2025年を振り返ると、「エージェント元年」という言葉を目にする機会が多かった。2026年は「実装元年」になると言う。この見解については筆者も同意見である。
改めて「AIエージェント」についてみてみたい。AIエージェントとは、人が細かく指示を与えなくても業務の目的を理解したうえで、自ら調べ、考え、必要なタスクを実行するAIのことをいう。注意したいのは生成AI=AIエージェントではないことである。生成AIは、人から与えられた指示に基づいてテキストや画像、音声といった新しいコンテンツを創出する。つまり、AIエージェントが自律的であるのに対し、生成AIは指示待ち、なのである。
筆者が担当する領域のひとつ、基幹系システム関連領域でも、アプリケーションにAIエージェントが組み込まれ始めている。2026年1月からオービックビジネスコンサルタント(OBC)が、「奉行AIエージェント連結会計支援クラウド」の新CMの放送を開始しているが、筆者が初めてこのCMを目にしたとき、AIエージェントをとても身近に感じた。ついにAIエージェントが生活の中にも入ってきた、といった感覚である。
「生活の中」という観点ではマーケティング領域におけるAIエージェントが、変化を身近に感じさせてくれるだろう。
2025年11月、顧客管理や営業支援を得意とするセールスフォース・ジャパンが、人とAIエージェントが信頼性の高い単一のシステムで連携するための基盤「Agentforce 360」の日本市場での提供開始を発表した。同社の発表の影響は市場にとって大きく、顧客管理や営業支援などの領域において、AIエージェントの導入・利用は一気に加速していくと予測する。そうなれば、パーソナライズされた体験はより一層自分に適した体験になっていくだろう。
例えば、気になる言葉を検索窓に入れて検索する形からAIエージェントが最適解を提示してくれる形になるため、検索ワードを考えたり、言葉を変えて何度か検索したり、という手間は省力化される。比較サイトでの比較・選定もAIエージェントがやってくれるであろうし、場合によっては交渉もしてくれる可能性がある。タイムパフォーマンス重視、と言われる昨今、SNSよりもパーソナルAIエージェントが提案する体験を受け入れる機会が増えそうだ。一方で、巧妙なコンテンツが氾濫し、フェイクなのかそうでないのか、に関する目を養う必要は出てくる。
探し方が変わるのであれば、打ち手も変わってくる。これまでは自社の製品やサービスが検索の上位に来る施策を取っていたであろう企業は、AIエージェントが見つけやすいアプローチ、データ構造を構築する必要が出てくる。また、顧客がAIエージェントである場合も想定する必要があるかもしれない。顧客がAIエージェントになればナーチャリングも従来通りとはいかず、チャネルも含め、企業が成功モデルの作り直しに着手する日も遠くはない。
矢野経済研究所では2025年6月に『2025年版 デジタルマーケティング市場の実態と展望』を発刊した。本レポートのプレスリリースによると、日本における2024年のデジタルマーケティング(CRM/SFA+MA+CDP)市場規模は、事業者売上高ベースで3,672億4,000万円と推計している。
本市場の注目トピックにも生成AIを含むAI機能の拡充が挙がる。ベンダー各社は、業務効率化や生産性向上、パーソナライズされた顧客体験の提供を目的としたAI機能を自社製品へ積極的に組み込んでいるという。
将来展望についての言及をみると、デジタルマーケティング市場は堅調に拡大していく見込みで、2026年は前年比13.8%増の4,769億円と予測している。担当研究員は、「デジタルマーケティングツールは、AI機能と蓄積されたデータを両輪として、単なる業務効率化ツールから企業の競争優位性を確立する基盤へと変化しつつある。今後は、機能強化の追求はもとより、その高度な技術をいかにユーザ企業が使いこなし、ビジネス成果に結びつけられるかが、市場成長のポイントになる。デジタルマーケティングツールベンダーは、優れた製品開発力に加え、ユーザ企業に寄り添い、その成功を支援する付加価値サービスを磨き上げていく必要があると考える」と述べる。
AIエージェントは当初の想定よりも早いスピードで我々の生活の中に入ってくる見込みである。AIを効率化のためのツールとして使い続ける企業と、効率化に加えて、AIを前提としたビジネスモデルの再構築に臨む企業との間では大きな差異が生まれると考える。もともとマーケティング領域では、ベンダーやコンサルティング事業者に、ツールの活用方法だけでなく、シナリオの設計やコンテンツのあり方などに対する支援が求められてきた。今後は、戦略的なAI活用方法について支援できる力が必須とされるだろう。AIエージェントを介した自身の体験がどう変わっていくのか、楽しみである。
【図表:デジタルマーケティング市場規模推移・予測】
矢野経済研究所調べ
注:事業者売上高ベース
注:2025年は見込み値、2026年以降は予測値
注:市場規模はMA、CRM(SFA)、CDPを対象とした
(小山博子)
■レポートサマリー
●国内生成AI/AIエージェントの利用実態に関する法人アンケート調査を実施(2026年)
●デジタルマーケティング市場に関する調査を実施(2025年)
■アナリストオピニオン
●AIエージェントがもたらす期待と格差
●生成AIの活用が進むデジタルマーケティング市場
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