2019年の監視カメラの世界市場規模は64,800千台(前年比120.0%)となった。引き続き中国市場が成長し、世界市場を牽引したほか、その他のエリア(中東、中南米、アフリカ、ロシア)における成長も大きく、世界市場の拡大につながった。
【図表:監視カメラ世界市場規模推移(2015年~2020年予測:出荷台数ベース)】
出所:矢野経済研究所推定
中国・アジア圏では公共関連や政府関連需要が拡大し、北米・欧州・日本では民需も拡大した。従来の監視/モニタリング用途に加え、マーケティング用途での活用や画像解析/AI技術の活用が進んだ。
近年、監視カメラ本体のみの販売では利益確保が難しくなりつつあることから、VCA画像解析や画像解析/AI技術を用いた付加価値ビジネスや監視カメラを用いたソリューション提案型ビジネスへのシフトが進んでいる。
2020年に入ってから、新型コロナウイルスの影響により、監視カメラの設置ができない、案件がペンディング/後ろ倒しとなるなどの事態が生じている。ユーザ企業の設備投資余力減なども加わり、とくに2020年下半期から影響が出始め、2020年の監視カメラ世界市場規模は54,440千台(前年比84.0%)に落ち込むと予測する。しかし、これはあくまでも新型コロナウイルスの影響によるもので、監視/モニタリングカメラの需要自体が消滅したものではない。そのため、2021年以降は再び市場が成長すると予測する。
需要分野別に新型コロナウイルスの影響についてみていくと、公共公益官庁/交通分野の落ち込みはあまりないが、営業自粛や収益の低減により業界自体が大打撃を受けた小売・流通分野(店舗/CVS)での落ち込みは大きいだろう。
監視カメラは設備投資に含まれ、直接本業の利益に影響する製品ではないという点をふまえると、小売・流通分野においては、今後3年ほどは投資が行われにくくなるだろう。流通分野にとくに注力していた事業者のなかには、2020年業績で最大20%減を見込む事業者もいる。
一方で、新型コロナウイルスの影響により拡大した監視カメラの活用ニーズもある。
監視カメラの活用ニーズとして、体温測定や「三密(密閉、密集、密接)」の防止に向けた利用が拡大した。センサやサーモグラフィと監視/モニタリングカメラを組み合わせて活用することで、接触せずに体温測定を行うことができる。現状では、とくにオフィスビルや病院、学校、公共交通機関などでの設置が進められている。東京都では、2020年5月に新型コロナウイルスの感染拡⼤への追加対策として体温を自動で測定するサーモグラフィを都内の学校に配備すると発表、都立や区市町村立のほか私立の学校にも導⼊を促すなどしている。
なお、赤外線カメラ・サーモグラフィの世界市場について、新型コロナ対策投資で2020年は急成長した後、一時減退するものの、利用用途の拡大などを背景に再び好調に推移していくと予測する。
また、業界自体が大打撃を受けた小売・流通業においても、既にセキュリティやマーケティング用途で監視カメラを設置していた店舗などでは、人数カウント機能を入店/入場規制に用いるという動きがあった。他にも、店舗や工場内などで動線解析/人流分析を行うべく導入していた監視カメラ機能を三密の防止に活用するなど、導入当初に想定していた使用方法とは異なる活用が進んだ。
【図表:新型コロナウイルス流行による用途の変化】
出所:矢野経済研究所作成
今後の監視カメラ世界市場について、2021年以降は再び市場が成長すると予測する。「アフターコロナ」に向けた投資拡大に加え、利用用途の拡大、画像解析/AI技術等を活用した付加価値の向上などが理由として考えられる。
中国市場の急成長の陰りや新型コロナウイルスによる経済後退への懸念もあるが、中国・欧米・日本における更新需要や、アジア圏・その他エリア(中東、中南米、アフリカ、ロシア)の新設需要は中長期的に拡大していくだろう。他にも、世界市場ではスマートシティ構想やIR、MICEなどのプロジェクトにおける新たな需要も考えられる。
また、国内市場においては、新型コロナウイルス終息後にサテライトオフィスなどでの需要が拡大すると見込む。新型コロナウイルス流行前から働き方改革が推進されてきた日本だが、今回半強制的にテレワークが行われたことをきっかけに、今後働き方の自由度が高まり、そうした動きが活発化することが期待される。
■レポートサマリー
●監視カメラシステム世界市場に関する調査を実施(2021年)
●監視カメラ世界市場に関する調査を実施(2020年)
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