株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越 孝)は、自動車会社(OEM)や自動車部品サプライヤー(Tier1等)が手掛ける国内の車載ソフトウェア市場を調査し、主にOEMやサプライヤー側からみた制御系ソフトウェアや車載IT系ソフトウェアにおけるアーキテクチャの変遷や開発体制の変化、課題、今後の方向性などを明らかにした。
ここでは、2030年までの車載ソフトウェア市場規模、制御系や車載IT系、SDV、AI-DVの構成比予測について公表する。
【図表:車載ソフトウェア市場規模推移・予測】
車載ソフトウェアは、大きく制御系と車載IT(情報)系に分類されてきた。制御系は自動車を電子的に制御する仕組みを担っている。一方、車載IT系は運転席周りのHMI(Human Machine Interface)やナビを中心としたエンタテインメント系、安全運転支援のADAS(先進運転支援システム)をはじめ、さまざまな車載関連システムが稼働する。
そうしたなか、数年前からCASE(Connected、Autonomous、Shared & Service、Electric)に代わり、新たなキーワードであるSDV(Software Defined Vehicle)が注目を集めている。当初はコンセプトであったものの、SDVを前提として設計・開発されたソフトウェア群(SDVソリューション)が、IT系半導体メーカーを中心に2023年頃から相次いで市場に投入されており、その存在感は急速に高まりつつある。そうしたなか、最近ではAIエージェントや生成AIをはじめAIの活用が活発化、AI-DV(AI Defined Vehicle)への進化に向けた動きが勃興しつつある。
国内車載ソフトウェア市場規模は2021年で6,203億円となり、内訳は制御系が74.7%、車載IT系が19.2%、SDVは6.1%となった。2023年の同市場規模は7,096億円となり、制御系が67.5%、車載IT系が21.1%、SDVが11.4%となり、徐々に制御系の比率は低下、車載IT系やSDVの比率が高まってきている。
そして2024年の同市場規模は前年比110.9%の7,870億円で、制御系が60.6%、車載IT系とSDVの合計で39.4%と、ほぼ半々の構成比となってきていることが分かる。制御系の構成比は2022年以降、減少傾向にある。
直近2025年は8,766億円で、前年比111.4%となる見込み。構成比は、制御系が56.2%となり、車載IT系とSDVの合計で43.8%と急速に伸長してきている。また、SDVソリューションが車載IT系を包含していく時期に当たることから、同年の車載IT系とSDVは概ね半々となる見込みである。
■モビリティサービスはBtoB領域から立ち上がり、BtoC領域はLevel.3以降に本格化
モビリティサービスとは、車両の状態や周囲の道路状況など多彩なデータを各種センサからOTA(Over the Air)を通じて取得、分析を通じて生み出すサービスをさす。大きく分けてBtoBビジネスとBtoCビジネスで区分できる。
こうしたモビリティサービスとしてアプリケーション開発などを手掛ける際には、日本自動車工業会による自主規制をはじめ、安心・安全の観点から幾つかの制約条件が設けられており、開発に際しては注意が必要となる。
そうしたなか、規制の多くは自動車事故を抑制するためのものであるため、直近ではデータを活用したBtoBビジネスから立ち上がるものとみる。BtoBビジネスの立上げにあたっては、「OEMのみが持つデータの活用」がポイントとなる。
他方、BtoCビジネスは、自動運転レベルのレベル3(条件付自動運転)の実現を発端として、エンタテインメントを含めたアプリケーションによるBtoCビジネスが日本において立ち上がり始めると考える。なお、レベル3はシステムによる運転操作を一定の条件下で実行しつつ、作動継続が困難な場合は、システムの介入要求等に運転者が適切に対応するレベルをさす。
車載ソフトウェアは、試行錯誤で進めることが多く、実際に国内大手OEMを中心に現在、ビークルOS(車両に搭載されるオペレーティングシステム)および周辺システムについて急ピッチで開発を進めている。一部車両にビークルOSの一部を搭載する動きがあるものの、本格的に成果として現れるのは2027年~2028年頃とみる。そしてAI-DVについては2026年頃からAIエージェントやエッジAIなどに係る開発が出始めていることから、2028年に1,205億円、2030年には4,458億円へと急伸していくと予測する。
また、SDVに向けた研究開発投資は2028年頃には落ち着きつつある一方、AI-DVに係る投資が2026年から徐々に立ち上がり始め、以降は2028年に1,205億円と急伸し、SDVの研究開発費と拮抗する程度にまで達するとみる。こうしたことから、2028年には制御系や車載IT系、SDV、AI-DVを合計した市場規模は1.5兆円、2030年には2兆円に達する形で急速に伸びていくと予測する。
■自動車産業を取り巻く市場の変化
■OEMにおける車載ソフトウェア市場規模
■レポートサマリー
●車載ソフトウェア(ソフトウェア開発ベンダー/IT系半導体メーカー/マイコンベンダー)市場に関する調査を実施(2025年)
●車載ソフトウェア(自動車会社、自動車部品サプライヤー等)市場に関する調査を実施(2024年)
■アナリストオピニオン
●「SDVは自動車のスマホ化」との単純な話に非ず――マイコンメーカー、半導体メーカーの動向
●SDVを巡る開発競争が益々激化する車載ソフトウェア業界、競争領域と非競争領域の切り分けに注目
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調査対象:自動車会社、自動車部品サプライヤー(Tier1等)、車載用ソフトウェア開発ベンダー
調査期間:2025年12月~2026年3月
調査方法:当社専門研究員による直接面接取材(オンラインを含む)、ならびに文献調査併用
※車載ソフトウェアとは:車載ソフトウェアは、大きく制御系と車載IT系に分類される。
制御系は、「走る・曲がる・止まる」などの各機能を担うECUユニット(CPU)から構成され、自動車を電子的に制御する仕組みを担っている。一方、CASE(Connected、Autonomous、Shared & Service、Electric) を志向したSDV(Software Defined Vehicle)を前提として設計・開発されたソフトウェア群を、本調査では車載IT系ソフトウェアと定義する。
※車載ソフトウェア市場とは:本調査における車載ソフトウェア市場とはECUなどの制御系やCASEを志向した車載IT系、SDVソリューション、AI-DVに係る車載ソフトウェアを対象とし、 自動車会社(OEM)や自動車部品サプライヤー(Tier.1等)が自社で開発する車載ソフトウェア費用や研究開発費、設備投資費用などから金額規模を算出した。
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