日本オラクルは「POCO(The Power of Cloud by Oracle)」というスローガンを掲げ、俊敏性・総所有コスト・使いやすさに優れた安心・安全なクラウドを通じたDigital AID(デジタル・テクノロジーを使って、社会的な課題の解決を支援)を推進している。その同社が2016年10月25日から2日間、ウェスティンホテル東京において「Oracle Cloud Days Tokyo」を開催した。同イベントは、9月にサンフランシスコで開催された「Oracle Open World 2016」で披露されたSaaS/PaaS/IaaSといった広範なクラウドサービス、IoT、ビッグデータ、それらを支える基礎製品の最新トレンドなどを学ぶことができるイベントとなった。
Oracle Open World 2016の基調講演で、米オラクル創業者のラリー・エリソン氏がIaaSへの注力と同分野のトップベンダーであるAmazon Web Service(AWS)への対抗意識を感じさせる発言を行ったように、同社のナンバーワンクラウドベンダーに向けた取り組みは加速を続けている。Oracle Cloud Days Tokyoの基調講演においても、オラクル・コーポレーションのシニア・バイス・プレジデント、スティーブ・ダヒーブ氏からOracle IaaSをAWSと比較した場合の価格やパフォーマンスなどの優位性が語られ、対AWSの姿勢が示された。これにより、同社のIaaSをはじめとしたクラウドサービスへの注目は一層高まったと言える。
オラクルが提供するクラウドサービスは、SaaS/PaaS/IaaSと全てのレイヤーを網羅するだけでなく、オンプレミスという選択肢も残した柔軟で妥協のないサービスである。
注力するとされるIaaSのキーワードは、
の4点。
コンプリートでは、すべてのレイヤーのクラウドを網羅することなど、オープンではあらゆるワークロード、アプリケーション開発言語、オープンソース、OSプラットフォーム、データタイプをサポートしていることなど、またセキュアでは保管データ、移動データの暗号化など、さらにチョイスではプライベート/パブリック、またオンプレミス/クラウドと多彩な選択肢を用意していることなどを特徴とする。
Oracle IaaSにはベアメタルクラウドサービスもラインアップされている。Oracle Bare Metal Cloud Servicesは、高度な拡張性を備えたパブリッククラウドサービスで、高性能なデータベースをサービスとして提供するほか、ネットワークブロックストレージやオブジェクトストレージ、VPN接続も提供する。さらに、ソフトウェア制御による安全でプライベートな高性能仮想クラウドネットワークも提供し、ユーザーは同サービスを自社のオンプレミスの安全で弾力性の高い拡張機能として利用することもできる。
Oracle Bare Metal Cloud Servicesのリージョンは、完全にフォルト・インディペンデントな可用性を備えた3つのドメインで構成され、ユーザーは高可用性と高耐久性を備えたアプリケーションをクラウド内に構築できる。このサービスは、既存のOracle Cloud Platform製品とシームレスに相互運用でき、Oracle Cloud上で利用可能なサービスの利点を最大限に活かし、基幹業務アプリケーションを構築することが可能である。以上のことなどから、Oracle IaaSはまさにフル装備のプラットフォームと言える。
オラクルはOracle Cloud Platformのさらなる拡張として、Oracle Ravello Cloud Serviceの提供開始も発表した。Oracle Ravello Cloud Serviceは、ユーザーがエンタープライズ向けVMwareやKVM(Kernel-based Virtual Machine)のワークロードを取り込んで、パブリッククラウド上でそのまま実行できるようにした、業界初のクラウドサービスである。このサービスを導入することで、ユーザーはVMware をそのままパブリッククラウドで動作させることができ、VMコンバージョンやアプリケーション設定、ネットワーク変更を行う必要はない。加えてOracle Ravello Cloud ServiceはパブリッククラウドでL2およびL3ネットワークの柔軟性を持つ業界唯一のサービスとなっている。
オンプレミスとパブリッククラウド間のワークロードの移行が自在である点はユーザーにとって大きなメリットのひとつと言える。
トップベンダーであるAWSにも動きがあり、クラウド基盤市場は今、新しいステージへと進み始めている。
まず、IaaS市場は既に大きなシェアを持つAWSと伸長著しいMicrosoft Azureが競い合っている。
近年増加基調にあるハイブリッドクラウドの点に着目してみると、Microsoft Azureに分があるとの見方が多勢を占める。マイクロソフトは、以前からエンタープライズユーザーに対するハイブリッドクラウドの提供に注力し、充実したソリューションを持つためである。しかしAWSは、2016年10月にオンプレミスにおける仮想化の雄、VMwareとの提携を発表している。この提携により、AWSはMicrosoft Azureに勝るとも劣らないハイブリッドクラウド環境を手に入れたと言える。
AWSの動きはIaaSだけに留まらない。国内ではやはり2016年10月にセールスフォース・ドットコムとの協力体制の強化を発表した。セールスフォース・ドットコムといえば、PaaSの他、CRM(SaaS)のトップベンダーである。これまで、AWSはSaaSレイヤーのカバーが不十分であった。この強化により、AWSにはIaaSからSaaSまでをつなぐ道ができたと言える。
矢野経済研究所は、国内クラウド基盤(IaaS/PaaS)サービス市場は2015年に1,260億円(前年比139.1%)まで成長し、そのうち31.7%のシェアをAWSが持つと推計する。IaaSやPaaSの強化で、AWSは今後さらにシェアを拡大していくことも予測される。一方で、AWSと比較するとオラクルに馴染みを持つ企業は多い。クラウドのすべてのレイヤーをオラクルのみに任せられることなどを背景に、拡大するクラウド基盤市場で同社が一石を投じることができるか、今後も注目していきたい。
【図表:クラウド基盤(IaaS/PaaS)サービスの市場規模】
矢野経済研究所推計
注:CAGRは2013年からの年平均成長率
注:売上高ベース
(小山博子)
■レポートサマリー
●クラウド基盤(IaaS/PaaS)サービス市場に関する調査を実施(2024年)
■アナリストオピニオン
●「AWS Summit Tokyo」
●マネージドクラウドサービスが市場拡大に貢献
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