矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

アナリストオピニオン
2018.02.01

「オートモーティブワールド2018」レポート

全体

■開催概要
オートモーティブ ワールド 2018」は、2018年1月17日~19日の3日間、東京ビッグサイトにて開催された。同展示会は「第10回 国際カーエレクトロニクス技術展」「第6回 コネクティッド・カーEXPO」「第7回 EV・HEV 駆動システム技術展」「第8回 クルマの軽量化技術展」、「第4回 自動車部品加工 EXPO」に今年から加わった「第1回 自動運転EXPO」の6つから構成されており、自動車関連展示会では世界一の1,063社が出展した(前年比163社増)。来場者数も39,922名(前年比15.6%増)となり、自動車専門の展示会としては世界的に見ても最大級のものとなった。期間中は展示会とあわせてコネクテッドカー、自動運転/ADAS、EV/FCV(燃料電池車)、軽量化といった、自動車業界注目のトピックを扱う専門技術セミナーが全350講演(同時開催含む)開催され、25,870名が受講した模様。

【写真:「オートモーティブ ワールド 2018」開会式】

【写真:「オートモーティブ ワールド 2018」開会式】

出所:「オートモーティブ ワールド 2018」内にて撮影

■レベル3と4とが同時に進む自動運転
今回もやはり最大の注目テーマは自動運転であったといえる。それもレベルごとに未来へのロードマップが少しづつ明確化してきた。次の表はNHTSA制定の自動運転レベル0からレベル4まで(SAE制定の自動運転レル0からレベル5まで)における運転主権(運転操作の責任)と、走行場所限定の有無についてまとめたものである。

【図表:「自動運転における運転主権(運転操作の責任)と、走行場所限定の有無」】

【図表:「米自動車技術会(SAE)による自動運転レベルの分類」

出典;一般財団法人日本自動車研究所 ITS研究部

今、世の中を走っているクルマが備えている自動運転機能、ACCやLKSなどはほぼレベル1あるいはレベル2と呼ばれるもので、ドライバの安全運転を支援することに主眼が置かれている。運転はドライバの管理下になければならないので、ドライバには常に運転操作の負荷がかかっている。ただしACCやLKSを利用することによって、ドライバは張り詰めた運転操作から、やや気を抜くことができるようになる。

それに対してレベル3以上(レベル3、4、5)では、平常時の運転主権(運転操作の責任)はクルマ側(=OEM側、自動車メーカー側)が持つ。ただしレベル3の場合だけは、緊急時にはドライバ側が責任をもつ。したがって、レベル3においては、平常時(高速道路だけの場所限定)はクルマ側、緊急時(一般道など)はドライバ側がそれぞれ責任を持つことになり、平常時⇔緊急時の運転主権の受け渡しが重要になる。

2017年度に入り、このレベル3自動運転カーの普及スピードがやや足踏み状態になっているという声を聞く。技術的には本格的な普及に進める状態にありながらも足踏みしている理由は、平常時⇔緊急時の運転主権の受け渡し技術が非常に難しい点にあるからだ。もしも高速道路上で手離し運転をしている際に事故が起こった場合、その賠償責任やリコールなどOEM(自動車メーカ)の経営基盤が傾きそうになるほどの重圧が課せられるという。

このようにレベル3が足踏み状態の現在、むしろレベル4が一足先に本格化するのではないかと予測する声も聞こえている。つまり、自動運転カーの進化は「レベル0→1→2→3→4→5」の順番で進むのではなく、「レベル3」と「レベル4(→5)」が同時期に進んでいくということだ。
したがって、自動運転カーで活用される技術は「レベル3」用のものと「レベル4(→5)」用のものとが同時期に開発され、企業は両方に向けてビジネスを推進している。むしろ時代はL4礼賛の状況だが……

 

■今後の自動運転で必要になる技術
今後、自動運転システムに必要な技術としては、従来の自動車技術のIT化という域を超えて、①車載HMI、②ドライバモニタリング、③OTAアップデートとサイバーセキュリティ、④人工知能(AI)といった学際的領域の活用が中心になろうとしている。

  • 「①車載HMI」では人間工学の視点から新たな技術が開発されてきている。
  • 「②ドライバモニタリング」は前述したように、平常時⇔緊急時の運転主権の受け渡し技術では必須となる。
  • 「③OTAアップデートとサイバーセキュリティ」では、「OTAアップデート」が自動運転ソフトウェアや、クルマが多数搭載するECUのソフトウェアをネットワーク経由で更新するのに対して、サイバーセキュリティは必要不可欠となる。
  • 「④人工知能(AI)」は、こうした①②③の背後に存在して、それらをささえる高度で革新的なIT技術である。

①~④のどの技術も、未来に向けて大きく成長する学際的領域の技術活用によるものだ。

今回「オートモーティブ ワールド 2018」においても、学際的領域のシステムに必要な技術の出展が目に付いた。次の項目「各社の展示状況」では、こうした領域の展示内容について掲載していく。

各社の展示状況

■アルプス電気(株)/静電入力デバイス
同社の静電入力デバイスは、次の写真にもあるように「ホバー、ジェスチャー入力可能な高感度デバイス」と謳われている。ICも、センサも、アルゴリズムも独自に持っている点がアルプス電気の強みだ。

 

【写真:アルプス電気の静電入力デバイス】

【写真:アルプス電気の静電入力デバイス】

出所:「オートモーティブワールド2018」内にて撮影

同システムの特徴としては、ステアリングの下にセンサを仕込む場合も、表面の素材は皮でも布でも作れる点がある。あるいは、5ミリ程度の高級な木の素材でも反応が可能となるという。またトラックドライバーが軍手をはめたままタッチしても入力が可能となる。

アルプス電気とアルパインは2019年から経営統合する。アルプス電気はこのような自動車向けのスイッチやセンサなどの部品を手がけており、自動車の電装化の進展に沿って事業を拡大してきた。カーナビやオーディオなどの車載機器を手がけるアルパインと経営資源を統合することで、グループ全体の自動車関連事業の拡大を狙う模様。

■NECソリューションイノベータ/ジェスチャー認識
NECソリューションイノベータは同社が開発・販売している「フィンガージェスチャー」を展示した。これはドライバ向けというよりも、車載HMIやドライビレコーダの開発・設計者であるプロ向けの製品である。

【写真:NECソリューションイノベータのジェスチャー認識】

【写真:NECソリューションイノベータのジェスチャー認識】

出所:「オートモーティブワールド2018」内にて撮影

車載マイコンに搭載可能な高速・省メモリなソフトウェア。操作者の手先のみを検出できるTOFセンサ。それに組み合わせるIRフォトセンサでは手先の距離や3D座標位置をリアルタイムに検出できる。
このソリューションを使用することにより、ドライバの視線移動を最小化でき安全性を高めることが可能となる。さらにスイッチに変わる車載入力装置としてだけでなく、検出先を変えたり、他のセンサとフュージョン化することによって、ドライバモニタリング用のセンシング装置としても多様な用途に展開できるという。レベル3自動運転カー普及が足踏み状態だからといっても、「手動⇔自動」切り替え時に活用されるドライバモニタリング技術も足踏みかといえばそうではないようだ。

■(株)ベリサーブ/車載サイバーセキュリティ

【写真:ベリサーブ「車載セキュリティテストサービス」】

【写真:ベリサーブ「車載セキュリティテストサービス】

出所:「オートモーティブワールド2018」内にて撮影

同社はサイバーセキュリティ全般の企業であり、必ずしも車載セキュリティに特化して強い企業ではない。車載への展開はこれからであるという。ただし国内において、ソフトウェア・セキュリティの評価機関的存在になることを考えている点で、今後も注目すべき存在といえる。

同社は主にOEMに対して、次のような製品を提供している。

  • セキュリティの評価プロセス・構築支援
  • 脅威分析支援
  • 仕様書・設計書レビュー

同社によれば、車載セキュリティにおいては「鍵をモデルごとに設定するのではなく、1台ごとにしっかり設けることが重要」だという。

■(株)日立超LSIシステムズ/AIハード化サービス
AIといえばクラウドによるサービスという印象があるが、自動車で活用する場合はAIチップ化して(AIハード化して)車載側でのAI解析を司ることも重要だ。特にADASにおけるカメラ画像処理の場合は、クラウドを活用して重たい動画をやりとりするのでは時間がかかりすぎて安全性の問題が生じてしまう。車載側できるだけ高速処理してしまい制御する。小さくなったデータのみをクラウドで飛ばして重要なDBを構築していくという使い方だ。

同社の「小型FPGAボードへのAIハード化サービス」は、ADASや自動運転の開発現場に向けて、画像認識AIシステム開発を請け負う設計受託サービスである。ドライバモニタリングのアプリ開発以外にも、住居オートロック、踏切内監視、入退出管理、見守りシステムなどの他業種に向けても需要を見込んでいる模様。

【写真:日立超LSI「FPGAボードへのAIハード化サービス」】

【写真:日立超LSI「FPGAボードへのAIハード化サービス」】

出所:「オートモーティブワールド2018」内にて撮影

専門技術セミナー

本展示会では専門技術セミナー(有料)も充実しており、専門の講師の講演を聴講する事が可能で、最新の技術やマーケット動向を知る事が出来る。専門技術セミナーは、展示会ごとに注目テーマが設定されており、1月17~19日の3日間におけるセミナーが全350講演(同時開催含む)開催され、25,870名が受講した模様。

■自動運転サービス会社「nuTonomy」
今回の取材は、レベル3が足踏み状態の現在、世界中のレベル4,5自動運転カーのプレーヤに向けてソフトウェアを提供している、シンガポールの自動運転サービス会社「nuTonomy」の講演についてまとめた。

同社は米国MITからのスピンアウト企業である。米国(ボストン)とシンガポールに主要拠点を持ち、特にシンガポールでの実証実験は中国、日本、ASEANの企業に大きな刺激を与えている。2017年、デルファイに買収された模様。需要先としてはOEM、Tier1ばかりでなく、カーシェアリングなどのMaaSサービス企業をも考えている。レベル4,5自動運転カーの市場構造としては、必ずしもOEMが頂点に来るピラミッドになるわけではない。サービス産業が頂点に来る可能性もあるからだという。
同社によれば「シェアリングカーは今後爆発的に普及し、やがて公道のシェアカーでもレベル4,5自動運転が活用されるようになる模様。2025年には世界の100都市においてレベル4,5自動運転カーが走っている」とのことであった。

■その他のセミナー
サイバーセキュリティ関連では、本田技術研究所がJASPARとしての取り組みについて、デンソーが自動車部品メーカとしてのサイバーセキュリティについて述べた。海外のプレーヤからも、Infineon Technologies、Argus Cyber Securityらが講演した。
新たなテーマとしては、AI+αについての講演も行われた。AIについてはVWに加えてボッシュ、コンチネンタル、デンソーという世界3大Tier1が続いた。デンソーと、トリに登壇した名古屋大学 未来社会創造機構 野辺 継男客員准教授は「AIの自動車における活用の向こうに見える、さらなる未来、量子コンピュータの可能性」を見据えた講演を行っていた。

最後に

今回の展示会、専門技術セミナー講演を通して感じたことは、前述したように自動運転カーの進化は「レベル0→1→2→3→4→5」の順番で進むのではなく、「レベル3」と「レベル4(→5)」が同時期に進んでいくということだ。むしろ現在は「レベル4(→5)」に業界の興味が向かっているという印象であった。
したがって、自動運転カーで活用される技術は「レベル3」用のものと「レベル4(→5)」用のものとが同時期に開発され、企業は両方に向けてビジネスを推進している。 そこではMaaSサービス事業者が、現在のOEMのように産業をリードしていく可能性もあるという。

しかし忘れてはいけない事は、自動車はたとえ軽自動車であっても1トン以上の重さを持つという事だ。その重量を動かすためのパワトレをはじめとする“走りの技術”は未来永劫に重要である。したがって例え自動運転の時代になっても、IT・IoT業界やサービス業界のプレーヤに全てとってかわられるという事はありえない。とりわけ重さのある世界において、また重さのある世界とIT・IoTとの融合世界において、日本企業の強味が発揮されるのではないか。

関連リンク

■レポートサマリー
国内コネクテッドカー関連市場に関する調査を実施(2017年)
eコクピット世界市場に関する調査を実施(2016年)

■アナリストオピニオン
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