矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

アナリストオピニオン
2025.04.25

電通総研が手掛けるCAEソリューションを通じた社会変革に向けた取組み

1.事業戦略

電通総研(旧・電通国際情報サービス)は、日本におけるCAEのパイオニアとして事業をスタートし、製造業に対する支援を手掛けてきた。近年は、CAEを含めたSIやコンサルティングに加えて、シンクタンク機能を拡充することにより、社会変革につながるような高度な企業の課題解決も支援していく方針を掲げている。
この方針の下、長年にわたり蓄積してきたCAEの技術やノウハウを強みとして、より多くの企業の課題解決を実現するため、デジタルマーケティングなどの顧客接点改革ソリューションの拡大も行い、新規開拓にもより一層注力していく考えである。

【図表:電通総研がめざす姿】

【図表:電通総研がめざす姿】

出所:電通総研ホームページより抜粋

2.取組み概要

(1)取組み概要
CAEの普及にあたっては、設計業務における活用がキーポイントになってきている。導入企業によって活用場面は異なるものの、設計者自身が解析を行うケースや、専任者がCAEを活用する場合でも設計者と連携した活用体制を構築するケースなどが増えてきている傾向にあると指摘する。
市場の変化に対応すべく、設計業務においてCAEを有効に活用できるように、上流から下流(設計工程における製品の企画から構想設計、詳細設計、実験評価)までのワンストップ支援を通じて、より多くの企業に向けてCAEソリューションの拡充に取組んでいる。特に実験評価については、子会社であるエステック社が実験と解析に係るコンサルティングを手掛けており、同社と連携したプロジェクトも多く存在する。

【図表:CAE・シミュレーションのソリューション】

【図表:CAE・シミュレーションのソリューション

出所:電通総研ホームページより抜粋

(2)AIに対する対応
CAE業界ではAIの活用もトレンドとなっている。CAEベンダーは3次元CAEの結果をROM化するAIツールを提供し、設計現場での利用が拡がっているが、技術進化のスピードが非常に速いため、先端技術のメリットを享受することは難しい。そこで電通総研はAI技術の研究から製品開発、コンサルティングサービスなどを手掛ける組織「AIトランスフォーメーションセンター」を通じて、ベンダーが提供するCAEソリューションではカバーできない先端のAI技術を活用した支援なども行っている。
同社ではプリ/ポストプロセッサに関わる領域として、プリプロセッサではメッシュの自動化のほか、ポストプロセッサにおいて類似の解析結果に対するAI判定なども支援している。また、形状生成AIで設計形状を作成し、サロゲートモデルで評価を繰り返すことにより、最適設計の自動化を行うGenerative Designソリューションの開発・展開にも力を入れている。

(3)プラットフォームに関する取組み
電通総研では、「プラットフォーム」事業として、クラウドやSPDM(Simulation Process and Data Management)に関わる支援も手掛けている。このうち、クラウドについてはクラウドHPCサービス「Rescale Platform」の提供に加えて、顧客の要望に併せてパブリッククラウドに関わる取組みなども進めている。
また、SPDM領域において、設計現場での要望を取り入れた「i-SPiDM」を自社開発し、製品設計の中でのCAE業務プロセスおよびデータ管理を支援している。

(4)サポート支援
導入サポートについて、同社独自のCAEソリューションに係る導入教育、立上げ支援、解析技術構築のほか、自動化や専用ツールの開発、提供を含めて幅広いサポートを行っている。また、保守サポートとして、Webや電話でのサポートを通じて使い方などのサポートに加えて、解決に至らない場合にはサポートの範囲内で遠隔操作を含め代行するなどのサポートも実施している。
加えて、カスタマーサクセス活動として、顧客の困りごとなどニーズの発掘に向けたヒアリングやCAEに係る最新情報の提供を含めた取組みを実施している。

3.導入業界における活用傾向

自動車業界でのCAEに対する活用ニーズは強く、自動化や最適化をはじめ先進的な取組み事例が多い傾向にある。このため自動車業界での先進技術を含めた活用事例を、航空業界や電機業界をはじめ幅広い業界に横展開する動きも積極化してきていると指摘する。
特に認証関連に対するニーズは増えてきており、航空業界ではCbA(Certification by Analysis:解析による認証)と呼ばれる取り組みが活性化してきており、CAEの重要性が一層増している。

4.今後の取組み

社会課題の解決に向けて、個々の企業課題を解決すべく、CAEをはじめとした各種ソリューションを通じて支援していく。そうしたなか、CAEをより多くのユーザーに広めるべく、使いやすく、かつ課題解決に応じて効果的なソリューションを提供していく考えである。
特に設計業務においては、設計期間の短縮に寄与すべく、プリ/ポストプロセッサ部分の自動化やHPCなども活用したソルバの高速化のほか、リアルタイムに解析を行う、AIによるサロゲートモデルの自動化などを通じて、期間短縮を進めていくとする。
また、設計業務における手戻りを回避すべく、品質の向上に向けて顧客が求める精度に寄与できるCAEソリューションやエステック社と連携したコンサルティングなども含めて取組んでいく構えである。

山口泰裕

関連リンク

■レポートサマリー
機械系CAE市場に関する調査を実施(2024年)
機械系CAE市場に関する調査を実施(2022年)
機械系CAE市場に関する調査を実施(2020年)

■アナリストオピニオン
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山口 泰裕(ヤマグチ ヤスヒロ) 主任研究員
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