矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

レポートサマリー
2023.04.26

工場デジタル化市場に関する調査を実施(2023年)

2023年度の工場デジタル化市場規模は前年度比3.4%増。多くの国内工場でIoT活用が広がっている。今後はCPS/デジタルツインの動向に注目。

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越 孝)は、国内の工場デジタル化市場を調査し、製造現場におけるIoT活用実態やサービス化する製造業の動向、スマートファクトリー/デジタル工場やCPS/デジタルツインへの取り組みなどを明らかにした。ここでは、工場デジタル化市場規模の予測について、公表する。

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【図表:国内の工場デジタル化市場予測】

【図表:国内の工場デジタル化市場予測】
  • 矢野経済研究所調べ
  • 注:ユーザー企業の発注金額ベース
  • 注:2022年度は見込値、2023年度以降は予測値
  • 注:ハードウェア、ソフトウェア、プラットフォーム(クラウド)利用料、工事(電気設備・通信設備)、SI・コンサルティング、サービスサポート、保守メンテナンス、要員派遣などを含む。

 

工場デジタル化市場の概況

国内の工場では多くの業種・業態において、生産設備・機器の保全やライン稼働監視などで、IoT/クラウド、AIなどを使った収集データからの異常検知・故障監視、稼働監視/遠隔モニタリング、設備保全の高度化、省エネ用途/エネルギー使用量の見える化といった次世代型のメンテナンス導入が始まっている。さらには外観検査など検品や品質保証、高度な自動化/生産最適化、現場作業者の業務支援/研修・トレーニングといった部分でもIoT活用が広がっている。
背景には、近年、大型の製造装置・生産機械や高額な設備には初めから通信機能(IoT機能)が組み込まれ、業種・業態や企業規模にかかわらず、製造装置・生産機械やユーティリティ設備(電気設備、空調設備、給排水設備など)の稼働監視/遠隔モニタリングなどにIoTを活用する流れが広がりを見せていることがある。これらにより、製造現場ではさまざまなデジタル活用が起こっており、2022年度の国内の工場デジタル化市場規模(ユーザー企業の発注金額ベース)は前年度比101.7%の1兆7,040億円と見込む。

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工場デジタル化市場の注目トピック

■CPS/デジタルツインの動向
工場のデジタル化で今後注目されるのが、モノづくりと親和性の高いITテクノロジーであるCPS(Cyber-Physical System:サイバーフィジカルシステム)やデジタルツインである。 IoTの普及により、様々なデータが収集されてクラウド上に蓄積されることで、CPSやデジタルツインの実現性が促進されることになる。
現状では、多くの計測機器やセンサー類、FAカメラが製造ラインに設置され、様々なデータが収集されている。これらのデータがクラウドに溜まることで、よりCPS/デジタルツインの実現に則した体制につながることになる。CPS/デジタルツインを活用することで、フィジカル空間(実世界)のモニタリングや、その収集・蓄積データに基づいた高精度な、デジタル(サイバー)空間でのシミュレーションが可能になる。例えば、収集・蓄積されたフィジカル空間データから将来の故障や変化を予測したり、膨大なデータや事例の蓄積に基づき、顧客に対して異常原因を分析した結果から対処方法のフィードバックをするといった、通常のメンテナンスサービスとは異なるモノ・コト一体型サービスを提供できる。

また、CPSが実現されると、フィジカル空間とデジタル空間を融合した製品開発や製品改善につながり、業務が効率化され、開発時間が大幅に短縮される。他にも、蓄積されたデータがユーザー企業にとって競争の源泉になるため、競争力の向上につながる。さらに、製品の使い勝手を設計担当にフィードバックすることも、低コストで容易に出来るようになる。 今後は製品販売で収益を得るだけでなく、CPS/デジタルツインを活用したユーザー企業へのサービス提供により対価を得るビジネスモデルに転換する製造業も増えていく。

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工場デジタル化市場の将来展望

今後、国策となった「日の丸半導体」による国内工場新設や半導体生産能力の増強方針の他、急激な円安や経済安全保障、中国で事業を展開するチャイナリスクに対応した「製造業の国内回帰」が追い風となってくる。また、国内の設備投資計画は日銀短観によると強めとなっており、設備投資では製造装置・生産機械向けが主体となるものの、当然、工場向けIT/IoT投資にも波及すると考えられる。2023年度の工場デジタル化市場規模を、前年度比103.4%の1兆7,620億円に拡大すると予測する。

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参考:このレポートに掲載されている主なデータ一覧

  • IT/IoT活用の蓋然性が高い設備・機器
  • 「IT/IoT×製造」によるイノベーションイメージ
  • 工場での基礎データ(2020年度)
  • 対象業種
  • 工場向けシステム投資額推移(2020~2027年度予測)
  • 業種分類別のシステム投資額推移(2020~2027年度予測)
  • 「サービス化する製造業」でのビジネスモデルイメージ
  • 工場IT化/デジタル化での問題点・課題
  • 主要企業の製造/工場向けビジネス

1.食料品製造業(従業者4人以上の事業所)

  • 従業員規模別の内訳
  • 食料品製造業における主要業種・業態
  • 主な業種における有力プレイヤー
  • 食料品製造業での工場デジタル化投資額推移(2020~2027年度予測)
2.飲料・たばこ・飼料製造業(従業者4人以上の事業所)
  • 従業員規模別の内訳
  • 飲料・たばこ・飼料製造業における主要業種・業態
  • 主な業種における有力プレイヤー
  • 飲料・たばこ・飼料製造業での工場デジタル化投資額推移(2020~2027年度予測)
3.繊維工業(従業者4人以上の事業所)
  • 従業員規模別の内訳
  • 繊維工業における主要業種・業態
  • 主な業種における有力プレイヤー
  • 繊維工業での工場デジタル化投資額推移(2020~2027年度予測)
4.パルプ・紙・紙加工品製造業(従業者4人以上の事業所)
  • 従業員規模別の内訳
  • パルプ・紙・紙加工品製造業における主要業種・業態
  • 主な業種における有力プレイヤー
  • パルプ・紙・紙加工品製造での工場デジタル化投資額推移(2020~2027年度予測)
5.印刷・同関連業(従業者4人以上の事業所)
  • 従業員規模別の内訳
  • 印刷・同関連業における主要業種・業態
  • 主な業種における有力プレイヤー
  • 印刷・同関連業での工場デジタル化投資額推移(2020~2027年度予測)
6.化学工業(従業者4人以上の事業所)
  • 従業員規模別の内訳
  • 化学工業における主要業種・業態
  • 主な業種における有力プレイヤー
  • 化学工業での工場デジタル化投資額推移(2020~2027年度予測)
7.石油製品・石炭製品製造業(従業者4人以上の事業所)
  • 従業員規模別の内訳
  • 石油製品・石炭製品製造業における主要業種・業態
  • 主な業種における有力プレイヤー
  • 石油製品・石炭製品製造業での工場デジタル化投資額推移(2020~2027年度予測)
8.プラスチック製品製造業(従業者4人以上の事業所)
  • 従業員規模別の内訳
  • プラスチック製品製造業における主要業種・業態
  • 主な業種における有力プレイヤー
  • プラスチック製品製造業での工場デジタル化投資額推移(2020~2027年度予測)
9.ゴム製品製造業(従業者4人以上の事業所)
  • 従業員規模別の内訳
  • ゴム製品製造業における主要業種・業態
  • 主な業種における有力プレイヤー
  • ゴム製品製造業での工場デジタル化投資額推移(2020~2027年度予測)
10.窯業・土石製品製造業(従業者4人以上の事業所)
  • 従業員規模別の内訳
  • 窯業・土石製品製造業における主要業種・業態
  • 主な業種における有力プレイヤー
  • 窯業・土石製品製造業での工場デジタル化投資額推移(2020~2027年度予測)
11.鉄鋼業(従業者4人以上の事業所)
  • 従業員規模別の内訳
  • 鉄鋼業における主要業種・業態
  • 主な業種における有力プレイヤー
  • 鉄鋼業での工場デジタル化投資額推移(2020~2027年度予測)
12.非鉄金属製造業(従業者4人以上の事業所)
  • 従業員規模別の内訳
  • 非鉄金属製造業における主要業種・業態
  • 主な業種における有力プレイヤー
  • 非鉄金属製造業での工場デジタル化投資額推移(2020~2027年度予測)
13.金属製品製造業(従業者4人以上の事業所)
  • 従業員規模別の内訳
  • 金属製品製造業における主要業種・業態
  • 主な業種における有力プレイヤー
  • 金属製品製造業での工場デジタル化投資額推移(2020~2027年度予測)
14.はん用機械器具製造業(従業者4人以上の事業所)
  • 従業員規模別の内訳
  • はん用機械器具製造業における主要業種・業態
  • 主な業種における有力プレイヤー
  • はん用機械器具製造業での工場デジタル化投資額推移(2020~2027年度予測)
15.生産用機械器具製造業(従業者4人以上の事業所)
  • 従業員規模別の内訳
  • 生産用機械器具製造業における主要業種・業態
  • 主な業種における有力プレイヤー
  • 生産用機械器具製造業での工場デジタル化投資額推移(2020~2027年度予測)
16.業務用機械器具製造業(従業者4人以上の事業所)
  • 従業員規模別の内訳
  • 業務用機械器具製造業における主要業種・業態
  • 主な業種における有力プレイヤー
  • 業務用機械器具製造業での工場デジタル化投資額推移(2020~2027年度予測)
17.電子部品・デバイス・電子回路製造業(従業者4人以上の事業所)
  • 従業員規模別の内訳
  • 電子部品・デバイス・電子回路製造業における主要業種・業態
  • 主な業種における有力プレイヤー
  • 電子部品・デバイス・電子回路製造業での工場デジタル化投資額推移(2020~2027年度予測)
18.電気機械器具製造業(従業者4人以上の事業所)
  • 従業員規模別の内訳
  • 電気機械器具製造業における主要業種・業態
  • 主な業種における有力プレイヤー
  • 電気機械器具製造業での工場デジタル化投資額推移(2020~2027年度予測)
19.情報通信機械器具製造業(従業者4人以上の事業所)
  • 従業員規模別の内訳
  • 情報通信機械器具製造業における主要業種・業態
  • 主な業種における有力プレイヤー
  • 情報通信機械器具製造業の工場デジタル化投資額推移(2020~2027年度予測)
20.輸送用機械器具製造業(従業者4人以上の事業所)
  • 従業員規模別の内訳
  • 輸送用機械器具製造業における主要業種・業態
  • 主な業種における有力プレイヤー
  • 輸送用機械器具製造業の工場デジタル化投資額推移(2020~2027年度予測)

 

  • 株式会社ABEJA
  • PTCジャパン株式会社
  • 株式会社YE DIGITAL(旧:安川情報システム)
  • 株式会社アマダ
  • 株式会社インターネットイニシアティブ
  • エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社
  • オムロン株式会社
  • クオリカ株式会社
  • ケーザー・コンプレッサー株式会社
  • 株式会社小松製作所(コマツ)
  • 株式会社シーイーシー
  • ダイキン工業株式会社
  • 株式会社デンソーウェーブ
  • 東芝デジタルソリューションズ株式会社
  • 日本電気株式会社
  • パナソニック産機システムズ株式会社
  • 株式会社日立産機システム
  • 株式会社日立製作所
  • ファナック株式会社
  • 富士通株式会社
  • マクニカホールディングス株式会社
  • 三井情報株式会社
  • 三菱電機株式会社
  • 横河電機株式会社

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関連リンク

■レポートサマリー
工場デジタル化市場に関する調査を実施(2021年)
IoT/M2M市場に関する調査を実施(2023年)
IoT関連市場への新規参入動向調査を実施(2022年)

■アナリストオピニオン
生産現場へのIoT導入で、製造業の業態変換が急速に進む!
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  • セグメント別の動向
    • 食料品製造業でのシステム化投資
    • 化学工業でのシステム化投資
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調査要綱

調査対象:ITベンダー・SIer、機器・装置メーカー、通信キャリア、ユーザー企業及び系列の情報システム子会社、アプリベンダーなど
調査期間:2022年12月~2023年3月
調査方法:当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話やアンケートによる調査、ならびに文献調査併用

※工場デジタル化市場とは:本調査における工場デジタル化市場とは、ハードウェア、ソフトウェア、プラットフォーム(クラウド)利用料、工事(電気設備・通信設備)、SI・コンサルティング、サービスサポート、保守メンテナンス、要員派遣などを対象として、ユーザー企業の発注金額ベースで算出した。言い換えると、ITベンダー・SIer、機器・装置メーカー、通信キャリア、系列の情報システム子会社のIT関連売上高と対比できる、ユーザー企業から外部へのキャッシュアウトフローである。
なお、ユーザー企業が機器・装置等を自社で調達し、内製でシステム対応する分は含まれない。

<市場に含まれる商品・サービス>
遠隔監視/モニタリングシステム、データ収集/IoTシステム、クラウド/IoTプラットフォーム、画像系/カメラソリューション、解析/AI、AR/VRソリューション、台帳ソリューション、CPS(Cyber-Physical System)/デジタルツインなど

関連マーケットレポート
早川 泰弘(ハヤカワ ヤスヒロ) 主任研究員
産業調査/マーケティング業務は、「机上ではなく、現場を回ることで本当のニーズ、本当の情報、本当の回答」が見つかるとの信念のもと、関係者各位との緊密な関係構築に努めていきます。日々勉強と研鑽を積みながら、IT業界の発展に資する情報発信を目指していきます。

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