矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

アナリストオピニオン
2017.10.25

The MARKETING NATION SUMMIT 2017

日本最大級のマーケティングカンファレンスへ

マルケトは2017年10月13日にグランドハイアット東京において「The MARKETING NATION SUMMIT 2017」を開催した。同イベントのテーマは「ENGAGEMENT ECONOMY 変革の、その先へ。~エンゲージメントエノコミー時代を勝ち抜くためには~」である。イベントの参加者はおよそ3,700人とマーケティングおよびマルケトへの関心の高さを感じられるイベントとなった。Keynoteで最初に登壇した米マルケトのCEO Steve Lucas氏も日本市場はいま同社にとって世界で2番目に大きな市場であると述べており、これを裏付けている。BtoB、BtoCを問わず適切なストーリーを適切なときに適切な人に届けることの重要性が国内市場にも浸透しはじめたと同時に、マルケトがそれを可能にするツールであるという認知も高まっているのであろう。

多様化するチャネル、嗜好により今後ますます顧客とのエンゲージメントを築くことが難しくなるであろうことに一抹の不安を感じる瞬間もあった。しかし、米マルケトのGVP, Strategy and Engagement Applications TK Kader氏から語られたMarketo ContentAIなど最先端のテクノロジーが可能な限り容易なパーソナライズ化とブランドの価値向上をもたらしてくれるであろうことを肌で感じることができた。

エンゲージメント企業 マルケト

マーケティングオートメーションの領域では、多くの企業が人材の獲得と育成を課題にしており、せっかく導入したマーケティングオートメーションツールを活用しきれていないケースもある。Keynoteに登壇した株式会社マルケトの代表取締役社長 福田康隆氏もこの点について言及している。しかし、これは短期的に解決できる課題ではない。そこに、同社から同課題解決のための新しい取り組みが発表された。そのひとつが「Marketo University」の国内本格展開である(2017年10月10日発表)。

「Marketo University」は企業の成長を推進するマーケティング人材の早期育成を支援するトレーニングコースで、協業や提携などを通じ、同社に蓄積されたマーケティング専業のエンゲージメントプラットフォーマーとしての高い専門性と革新的な技術を同社製品のユーザーやパートナーだけでなく、マーケティングや顧客とのエンゲージメントに興味を持つ一般にも広く開放したものである。米国では既に先行して同取り組みが始まっており、国内での早期展開が期待されていた。今回、それが実現したのである。

同トレーニングでは7つの無料トレーニングモジュールが利用可能になっており、このモジュールでマルケトインスタンスのセットアップから、エンゲージメントの高いコンテンツの作成まで、すべてを学ぶことができる。また各トレーニングモジュールは主に下記の4つの要素で構成されており、経験やスキルレベルに左右されることなく、すべてのマーケターがエンゲージメントの概念やそれをMarketo Engagement Platformで実施する方法を学習できる。

【図表:「Marketo University」のトレーニングモジュールにおける主要要素】

【図表:「Marketo University」のトレーニングモジュールにおける主要要素】

出所:株式会社マルケトより矢野経済研究所作成

国内外にわたる多種多様な業種業界、企業規模のエンゲージメントマーケティング活用事例に基づいたノウハウは国内のマーケターにとって、より多くの成功事例を生み出すことにつながるだけでなく、顧客のより良い体験にも結び付くだろう。

さらに、この取り組みを一歩進めたのが株式会社パソナとマルケトの協業である(2017年10月13日発表)。両社の協業は具体的には「パソナデジタルマーケティングアカデミー MA(マーケティングオートメーション)コース」(2017年10月24日開始)および「Marketo University大手町キャンパス」(2017年12月4日開始)という形で始まる。前者では、パソナが長年培ってきた人材育成のノウハウと、マルケトの「Marketo University」のコンテンツを組み合わせ、Tomorrow's Marketer(次世代マーケター)を志す人材や、マーケティング部門での就業を希望する人材などを対象に、MAの基礎的知識と業務の流れ、同分野の代表的なツールであるマルケトの操作・運用方法を学ぶことができる。また後者ではデジタルマーケティングに携わる人材を対象に、最新のツールや事例を学ぶセミナーや情報交換を行うリアルイベントを定期的に開催し、Tomorrow's Marketer(次世代マーケター)のコミュニティを形成していく。

【図表:パソナとマルケト 協業イメージ】

【図表:パソナとマルケト 協業イメージ】

出所:株式会社パソナ/株式会社マルケト

ここで懸念されるのが「Marketo University」や「パソナデジタルマーケティングアカデミー MA(マーケティングオートメーション)コース」、「Marketo University大手町キャンパス」で学んだ人材がマルケト以外のユーザーになる可能性である。これらで学ぶことのできるスキルには、エンゲージメントを構築するためのスキルや人としてのスキル(例えばコミュニケーション能力など)など、マルケト以外のツールを活用する場合にも必要となるものが含まれる。トレーニングなどでスキルアップを図った人材がマルケト以外のツールを選択する可能性も十分にあろう。

しかしこの点にこそマルケトの企業風土が現れていると言える。今回のイベントタイトルが「The MARKETING NATION」であるように(「Marketo NATION」ではない)、同社はユーザーやパートナーだけでなく、世界各国のマーケター(将来のマーケターも含む)がマーケティングに関する知見やノウハウを意見交換しながら、互いの専門性を高め合い、ビジネスを成長させるオープンなプラットフォームとなることを目指している。同社は自社とユーザー、パートナーだけでなく、ユーザーと顧客、またマーケター同士などあらゆる人々のエンゲージメントを築くことでマーケティング市場の活性化と携わる人々の成功を考えている企業であると感じることのできたイベントであった。

※本掲載内容は、あくまで筆者がThe MARKETING NATION SUMMIT 2017に参加した感想である。

小山博子

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