矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

レポートサマリー
2025.10.09

業務用車両向けテレマティクスサービスに関する調査を実施(2025年)

2024年度のトラック・バス向けデジタルタコグラフの出荷台数は78,800台と推計。貸切バスの既存車両への義務化による駆け込み需要に、自主的な装置導入も市場を下支えした。

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内の業務用車両向けテレマティクスサービス市場を調査し、参入企業の動向や将来展望について明らかにした。ここでは、トラック・バス向けデジタルタコグラフ市場規模予測について、公表する。

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【図表:トラック・バス向けデジタルタコグラフ市場規模予測】

【グラフ・表:トラック・バス向けデジタルタコグラフ市場規模予測】
  • 矢野経済研究所調べ
  • 注:メーカー出荷台数ベース
  • 注:業務用車両のうちタクシーは除外し、トラックおよびバス向け、後付け型デジタルタコグラフを対象とした。
  • 注:2025~2029年度は予測値、CAGRは2024年度から当該年度までの年平均成長率

 

業務用車両向けテレマティクスサービスの概況

2024年度のトラック・バス向けデジタルタコグラフ(以下、デジタコ)市場は、メーカー出荷台数ベースで78,800台と推計する。

デジタコは、車両の運行状況を自動的に記録する装置であり、速度・走行距離・運転時間などのデータをデジタル形式で保存できるタイプのタコグラフである。従来のアナログ式タコグラフに比べて精度が高く、記録の改ざんが困難であることから、安全運転管理や労働時間の把握において重要な役割を果たしている。2024年度の市場の拡大要因として、貸切バスの既存車両に対するデジタコ装着義務化(2025年4月施行)を控えた駆け込み需要の発生を挙げることができる。貸切バスにおいては、新規登録車両が2024年4月から、既存車両が2025年4月からデジタコ装着が義務化されており、義務化に向けた導入が2024年度に集中した。
加えて、制度対応にとどまらない自主的な装置導入も市場を下支えしたといえる。特に大手の貸切バス事業者を中心に、通信機能を活用した運行管理の効率化を目的とした通信型デジタコへの移行が一定の買い替え需要を創出したと考える。

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業務用車両向けテレマティクスサービスの注目トピック

■デジタルタコグラフは記録装置から業務支援インフラへと拡張
デジタルタコグラフの機能や用途が従来の記録装置としての役割から、運行管理の高度化や業務効率化を支援する総合的な業務支援インフラへと進化している。
AI技術やデータ分析の活用により、事故予兆の検知や教育支援、経営判断への応用が可能となり、企業の競争力向上に直結するツールとして認識が変化しつつある。
特に大手の運輸事業者を中心に、単なる法令遵守から一歩進んで、通信機能を活用した運行管理の高度化を目的とした通信型デジタコへの移行が進む動きがある。運行管理の高度化を目指す動きが他の事業者にも広がり、通信型デジタコへの需要拡大につながっていくことが期待できる。

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業務用車両向けテレマティクスサービスの将来展望

2025年度のトラック・バス向けデジタルタコグラフ市場は、メーカー出荷台数ベースで81,200台(前年度比103.0%)と予測する。
貸切バスの既存車両への装着義務化に伴う駆け込み需要が一巡し、成長率は一時的に鈍化するものの、物流関連2法の施行開始により荷主企業における物流効率化への意識が高まり始める。加えて、運行管理の客観性確保に対する意識の高まりもあり、デジタル記録や通信型デジタコへの関心が業界全体で醸成されると考える。

2026年度から2027年度にかけては、これまで高まった気運を受けて通信型デジタコ導入が本格化する期間となる。国土交通省や業界団体による啓発活動や補助金施策が強化され、義務化対象外の事業者にも導入意欲が広がる可能性がある。加えて、物流関連2法により特定事業者(一定規模以上の運送事業者など)への導入の本格化や荷主企業による委託先管理の強化なども相まって、従来、義務化対象外だった事業者での導入が拡大すると見込みである。

とりわけ、2027年度は国土交通省の装着率目標の達成に向けた取り組みが進展すると考えられ、2027年度のトラックバス向けデジタルタコグラフ市場は89,000台(前年度比104.6%)と堅調な成長を維持すると予測する。通信型デジタコでは、単なる制度対応にとどまらず、運行管理の高度化や業務改善、安全運行支援といった付加価値の提供を目的とした導入が拡大する見通しで、特に大手の運輸事業者を中心に、より高度な機能を持つ通信型デジタコへの移行が加速すると考える。

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参考:このレポートに掲載されている主なデータ一覧

  • タコグラフ装着義務化の変遷
  • タコグラフ装着義務化車両
  • 車両別ドラレコ義務化状況
  • バスの主な交通安全ルール
  • タクシーの主な交通安全ルール
  • 社有車(白ナンバー)の交通安全ルール
  • アルコールチェックの義務化の流れ
  • 緑ナンバーと白ナンバーの主な制度的違い
  • 改善基準告示2024年改正の主な内容
  • 物流関連2法の主な改正内容とテレマティクスに与える影響
  • 主要制度の概要とテレマティクスとの関係性
  • トラック運送事業の事業形態
  • トラック運送事業の規模別事業者数
  • 緑ナンバー・白ナンバー別トラック保有台数
  • 普通トラック 新車販売台数
  • 主なバスの種類
  • バス保有台数
  • デジタコ装着バス
  • ドラレコ装着バス
  • 全国の事業者数及び車両数の推移
  • ビジネスユース車両の保有台数
  • ビジネスユース車両の保有台数内訳
  • デジタコ出荷台数 推移
  • デジタコ出荷台数 推移(再掲)
  • デジタコ出荷台数推移の時系列による整理
  • フォークリスト向けのドライブレコーダーの提供事業者
  • 令和7年度 運行管理の高度化認定機器一覧(デジタル式運行記録計)
  • 令和7年度 運行管理の高度化認定機器一覧(ドライブレコーダー)
  • 令和7年度 運行管理の高度化認定機器一覧(デジドラ一体型)
  • 令和7年度 運行管理の高度化認定機器一覧(通信機能付きデジドラ一体型)
  • 2024年度トラック・バス向けデジタコ出荷台数シェア
  • 2024年度トラック・バス向け通信型デジタコ出荷台数シェア
  • 出荷台数ベースにみる通信型デジタコの割合
  • 主要事業者の製品概要
  • 主要事業者の事業戦略
  • 主要事業者の特長・強み
  • 主要事業者の導入ユーザーの傾向
  • 主要事業者の販売・流通体制および販売促進策
  • 主要事業者における製品の拡張・技術開発動向
  • 主要事業者が抱える課題感
  • 主要事業者の将来展望
  • 損保会社による法人向けテレマティクスサービスの概要
  • 主要事業者の主な製品
  • 主要事業者の事業戦略
  • 主要事業者の特長・強み
  • 主要事業者の導入ユーザーの傾向
  • 主要事業者の販売・流通体制および販売促進策
  • 主要事業者の製品の開発・技術開発動向
  • 主要事業者が抱える課題感
  • 主要事業者の将来展望
  • いすゞ自動車株式会社
  • 株式会社システック
  • 株式会社データ・テック
  • 株式会社トランストロン
  • 矢崎総業株式会社・矢崎エナジーシステム株式会社
  • D-TEGジャパン株式会社
  • 株式会社ユピテル
  • 株式会社アクシス
  • 株式会社キャリオット
  • GOドライブ株式会社
  • 株式会社スマートドライブ
  • 都築電気株式会社
  • Nauto Japan合同会社
  • NTTドコモビジネス株式会社
  • パイオニア株式会社
  • パナソニックカーエレクトロニクス株式会社
  • BIPROGY株式会社

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関連リンク

■デイリーコラム
【発刊裏話】「2025年度版 業務用車両向けテレマティクスサービス市場の実態と展望 ~デジタコ・ドラレコを中心とした動態管理システムの動向分析~」
【アナリスト便り】『2025年度版 業務用車両向けテレマティクスサービス市場の実態と展望 ~デジタコ・ドラレコを中心とした動態管理システムの動向分析~』を発刊

■同カテゴリー
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   Aパターン
  • 注目セグメント別の動向
    • 市場の成長要因:制度の後押しと通信型デジタコへの移行で広がる導入の動き
    • 市場の阻害要因:コスト負担と制度の方向性が見えにくいことによる慎重姿勢
  • 注目トピックの追加情報
    • ドライブレコーダーは、映像記録の枠を超え、安全支援ツールとしての役割を強める
    • 単なる運行管理から業務支援基盤へと進化する動態管理ソリューション
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調査要綱

調査対象:デジタルタコグラフ提供事業者、ドライブレコーダー提供事業者、動態管理ソリューション提供事業者
調査期間:2025年6月~9月
調査方法:当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、ならびに文献調査併用

※デジタルタコグラフ市場とは:タコグラフとは、車両の走行距離・運転時間・速度などの運行状況を記録する装置であり、記録方式によりアナログ式(アナタコ)とデジタル式(デジタコ)に分類される。 本調査ではデジタルタコグラフのみを対象とし、アナログタコグラフは除外している。
なお、対象車両は業務用車両のうち、タクシーは除外し、トラックおよびバス向け、後付け型のデジタルタコグラフを対象とした。本調査によるデジタルタコグラフ市場では開発・製造メーカーによる出荷台数を算出した。

<市場に含まれる商品・サービス>
デジタルタコグラフ

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小田 沙樹子(オダサキコ) 研究員
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