株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内の商用車向けテレマティクス市場に関する調査を実施し、業界動向、企業動向、将来展望などを明らかにした。ここでは、商用車向けデジタルタコグラフ・ドライブレコーダーの出荷台数予測について、公表する。
【図表:商用車向けデジタルタコグラフ・ドライブレコーダー出荷台数推移・予測】
2020年度のデジタルタコグラフ(以下、デジタコ)国内出荷台数は、メーカー出荷台数ベースで前年度比93.0%の17万2千台にとどまった。主な要因としては、新型コロナウイルス感染拡大による経済活動の停滞で、トラックの販売台数が低調に推移したことが挙げられる。一方、2020年度のドライブレコーダー(以下、ドラレコ)の出荷台数(同ベース)は、同159.0%の14万台と大きく伸長した。あおり運転などの危険運転が社会的に広く認知されたことで、装着率の低かった商用車、中でも小型トラックへの導入が進んでいる。2021年度は、デジタコの出荷台数が同101.7%の17万5千台、ドラレコは同107.1%の15万台の見込みである。
■DX(デジタルトランスフォーメーション)への期待
日本国内の物流の根幹を担うトラック運送事業者ではあるが、ドライバーの人手不足や積載効率の低下などの課題に直面しており、業務のデジタル化実現による効率化にかねてから取り組んでいるところである。 トラック運送事業者は、異なる荷主の異なる貨物をそれぞれ輸送するため、ワンサイズ・フィッツ・オール(一つでどんな場面にも通用する)のシステム化が困難であるのに加え、小規模事業者が大半を占めることから、これまでデジタル化が進んでこなかった。一方、バス・タクシー事業者は乗客を輸送するという点において共通しており、システム化の余地が大きい。
また、労働基準法の改正によって、より複雑化する労務管理の環境下では、日々の運行記録やドライバーの乗務記録の重要性がさらに高まることになる。トラック運送事業者のドライバーの勤務体系には、労働時間や拘束時間、休憩時間、休息期間と複数の概念が存在し、荷待ち時間を休憩とする場合などグレーな部分も多い。従来、36(さぶろく)協定によって形骸化されていた労働時間に対する規制が厳格化されることもあり、デジタコが労務管理の切り札として、今後のDX実現につながる大きなチャンスと言える。
宅配クライシスに代表される物流業の課題としては、ドライバー不足と長期的な輸送効率の低下があげられる。商用車市場そのものは安定的な推移が期待されており、それに伴ってDX(デジタルトランスフォーメーション)をキーワードとして、テレマティクス機器がそのけん引役となる見通しである。
デジタコは装着義務の対象拡大にともなって市場の拡大が予測されたが、それほど大きく拡大しておらず、それがゆえに反動も少ない。トラックの装着需要も落ち着くとみられており、安定的に推移し、前年度比1~2%程度の成長になる見込みである。一方、ドラレコは2020年度に大きく販売が伸長したが、今後はデジタコと同水準にまで装着率が上昇するとともに落ち着く見通しである。運行動態管理システムにより収集したデータの活用は未だこれからの状況にある。サービス事業者各社は、複数業種にまたがったデータを取得できる強みを活かしたサービス提供の機会を探っている。
■レポートサマリー
●国内の業務用車両/MaaS車両向けコネクテッドサービス市場に関する調査を実施(2021年)
■アナリストオピニオン
●海外ITベンダを迎え討つ、スマホ&白ナンバー時代の商用車テレマティクス市場
●“広告”“製造”主従逆転の中、業界ノウハウが生きる商用車テレマティクス
■同カテゴリー
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調査対象:商用車向けテレマティクス/コネクテッドカー関連メーカー
調査期間:2021年6月~9月
調査方法:当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、ならびに文献調査併用
<市場に含まれる商品・サービス>
デジタルタコグラフ、ドライブレコーダー等
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