株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内の(屋外)位置情報 / 地図情報活用ビジネスの市場を調査し、品目別の市場動向、市場規模推移・予測、事業者のシェア、技術動向、将来展望を明らかにした。
【図表:国内位置・地図情報関連市場規模推移と予測】
2020年度の国内位置・地図情報関連市場規模(事業者売上高ベース)を前年度比102.2%の1,527億円と予測する。2020年度は伸び率こそ下落するものの、各品目とも底堅く推移する見通しで、市場は2021年度以降は回復を見込む。2017年度から2025年度までのCAGR(年平均成長率)は6.3%となり、2025年の位置・地図情報関連市場規模は1,906億円に到達すると予測する。
■コロナウイルス感染症対策として、世界で活用進む位置情報モニタリング
2020年初頭から流行した新型コロナウイルス感染症患者を追跡するツールとして、世界各国は顔認証から位置情報のモニタリングに至る監視テクノロジーの実験・導入に踏み切った。
日本政府も、2020年4月から感染リスクを高める濃厚接触の発生頻度を数値モデル化するプロジェクトに着手している。経済活動をゆるやかに再開させた後も、リアルタイムの人流データなどから感染拡大の予兆をいち早くつかむためである。感染拡大の予兆を捉えて、第2波、第3波を防ぐ政策判断に生かせるという狙いだという。
こうしたことから、「感染症対策として位置情報は役に立つ」ことが世界中で再認識された模様で、とくに「誰と誰がいつ、どこで出会ったか」ということは非常に重要なデータであることがわかった。これを正しく認知できると「接触を避ける」ことができることがはっきりした。今後、世界で感染症拡大防止策として、位置情報はさらに活用が進んでいくものと思われる。但し、その一方で個人のプライバシーをいかに確保するかも問題となっている。コロナウイルス対策位置情報アプリ事業に着手している具体的なプレーヤとしては、国内ではマルティスープ、NTTドコモ、ソフトバンク/Agoop、KDDI/技研商事インターナショナルなどが、海外ではNiantic、Rambit、アップル、グーグルなどが挙げられる。
近年、国内位置・地図情報市場においてGAFA、特にグーグルの影響力が強まってきた。グーグルの提供する位置・地図情報(グーグルマップ)と様々なアプリは、スマートフォンの性能や機能が発達し価格が手頃になるに従い、普及が促進されていった。 10数万円のカーナビ用地図DBは数年単位で有料の地図更新が行われるだけだが、一方で、スマートフォンの位置・地図情報アプリは無料で提供され、日々更新される。利用者の選択は自ずと後者に傾くことになる。
こうした状況下において、日本企業が位置・地図情報ビジネスでサバイバルしていくためには、①グーグルのプラットフォームにうまく乗ってアプリを作るか、②グーグルの捨てた部分もしくはグーグルがやりきれない部分のビジネスをやっていくか、③他社との提携により、動態解析などの分析機能を強化した形のサービスにするか、④グーグルの得意なスマホ分野でなく、日本企業の得意な分野(例えば自動車、ウォッチ、建設機械、農業機械など)でいくか、などの方法が考えられる。 日本企業において位置・地図情報関連市場は、GAFAを脅威に感じながらも、GAFA、特にグーグルと共生し、また日本独自の強みを利かしながら、やがて来る世界での競争に挑んでいくためのものと考える。
■位置情報/地図情報活用ビジネス参入企業213社とアプリ一覧
■アナリストオピニオン
●GAFA対抗プラットフォーム戦略としての自動車
●位置/地図情報 弱者の戦略『転がる石に苔は生えない』
■同カテゴリー
●[情報サービス/ソリューション]カテゴリ コンテンツ一覧
●[コンテンツ/アプリケーション]カテゴリ コンテンツ一覧
●[ネットビジネス]カテゴリ コンテンツ一覧
●[ソフトウェア]カテゴリ コンテンツ一覧
●[ITS]カテゴリ コンテンツ一覧
オリジナル情報が掲載されたショートレポートを1,000円でご利用いただけます!
調査対象:国内の位置情報 / 地図情報活用ビジネス事業者等
調査期間:2020年4月~9月
調査方法:当社専門研究員による直接面談、電話・eメールによる取材、ならびに当社DB調査・各種文献調査併用
※位置・地図情報関連市場とは:本調査における位置・地図情報関連市場とは、デジタル地図(電子地図)DB、GISエンジン、各種のGISアプリケーションを利用したサービスを対象として、事業者売上高ベースで算出した。
<市場に含まれる商品・サービス>
①地図DB、②GISエンジン、③交通関連位置情報アプリ(ナビ・旅行・観光インバウンド等)、④店舗開発・位置情報広告、⑤スポット店舗情報・クーポン・チェックイン、⑥位置ゲームアプリ、⑦IoT位置情報アプリ(見守り・ヘルスケアなど)、⑧配送/物流関連位置情報アプリ(スマホによる配車管理など)、⑨産業系位置情報アプリ(建機・農機など)、⑩インフラ整備向け位置情報プリ(道路・河川・トンネル・橋・電柱などのメンテナンス等)、⑪渋滞対策位置情報アプリ(スマートシティ/都市計画向け)、⑫防災対策位置情報アプリ
YanoICT(矢野経済研究所ICT・金融ユニット)は、お客様のご要望に合わせたオリジナル調査を無料でプランニングいたします。相談をご希望の方、ご興味をお持ちの方は、こちらからお問い合わせください。
YanoICTサイト全般に関するお問い合わせ、ご質問やご不明点がございましたら、こちらからお問い合わせください。