株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内のERPパッケージライセンス市場を調査し、参入企業やユーザ企業の動向、将来展望を明らかにした。
【図表:ERPパッケージライセンス市場規模推移・予測】
2022年のERPパッケージライセンス市場はビジネス環境の変化や好調な企業収益などから、企業のIT 投資意欲が高く、DX (デジタルトランスフォーメーション)の取り組みが戦略フェーズから実践フェーズに移り始めたことなどにより、市場は順調に推移した。また、中堅以下の企業を中心に、インボイス制度や電子帳簿保存法の改正に向けた対応も追い風となり、2022年の市場規模は前年比9.5%増の1,296 億2,000万円(エンドユーザ渡し価格ベース)となった。
2023年も引き続き、旺盛なIT投資意欲に支えられたことから、2023年のERPパッケージライセンス市場規模は、前年比9.5%増の1,419億8,000万円となった。主な成長要因は以下の5点で、市場のトレンドは2022年と同様である。
■ERPパッケージライセンス市場の主な成長要因
①ビジネス環境の変化や好調な企業収益などから、DX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みが戦略フェーズから実践フェーズに移行
②企業のIT投資への意欲が高まっており、レガシーシステムのリプレイスや、DXの一環としての経営基盤への投資といった従来からのニーズの継続
③中堅以下の企業を中心に、インボイス制度や電子帳簿保存法の改正に向けた対応への需要の急拡大 ④大手企業を中心に、これまで自社開発(オンプレミス)が中心であった生産管理システムなどについて、パッケージ等に切り替える案件が進展
⑤ERPの複数モジュール採用による案件の大型化が進み、クラウド型ERPを利用する企業も増加傾向
■クラウド化の進展
ERPパッケージライセンス市場におけるクラウド型利用(IaaS・PaaSとSaaSを含む)の市場規模は、2023年に811億7,600万円、ERPパッケージライセンス市場全体に占める割合は6割弱で、前年比で増加傾向にある。ERPパッケージライセンスのクラウド化は依然進展を続け、2024年には6割を超えると予測する。
近年は新規参入事業者を含め、SaaS型ERPが増加基調にある。既存のパッケージ導入企業(ユーザー企業)がSaaS型ERPへの移行を検討しているほか、今後SaaS型ERPの提供を予定しているベンダー企業もあり、ERPパッケージライセンスのクラウド型利用のうち、SaaS型市場は拡大すると予測する。
昨今はERPベンダー企業が産業界ごとに最適化した製品を揃えていることに加え、Fit to Standard(これまでのようにシステムを業務に合わせるのではなく、業務をシステムに合わせて導入する手法)の概念が広まりつつあることで、SaaS型ERPの導入も拡大基調にある。
しかし、大手企業によるSaaS型の導入は企業個別要件があり、すべての業務内容をERPに合わせることが難しい場合もあるため、長期的な傾向であると考える。一方で、グループ企業内における子会社同士のデータ連携を含めて、SaaS型を導入することが考えられることから、中堅中小企業などを中心にSaaS型を選択する企業が増加する可能性がある。
経営基盤(ヒト・モノ・カネ)を効率的に管理するためには、経営基盤を一元管理し、有効活用する(データドリブン経営)ことが有用である。データを一元化(他のシステム等との連携を含む)することで、企業としては経営戦略を効率的に策定することが容易になることから、競争力を向上させたり、さらにはAIなど新しいテクノロジーを活用する目的で、クラウド型ERPの利用は今後も拡大していくとみる。
2024年のERPパッケージライセンス市場規模は、前年比8.2%増の1,536億6,000万円(エンドユーザ渡し価格ベース)を予測する。2024年はインボイス制度にかわるほどの大きな事象こそ見受けられないものの、レガシーシステムのリプレイス、DXを契機とする案件は増加基調にある。また、オンラインだけでなくリアルでも販促活動を行えるようになったことの効果も期待できることなどから、市場は引き続き順調に成長すると予測する。
今後の世界情勢や海外景気の影響などにより、市場の成長を鈍化させる要因はあるものの、国内においてはクラウド化の進展やデジタルインボイスの導入、またカーボンニュートラル(脱炭素化)の実現に向けてCO2排出量の算出にERPは有用であるなど、市場には成長要因も多く、今後も拡大基調にあるものと考える
■総市場におけるERPパッケージのライセンス売上高シェア
■記載項目
■レポートサマリー
●ERP及びCRM・SFAにおけるクラウド基盤利用状況の法人アンケート調査を実施(2022年)
●ERP及びCRM・SFAにおけるSaaS利用状況の法人アンケート調査を実施(2020年)
●ERP及びCRM・SFAにおけるSaaS利用状況の法人アンケート調査を実施(2018年)
■アナリストオピニオン
●ERP市場と「2025年」を巡る問題
●「次世代ERP」のリリースラッシュが起きているのはなぜか
●ERPをクラウド化する3つの理由
●戦略的な経営を実現するクラウドERP NetSuiteが支える企業変革
●ERPパッケージの顧客ロイヤルティ調査で人事・給与分野において最高評価を得たZeeM
■同カテゴリー
●[ソフトウェア]カテゴリ コンテンツ一覧
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調査対象:ERPパッケージベンダー
調査期間:2024年4月~7月
調査方法:当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、ならびに文献調査併用
※ERPパッケージライセンス市場とは:ERP(Enterprise Resource Planning)パッケージとは、財務会計、人事給与、販売管理、生産管理などの基幹業務データを統合する情報システムを構築するための基幹業務管理パッケージソフトウェアを指す。
本調査におけるERPパッケージライセンス市場は、ERPパッケージベンダーのライセンス売上高(クラウドのサブスクリプション売上高を含む)をエンドユーザ渡し価格ベースで算出した。なお、コンサルティング・SI等、保守サポートなどの関連売上高は含まない。
<市場に含まれる商品・サービス>
ERPパッケージ
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