限定的であった。しかし、近年では衛星データ利用料の低廉化が進み、かつ収集データの多様化[光学衛星画像データ、SAR(合成開口レーダー)衛星データ、その他各種センサーデータなど]や、データ品質の向上(解像度の向上)なども進展したことから、従来の官公庁・自治体需要(以下、官需)だけでなく、様々な民間需要(以下、民需)の開拓が進んでいる。
衛星データ・画像の活用領域としては、行政の一般業務(土地測量/家屋異動判読、耕作放棄地確認など)に加えて、防災関連業務、社会インフラ監視、農林水産・畜産(圃場モニタリング業務など)、自然・地理/環境計測、金融(保険額算定支援、先物市場向けデータなど)、建設・土木(地盤変動監視、建設進捗管理、建機・重機の自動運転支援など)、物流(海運、陸運などでの位置情報・トラッキングデータなど)等のビジネス・業務支援用途などがある。

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衛星データ活用サービス市場の注目トピック

■AI活用の拡大に牽引され、民需が拡大する見通し
時系列的にみると、衛星データ活用ビジネスは2000年頃まではほぼ官需に依存していたが、2000年代に入ってからは徐々に民需が拡大している。ただ、現状ではまだ官需が牽引しており、2024年度の衛星データ活用サービス市場では、全体の9割弱が官需の見込みである。
今後も官需はマーケットの中心的な存在を占めるが、徐々に民需の伸び率が上回るようになり、2030年度の官需比率は8割ほどに低下すると予測する。

なお、生成AIを始めとしたAI活用シーンの広がりは、人工衛星から得られる画像や各種データ自体の価値を高める効果があり、結果として衛星データ活用ソリューションサービスの価値向上による衛星データ活用ビジネスの追い風となっている。
特に、民需向け衛星データ活用では、画像やデータと連動したAI活用での期待が大きい。例えば、社会インフラ監視において衛星画像による劣化診断が可能になれば、従来の目視点検による点検モデルを変えるソリューションとなる。これにより、目視点検といった人手による点検から、衛星画像解析点検による効率化の実現が期待される。

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衛星データ活用サービス市場の将来展望

2023年度の衛星データ活用サービス国内市場(事業者売上高ベース)は、前年度比13.0%増の182億円となった。2023年度はコロナ禍によるプロジェクトの保留・見合わせが一段落し、予定していたプロジェクトの再稼働が追い風となり、主要ベンダーにおける関連売上高は好調であった。併せて需要家サイドでの人手不足の影響や業務効率化に向けた取り組みが進展し、衛星データ活用サービスが採用されている。
2024年度は、有力宇宙ベンチャーが好調であった上に、大手ITベンダーの衛星データ活用ソリューションの取り組みも堅調に推移する見込みである。さらにJAXA戦略宇宙基金に牽引される形で、周辺領域における衛星データ活用に関わるPoCが進展したこともあり、市場は引き続き高伸長を継続し、2024年度の衛星データ活用サービス国内市場は同11.0%増の202億円を見込む。

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参考:このレポートに掲載されている主なデータ一覧

  • 衛星データ活用サービス事業者の位置づけ
  • 日本における宇宙政策の推進体制
  • 宇宙活動法の概要
  • リモセン法の概要
  • 衛星種類/代表的な軌道
  • 高度別での人工衛星の種類
  • 人工衛星打ち上げ件数
  • 人工衛星の運用数
  • 主な衛星データ活用サービスベンダー
  • 衛星データ活用サービス市場規模推移(2022~2030年度予測)
  • 需要分野別の内訳(2022~2030年度予測)
  • 用途別・業務別の衛星データ活用ビジネス(2023年度)
  • 衛星データ活用サービスでの問題点・課題
  • 各社で活用する人工衛星の分類(自社/他社)
  • 衛星データ活用サービスの概要
  • 衛星データ活用サービスでの需要先
  • 衛星データ活用サービス関連での事業目標
  • 金融・保険での衛星データ活用の現状
  • 金融・保険での衛星データ活用の見通し(~2030年後)
  • 日本付近で発生した主な被害地震
  • 地震保険による保険金支払額 (保険金支払額順)
  • 主要事業者の保険分野における衛星データ活用の取り組み
  • ドローン活用サービス一覧
  • ドローンによる切羽自動監視システムの概要
  • インフラ遠隔自動点検システムの概要
  • Smart Constructionの活用イメージ
  • ドローン画像と衛星画像の類推適用解析による森林資源量解析
  • Agri Field Managerでの圃場管理のイメージ
  • UTMに必要な機能のイメージ
  • ドローンリモート技術のイメージ
  • マイクロ波観測による水情報の把握
  • 被災現場での衛星データ活用事例
  • 中小企業イノベーション創出推進事業での衛星データ活用事例
  • 自治体向け防災・減災支援システム「防災ダッシュボード」
  • 人工衛星画像を活用した水道管漏水調査の概要
  • ユーティリス社「漏水検知システム」
  • 水管橋の異常変位検知
  • 合成開口レーダによる地盤沈下の計測
  • 物流事業者向け第三者位置認証サービスのイメージ
  • NEXT Logistics Japanの取り組み
  • 物流分野での衛星活用のユースケース
  • 嬬恋村でのキャベツの収穫予想事例
  • 衛星データを活用したコーヒー栽培の高度化
  • 衛星画像データを活用した市役所業務の効率化
  • 衛星データを活用した建物全損認定
  • 鉄鉱石在庫量推定サービスのイメージ
  • オイル備蓄量推定サービスのイメージ
  • AW3D(3D地図データ)のイメージ
  • AI開発サービスの概要
  • 衛星データによる不法投棄監視のイメージ
  • 衛星データを活用した農地の現地確認効率化システム
  • みずほネイチャーポジティブ・デザイン
  • SAR衛星データを活用した土砂移動量の推定事例
  • JAXAの衛星データ活用事例
  • 環境リモートセンシング研究センターの取り組み
  • 衛星データ活用の蓋然性が高い分野・領域
  • 株式会社NTTデータ
  • 株式会社QPS研究所
  • 株式会社Ridge-i
  • 株式会社Synspective
  • 株式会社Tellus(テルース)
  • 株式会社アクセルスペース
  • 宇宙サービスイノベーションラボ事業協同組合
  • エルスピーナヴェインズ株式会社
  • 株式会社スペースシフト
  • 株式会社パスコ

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関連リンク

衛星データ活用がもたらす損害保険業務の革新 ―自然災害対応の効率化と高度化

■デイリーコラム
【発刊裏話】2025 衛星データ活用ビジネスの実態と展望 ~分野別/用途別の衛星データ活用実態の徹底分析~
【アナリスト便り】「2025衛星データ活用ビジネスの実態と展望~分野別/用途別の衛星データ活用実態の徹底分析~」を発刊

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  • 注目セグメント別の動向
    • 衛星データ活用の民間セクターへの波及について①<気象情報サービスの成功>
    • 衛星データ活用の民間セクターへの波及について②<保険業界(損保業界)での迅速な保険金支払いでの利活用> ​
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調査要綱

調査対象:宇宙関連事業者(衛星データ・衛星画像販売、衛星データ活用ソリューションサービス、衛星開発・製造・運用など)、ITベンダー、測量会社など
調査期間:2024年12月~2025年4月
調査方法:当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話調査、ならびに文献調査併用

※衛星データ活用サービス市場とは:衛星データ活用ビジネスには、自社運用する衛星のデータ・画像を販売したり、外部購入している衛星データ・画像を販売する「衛星データ・衛星画像販売」と、衛星データ・画像を基にした分析・解析サービスやコンサルティングサービスなどを提供する「衛星データ活用ソリューションサービス」などがある。
衛星データ活用ビジネスの調査対象は以下の通り

  • 官公庁・自治体(一般業務:土地測量/家屋異動判読、耕作放棄地確認など)
  • 官公庁・自治体(防災関連業務)
  • 社会インフラ監視(道路、鉄道、エネルギー設備、港湾、空港等のモニタリング業務など)
  • 農林水産・畜産(圃場モニタリング業務など)
  • 自然・地理/環境計測
  • 金融(保険額算定支援、先物市場向けデータなど)
  • 建設・土木(地盤変動監視、建設進捗管理、建機・重機の自動運転支援など)
  • 物流(海運、陸運などでの位置情報・トラッキングデータなど)

本調査における?衛星データ活用サービス市場とは、衛星データ・衛星画像販売(光学衛星画像、SAR衛星画像など) 、衛星データ活用ソリューションサービスなどを対象として、事業者売上高ベースで算出した。

<市場に含まれる商品・サービス>
衛星データ・衛星画像販売、衛星データ活用ソリューションサービスなど

早川 泰弘(ハヤカワ ヤスヒロ) 主任研究員
産業調査/マーケティング業務は、「机上ではなく、現場を回ることで本当のニーズ、本当の情報、本当の回答」が見つかるとの信念のもと、関係者各位との緊密な関係構築に努めていきます。日々勉強と研鑽を積みながら、IT業界の発展に資する情報発信を目指していきます。

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