矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

2018.04.10

【アナリストオピニオンのご紹介】キャッシュレス4.0~デジタル通貨の台頭によるキャッシュレス社会の進展~②

中央銀行によるデジタル通貨の発行には時間が要する

中央銀行が発行するフィアット通貨のデジタル通貨化の可能性を検討してみる。フィアット通貨のデジタル通貨での運用を検討している事例としては、フィンランド、シンガポール、ロシア、アメリカ、エストニア、ベネズエラ、中国、トルコなどの国々があげられる。各国ともにあまり詳細な情報開示はしていないが、大きく分けて二通りの発行方法がある。一つは、中央銀行が直接国民に対して発行する方法であり、もう一つは銀行を介してデジタル通貨を発行する方法である。

その際に問題になるのは、デジタル通貨のボラティリティ(価格変動率)であるが、ボラティリティをコントロールすることで、リスクの低いデジタル通貨を目指す方向になりそうである。また、中央銀行が発行するデジタル通貨は、ユニバーサルでだれでもストレスなく利用できる必要があるため、デジタル化への対応ができない利用者への対応を慎重に検討していく必要がある。それらの点から、本当の意味での通貨としてデジタル通貨が発行されるまでの道のりは長いとみる。

まずは、銀行間決済の合理化を目指すなど、現状の通貨の役割の一部を補完する目的で発行及び運用される程度に可能性が高い。

準フィアット型デジタル通貨の拡大がキャッシュレス化を推し進める

グローバル企業が発行する準フィアット型デジタル通貨、このレイヤーのデジタル通貨が最も、普及する可能性が高いとみている。ここでいう企業は一般的な企業ではなく、グローバルで事業展開をしており、プラットフォーマーとしてブランド力を有する企業を指している(例えば、国内では、トヨタや楽天、三菱UFJ銀行、海外では、AppleやAmazon、Alibaba、Tencent、Telegramのような企業がイメージされる)。

グローバル企業は、自社のグループ会社、取引先、そして顧客に対して強い影響力を持ち、発行するデジタル通貨は、独自の経済圏の内部では強い強制力を持つことができるため、フィアット通貨に近い役割を担うことができる。加えて、経済圏の内部でのお金の商流をすべてデジタル通貨に変えてしまえば、全ての商取引を合理的に管理することができ、ビジネスをフリクションレスにし、効率化及びコストダウンが可能となる。

もし、グローバル企業の経済圏の中で、デジタル通貨を還流させて、信用創造の仕組みを構築することが出来れば、銀行そのものが不要になり、完全に実経済を作り上げることができる。世界規模で事業を展開するプラットフォーマーが発行する準フィアット型デジタル通貨こそが、次世代の通貨として機能する可能性が高いと筆者は考えている。その際の世界観は、ドル、円、ユーロよりも、準フィアット型デジタル通貨の方が、影響力が大きくなり、新たな通貨システムとして機能する可能性がある。

(高野淳司)

○本シリーズの①は下記URLよりご覧いただけます

(https://www.yanoict.com/daily/show/id/70)

○全文は下記URLよりご覧いただけます

(https://www.yanoict.com/opinion/show/id/230)

高野 淳司(タカノ ジュンジ) 主任研究員
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