矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

アナリストオピニオン
2015.02.10

中小企業においてITベンダに求められること

中小企業のIT化の実態

これまでIT化の遅れが指摘されることが多かった中小企業ではあるが、さすがに会計を帳面でつけているような会社は少数派となった。例えば、会計処理業務へのPCや会計ソフトの導入はかなり進みつつあり、最近の調査では、利用率はそれぞれ3/4程度にまで達している。言い換えれば、およそ3/4の企業においては、会社の基幹業務に関する情報が、デジタルデータとして日々ストックされている状況である。こうした傾向は、製造業に留まらず、比較的IT化の遅れが目立つ流通業やサービス業でも同様である。つまり、日本の多くの中小企業において、日々膨大な基幹業務系の情報が蓄積されているのである。

POSデータと言えば、小売業における重要な基幹系データの代表であるが、これを有効活用している企業の例として真っ先に挙げられるのがセブンイレブンである。同社は、日々ためられるPOSデータを活用し、仮説を立ててその結果を検証するPDCAサイクル(Plan,Do,Check, Act)を回しながら、顧客のニーズをうまく取り込むことで成長してきた企業の代表であるといえる。
そうしたPOSに関しても、近年はタブレット型POSの登場で、導入コストは大きく引き下げられ、小売業に留まらず、飲食店やサービス業などにおいても普及が加速している。タブレットPOSに関しては、基本的にクラウドベースのシステムであるため、POSに留まらず、顧客管理系のソリューションなど、柔軟に提供サービスを拡張することができるようになってきた。

蓄積された日々の基幹系情報を適切に分析し、その結果から販売拡大の施策を検討、企業の業績拡大を図ることは極めて自然な流れである。しかし、今の中小企業にとっては、折角蓄積された日々の基幹情報を活用するための経営資源やノウハウは全く足りていないというのが実態であろう。
多くの中小企業にとっては、IT化の必要性は認識されつつも、なかなかそのための人材や資金を確保することは難しい。例えば、上記の例のように、仮に会計システムを導入する場合にしても、自社にシステムの専門家がいるわけでもなく、例えば総務や経理の担当者がITの調達も兼務しているような状況である。そのため、大半の中小企業では、基幹業務にITを採用することで手一杯となり、蓄積されたデータの有効活用というステージにまで構想が至らないのが通常である。
日本の多くの中小企業におけるIT化は、このような状態で放置されているというのが実態であろう。

今後の中小企業のIT化に求められること

中小企業にITソリューションを提供するベンダにとっては、ここに大きなビジネスチャンスがあると考えられる。多くのシステムベンダは、これまでも基幹系システムの導入フェーズには貢献してきたと思われるが、運用を開始したのちにストックされるデータの分析や有効活用こそが、これからの中小企業の生産性の向上に大いに貢献するだろう。
最近はビッグデータブームであり、こういった社内の情報の有効活用をビッグデータと称しているケースもあるが、もともと社内データの有効活用は、ビッグデータ以前からの課題である。BIツールやデータマイニングツールなど、データの分析ツールは出てきてはいるが、実際に分析結果をどのように売上拡大に直結させていくのか、という提案まではなされていない。
ITが企業経営の「効率化」に貢献するだけの時代は既に過ぎ去った。これからは粛々とため続けたデータを有効活用して、実際の「売上拡大」につなげていくことを、ITベンダの主たるテーマとしていかなければならないだろう。

野間博美

野間 博美(ノマ ヒロミ) 理事研究員
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