アフィリエイトとは、成果報酬型の広告の一種で、ウェブサイトやブログの運営者(アフィリエイター)が広告を掲載し、訪問者がその広告を通じて商品やサービスを購入・登録することで報酬を得る仕組みである。
アフィリエイト市場は、2000年代初頭から成長を続け、特に2010年代以降に急速に普及した。その背景には、インターネットの普及、EC市場の拡大、個人メディアの台頭、広告技術の進化などがある。
まず、2000年代以降、インターネットの普及とEC市場の成長がアフィリエイト市場拡大の基盤を築いた。Amazonや楽天市場などのECサイトの発展に伴い、企業はオンライン広告を強化した。特に、スマートフォンの普及(2010年前後)が消費行動のオンラインシフトを加速させ、アフィリエイトの重要性が増した。
次に、ASP(アフィリエイトサービスプロバイダー)の発展も大きな要因である。2000年代後半からA8.netやバリューコマースなどのASPが成長し、広告主とアフィリエイターの橋渡しをする仕組みが確立した。これにより、個人でも容易にアフィリエイトに参入できる環境が整った。また、2010年代後半からは、SNSやYouTubeなど個人メディアの台頭が市場拡大を後押しした。ブログだけでなく、X(旧Twitter)、Instagram、TikTok、YouTubeなど多様なプラットフォームで商品を紹介する手法が広がり、インフルエンサーを活用したアフィリエイトマーケティングが一般化した。特に、YouTubeの収益化が進んだ2016年以降、動画を活用したアフィリエイトが急成長している。
さらに、広告の成果測定技術の進化もアフィリエイト市場の拡大に貢献した。従来のテレビ広告などに比べ、アフィリエイトは成果をリアルタイムで測定でき、費用対効果の高い広告手法として企業に採用されている。
2020年以降は、AIによるコンテンツ最適化やターゲティング技術の発達が進み、より精度の高いマーケティングが可能となった。加えて、在宅勤務や副業ブームも市場拡大を後押しした。特に2020年の新型コロナウイルスの影響でリモートワークが普及し、副業としてアフィリエイトに取り組む人が非常に増加した。これにより、新たなアフィリエイター層が生まれ、市場の成長を支えた。
2023年から2024年にかけては、悪質な事業者によるアフィリエイトへの不正行為に対する行政の取り締まりが強化され、業界全体の健全化が進展している。
今後も、AIやデータ活用の進展などにより、アフィリエイトはさらなる進化が期待されている。
2024年における主要ASPのAI活用の状況は、業務効率化や生産性向上を中心に進展している。社内業務においては、データ集計やレポート作成、営業リストの作成、調査業務、問い合わせ対応、海外向け広告の翻訳、システム開発の自動化、広告主とアフィリエイターとのマッチングの最適化などの分野でAIの活用が広がっており、人的コストの削減や、パフォーマンスの向上が実現されている。
また、一部ではより高度な活用として、広告配信ロジックの最適化やAI関連の外部パートナーとの提携によるメディア審査・広告審査、AIエージェントを活用した業務自動化プロジェクトの推進などに取り組んでいる事業者もある。
しかし、顧客向けAIプロダクトの実用化や収益化に向けては、技術的な課題が依然として残されており、引き続き研究開発が必要であるとの意見が多い。
業界全体では、メディア側におけるLP制作や記事作成などのクリエイティブ領域でAIの導入が加速している。しかし、AIによるコンテンツ制作には、クリエイティブな表現の精度など、まだ改善の余地があると指摘されている。
また、広告規制の順守がますます厳しく求められる中、景品表示法や薬事法、医療広告ガイドラインなどをAIに学習させることにより、記事の法律違反を判別する用途でAIの活用が広がる可能性もあると考えられる。
このようにAIの導入が進む中で、GoogleのAI対応がアフィリエイト市場に与える影響は大きいと考えられる。検索画面でのAI導入が進むと、アフィリエイトの露出先は減少していくと予想される。その結果、SEOを活用するメディアは縮小する可能性がある。
今後1~2年の間において、AI活用によるさらなる業務効率化や市場の変化が予想され、各社には柔軟な対応が求められている。
ASP業界においては、業務効率化や生産性向上、コンバージョン率の向上のため、AIの活用が広がっている。メディア側においては、記事作成などコンテンツ制作にAIの活用が非常に進んでいるとみられる。さらに、今後はAIが広告表記を分析し、景品表示法や薬機法などの法規制に違反する表現がないかを確認することで、法的なリスクを回避した情報発信が自動的にできる時代が到来することも考えられる。
AIが広がることによって、アフィリエイトがさらに評価される可能性がある。現段階ではAIで代替できない情報発信として、「体験」と「感想」がある。今後、ネット上にAIによるコンテンツ生成が普及していく中で、消費者への情報提供においては、アフィリエイターやインフルエンサーの体験に基づいた情報発信がより高い付加価値を持ち、注目されると考えられる。
2025年以降はAIの普及に伴い、体験や感想といった人間ならではの要素が重視され、アフィリエイトへの再評価と投資が本格化する可能性があると予想する。
(金貞民)
■レポートサマリー
●アフィリエイト市場に関する調査を実施(2025年)
●アフィリエイト市場に関する調査を実施(2024年)
●アフィリエイト市場に関する調査を実施(2022年)
●アフィリエイト市場に関する調査を実施(2021年)
●アフィリエイト市場に関する調査を実施(2020年)
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