株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内のeKYC/当人認証ソリューション市場を調査し、現況、参入企業の動向、および将来展望を明らかにした。
【図表:eKYC/当人認証ソリューション市場規模・推移】
eKYC(electronic Know Your Customer)とは、非対面、デジタルによるオンライン上で行う本人確認サービスである。2018年11月の犯罪による収益の移転防止に関する法律(以下、犯収法)改正を契機として、金融機関を中心にeKYCサービス導入の検討が進み、既に半数近くの銀行が導入済となっている。
また、当人認証ソリューションは、犯収法や携帯電話不正利用防止法等の法令に則った、eKYCによる本人確認済情報を活用した当人認証手段であり、本人確認の簡素化や継続的な顧客確認が可能となるため、eKYC市場の拡大につながる重要な領域として、eKYCサービス提供事業者各社の取組みが増加傾向にある。
2022年度の国内eKYC/当人認証ソリューション市場規模(事業者売上高ベース)は、前年度比122.1%の69億1,800万円となった。
■公的個人認証の利用拡大とeKYC市場に与える影響
オンラインでの本人確認においては、犯収法にて定める本人確認方法「ワ」に該当する公的個人認証の利用が増加している。2023年4月末現在でマイナンバーカードの交付数は約8,700万枚となり、交付枚数率は69.8%となった。
公的個人認証は、マイナンバーカードの電子証明機能を活用することで本人確認を行う手法であり、スマートフォンでマイナンバーカードのICチップを読み取ることで手続きを行う。ICチップは偽造が困難であることから、不正防止の観点でも活用が期待されている。
従来、本人確認に利用されてきた健康保険証や運転免許証は、今後マイナンバーカードへの一本化が発表されている。公的個人認証が今後eKYCの中心になると考えられ、eKYCサービス提供事業者の方針や、eKYCサービスを導入する事業者の公的個人認証への対応に注目が集まっている。
2026年度のeKYC/当人認証ソリューション市場規模は197億5,700万円に達すると予測する。
金融機関においては、引き続きeKYCサービスの導入・活用が進むとみる。現在、都市銀行では、全ての銀行で導入済あるいは導入が決定している。地方銀行においても、62行中36行(2023年5月末現在)、第二地方銀行では37行中18行(2023年5月末現在)ほど導入されており、残りの銀行においても今後導入が進む見通しである。
また、金融機関において、様々な手続きにおいてeKYC活用が進むと考えられる。現在は口座開設等の取引開始時の本人確認に利用されているが、金融機関でeKYCの利用分野を拡大していく動きがある。銀行においては、対面での取引をオンラインへ移行する傾向にあり、オンラインでの住所変更や電話番号等の変更などの諸手続きにeKYCの活用を検討する銀行が増加している。
■アナリストオピニオン
●公的個人認証がeKYCの中心に デジタル庁の動向
●オンライン上での本人確認「eKYC」の活用進む
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調査対象:eKYCサービス提供事業者、通信事業者
調査期間:2023年4月~6月
調査方法:当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話による調査、ならびに文献調査併用
※eKYC/当人認証ソリューション市場とは:
「eKYC」とはelectronic Know Your Customerの略であり、非対面、デジタルによるオンライン上で行う本人確認サービスを指す。2018年11月、犯罪による収益の移転防止に関する法律(犯収法)の改正により、非対面時の本人確認手法の変更がなされ、郵送等が不要な、オンラインで完全に完結する本人確認手法が認められることとなった。
また、犯収法や携帯電話不正利用防止法等の法令に則った、eKYCによる本人確認済情報を照会し確認することで、別の場所で新たに本人確認サービスを利用する時の本人確認の簡略化や継続的な顧客確認が可能となる。本調査における「当人認証ソリューション」とは、eKYCによる本人確認済情報を活用した、当人認証を行うソリューションを指す。
本調査におけるeKYC/当人認証ソリューション市場とは、eKYCサービス提供事業者および当人認証ソリューション提供事業者の当該事業売上髙を対象として、市場規模を算出した。
<市場に含まれる商品・サービス>
eKYC、公的個人認証、当人認証
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