矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

アナリストオピニオン
2019.09.30

マルチポイント化が進む中、店舗から求められる共通ポイントとは?

ポイントサービスは、特定の企業やグループが提供するサービスや商品の購入等に対して、発行されるポイントやマイレージ等を指す。そのうち、業種・業態に関わらず提携先で利用できる共通ポイントが含まれる。共通ポイントは、特定の店舗やグループ企業内のみで利用できるハウスポイント・グループ共通ポイントよりも、利用可能範囲が広いという特徴をもつ。

下表に4種類の主要共通ポイントの概要を記載する。

【図表:主要共通ポイントの概要】

図表:主要共通ポイントの概要

矢野経済研究所作成
※1:2019年7月26日現在、会員数はdポイントクラブ会員数。提携先はブランド・サイトの数。
※2:2019年6月末現在(提携企業数)、2019年7月末現在(会員数)、会員数は名寄せ後のアクティブ(直近1年間にTポイントを利用)、かつユニーク(複数枚のTカードを所有するユーザを1人としてカウント)なユーザの人数。
※3:2019年3月現在、会員数はID登録完了後1回以上ログインをしたことのあるID(退会者除く)。楽天市場出店店舗数は47,248店舗。
※4:2019年8月末現在(会員数)、2019年9月1日現在(提携企業数)

マルチポイントの進展 コンビニ業界で動きあり

現在、ハウスポイント・グループ共通ポイントと共通ポイントを併用する取り組みや、複数の共通ポイントの発行が盛んに行われている。一つの店舗で数種類のポイントを発行することをマルチポイントと呼ぶ。

従来、共通ポイントは1業種1社で導入されることが原則であった。しかし、後発のdポイントと楽天スーパーポイントは、当初から加盟店に他の共通ポイントの併用を認めることで、提携企業を拡大してきた。後発の共通ポイント2サービスの開始を機にマルチポイント化が一層加速している。

業界別にみると、コンビニエンスストアにおけるマルチポイント化の動向に注目が集まっている。複数の共通ポイントを導入しているコンビニエンスストアは、これまではローソンのみであった。ローソンは、2010年3月よりPontaを、2015年12月からはdポイントも導入している。しかし、ファミリーマートが、2019年11月より新たに楽天スーパーポイントとdポイントを導入することを発表した。店頭では、従来から導入していたTポイントに加えて、3種類の共通ポイントが利用できるようになる。

多くのコンビニエンスストアが複数の共通ポイントを導入すれば、消費者は購買時の共通ポイント付与を当たり前と捉えるようになるだろう。その場合、共通ポイントを採用していないコンビニエンスストアでは、来店客数が減少する可能性がある。そのため、ハウスポイント・グループ共通ポイントを発行しているコンビニエンスストアにおいても、共通ポイントの導入を通じてマルチポイント化が進んでいくと想定できる。今後のコンビニエンスストア各社における、共通ポイントを巡る動向を注視していきたい。

また、ハウスポイントやグループ共通ポイントを発行している事業者が、共通ポイントを導入するケースもある。一部の加盟店は、利用者が購買する際に、ハウスポイントと共通ポイントの双方を付与している。これらの企業はポイントを手厚く付与することで、ユーザにお得感を与えてポイントカードの提示を促し、会員の情報を収集しやすい体制を構築していると考える。

加盟店での充当の機会が多い共通ポイントが求められている

4種類の共通ポイントのうち、店舗において導入するニーズが高いサービスはいずれであろうか。共通ポイントのビジネスモデル上、加盟店にとってポイントの充当(利用者が店舗での支払いにポイントを充てる)は金銭的負担とはならないが、発行は金銭的負担となる。そのため、各店舗は充当の機会が多い共通ポイントを導入するニーズが高い。ポイントの充当には、下記の事項が影響を与えていると考える。
①期間限定ポイント
②共通ポイント事業者(グループを含む)経由でのポイント発行
以下ではこの二つの側面から共通ポイントを考察する。

期間限定ポイントの利用可能範囲に差異あり

各社の共通ポイントにおける期間限定ポイントの比較を下表に整理した。

【図表:共通ポイントにおける期間限定ポイントの比較】

図表:共通ポイントにおける期間限定ポイントの比較

矢野経済研究所作成

表からわかるように、共通ポイントの種類によって、期間限定ポイントの利用可能範囲が異なる。この違いが、加盟店での充当の頻度に差を生み出していると考える。
期間限定ポイントは、dポイントと楽天スーパーポイントにおいては、通常のポイントと同様に加盟店で幅広く使用できる。期間限定ポイントを加盟店で充当する利用者が見込めるため、これら2サービスの導入を希望する店舗は多いと考える。

一方でTポイントとPontaの期間限定ポイントの用途は、各共通ポイント事業者のグループが提供するサービスに限定されている。そのため、たとえばT会員は期間固定Tポイントをヤフーグループのサービスで利用する際に、合わせて通常のTポイントも消費しているケースが多いと考える。その結果、ヤフーグループ以外のTポイントの加盟店では、Tポイントの付与は継続しているが、T会員がTポイントを消費する機会が減少している可能性がある。

共通ポイント事業者・グループ経由での共通ポイント発行

また、加盟店を経由せず、各共通ポイント事業者(グループを含む)が提供しているサービスを通じて発行されるポイントも多い。

dポイントと楽天スーパーポイントでは、共通ポイント事業者(グループを含む)経由でポイントを大量に発行している。特に楽天市場経由で相当な量の楽天スーパーポイントが発行されていると推測する。楽天市場では会員のポイント付与率が高く、楽天グループの国内EC流通総額※5(2018)は約3.5兆円に上っている。なお、クレジットカード取扱高7.5兆円(2018)を誇る楽天カードからも、大量のポイントが発行されていると考える。また、dポイントにおいては、利用者は携帯電話料金の支払いを通じて多くのポイントを獲得している。
これらを背景に、dポイントと楽天スーパーポイントの会員は、共通ポイント事業者(グループを含む)が提供しているサービスを通じて得たポイントを、加盟店での支払いに充てることが多いと考える。

※5:楽天グループの以下サービスの合計。
市場、トラベル(宿泊流通)、ブックス、ゴルフ、チケット、ブランドアベニュー、ドリームビジネス、ラクー、 ビューティ、マート、デリバリー、楽天ダイレクト、カーライフ、クーポン、 ラクマ、楽天デリバリープレミアム、Rebates、Raxy、楽天西友ネットスーパー等。

dポイントと楽天スーパーポイントを導入するニーズの高まり

共通ポイント事業者(グループを含む)を経由するポイントの発行額が大きいdポイントと楽天スーパーポイントでは、各加盟店は共通ポイントを発行するよりも充当する機会が多くなる。さらに、これら2サービスにおいて、利用者は期間限定ポイントを共通ポイント事業者のグループ以外の店舗でも使用できる。こうしたことから、店舗では充当する機会に恵まれた上記2サービスを導入するニーズが高いと考える。

消費税増税に合わせて、10月からキャッシュレス決済時のポイント還元がスタートする。店舗によって還元率が異なり、ポイント還元を行わずに実質値引きで対応する動きもみられる。各店舗におけるポイント還元への対応は割れているが、引き続き加盟店において充当の機会が多い共通ポイントを導入するニーズは高くあり続けると考える。

井上圭介

関連リンク

■レポートサマリー
ポイントサービス市場に関する調査を実施(2019年)
ポイントサービス市場に関する調査を実施(2018年)

■アナリストオピニオン
ポイントカード発行の真の目的はFSP実現にあり

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