矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

アナリストオピニオン
2021.05.24

オンライン上での本人確認「eKYC」の活用進む

eKYCとは

近年「eKYC」を導入する企業が増加している。ここでは、eKYCに関連する法改正の状況や本人確認手法について紹介する。eKYCとは、electronic Know Your Customerの略であり、オンライン等の非対面・デジタル上で行う本人確認を指す。従来、対面での確認や本確認書類の写しの郵送等で行っていた本人確認をWEB上やスマホアプリ等で行う本人確認手法である。スマートフォンのカメラ等を用いて、運転免許証などの本人確認書類の写真および自身の容貌等を撮影することで、本人であることの確認を行う。

eKYCの活用に関する法改正の状況

従来、本人確認が必要な際は店頭などで担当者が目視で確認するか、対面でない手法の場合、本人確認書類のコピーを郵送で送付する、画像をアップロードするという方法で本人確認書類の提出が必要であった。対面でない手法の場合、後日、転送不要郵便を本人宛に送付し、受取が確認された時点で本人確認が完了するなど、本人確認までに手間・時間を要する。

2018年11月に犯罪収益移転防止法が改正され、法令上で必要な本人確認にeKYCが認められることとなった。これにより専用ソフトウェアにて本人確認書類を読み込むことで、本人確認が可能となる。本人確認が完了するまでの時間の短縮が見込まれ、郵便の送付も不要となった。

また、2020年4月には従来の本人確認手法を厳格化する法改正が施行された。eKYCを使わない際の非対面による本人確認の際の要件が増え、本人確認を厳格に行う傾向にあるといえる。
加えて、古物営業法、携帯電話不正利用防止法においても法改正がなされ、オンライン上での本人確認は幅広い業種において認められる流れにあるといえる。

eKYCの本人確認手法について

ここでは、犯収法にて認められている本人確認手法を紹介するとともに、eKYCによる本人確認について記載する。法令上認められた本人確認手法は犯収法施行規則第六条一項1号に記載されている。

【本人確認手法一覧】

【本人確認手法一覧】

矢野経済研究所作成

上記の手法のうち「ホ」「へ」「ト」がeKYCに該当する。

(1)確認手法の「ホ」
「ホ」においては、専用のソフトウェアによる写真付き本人確認書類の写しの送信に加えて、自身の容貌を送信することで本人確認が完了する。従来の確認方法と異なる点は、「専用のソフトウェア」で送信するという点である。従来の画像のアップロードとは異なり、ソフトウェア上で本人確認書類を撮影することにより、加工した画像のアップロード等の不正を防ぐことが可能となる。また、その際、斜めの角度から本人確認書類の撮影を求めることで厚みを認識し、真贋判定も行う。加えて、本人の容貌の撮影を求められる。ベンダーによって要件は異なるものの「まばたきをする」「手を振る」「首を傾ける」など本人がその場にいないと対応できない要求がされ、他人の成りすましを弾く仕組みとなっている。
(2)確認手法の「ヘ」
「へ」においては、容貌の送信については「ホ」と同様であり、加えて専用のソフトウェアによるICチップ付き本人確認書類のIC情報の送信が求められる。運転免許証・マイナンバーカード等に搭載されているICチップの情報を読み取り送信することで本人確認が完了する。ICチップは偽造が困難であり、読み取りには本人が定めた暗証番号が必要なことから不正も防止できる。
(3)確認手法の「ト」
書類の送信あるいはICチップ情報の送信に加えて、銀行等の金融機関あるいはクレジットカード会社に本人特定事項を確認済みであることを確認することで本人確認が完了する。「本人特定事項を確認済みであることの確認」とは、銀行・クレジットカード情報との照合確認か既存銀行口座への振込確認を指す。既に金融機関と取引がある顧客に対して適用可能な本人確認手法であり、金融機関との連携により本人確認を行う。
本人の容貌撮影データではなく、金融機関との連携が必要となる点が「ホ」「ヘ」と異なる。

「ホ」「ヘ」「ト」が他の非対面時の手法「チ」「リ」「ヌ」等と比較して優れているのは、転送不要郵便の送付が必要ない点である。「チ」「リ」「ヌ」においては、転送不要郵便が顧客に届いた時点で本人確認が完了することとなるため、本人確認までに時間を要する。多忙などの理由により郵便が受け取れない場合、受け取るまでに本人確認手続きが完了しない。

一方でeKYCによる手法「ホ」「ヘ」「ト」の郵送が不要となり、本人確認までの時間が短縮可能となる。本人確認完了までの期間は事業者がサービスを提供可能になるまでの期間と等しい。本人確認完了までの時間を短くすることで、迅速なサービス提供が可能となる。特に、証券や仮想通貨取引など時間によって値動きが激しい取引は、時間をかけることが、顧客の離脱率を高める懸念もあり、そういった業種でのeKYC導入が見込まれる。

また、各手法の項目に記載したように、従来の手法と比較してよりセキュリティ面の向上が見込まれ、不正防止が期待できる。

現在は犯罪収益移転防止法にて本人確認要件が定められている金融業界において導入が進んでいるが、今後非金融業界においても採用が見込まれる。関連ベンダの実績においても、シェアリングエコノミーやソーシャルネットワーク等での導入が進んでおり、様々な業種で活用されるだろう。

石神明広

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■レポートサマリー
eKYC市場に関する調査を実施(2021年)

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石神 明広(イシガミ アキヒロ) 研究員
現在の市場の分析だけでなく、それによって何がもたらされるか、どう変化していくかといった将来像に目を向けていきたいと考えております。一歩踏み込んだ調査を心掛け、皆様のお役に立てるよう精進を重ねて参ります。

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