PAYPAL社のPaidyの買収により、BNPLへの注目が高まっている。弊社では、BtoC領域のECにおけるBNPL市場(以降、後払い決済サービス市場:後払い決済サービス事業者の取扱高ベース)は堅調に拡大しており、2020年度は8,800億円を突破し、2024年度には1.8兆円まで拡大すると予測している。
【図表:後払い決済サービス市場規模推移と予測】
矢野経済研究所推計
サービスを利用しているユーザーとしては、元々は通信販売の利用者が大半で、実際に商品が届いて、中身を確認してから支払いをしたいという主婦層を中心に拡大していた。近年では、若年層やシニア層などのクレジットカードを利用しない、もしくは出来ない層を中心に利用が広がっている。また、クレジットカードを所有しているユーザーにおいても、普段使用しないインターネットショッピングでの利用や電車内で移動しながら購買する場面などで、クレジットカードの登録の煩わしさ等から、後払い決済サービスを利用するケースが増えている
2020年度に入り、コロナ禍を背景に消費行動が、リアル店舗をはじめとするオフラインからネットショッピングへシフトし、ネットショッピング市場が活発化するなかで、宅配業者との接触を避けるため、代引きから後払い決済サービスへのシフトが進んでいる。
これまで自社で後払い決済を展開していた大手企業において、自社のリソース削減を目的に後払い決済サービスの導入が進んでいる点に関しては、後払い決済サービス事業者にとって追い風となっている。
後払いサービス事業者においては、従来は都度型の債権保証型のサービスを提供する事業者が主流であったが、Paidyを始めとした一定期間内の購入に対して月一回にまとめて決済する、マンスリークリア型の後払い決済サービスの利用が拡大している。トランザクションの発生は月一回に集約されるため、利用者の利便性が高く、従来の後払い決済サービスと比較すると、事業者においては請求書の発行などにかかるコストが軽減できるというメリットが生じると考える。
今後、マンスリークリア型が拡大していくと、後払い決済サービスは、よりクレジットカードに近いサービスになり、オンライン専用の新しいタイプのクレジット決済サービスという見方も出来る。クレジットカードと比較すると、換金性の高い高額のネットショッピングでの利用をいかに拡大するか、リアル店舗での利用をどの様な形で利用可能にしていくか、についての課題が残るため、オンラインで比較的少額よりの商品での利用が主流となりそうである。
現時点では、後払い決済サービスは、クレジットカード市場のオンライン決済の一部を侵食していく事が予想されるが、クレジットカード会社にとって、脅威となるとまでは言い難い所である。しかしながら、即時与信精度の高度化や利用履歴の積上げによる信用スコアの向上により、利用シーンが増えていく可能性は高く、長い目でみるとクレジットカード会社にとって脅威となる可能性がある。
後払い決済事業者が提供するアプリが、iD、QUICPay、国際ブランドが提供するコンタクトレス決済、もしくは、国際ブランドが提供すると予測されるコード決済での認証及び決済が可能になった時、もしくは独自でブランドを構築してリアル加盟店での利用を可能にした時、本当の脅威となるであろう。
(高野淳司)
■レポートサマリー
●EC決済サービス市場に関する調査を実施(2024年)
●クレジットカード市場に関する調査を実施(2023年)
●国内コード決済市場に関する調査を実施(2021年)
●国内キャッシュレス決済市場に関する調査を実施(2021年)
■アナリストオピニオン
●存在感を増す携帯キャリア系のクレジットカード
●キャッシュレスによる店舗等の支援を
●キャッシュレス4.0~デジタル通貨の台頭によるキャッシュレス社会の進展~
●Stripeの日本展開の本格化
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