矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

アナリストオピニオン
2016.11.29

BASEの事業戦略と将来展望

BASEは、ネットショップの開設・運営を最大限に簡易化したサービス「BASE(ベイス)」を運営しており、「BASE」のショップ開設数は30万店舗まで成長している。加えて、ECで利用できる決済サービスも展開しており、ユーザ向けのサービス「PAY ID」は20万アカウントを超える水準まで拡大している。直近では、GMOペイメントゲートウェイ、ベリトランス、ソフトバンク・ペイメント・サービスと並び、Apple Payに対応するなど、さらに事業拡大を図っている。注目を集めるBASEの取組み状況や今後の可能性について述べてみたい。

事業展開

①EC経済圏としてのBASE
BASEは、誰でも簡単にネットショップを開設できるサービスを提供しているが、その先に見据えるものは、決済サービスであった。決済サービスを提供するには、EC経済圏を拡大していくことが必須であるという考えのもと、BASE事業を推進している。BASEでは、数十万円、数百万円といった比較的小規模の売上のネットショップを自動的に獲得し続けるために、プロダクト作りに力を入れている。基本方針としては、効率的に加盟店を獲得するエコシステムを作りに注力している。直近では、BASEとして「モノを売る」ことへのチャレンジへの投資も行っており、モールアプリも展開している。

②加盟店向け決済サービス「PAY.JP」の提供
ECの次のステージとして、EC決済をシンプルにし、購入者が「あらゆるものを買いやすい」世界観の構築を目指して、2015年9月より、決済サービス「PAY.JP(ペイドットジェーピー)」を提供している。BASE社が提供するEC決済サービスは、シンプルなコードとスムーズな審査で、オンライン上に簡単に決済機能を追加できる開発者向けの決済サービスである。「申請に時間がかかる」「高い」「使いにくい」という複雑なオンライン決済サービスの問題を解決し、導入を圧倒的に簡単にすることにより、eコマースをシンプルにしている。スタートアップ向けの優遇プランを提供するなど、より導入しやすい決済サービスの提供を推進している。

③ユーザ向け決済サービス「PAY ID」の展開
決済サービスの次のステージとして、ユーザ向けの決済サービス「PAY ID」を提供している。一度、「PAY ID」にクレジットカード情報を登録すれば、「PAY ID」加盟店で利用可能となる。「PAY ID」加盟店であれば、その都度クレジットカードの登録が不要となるため、購入する際に入力する手間が一気に軽減し、ユーザのドロップ率の低下につながる。「BASE」の約30万店舗が、「PAY ID」の加盟店として、決済の導入を進めている。なお、「PAY ID」の利用者数は20万人に達している。

今後の可能性

BASEの加盟店が約30万店舗、「PAY ID」の利用者が20万人に達し、テクノロジーを活用した様々な事業展開の推進が予想される。弊社が予測する新規ビジネスとしては下記のようなサービスがあげられる。

①加盟店向けの与信ビジネス
トランザクションレンディングをはじめとした加盟店向けの与信サービスの展開は十分視野に入っているであろう。今後、30万店舗を超える加盟店がより簡単に、低金利でお金を借りることが出来るシステムを整備することで、小規模店舗のキャッシュフローの健全化を支援していくとみている。

②ユーザ向けの与信ビジネス
購買履歴などを活用した「PAY ID」ユーザ向けの与信サービスの展開も視野に入っているとみる。IDの情報をベースとして与信サービスを実施することで、新しい形の後払いサービスが登場するとみる。

③送金サービスの展開
IDをベースとした価値の移転が出来る仕組みを作り、送金サービスを提供することも選択肢に入っているとみる。技術的には、簡単にサービスの提供は可能であるが、法規制やユーザニーズを勘案した際に、いかに理想的なプロダクトを構築するかが重要になるであろう。

④メディア事業の展開
メディア事業の展開も選択肢としては、考えられるであろう。BASE加盟店、もしくは広告主へのPAY IDユーザの送客によるフィービジネスである。将来的に、BASEは膨大なデータを有することとなるため、ビックデータやAIの活用により、効果的な送客が可能になる。

⑤リアル店舗への決済サービスの展開
将来的には、リアル店舗への決済サービスの提供を推進せざるを得ないタイミングが来るであろう。BASE加盟店のリアル化に加え、スタートアップ企業へのリアル店舗での決済サービスの提供は対応が必要であり、マーケット規模としても無視できない。リアル展開に関して、どのような認証手段を採用するかやどのような加盟店の拡大手法を選択するかに注目していきたい。筆者としては、店舗に入って商品を持って出てくるだけで、決済が完了しているような決済サービスを期待したい。

以上、BASEの取組み状況や今後の展開の可能性を述べてきたが、アドテク領域からサービスの拡張を図ってきた「SPIKE」、決済プロダクトの開発力を有する「Stripe」、経験豊富なシリアルアントレプレナーが展開する「AnyPay」などの決済サービスが台頭するレッドオーシャンの中で、どのように成長していくかに注目していきたい。

高野淳司

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