矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

レポートサマリー
2025.12.18

SDV時代における車載関連アプリケーション市場に関する調査を実施(2025年)

国内車載関連アプリケーションの市場規模は順調に拡大。構成比は車載プラットフォームが大半を占めるも、2030年には車載アプリケーションとほぼ半々になると予測。

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越 孝)は、国内の車載関連アプリケーション市場を調査し、OEM(自動車メーカー)やTier1・Tier2等(自動車部品サプライヤー)、ソフトウェア開発ベンダーにおける車載プラットフォームおよび車載アプリケーションの開発動向、E/Eアーキテクチャおよび車載アプリケーションビジネスの動向、今後の方向性等を明らかにした。
ここでは、2030年までの車載関連アプリケーション市場規模の推移・予測について、公表する。

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【図表:車載関連アプリケーション市場規模推移・予測】

【グラフ:車載関連アプリケーション市場規模推移・予測
  • 矢野経済研究所調べ
  • 注:2025年は見込値、2030年は予測値
  • 注:市場規模は、車載アプリケーション(情報系アプリ+ボディ系アプリ+車両制御およびADAS系アプリ)と車載プラットフォーム(ミドルウェア+ビークルOS+HAL(統合化層))の合算値
  • 注:OEM(自動車メーカー)やTier1・Tier2等(自動車部品サプライヤー)の自社開発ソフトウェア費用、研究開発費、設備投資費用や、ソフトウェア開発ベンダー(協力会社)からOEMやTier1・Tier2等への渡し価格ベースのソフトウェア金額規模を対象として、算出した。

【図表:車載プラットフォーム及び車載アプリケーションにおけるアーキテクチャの変遷】

【図:車載プラットフォーム及び車載アプリケーションにおけるアーキテクチャの変遷】
  • 矢野経済研究所作成

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車載関連アプリケーション市場の概況

SDV(Software Defined Vehicle)の実現に向けた研究開発により、車は単なる移動手段としての位置づけから、運転者や同乗者に対して情報提供や操作機能を提供する存在に進化する。車載アプリケーションは車両内で動作するソフトウェアとして、運転することでワクワクする体験ができる価値の創出を実現しようとしている。

本調査における車載関連アプリケーション市場は、車載アプリケーション(情報系アプリ+ボディ系アプリ+車両制御およびADAS系アプリ)および車載プラットフォーム(ミドルウェア+ビークルOS+HAL(統合化層))を対象としている。
車載関連アプリケーション市場規模は?、2022年が前年比198.1%の103億円、2023年は同285.4%の294億円、2024年は同193.2%の568億円と順調に拡大を続けている。OEM(自動車メーカー)各社はまず車載プラットフォームの開発を継続的に進めていることから、2024年の車載アプリケーションおよび車載プラットフォームの構成比は、車載アプリケーションが構成比25%、車載プラットフォームが同75%と推計した。

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車載関連アプリケーション市場の注目トピック

■車載プラットフォーム及び車載アプリケーションにおけるアーキテクチャの変遷
本調査では、2025年/2028年/2030年における車載関連アプリケーションに関するアーキテクチャ(Architecture)の予測を行った。
アーキテクチャの模式図変遷が示すように、2025年には多くのOEM(自動車メーカー)においてECU(Electronic Control Unit)ごとに機能分割したドメインベースのE/E(Electrical/Electronic)アーキテクチャを採用する形となる。他方、車載プラットフォームも機能ごとにサイロ化(連携が取れずに分断されている状態)しており、OTA(Over The Air:無線データ通信によるアプリ更新)などを含めて未成熟な状態にある。

2028年になると、従来ボディ系や情報系をカバーしてきた、ドメイン間の連携をとる統合化層(HAL:Hardware Abstraction Layer)のカバー範囲が、ADAS系(Advanced Driver-Assistance Systems:先進運転支援システム)まで広がっていく見込みである。ADAS系は車両制御系に関与するためASIL(Automotive Safety Integrity Level:自動車安全水準)上、CおよびDにあたり、実現に際してはミドルウェアの役割が極めて重要となるため、ソフトウェア開発ベンダーと連携した動きが求められ、その一環としてSoC(System on Chip)などの利用も出てくると考えられる。

2030年には、ボディ系のハードウェアが従来のドメイン型からゾーン型へと移行していく点が最も大きな変化となる。現状、SoCは高額であり、費用対効果の面から搭載は難しいのが実情である。しかし、2030年までにはSoCの価格低下が進むとみており、車両4か所(前方・右側/前方・左側/後方・右側/後方・左側)にゾーンECUとして分散・搭載することが可能になると予測する。

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車載関連アプリケーション市場の将来展望

2025年の車載関連アプリケーション市場規模は、前年比188.0%の1,068億円となる見込みである。内訳をみると、車載アプリケーションが構成比30%、車載プラットフォームが同70%となった。
2025年のアーキテクチャの模式図のように、車載プラットフォームは情報系やボディ系の一部をカバーしたものとなっており、未成熟ではあるものの、OEM(自動車メーカー)各社は完成形に向けて開発を進めている。OEM各社は併せて、Member API(Application Programming Interface)やPublic APIを活用した車載アプリケーションを中心に複数のアプリケーションの開発を進めており、ラインアップを増やすべく取り組んでいる状況にある。

こうした傾向は変わらないものの、2028年ごろには統合化層(HAL)のカバー範囲が広がり、情報系やボディ系に留まらず、ADAS系もカバーし、ミドルウェアの統合化を含めて概ね完成形に近づいていく。
車載プラットフォームの研究開発は落ち着いていく一方、各種APIを活用した車載アプリケーションの整備に向けて開発を進めていく必要が高まり、両者の構成比が近づく。2030年には車載プラットフォームが構成比51%、車載アプリケーションが同49%とほぼ半々になるものと見込む。
そうしたことから、2030年の車載関連アプリケーション市場規模は6,012億円に達するものと予測する。

※API(Application Programming Interface)の区分について
Private APIとは、OEMやTier1・Tier2等(自動車部品サプライヤー)がソフトウェアのアップデート等を行うためのAPIをさす。
Member APIとは、OEMやTier1・Tier2等に加えて、OEMから認証等を受けたサードパーティがアップデート等を行うためのAPIをさす。
Public APIとは、OEMやTier1・Tier2等のほか、幅広いサードパーティがアップデート等を行うためのAPIをさす。

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参考:このレポートに掲載されている主なデータ一覧

  • 自動車における外部環境の変化(全体像)
  • MIC(モビリティ・インフォメーション・サークル )
  • 車載アプリケーションの範囲
  • 主たるプラットフォームサービス
  • T-Connectにおいて提供するアプリケーション
  • T-Connectにおけるボディ系アプリケーション
  • NissanConnectにおいて提供するアプリケーション
  • Carplayにおいて提供するアプリケーション
  • Android Autoにおいて提供するアプリケーション
  • アプリケーションにおけるAI活用例
  • アプリケーションにおけるAI活用例
  • アプリケーションに関する4区分
  • ボディ系の構成要素
  • IVI+HMIの構成要素
  • OTAの構成要素
  • クルマの研究/開発の一般的なフロー詳細
  • ハードウェア抽象層における構成要素
  • ミドルウェア層における構成要素
  • 主たるビークルOS
  • 3つのAPI
  • 3つのAPIに即したアプリケーション
  • APIに関する大手OEMの見解
  • 2018年以前の車載プラットフォームとアプリケーション
  • 2025年におけるAPIごとのカバー範囲
  • 2025年の車載プラットフォームとアプリケーション
  • 2028年におけるAPIごとのカバー範囲
  • 2028年の車載プラットフォームとアプリケーション
  • 2030年におけるAPIごとのカバー範囲
  • 2030年の車載プラットフォームとアプリケーション
  • 考えうるアプリケーションを巡るビジネスモデル
  • 静止画における走行中の表示可否
  • FM多重放送での文字情報表示に関する走行中の表示可否
  • アプリケーションビジネスに関する大手OEMの見解
  • 異業種による参入状況
  • アプリケーション区分に即したAFEELAの主たる機能の概要
  • AFEELA Insuranceにおいて保険商品と併せて提供するサービス概要
  • サプライヤー、ITベンダーによるアプリビジネスに関する見解
  • ネイティブアプリ提供に係る売上高(直近3年の事業年度の平均値)
  • モバイルブラウザ上のウェブサービス提供に係る売上高(直近3年の事業年度の平均値)
  • 車載関連アプリケーション市場規模推移・予測(2021年~2030年)
  • 車載関連アプリケーションと車載プラットフォームの構成比推移・予測(2021年~2030年)
  • 車載アプリケーションに占める情報系アプリケーション市場規模推移・予測(2021年~2030年)
  • 車載アプリケーションに占める情報系アプリケーション市場規模推移・予測(折れ線グラフ)
  • トヨタ自動車
  • 日産自動車
  • 本田技研工業
  • ASTEMO
  • Amazon Web Services
  • イーソル
  • Aeris Communications
  • NTTデータ
  • Automotive Grade Linux(AGL)
  • サンダーソフト(中科創達)
  • パナソニック アドバンストテクノロジー
  • BlackBerry(QNX)
  • ボッシュ
  • WirelessCar Japan

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調査要綱

調査対象:OEM(自動車メーカー)、自動車部品サプライヤー(Tier1・Tier2等)、ソフトウェア開発ベンダー
調査期間:2025年9月~11月
調査方法:当社専門研究員による直接面談(オンラインを含む)、ならびに文献調査併用

※車載関連アプリケーション市場とは:
本調査における車載関連アプリケーション市場は、車載アプリケーション(情報系アプリ+ボディ系アプリ+車両制御およびADAS系アプリ)と車載プラットフォーム(ミドルウェア+ビークルOS+HAL(統合化層))の合算値から成る。
市場規模は、OEM(自動車メーカー)やTier1・Tier2等(自動車部品サプライヤー)の自社開発ソフトウェア費用、研究開発費、設備投資費用や、ソフトウェア開発ベンダー(協力会社)からOEMやTier1・Tier2等への渡し価格ベースのソフトウェア金額規模を対象として、算出した。

車載アプリケーションは、外部アプリケーションおよびパートナー/プライベートアプリケーションから構成される。 外部アプリケーションは、①音楽・オーディオ、②ナビゲーション、③コミュニケーション、④コンシェルジュ、⑤車両外部情報収集・発信、⑥スマホなど情報共有、⑦テレマティクス保険、⑧メッセージ交換、⑨その他に区分される。
また、パートナー/プライベートアプリケーションは、OEMなどのプラットフォームサービスにおいて提供している、①ADAS(Advanced Driver-Assistance Systems:先進運転支援システム)、②HMI(Human Machine Interface)、③OTA(Over The Air:無線データ通信によるアプリ更新)、④リモートキーなどの遠隔操作・監視、⑤車両内部情報収集・発信などが含まれる。

車載プラットフォームについては、ミドルウエアおよびビークルOS(Operating System)、HALが含まれる。
※ HAL(Hardware Abstraction Layer:統合化層)とは、コンピュータのハードウェアとそのコンピュータ上で動作するソフトウェアの間に存在するLayerで、ハードウェア毎の違いを吸収する役割を担う。

<市場に含まれる商品・サービス>
車載アプリケーション、車載プラットフォーム

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ITを通じてあらゆる業界が連携してきています。こうした中、有望な業界は?競合・協業しうる企業は?参入障壁は?・・・など戦略を策定、実行に移す上でさまざまな課題が出てきます。現場を回り実態を掴み、必要な情報のご提供や戦略策定のご支援をさせて頂きたいと思います。お気軽にお声掛け頂ければと思います。

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