皆さんのお手元には一日に何通のDM(郵送・Eメール)が届きますか。またそのうちの何通に目を通されていますか。
ある日私の手元に届いたDMは16通。うち、目を通したDMは僅か5通でした。私はこの日半数以上のDMをタイトルや企業名を見ただけでゴミ箱に捨てたということになります。今回はこのDMについてITを交えて考えてみたいと思います。
矢野経済研究所では2014年4月に『CRM市場の実態と展望2014』を発刊致しました。当該資料内では2013年のCRM市場について言及していますが、2013年のCRM市場は、One to Oneマーケティングが注目された年と言えます。One to Oneマーケティングが注目された一因には企業で顧客の行動履歴を活用したいニーズが高まったことが挙げられます。従来企業がマーケティングに活用していたデータは属性情報のように製品やサービスの需要を喚起するには至らないデータが多くを占めていました。そのため、顧客には複数の企業から類似のイベントやキャンペーンに関する告知が次々と届き、企業は顧客の離反を懸念しなければならなくなりました。そこで企業は属性情報に顧客の行動履歴(例えばメールの開封率など)を掛け合わせたOne to Oneマーケティングに注目し、期待するようになったのです。
One to Oneマーケティングの実践はDMの受け手に「また来た」というネガティブ感情を抱かせないとともに、顧客のアクションを購買や高い購買可能性へと結びつけるメリットがあります。何故なら、当該顧客が度々閲覧している商品に関する情報や特典を届けることができるからです。
これは、全ての顧客に同じ(もしくは類似した)内容のDMを送ることと比較すると少ないコストでより効果的なDMを送ることに繋がります。つまり、One to Oneマーケティングは投資対効果の面で有用性があると言えるでしょう。とはいえ、顧客一人一人の状況に合った内容のメールを適切なタイミングで送ることは容易ではありません。そこでITの力を借りようということになります。
例えば、日本オラクルのEloquaは獲得したリードをもとに案件に結びつくまでのナーチャリング(見込み顧客の育成)フローをホワイトキャンバスに直感的に設計することができます。これにより「メールを送信」した後に「閲覧した顧客」がリンクをクリックしたか否かをトラッキングしたり、「閲覧しなかった顧客」には数日後に再度メールを送ってみたりなど、顧客の行動に合わせた最適な施策フローを描くことができます。またメールだけでなく、モバイルやソーシャルメディアと連携させた多角的なフローを設計することも可能です。またセールスフォース・ドットコムのExactTarget Marketing Cloud(一部機能は国内でも先行提供中/2014年4月現在)も顧客にメールを送信し受け手の反応の違いで次のアクションを変え、最終的には個客向けメールを送信するに至ります。当該サービスはメール、モバイル、ソーシャルメディア、Web、そして商品を通じて顧客とOne to Oneの関係を築くことを目的にしています。
このようにOne to Oneマーケティングを実現するソリューションとして期待されているのがマーケティング・オートメーションです。マーケティング・オートメーションは見込み顧客の興味・関心レベルや知識にレベルに見合ったメッセージをメールやソーシャルメディアなどで発信し、見込み顧客を案件に引き上げます。
2014年3月にはマーケティング・オートメーションソフトウェアの大手米Marketoが電通イーマーケティングワン、サンブリッジコーポレーションとの共同出資による合弁会社マルケトを設立し、クラウドベースのマーケティング・オートメーションMarketoの日本語版の提供を開始しました。同社は日本でのビジネス拡大に意欲を見せており、前述したEloquaやExactTarget Marketing Cloudなどとともにマーケティング・オートメーションの市場を切り拓いていくでしょう。マーケティング・オートメーションは導入企業による成功事例も増加基調にあり、2014年のCRM市場を牽引していく存在になることが見込まれます。顧客にとっても企業にとっても良い効果をもたらすであろうマーケティング・オートメーションにより購買意欲の活性化へと繋がることを期待します。
(小山博子)
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