矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

レポートサマリー
2022.02.28

ブロックチェーン(Blockchain)活用サービス市場に関する調査を実施(2021年)

ブロックチェーンの活用は、トレーサビリティ、認証、NFTの3領域がが牽引役。複数領域での商用化に向けた活用事例の登場が普及速度を高めるカギに。

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内ブロックチェーン活用サービス市場を調査し、現況や領域別の動向、活用事例および将来展望を明らかにした。

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【図表:国内ブロックチェーン活用サービス市場規模推移予測】

【図表:国内ブロックチェーン活用サービス市場規模推移予測】
  • 矢野経済研究所調べ
  • 注:事業者売上高ベース
  • 注:2021年度見込値、2022年度以降予測値

 

ブロックチェーン(Blockchain)活用サービス市場の概況

2021年度のブロックチェーン活用サービス市場規模(事業者売上高ベース)は783億3,000万円となる見込みである。2019年度までは、大手企業を中心にブロックチェーンの特性などを学んでいた最初期のフェーズにあった。実際に実証実験の多くが「お試し」の状況にあり、試行錯誤をしながらブロックチェーンに係る知見を吸収してきたため、2019年度の市場規模は171億8,000万円に留まった。

一方、前年までのブロックチェーンの特性や適用先に関する知見などの蓄積を受けて、実証実験の質が変化してきており、お試しから効果検証に向けて、より本番環境での運用を想定した検証へと進む大手事業者が出てきている。

導入領域別では、特に商流管理やデジタルIDをはじめとした認証を筆頭に、非金融領域の存在感が徐々に高まりをみせており、大手企業を中心に自治体や業界団体などでも積極的に実証実験に取組んでいる。特に2021年度からはトレーサビリティ(流通経路の追跡確認)や認証、NFTを中心にブロックチェーンの活用が広がっている。

※NFT・・・Non-Fungible Tokenの略。ブロックチェーン上に記録された代替不可能なデジタル資産の所有権をさす。現在はゲームのキャラクターやスポーツ選手などのデジタルトレーディングカード、デジタルアートなど、コンテンツ分野での活用が目立つ。

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ブロックチェーン(Blockchain)活用サービス市場の注目トピック

■ブロックチェーン活用は①トレーサビリティ、②認証、③NFTの3領域が牽引役
ブロックチェーン活用に際して、①トレーサビリティや②認証、③NFTでの活用が牽引役になるとみる。まずトレーサビリティでは、複数プレイヤーが関わるため、ブロックチェーンの強みを活かせる最適な領域である。事例も化粧品の商流管理や物流管理をはじめ、多くの領域で流通経路における透明性の確保や最終ユーザーの特定など、応用範囲が急速に広がってきている。また、地方において農作物の商流管理にブロックチェーンを活用した事例が複数出てきているほか、農林水産省によるスマートフードチェーンの取組みなど環境整備の動きもある。

また認証領域においても、マイナンバーカードとデジタルIDを紐づけた自治体の取組みが徐々に始まってきており、今後、他の自治体への広がりが期待される。また、大学の学位証明書などの電子化での活用も広がっていくと考える。特にペーパーレス化への移行やコロナ禍も相まって感染防止に向けた非接触・非対面への取組みは今後も導入の後押しとなるものとみる。

NFTの活用については、2021年度からNFTの急速な普及に伴い、特にゲーム業界において大手ゲームソフト会社を筆頭に、既存コンテンツを活用したNFTの提供などに取組んでいるほか、スポーツの領域でも選手のデジタル・トレーディングカードの発行を中心に事例が出てきている。なお現状、NFTは法的な枠組みが明確になっておらず、今後、一定金額以上の取引における本人確認の必要性などを含めた規制が入るものとみる。

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ブロックチェーン(Blockchain)活用サービス市場の将来展望

2025年度のブロックチェーン活用サービス市場規模(事業者売上高ベース)は7,247億6,000万円に達すると予測する。2021年度から大手企業を中心にブロックチェーンの活用において普及期に突入し、2025年度には中堅企業や自治体においても普及期を迎えるとみられることから、効果検証から本番稼働に向けた案件が増えていくと考える。

領域の面でもトレーサビリティや認証に留まらず、住宅の賃貸契約と公共料金などとのデータ連携をブロックチェーン基盤で構築し、水道や電気の利用開始を入居時に可能にするなど、さまざまな領域へと広がりをみせていくものとみる。

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参考:このレポートに掲載されている主なデータ一覧

  • パブリック/コンソーシアム/プライベートブロックチェンの比較
  • ブロックチェーンに係る3つのレイヤー
  • 各業界団体の概要
  • 資産決済法や犯罪収益移転防止法の改正までの流れ
  • 権利をトークン化した際のパターンと受ける規制の関係
  • 法規制に係る検討フローチャート
  • Layer1と取組み概要
  • 代表的なブロックチェーンの機能比較
  • 主たるLayer2を構成するミドルウェア
  • 各事業者の向き/不向きに関する見解
  • ブロックチェーン活用サービスの概況
  • 暗号資産の総時価総額の推移
  • NFTを活用する主たる分野の概況
  • 海外における主たるCBDCの動向
  • 決済システムの2層構造
  • ブロックチェーン活用サービス市場規模推移
  • ブロックチェーン活用サービス市場規模予測
  • 市場規模からみたブロックチェーン活用の普及状況
  • 矢野経済研究所が考えるブロックチェーンに関する取組み分類
  • 矢野経済研究所が考える次号者のブロックチェーン取組み動向
  • 各事業者の取り組み動向
  • 大手IT事業者が手掛けるブロックチェーンに関わる事業戦略
  • 大手事業者におけるブロックチェーンと既存システムとの使分けに関する見解
  • ブロックチェーン活用に関する傾向
  • 主たるプラットフォーマーの取組み概要
  • Layer1で事業展開するスタートアップ
  • プライベートチェーン事業者の取組み事例
  • パブリックチェーン事業者の取組み事例
  • Layer2で事業展開するスタートアップ
  • Layer3における事業者
  • DeFiとCeFiとの比較
  • 暗号資産の取扱い状況
  • スプレットの状況
  • 手数料率の状況
  • 暗号資産の取引状況
  • 口座数の推移
  • 稼働口座状況の推移
  • 暗号資産交換事業者などでの不正送信行為の認知件数(件)
  • 金融庁による対応
  • 暗号資産の相談件数
  • 権利をトークン化した際のパターンと受ける規制の関係
  • ICOに関するフローチャート
  • 世界のSTO案件数
  • 世界のSTOの調達目標額・実際の調達額推移
  • セクター別のSTO案件数
  • デジタルアセットカストディ業務に関する主たる参入事業者
  • 伝統的な証券インフラのバリューチェーン
  • Fungible TokenとNFTの違い
  • 法規制に係る検討フローチャート
  • 国内におけるNFTマーケットプレイス運営事業者
  • double jump.tokyoの支援プロジェクト
  • 主たるゲームソフト会社による取組み有無
  • 日本国内のアーティストによる主たるNFT作品
  • 主たるスポーツにおけるNFTの取組み
  • ファッション分野
  • 3つの観点からみるNFTが抱える課題と現実解
  • 金融/非金融におけるブロックチェーン活用マップ
  • 金融系における活用状況
    • 貿易金融――貿易情報連携基盤実現に向けたコンソーシアム
    • 行内コイン――富山第一銀行
  • ポイント/リワードにおける活用状況
    • ポイント――株主優待コイン
    • 電子商品券――目黒区商店街連合会
  • 資産管理における活用状況
    • 積水ハウス×日立製作所
  • 認証における活用状況
    • デジタルID――兵庫県三田市
    • 真贋証明――集英社
    • 電子証明書――九州工業大学
  • シェアリングにおける活用状況
    • ブロックチェーンロック×xxx
  • 商流管理における活用状況
    • 化粧品――資生堂
    • お米――百笑市場
    • 物流管理――日通
    • ライフサイクルマネジメント――三井化学
    • 著作権管理――JASRAC
    • 農産物の輸出トレーサビリティ――九州農産物通商
  • コンテンツにおける活用状況
    • ブロックチェーンゲーム――My Crypto Heroes
    • メタバース――ANA
    • NFTデジタルシール――スクウェア・エニックス
    • NFTトレーディングカード――SKE48
  • 医療情報における活用状況
    • PHRの活用――エバーシステム×プラクス
    • 治験情報の管理――アイロムグループ
  • IoTにおける活用状況
    • 宅配ボックス――ビットキー×パナソニック
    • P2P電力取引システム――トヨタ自動車
  • 教育における活用状況
    • techtec
  • スポーツにおける活用状況
    • サポーター含めた関係強化――サッカークラブチーム南葛SC
    • スポーツ用品の真贋管理――ゼビオグループ
  • 公共における活用状況
    • 電子投票――茨木県つくば市
    • 株主総会――アステリア
    • エネルギーの可視化――佐賀市「地域循環共生圏」の実現
  • アステリア
  • アマゾン ウェブ サービスジャパン
  • SBI R3 Japan/SBIトレーサビリティ
  • NTTデータ
  • LVC
  • OKEIOS
  • Ginco
  • Stake Technologies
  • ソラミツ
  • double jump.tokyo
  • Chaintope
  • ディーカレット
  • Nayuta
  • 日本IBM
  • 日本マイクロソフト
  • 日立製作所
  • FRAME00
  • 資生堂
  • 日本音楽著作権協会(JASRAC)
  • 野村ホールディングス/BOOSTRY
  • LIFULL

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関連リンク

■レポートサマリー
車載用EVバッテリーにおけるブロックチェーン活用可能性に関する調査を実施(2023年)
ブロックチェーン(Blockchain)活用サービス市場に関する調査を実施(2019年)

■アナリストオピニオン
国内におけるブロックチェーン活用に関する現状と課題

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調査要綱

調査対象:国内のIT事業者、ブロックチェーン関連スタートアップ企業、ブロックチェーン活用企業・団体等
調査期間:2021年10月~2022年1月
調査方法:当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話・e-mailによるヒアリング、ならびに文献調査併用

※ブロックチェーン活用サービス市場とは:ブロックチェーンとは、利用者同士をつなぐ P2P(ピアツーピア)ネットワーク上のコンピュータを活用し、権利移転取引などを記録、認証するしくみである。データの改ざんができないため、真正性が保証されているほか、ブロックチェーンに記録されたデータは消えることがない。こうした性質を活かすことでデータのトレーサビリティが可能となっており、透明性の高い取引を実現できるなどの特徴を持つことから、金融分野以外でも、食品、医薬品などのトレーサビリティ(流通経路の追跡確認)や真贋証明、デジタルID等といった活用範囲が急速に拡大している。本調査ではブロックチェーンを活用したサービスについて、国内市場規模を事業者売上高ベースで算出している。

<市場に含まれる商品・サービス>
ブロックチェーンおよびブロックチェーンを補完するソリューション、ブロックチェーンを活用したサービス、ソリューション

関連マーケットレポート
山口 泰裕(ヤマグチ ヤスヒロ) 主任研究員
ITを通じてあらゆる業界が連携してきています。こうした中、有望な業界は?競合・協業しうる企業は?参入障壁は?・・・など戦略を策定、実行に移す上でさまざまな課題が出てきます。現場を回り実態を掴み、必要な情報のご提供や戦略策定のご支援をさせて頂きたいと思います。お気軽にお声掛け頂ければと思います。

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