矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

アナリストオピニオン
2020.07.01

“Withコロナ”で見えてきた個室型ワークブースの大いなる可能性

2020年に入り、新型コロナウイルス感染症への対応で多くのワーカーが在宅勤務を経験した。各種メディアでは「テレワーク」の単語が頻出したものの、在宅勤務はテレワークの中の1つの働き方であり、「在宅勤務=テレワーク」ではない。「情報通信技術(ICT)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方」(一般社団法人日本テレワーク協会)がテレワークであり、在宅勤務以外にもサテライトオフィス勤務やモバイルワークがある。

【図表:テレワークの三類型】

図表:テレワークの三類型

出所:一般社団法人テレワーク協会「テレワークとは」より矢野経済研究所作成

日本では、仕事を行う場といえばオフィス、というのが長らく一般的だったが、新型コロナウイルス感染症への対応で状況は大きく変わった。オフィス以外でも業務を遂行できることが明らかになったことで、ワーカーには多くの選択肢が生まれた。それと時期を同じくして、近年オフィスに近い環境を街中で提供する「個室型ワークブース」が各社から提供され始めている。本稿では、個室型ワークブースが“Withコロナ”の社会経済活動の中でどのように活用され、普及していくのか可能性を探る。

個室型ワークブースの特徴とは

個室型ワークブースは、オフィス空間に必要な快適性を備えた個人専用もしくは少人数用のワークスペースを指す。主要サービスには、「テレキューブ」(テレキューブサービス)や「STATION BOOTH」(JR東日本)、「CocoDesk」(富士ゼロックス)が挙げられる。

【図表:各社提供サービスの概要】

図表:各社提供サービスの概要

出所:各社の公開情報をもとに矢野経済研究所作成
※いずれも2020年6月末日現在の情報

上記の表を見ると、いずれのブースも机や椅子、電源、USBポートを備えており、PCなどを持込むことで業務を遂行できる環境になっている。STATION BOOTHとCocoDeskでは、モニターとWi-fiも整備。利用料金は、いずれのサービスも250円/15分(1名用)である。設置件数は、現段階では各サービスとも数十か所程度に留まっているものの、今後拡充していくとみられる。
 設置場所は、ワーカーが利用しやすい場所を想定して駅構内やオフィスビルのロビーなどが中心となっている。テレキューブは、ワーカーに加え一般利用も見込みショッピングモールなどへの設置も進めているようだ。

多様な利用シーンが期待できる個室型ワークブース

街中でオフィスに近い環境を享受できる個室型ワークブース。“Withコロナ”の中では、多様な活用方法が想定できる。ワーカーの利用に焦点を当て、4つの利用シーンを挙げる。

①営業活動時や出張時などの隙間時間での活用
サービス提供事業者が想定する主要な利用シーンである。カフェなどの代替手段として、セキュリティ面や集中しやすい環境などを訴求するものと考えられる。
加えて、“Withコロナ”の中では、感染症対策の観点から個室型ワークブースの利用が促進される可能性がある。不特定多数が同じ空間を共有するカフェなどとは異なり、個室型ワークブースは自分一人の空間となる。また、いずれもブース内に抗菌コーティングを施工しており、利用者間における感染症リスクも軽減されている。
さらに、営業活動や会議のオンライン化により、Web会議システムの活用が増加しているワーカーも多くいるだろう。個室型ワークブースを利用することで、対面と非対面を組み合わせた業務にも柔軟に対応できる。

②在宅勤務と組み合わせた活用
新型コロナウイルス感染症への対応で在宅勤務を実施したワーカーの中には、「同居する家族に気を遣う」「自宅では生産性を維持するのが難しい」などの課題をもった人もいるだろう。そこで、Web会議の際に1時間だけ利用するケースや、集中力を保つために昼食後の数時間だけ利用するケースなど、在宅勤務と組み合わせた個室型ワークブースの利用方法が考えられる。
ただ、現状では都心のオフィス街が設置場所の中心であり、在宅勤務と組み合わせて利用したくても自宅近くに個室型ワークブースがないケースも多いだろう。今後各社が設置場所を拡充していく中で、郊外方面に広がればこうした活用方法も期待できる。

③サテライトオフィスやシェアオフィスの代替手段としての活用
これまでサテライトオフィスやシェアオフィスを活用していたワーカーが、代替手段として個室型ワークブースを利用するケース。“Withコロナ”の中では、感染症対策として自分一人の空間となる個室型ワークブースに優位性がある。特に多数のワーカーが共同利用するシェアオフィスでは、ワーカーが個室型ワークブースに流れるケースが考えられる。

④社内会議室の代替手段としての活用
全員がオフィスにいることが当たり前ではない“Withコロナ”の中では、Web会議システムを活用した複数拠点間の打ち合わせや会議も多い。そうした中で、自席でも社内会議室でもない第3のミーティングスペースとして個室型ワークブースの利用が考えられる。各所でWeb会議システムの活用が広がり、社内会議室のリソースがひっ迫するケースがあるだろう。個室型ワークブースは都心のオフィス街を中心に設置されている。社内会議室が空いていない場合には、個室型ワークブースを利用することでスムーズに打ち合わせや会議が実施できる。

各社の今後の展開に期待

“Withコロナ”の状況下では、個室型ワークブースに多様な利用シーンがあることが見えてきた。新型コロナウイルス感染症を意識した生活は今後もしばらく続くと考えられ、その間に個室型ワークブースが広く普及する可能性は大いにある。そのためには、設置件数の拡大や設置場所のエリア選定など、サービス提供事業者側の更なる取り組みが重要となってくる。
各社の公開資料によると、各社とも今後も個室型ワークブース事業を推進していくようだ。自宅でもオフィスでもなければ、カフェやシェアオフィスでもない“新たなワークスペース”として個室型ワークブースがどのような価値を提供していくか、今後の動向に注目したい。

関連リンク

■レポートサマリー
働き方改革ソリューション市場の調査を実施(2020年)

■アナリストオピニオン
働き方改革最前線~ITベンダの先進事例4選~(後編)
働き方改革最前線~ITベンダの先進事例4選~(前編)

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星 裕樹(ホシ ユウキ) 研究員
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