矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

レポートサマリー
2025.05.08

自治体向けソリューション市場に関する調査を実施(2025年)

2024年度の自治体向けソリューション市場規模は前年度比6.1%の8,208億円を予測。基幹業務システムの標準化対応が本格化し、市場規模を押し上げた。

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内の自治体向けソリューション市場を調査し、市場概況や将来展望、サービス提供事業者の動向などを明らかにした。

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【図表:自治体向けソリューション市場規模推移・予測】

【グラフ:自治体向けソリューション市場規模推移・予測】
  • 矢野経済研究所調べ
  • 注:事業者売上高ベース
  • 注:市場規模には、ハードウェアやソフトウェアの購入費、レンタル・リース料、保守・サービスサポート料、回線使用料、ベンダー(サービス提供事業者)などからの要員派遣費などを含む。
  • 地方自治体側の費目でみると、機器購入費、委託費、安全対策費、各種研修費用、BPOサービス費などを含むが、自治体職員の人件費は含まない。
  • 注:2024年度以降予測値

 

自治体向けソリューション市場の概況

2024年度の自治体向けソリューション市場規模は事業者売上高ベースで8,208億円、前年度比6.1%増と予測する。2024年度は基幹業務システムの標準化対応が本格化し、市場規模を押し上げた。

2024年度に入り、国が定めた2025年度末の期限まで残り2年となったタイミングで、移行作業が本格的に始まった。こうした影響を受け、基幹業務システムの標準化対応に準じた標準準拠システムを提供するベンダーでは、売上が大幅に伸びている。

ただし、2024年度に実施された移行作業は全体の一部にとどまっており、ほとんどの作業が2025年度に集中する予定である。標準準拠システムの稼働を開始している自治体は少なく、2025年度に移行が本格化する状況にある。そのため、2025年度の市場は2024年度を大幅に上回る成長が見込まれ、前年度比17.7%増の9,660億1,000万円に達すると予測する。

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自治体向けソリューション市場の注目トピック

■対応の遅れが懸念される標準準拠システム移行
政府は自治体が抱えるコスト削減などを目的に2025年度末までに自治体の基幹業務(住民情報系)システムを統一・標準化し、デジタル庁が調達するガバメントクラウドで運用するという方針を決定している。現在、基幹業務システムを提供するベンダーは期限までの移行に向けて多くの人的資源を投入して対応している。

2024年に入り、一部の自治体では標準準拠システムの本稼働が開始された。ただし、その数は限定的であり、ほとんどの自治体は2025年度中の移行を予定している。具体的なスケジュールとしては、自治体の繁忙期を避けた2025年度夏頃から順次移行が始まり、秋から冬にかけてピークを迎える見込みである。対応件数の多いベンダーでは、複数自治体の同時移行も想定されている。

自治体の基幹業務システムの移行が進められる一方で、期限内の移行が困難なケースも存在する。その主な要因として、現行システムが個別開発であることや、既存ベンダーの撤退により移行作業が滞ることが挙げられる。特に、標準準拠システムの開発やガバメントクラウドへの対応には、技術的な対応負荷や先行投資が伴う。こうした対応を断念し撤退するベンダーが一定数存在する。当該自治体では新たなベンダーの選定やシステムの再構築に時間を要し、移行の遅延を招いている。加えて、全国一斉の標準化対応や制度改正への対応が重なり、ベンダー側の人的資源も逼迫している。

?こうした状況を受け、国は2024年12月、いわゆる「特定移行支援システム」に該当する自治体に対し、実質的に5年間の期限延長を認める措置を発表した。この制度は、移行難易度が高く、標準準拠システムへの対応が間に合わない自治体を対象とした支援策であり、国が例外的に移行期間を延長しつつ、段階的な対応を可能とするものである。移行要件が複雑なシステムを抱える大規模な自治体や、既存ベンダーの撤退により移行作業が滞った自治体では、2026年度以降の移行となる見通しである。

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自治体向けソリューション市場の将来展望

標準化対応が進む中で、自治体向けソリューション市場は今後大きく構造変化を迎える。2025年度は既存ユーザーである自治体の移行対応が中心だが、2026年度以降は、特定移行支援システムに該当する自治体や、新たに基幹業務システムの乗り換えを検討する自治体が対象となる。移行実績やサポート体制の充実度が、次のベンダー選定における重要な要素となる。

標準化対応後に注力されることになるのが自治体DX(デジタルトランスフォーメーション)である。既に自治体による窓口業務やオンライン申請、電子契約に関するソリューションに対するニーズが高まっている。また、自治体内部のデジタル化に加えて、住民生活の向上を目指した取り組みも進められている。こうした影響を受け、モビリティ、金融、ヘルスケアなどの産業界からの異業種参入が進んでおり、新たな参入企業が増えている。さらに、生成AIなどの技術を活用した提案が活発化しており、既存ベンダーは業務ノウハウを強みに、これらの新規参入企業との連携や役割分担が求められる。

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参考:このレポートに掲載されている主なデータ一覧

  • 自治体向けソリューションの内容及び主要ベンダ
  • 自治体向けソリューション市場規模推移
  • 自治体向けソリューションベンダ一覧/シェア(2023年度実績/2024年度予測)
  • 標準化・共通化イメージ
  • 標準化対象業務
  • 特定移行支援システムの該当見込み(2024年10月末時点)
  • ガバメントクラウドに採択されたサービス
  • 自治体DX推進計画における自治体が取り組むべき事項・内容
  • 地方公共団体によって行われている窓口改革の様々な取り組み
  • ガバメントクラウドにおける地方公共団体への窓口DXSaaS提供事業者
  • 引越し手続オンラインサービスのイメージ
  • 公共サービスメッシュのイメージ
  • 公共サービスメッシュ「自治体内の情報活用」
  • 公共サービスメッシュ「行政機関間の情報連携」
  • マイナンバーカードの団体区分別保有状況について(2025年2月末)
  • マイナンバーカード交付率上位団体
  • 自治体におけるAI・RPA導入状況
  • 自治体におけるAI導入状況
  • 自治体におけるRPAの導入状況
  • 自治体のAIの導入状況 ~AIの機能別導入状況~
  • デジタル田園都市国家構想の取組イメージ全体像
  • デジタル田園都市国家構想交付金の予算推移
  • デジタル田園都市国家構想交付金デジタル実装タイプTYPE別の内容
  • デジタル実装タイプのカテゴリー
  • デジタル実装タイプTYPE2採択自治体
  • デジタル実装タイプTYPE3採択自治体
  • TYPES採択団体
  • デジタル田園都市国家構想交付金(地方創生推進タイプ(先駆型・横展開型・Society5.0型)/地方創生拠点整備タイプ)の概要
  • 地方創生交付金の推移
  • 新しい地方経済・生活環境創生交付金の構成
  • 自治体のフロントヤード改革の取組状況(2023年4月時点)
  • AIにおける生成AIの立ち位置
  • 自治体における生成AIの実証実験・導入状況
  • 自治体において導入している(実証実験も含む)生成AIの具体的な活用事例
  • 自治体において導入している(実証実験も含む)生成AIのサービス
  • 民間企業における利用中の生成AIサービス(MA)
  • 生成AIの導入における課題
  • 「AIチャットサービス」利用イメージ図
  • 神戸市との生成AIを活用した実証実験イメージ

■Gcomホールディングス株式会社

  • 自治体向け基幹業務システム「Acrocity」
  • 地方行政経営研究所の事業
■株式会社RKKCS
  • RKKCSの自治体向けソリューション
■株式会社TKC
  • 自治体向けに提供する主要なシステム・サービス全体図
■xID株式会社
  • 「xIDアプリ」ホーム画面イメージ
■株式会社アイシーエス
  • アイシーエスの自治体向けソリューション
■株式会社アイネス
  • いんくるコネクト概要
■株式会社グラファー
  • Graffer Platformのプロダクト&サービス
  • エンドツーエンドで提供されるGraffer Platform
■株式会社ジーシーシー
  • e-SUITE 住民情報システムラインナップ
  • e-SUITE 庶務事務システム 基本パッケージ・オプション機能
  • e-SUITE 人事給与システム 基本パッケージ・オプション機能
  • 「at home」機能一覧
  • 学び支援給付システムのイメージ
■トーテックアメニティ株式会社
  • 住民情報システム「G-COAS」のシステム概要
  • トーテックアメニティが提供する自治体向けソリューション
■株式会社トラストバンク
■日本電気株式会社(NEC)
  • 日本電気の自治体向けソリューション
  • 神戸市との生成AIを活用した実証実験イメージ
■日本電子計算株式会社
  • 日本電子計算の自治体向けソリューション
■日立グループ
  • 日立グループの自治体向けソリューションの主な製品体系
  • 「CYDEEN」製品群
  • 日立グループにおける自治体DX取り組みテーマ及び重点取り組み事業
■富士通Japan株式会社
  • 富士通Japanの自治体向けソリューション
  • AIを活用した図面審査システムのイメージ
■株式会社両備システムズ
  • 両備システムズの自治体向けソリューション
  • 「AIチャットサービス」利用イメージ図

 

4章 自治体・公共向けソリューション提供企業簡易個票

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関連リンク

■レポートサマリー
自治体向けソリューション市場に関する調査を実施(2024年)

■アナリストオピニオン
行政コスト削減に向けて自治体クラウド導入が加速

■デイリーコラム
【発刊裏話】2025年版 自治体向けソリューション市場の実態と展望』
【アナリスト便り】「2025年版 自治体向けソリューション市場の実態と展望」を発刊

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調査要綱

調査対象:自治体向けソリューションを提供するITベンダー、自治体
調査期間:2024年12月~2025年3月
調査方法:当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話・e-mail等によるヒアリング調査および文献調査併用

※自治体向けソリューションとは:本調査における自治体向けソリューションとは、地方自治体で導入される情報システムを指す。市場規模には、ハードウェアやソフトウェアの購入費、レンタル・リース料、保守・サービスサポート料、回線使用料、ベンダー(サービス提供事業者)などからの要員派遣費などを含む。地方自治体側の費目でみると、機器購入費、委託費、安全対策費、各種研修費用、BPOサービス費などを含むが、自治体職員の人件費は含まない。

<市場に含まれる商品・サービス>
地方自治体向けの基幹系(住民情報系)ソリューション、内部情報系ソリューション、現場向けソリューション、自治体DX関連ソリューションなど

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