矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

レポートサマリー
2025.03.31

クラウド基盤(IaaS/PaaS)サービス市場に関する調査を実施(2025年)

クラウド基盤(IaaS/PaaS)サービスの2024年市場規模は2兆2,800億円。基幹システムのクラウド移行が本格化を受け、今後も順調に拡大する。

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越 孝)は、国内のクラウド基盤(IaaS/PaaS)サービス市場を調査し、現況、クラウドベンダ動向、新サービス普及状況、将来展望等を明らかにした。

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【図表:クラウド基盤(IaaS/PaaS)サービス市場規模推移と予測】

【図表:クラウド基盤(IaaS/PaaS)サービス市場規模推移と予測】
  • 矢野経済研究所調べ
  • 注:CAGRは2022年からの年平均成長率
  • 注:事業者売上高ベース
  • 注:2025年以降は予測値
  • 注:市場規模にSaaS(Software as a Service)は含まない
  • 注:表中のCAGRは、2022年から当該年までの年平均成長率

 

クラウド基盤(IaaS/PaaS)サービス市場の概況

2024年のクラウド基盤(IaaS/PaaS)サービスの市場規模(事業者売上高ベース)は、前年比118.1%の2兆2,800億円と推計する。市場の成長を牽引するのは、業務上のシステムやデータをクラウド環境へ移行するマイグレーション案件である。特に、大企業においてクラウド基盤の導入が進み、システムを大きく作り替えることなく移行する「リフト」が情報系システムを中心に行われている。さらに近年は、基幹系システムのクラウド移行に検討・着手する企業が増加傾向にあり、クラウド基盤上で稼働するシステムやデータ量が増加している。クラウド基盤サービスの多くは従量課金制であるため、システムやデータ量の増加は、クラウド利用料金の増加に直結することから、市場拡大の一因になる。なお、2024年は仮想化ソフトウェアを提供する大手事業者がライセンス形態を変更し、同事業者の仮想化ソフトウェア上で稼働していたシステムのクラウド移行に関する需要が急速に高まった。

また、デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展も、クラウド基盤サービス市場を押し上げる要因となる。企業のDXは業務効率化にとどまらず、競争力向上や企業価値の最大化を目的としたものへと変化している。加えて、データ利活用やデータドリブン経営(蓄積・収集したデータをもとに意思決定を行う経営手法)に取り組む企業の増加も市場の成長に繋がっている。

さらに、ユーザ企業のクラウド導入・運用を支援するITベンダによるクラウドインテグレーションサービスの普及も進み、クラウド基盤の活用環境が整備されつつある。これにより、クラウド基盤の導入・運用のハードルが下がり、より多くの企業でクラウド基盤を利用するようになった。

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クラウド基盤(IaaS/PaaS)サービス市場の注目トピック

現下、大手クラウドベンダが開催する年次イベントにおいて、発表の中心テーマは生成AI関連である。かつてこれらのイベントはインフラ基盤の拡張や性能向上が主要なトピックであったが、今や生成AIが各社の重点領域であることを明確に示している。クラウドベンダは、AIを開発するための基盤やエンドユーザが直接触れるアプリケーション等、生成AI関連サービスを一貫して提供する。

さらに、大手クラウドベンダが次に見据えるのは、AIエージェントの普及である。AIエージェントには厳密な定義は存在しないが、高度な推論能力を持ち、得られた指示をもとに自律的に作業や処理を遂行するソフトウェアプログラム群と言える。すでに大手クラウドベンダが提供するAI開発プラットフォームでは、AIエージェントを独自に構築できる機能を搭載しており、複数のAIエージェントを統合管理することで、高度なタスク(業務処理)の実行を可能にしている。もっとも、AIエージェントは人間の介在を完全に排除するものではなく、タスクの下準備をAIエージェントが行い、人間が最終的な判断を下すという共生型の活用から進展するとみられる。

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クラウド基盤(IaaS/PaaS)サービス市場の将来展望

今後もクラウド基盤(IaaS/PaaS)サービス市場は順調に拡大し、2028年には4兆4,900億円に達すると予測する。市場の成長を牽引する要因として、基幹システムのクラウド移行が本格化することが挙げられる。クラウド基盤はセキュリティや可用性(システムが安定して利用できること)の向上、そしてITベンダのクラウドインテグレーションサービスの強化を背景に、基幹システムのクラウド移行が加速する。

また、生成AIの利用定着も市場を押し上げる一因となる。特に、ユーザ企業において業務効率化や新たな価値創出を目的とした生成AIの活用ニーズが高まっている。クラウドベンダ各社はAI関連サービスの拡充を進め、ITベンダもユーザ企業の生成AI環境の導入・運用支援サービスを強化している。しかし、ユーザ企業においては生成AIの導入が単なるPoC(Proof of Concept:概念実証)に留まり、本格的な運用には至らないケースもある。こうした状況を打開するには、ITベンダは技術提供だけではなく、ユーザ企業の業務フローの最適化やAI活用に適した組織体制の整備を支援することが不可欠である。ITベンダがこれらの支援を強化することで、ユーザ企業はより円滑に生成AIを導入・運用できるようになる。生成AIを含むAIの普及は、クラウド基盤上で求められる計算リソースとデータ容量の増大を招き、クラウド基盤(IaaS/PaaS)サービス市場の拡大に繋がると期待される。

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参考:このレポートに掲載されている主なデータ一覧

■クラウド基盤サービス市場の動向

  • クラウドコンピューティングの分類
  • クラウド基盤(IaaS/PaaS)サービスの売上高(2022~2028年予測)
  • 業種別 クラウド基盤(IaaS/PaaS)サービスの売上高(2023~2025年予測)
  • 売上高規模別 クラウド基盤(IaaS/PaaS)サービスの売上高(2023~2025年予測)
  • IaaS/PaaS別 クラウド基盤サービスの売上高と構成比(2022~2028年予測)
  • クラウド基盤(IaaS/PaaS)サービスの売上高シェア(2023~2025年予測)
  • 大手クラウドベンダの主なAI開発プラットフォーム(2025年2月時点)
  • 大手クラウドベンダの主なAIエージェント開発プラットフォーム(2025年2月時点)
  • 大手クラウドベンダの主な自社半導体製品(2025年2月時点)
  • プライベートクラウドサービスの売上高(2023~2028年予測)
■クラウドインテグレーションサービス市場の動向
  • クラウドインテグレーションサービス市場の対象領域
  • クラウドインテグレーションサービス市場サービスの売上高(2022~2028年予測)
■アンケート結果の分析
  • クラウドコンピューティングの分類
  • クラウドコンピューティングの利用状況と利用移行
  • ITベンダのクラウド基盤 利用状況推移(2010~2024年)
  • 業種別 ITベンダの利用状況と利用意向(利用中/検討中)
  • 売上高規模別 ITベンダの利用状況と利用意向(利用中/検討中)
  • パブリッククラウドの利用率(2013~2024年)
  • プライベートクラウド(自社クラウド基盤)の利用率(2010~2024年)
  • 利用開始予定時期
  • パブリッククラウドの予算感
  • 参考:パブリッククラウドの予算感(3社除く)
  • パブリッククラウド利用予算の推移(2013~2024年)
  • 利用中のパブリッククラウド(MA)
  • 導入検討中のパブリッククラウド(MA)
  • パブリッククラウドの利用目的(MA)
  • レガシーシステムの割合
  • パブリッククラウドの利用状況別 レガシーシステムの割合
  • 将来クラウド移行したいレガシーシステムの割合
  • 将来クラウド移行したいレガシーシステムの割合
■集計編
  • プロフィール
    • 業種(売上高規模別/従業員数規模別)
    • 売上高規模(業種別/従業員数規模別)
    • 従業員数規模(業種別/売上高規模別)
    • 情報システム要員数規模(業種別/売上高規模別/従業員数規模別)
  • 利用状況
    • プライベートクラウド(自社クラウド基盤)の利用率(業種別/売上高規模別/従業員数規模別)
    • プライベートクラウド(自社クラウド基盤)の導入/導入予定時期(業種別/売上高規模別/従業員数規模別)
    • パブリッククラウド(SaaSを除く)の利用率(業種別/売上高規模別/従業員数規模別)
    • パブリッククラウド(SaaSを除く)の導入/導入予定時期(業種別/売上高規模別/従業員数規模別)
    • 利用中/検討中のパブリッククラウド(SaaSを除く)(MA)(業種別/売上高規模別/従業員数規模別)
    • パブリッククラウド(SaaSを除く)の利用予算業種別 売上高規模別 従業員数規模別 パブリッククラウド(SaaSを除く)の利用予算(平均値・中央値)
    • パブリッククラウド(SaaSを除く)の利用目的(MA)(業種別/売上高規模別/従業員数規模別)
    • 全システムにおけるレガシーシステムの割合(業種別/売上高規模別/従業員数規模別)
    • クラウド移行したいレガシーシステムの割合(業種別/売上高規模別/従業員数規模別)
■アンケート票

 

  • データセンターサービスの売上高(2021~2027年予)
  • 我が国におけるデータセンター市場の動向
  • ハイパースケーラーの主な投資動向
  • アマゾンウェブサービスジャパン合同会社
  • グーグル・クラウド・ジャパン合同会社
  • 日本オラクル株式会社
  • 日本マイクロソフト株式会社
  • アイレット株式会社
  • 株式会社NTTデータ
  • キンドリルジャパン株式会社
  • クラスメソッド株式会社
  • 株式会社サーバーワークス
  • 日本電気株式会社
  • 株式会社IDCフロンティア
  • エクイニクス・ジャパン株式会社
  • 株式会社NTTデータ
    • 「Data Center Trial Field」で想定するプレイヤー
  • Coltデータセンターサービス・ジャパン・オペレーティング合同会社
  • 日本電気株式会社
    • 直接液冷方式イメージ

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関連リンク

■アナリストオピニオン
活性化するパートナープログラム Salesforceの新たな取組み
変革に向けて動き出す中小企業
「AWS Summit Tokyo」
マネージドクラウドサービスが市場拡大に貢献
なるかクラウド基盤市場変革 妥協のないオラクルクラウド

■デイリーコラム
【発刊裏話】揺れる国際情勢。データ主権は国産クラウドを盛り上げるか。
【アナリスト便り】「2025年版 クラウド基盤(IaaS/PaaS)・データセンターサービス市場の動向と展望」を発刊

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調査要綱

調査対象:国内クラウド関連ベンダ(パブリッククラウド及びその周辺サービス提供事業者)、国内民間企業等
調査期間:2024年11月~2025年3月
調査方法:当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話・e-mailによるヒアリング調査、郵送及びWebによる法人アンケート調査併用

※クラウド基盤(IaaS/PaaS)サービスとは:本調査における IaaS(Infrastructure as a Service)、PaaS(Platform as a Service)とは、いずれもパブリッククラウド(サービス提供事業者のクラウド基盤)を利用し、インターネット経由で提供される仮想化技術、自動化技術等を施したクラウドコンピューティング環境をさす。
クラウド基盤サービス市場規模は、クラウドベンダ(サービス提供事業者)の事業者売上高ベースにて算出した。なお SaaS(Software as a Service)は含まない。

<市場に含まれる商品・サービス>
IaaS、PaaS

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宮村 優作(ミヤムラ ユウサク) 研究員
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