矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

レポートサマリー
2024.12.17

自治体型スマートシティ市場に関する調査を実施(2024年)

デジタル田園都市国家構想交付金を契機にスマートシティに取り組む自治体が増加。2024年度の市場規模は事業者売上高ベースで799億1,300万円を見込む。

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内のスマートシティ市場を調査し、市場概況、参入企業の動向や将来展望を明らかにした。ここでは、自治体型スマートシティの市場規模、及び分析結果について公表する。

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【図表:自治体型スマートシティ市場規模推移】

【図表:自治体型スマートシティ市場規模推移】
  • 矢野経済研究所調べ
  • 注:事業者売上高ベース
  • 2024年度は見込値、2025年度以降は予測値

 

自治体型スマートシティ市場の概況

自治体によるスマートシティの取り組みは2010年代には始まっていたが、多くの事業が実証実験で終了していた。その要因のひとつが資金繰りである。スマートシティは事業計画やサービス開発など多大なコストが発生するため、取り組みに意欲的な自治体であっても単独で負担することが難しかった。しかし、国によるデジタル田園都市国家構想交付金(以下、デジ田交付金)が2022年度に開始されたことで自治体によるスマートシティの取り組みが加速した。デジ田交付金とは地方が抱える課題解決と活性化の加速を目指す自治体に対する資金支援である。事業に意欲的な自治体にとってデジ田交付金の役割は大きく、この交付金を活用することで、スマートシティ実現に向けて、大規模に事業を推進することが可能となった。

自治体型スマートシティでは、様々な分野のデータを統合するデータ連携基盤の活用が特徴であり、一部の交付金では、この基盤を用いたサービス創出が採択条件とされている。その結果、2022年度以降、データ連携基盤の導入数が急増した。2023年度には、これらの基盤やサービスの運用に加え、新規サービス拡充に取り組む自治体も見られた。また、交付金の活用を通じて新たに事業に参画する自治体も増えている。こうした取り組みの結果、2023年度の自治体型スマートシティ市場規模は事業者売上高ベースで、前年度比2.1%増の789億6,500万円に達した。

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自治体型スマートシティ市場の注目トピック

■事業継続が最大の課題
自治体型スマートシティは事業を継続するために多くの課題を抱えているが、その1つが収益化の難しさである。現状、自治体型スマートシティの多くは、デジ田交付金など国の交付金に依存しながら進められていることから、国の政策に大きく左右される状況にある。

防災といった行政サービスは各自治体が担うことになるが、他の自治体と共同でシステム運用を行うことで1つの自治体で負担するシステムの運用保守やデータ連携基盤の整備などに関するコストを軽減させるといった取り組みが進められている。そのほかにもAIを活用したオンデマンドタクシーといった移動に係るサービスのように利用料を設けることが可能なサービスでは受益者負担の仕組みの構築に取り組んでいる。今後も事業を継続していくためには、収益化の仕組みを構築することが不可欠である。

また、様々な新規サービスを創出しても、十分な利用者を獲得できていない点も課題である。こうしたサービスを十分に周知できていないといった背景もあることから、新規サービスの創出よりも、まずは既存サービスの改善や利用者の獲得に重点が置かれるようになっている。

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自治体型スマートシティ市場の将来展望

2024年度の自治体型スマートシティ市場規模は事業者売上高ベースで、前年度比1.2%増の799億1,300万円を見込む。

既に取り組みを始めている自治体は、収益化を主眼に新たな事業創出よりも既存のサービスにおける利用者獲得に注力するため、大規模な投資は減少傾向にある。一方で新たにスマートシティに取り組む自治体にとっては先進的な自治体による既存のサービス事業や関連するノウハウの蓄積があることから、これらを参考にすることで比較的安価で、かつ短期間での事業が開始しやすい環境が整っている状況にある。こうしたなか、市場全体では大規模投資は減少傾向にはあるものの、新たにスマートシティに取り組む自治体が増えていくことで今後の自治体型スマートシティ市場規模は微増で推移すると予測する。

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参考:このレポートに掲載されている主なデータ一覧

  • スマートシティの構成要素とさまざまな取組
  • 主な民間型スマートシティ
  • 自治体型スマートシティ市場規模推移
  • スマートシティ関連事業
  • 2024年度のスマートシティ関連事業の選定結果
  • スマートシティ官民連携プラットフォームの構成
  • スーパーシティ構想の概要
  • スーパーシティ型国家戦略特区とデジタル田園健康特区の取り組み内容
  • デジタル田園都市国家構想の取組イメージ全体像
  • デジタル田園都市国家構想交付金の予算推移
  • 地方創生推進タイプ(Society5.0型)とデジタル実装タイプの違い
  • 地方創生推進タイプ(Society5.0型)とデジタル実装タイプ(TYPE1)を組み合わせて活用した事例
  • デジタル田園都市国家構想交付金デジタル実装タイプTYPE別の内容
  • デジタル実装タイプのカテゴリー
  • デジタル実装タイプTYPE2採択自治体
  • デジタル実装タイプTYPE3採択自治体
  • TYPES採択団体
  • デジタル田園都市国家構想交付金(地方創生推進タイプ(先駆型・横展開型・Society5.0型)/地方創生拠点整備タイプ)の概要
  • スーパーシティ型国家戦略特区/デジタル田園健康特区とデジタル田園都市国家構想との関係
  • スマートシティ施策とデジタル田園都市国家構想交付金の関係性
  • 都市OSの特徴
  • 地域が扱うデータの種類
  • データ連携基盤一覧
  • ビジョン(仮称)策定にあたる都道府県への期待役割
  • 基盤の共同利用にあたる交付金での財政措置(過去実績)
  • 都市OSの導入地域(市町村)数の推移
  • スマートシティ施策のロードマップ
  • デジタル未実装の自治体
  • 事業開発プロジェクト「DiCE」概要
  • 間接的受益者の考え方(例:移動サービス)
  • スマートシティの進め方
  • 効果が出にくいサービスの導入フロー
  • 庁内および自治体を横断する人材イメージ

■札幌市

  • 新・さっぽろモデル サービス概要
  • 「新・さっぽろモデル」Phase2の概要
■仙台市
  • 「防災環境”周遊”都市・仙台モデル」7つの取り組み
  • 仙台モデルのイメージ
■前橋市
  • 「2022年度の事業内容
  • 2024年度の事業内容
  • GunMaaS概要
■岡崎市
  • まちなかウォーカブル推進へのみちのり
  • スマートシティ成熟における4段階
■四日市市
  • スマートリージョン・コア四日市における取り組み内容
  • 四日市市における上位計画や関係する計画との関係イメージ
  • スマートシティ実装化支援事業のイメージ
■京都府(けいはんな学研都市)
  • 「けいはんなサステナブルスマートシティ」事業の概要
  • KYOTO DATA MARKETPLACEの概要
■大阪府
  • 大阪スマートシティ戦略ver2.0概要
  • ORDEN構想の全体像
■佐賀市
  • スーパーアプリの画面構成
■荒尾市
  • 荒尾市におけるスマートシティの全体像

 

■株式会社NTTコミュニケーションズ

  • ドコモビジネスが目指すスマートシティ
  • スマートシティ デジタル実装コミュニティの位置付け
■株式会社ウフル
  • サービス連携基盤CUCONイメージ
  • elcompathの主な機能
■株式会社長大
  • 更別村スーパービレッジ構想
■富士通株式会社
  • 富士通データ連携基盤の全体イメージ
  • スマートシティサービスのラインアップ

 

■BIPROGY株式会社

  • Dot to Dot(イメージ)
  • 事業開発プロジェクト「DiCE」(イメージ)
■アクセンチュア株式会社(Accenture Japan Ltd)
  • 会津若松市の「複数分野データ連携の促進による共助型スマートシティ推進事業」の全体像
■株式会社電通総研
  • CIVILIOS概要図
■めぶくグラウンド株式会社
■一般社団法人コード・フォー・ジャパン
  • Make our Cityを実現する3つのアプローチと見えてきた課題
■一般社団法人コンパクトスマートシティプラットフォーム協議会
  • データ連携基盤(イメージ)
■株式会社インテック
  • エリアデータ利活用サービス(イメージ)
■株式会社スマートバリュー
  • Open-gov Platform(イメージ)
■大日本印刷株式会社
  • 美村パスポートの主な特長と画面イメージ

 

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関連リンク

■アナリストオピニオン
デジ田交付金を活用したeスポーツ事業は地方創生を担う存在になり得るのか

■デイリーコラム
【アナリスト便り】「2024年 国内スマートシティ事業における進展と今後の展望」を発刊
【発刊裏話】2024年 国内スマートシティ事業における進展と今後の展望

■同カテゴリー
[ICT全般]カテゴリ コンテンツ一覧

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調査要綱

調査対象:スマートシティ関連ソリューションを提供するITベンダー 、自治体
調査期間:2024年8月~10月
調査方法:当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話・e-mail等によるヒアリング調査および文献調査併用

※自治体型スマートシティ市場とは:本調査では自治体が主体となり、事業を推進しているスマートシティを自治体型スマートシティと定義し、市場規模は設計、コンサルティング、都市OS、データ連携基盤、各種の先端技術を活用したソリューション等から事業者売上高ベースで算出した。但し、民間事業者を主体とするスマートシティを含まない。
政府の政策におけるスマートシティは内閣府※によると「グローバルな諸課題や都市や地域の抱えるローカルな諸課題の解決、また新たな価値の創出を目指して、ICT 等の新技術や官民各種のデータを有効に活用した各種分野におけるマネジメント(計画、整備、管理・運営等)が行われ、社会、経済、環境の側面から、現在および将来にわたって、人々(住民、企業、訪問者)により良いサービスや生活の質を提供する都市または地域」と定義される。このスマートシティは実施主体によって分類することができる。
※出所:内閣府ホームページ https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/smartcity/index.html

<市場に含まれる商品・サービス>
MaaS、地域通貨、住民ポータル、データ連携基盤、コンサルティングなど

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今野 慧佑(コンノ ケイスケ) 研究員
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