矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

アナリストオピニオン
2022.10.19

カートレジを使ってみた

最近は小売業に留まらず、飲食店等においてもレジのセルフ化が急速に進展している。この背景には、長期的には人材不足によるレジ要員の不足が挙げられる。レジ業務は立ち仕事で体力的にもきつく、不特定多数の人を相手にするために何かとストレスも多い。レジを十分な数だけ開けることができない店舗では、レジ待ちの行列が長くなり、場合によっては顧客の喪失につながる可能性もある状況だ。短期的には昨今のコロナ禍の影響で、利用客もレジ係との接触を避けたがる傾向にあり、セルフレジをむしろ好む傾向も強くなっており、利用客が自分で支払い処理を済ませたいというニーズは以前と比較してより顕著になっていると言える。こうした背景から、セルフレジの利用が日常化してきている。

中でも、最近注目されている方法が、店舗のカートにタブレットやスマホを装着し、買い物をしながら客が自分で商品をスキャニングし、最後にまとめて支払い処理をする「カートレジ」や、客が自分のスマホで商品のバーコードを読み取りながら買い物をする「スマホレジ」などである。これらはスキャニングも支払いも基本的には客自身が行うので、一歩進化したフルセルフレジと言えるが、利用者によっては本来店舗がやるべきレジ業務を肩代わりさせられているといった不満感や、こういった機器の使用に不慣れなことから存在に否定的な人も多いと言われている。
今回、実際に筆者の近所の店舗にカートレジが採用されたので、実際に使ってみた感想を書いてみたい。

近所に導入されたカートレジは、店舗がスマホを貸し出す方式であり、カートにスマホが装着できるようになっている。他社のケースでは客自身のスマホを利用させるタイプのものもあるが、その場合、利用者は自分のスマホにそれ用のアプリをインストールしなければならず、その部分のハードルが高くてなかなか利用が進まないという意見もある。
まず先に我が家の買い物のスタイルに関して書いておくと、基本的に買い物に毎日行くことはなく、大抵は週末にまとめて1週間分を買うというスタイルである。買い物かご2杯分を当たり前のように買うため、後ろに並んでいる人のうんざりした表情に恐縮しながら、レジでのチェッカーさんのスキャニングの時間は、じっと作業を見守りつつ数分はその場にとどまり続けることになる。

さて、カートレジでの買い物体験に移ると、店舗貸しのスマホをカートに装着カートを押し進めながら買い物をしていく。
まずスキャンのたびにスキャン用の画面を立ち上げる時間が必要になるのだが、商品を続けてスキャンする際にも再び同じスキャン画面の立ち上げが必要である。また画面の立ち上がりも悠長で、まどろっこしい印象を受けた。
引き続き店内を進んでいくが、新たに手に取った商品を、誤ってスキャニングせずにかごに直接入れてしまいそうになるのをグッと我慢する必要がある。
スキャニングの際には、商品によってバーコードの位置や大きさが異なるため、印刷されている位置を探したり、カメラとの位置や距離を試行錯誤しながら読み取りを行うことになる。その間通路にじっと立ち止まって読み取りをしているので、他の客の邪魔になっているのが何となく感じるため心苦しい気持ちになる。
いつもの癖で妻が取ってきた商品をかごに投入しそうになるのを静止しつつ、その商品を受け取り一つずつスキャニングをしていると、それはそれで手間がかかる。
同じ商品を複数買う場合は、何度もスキャニングするか、一つを読み取った後で数量を入力したり、バーコードのない商品の場合は、商品を一覧から探して入力する必要がある。更に3個で〇〇円というような価格設定の商品の場合、どう操作すべきかわからず、店員に聞くことになった。チェッカーさんの作業を一通り学習しなければならないのだ。
最後にカートレジユーザー専用の精算機コーナーに行ってセルフ精算するのだが、この時7~8台に対して店員が1名控えており、客の作業の手助けや質問への回答をしているのだが、買い物かごの中の商品と入力済のリストをチェックしている様子はなかった。

こうしたことから容易に想像できるのは、意図的か意図的でないかは別にして、スキャニングしていない商品がかごの中に投入される可能性は大いにあり、それを防ぐ手立ては同店舗の場合はないのが実態であった。
結局利用者としては、買い物中にいちいち自分で周りに迷惑をかけていないか伺いながらスキャニングするか、最後に5分程度我慢してチェッカーさんのスキャニング作業を見守るかのどちらかを選択することになる。カートレジを数回試してみた結果、私としては当面今までのセミセルフレジの方がいいかな、という結論に落ち着いている。
ただ、思っていたよりもカートレジを利用している客が多いのは意外であった。最後に、カートレジを使っている客が、他の客と比べて最も客単価が高いという結果が出ているということも付け加えておく。

野間博美

関連リンク

■レポートサマリー
POSターミナル市場に関する調査を実施(2022年)
店舗向け画像解析ソリューション市場の調査を実施(2021年)

■アナリストオピニオン
省人化イノベーションにリソースを集中せよ
流通業とITのただならぬ関係

■同カテゴリー
[情報サービス/ソリューション]カテゴリ コンテンツ一覧
[コンピュータ/システム]カテゴリ コンテンツ一覧
[アプライアンス(専用端末)]カテゴリ コンテンツ一覧
[コンテンツ/アプリケーション]カテゴリ コンテンツ一覧
[エンタープライズ]カテゴリ コンテンツ一覧

関連マーケットレポート
野間 博美(ノマ ヒロミ) 理事研究員
リサーチはマーケティング課題解決のための方法に過ぎません。誤った調査では課題の解決は不可能です。我々は、お客様の課題を丹念にお伺いさせて頂き、その解決のために最も有効と考えられるリサーチをご提案することを最重要視しています。

YanoICT(矢野経済研究所ICT・金融ユニット)は、お客様のご要望に合わせたオリジナル調査を無料でプランニングいたします。相談をご希望の方、ご興味をお持ちの方は、こちらからお問い合わせください。

YanoICTサイト全般に関するお問い合わせ、ご質問やご不明点がございましたら、こちらからお問い合わせください。

東京カスタマーセンター

03-5371-6901
03-5371-6970

大阪カスタマーセンター

06-6266-1382
06-6266-1422