2024年12月、(米)GoogleはXR向けプラットフォーム「AndroidXR」を発表した。同社は過去に2度、XRプラットフォームへの挑戦を表明したが、本格的に立ち上がることもなく早々に撤退しており、今回が3度目の挑戦となっている。
今回発表されたAndroidXRの特徴は下記のとおりとなっている。
最初のAndroid XRヘッドセットである「Project Moohan」(Samsung製)は2025年導入予定、スマートグラスは開発中で、2025年開発試験中で市場導入は未定となっている。
その他ではSONY「SRH-S1」(搭載OS未公表)、(米)Magic Leap、(仏)LynxなどからHMD製品が導入される見通しとなっている。
Googleにとって最大の競合相手は(米)Metaである。MetaもGoogleと同様、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)、スマートグラスを手掛けている。
Metaは単独でハードウェア、ソフトウェア開発を行っているが、同社製HMD「Meta Quest」に搭載している「Meta Horizon OS」をサードパーティに提供する方針で、既にASUS、Lenovo、Microsoft「Xbox」への提供を発表済である。
また、Metaは既に「Ray-Ban Metaスマートグラス」を発売済だが、今後はARディスプレイを搭載したARスマートグラスの導入を計画している。(こちらはサードパーティへのOS供給について未公表)
(米)Apple「VisionPro」は空間コンピューティングとして独自の方向性を構築しており、長期的視点に立った開発を行っている。また製品価格が高価であり、主に開発者や企業向けとなっており、Googleとは直接の競合とは成り得ていない。
Googleにとっての課題は下記が考えられる。
サードパーティに関して、中国のスマートフォンメーカーやパソコンメーカーの支持を得ることが成功への近道である。Google+SAMSUNG+Qualcommの組み合わせは市場に対してリファレンスモデルを提供する役割を演じており、これはウェアラブル端末向け「Wear OS」、車載向けコネクテッドシステム「Android Auto」と同じ手法である。
アプリケーション開発環境については、ARCoreやAndroid Studio、Jetpack Compose、Unityといったツールが用意されている。しかし、XR向けではないので、今後のGoogleによるサポートが注目される。
リファレンス端末「Project Moohan」は没入型(VR)と拡張現実(MR)を両立したハードウェアとなっており、開発者を呼び込む姿勢が伺える。ゲームはエンタテイメントのいみならず、教育、ビジネス用途のアプリケーションが進めば、更に普及が進むかもしれない。
これ迄Meta一強状態だったXRデバイス市場に於いて、Googleが本格参入を果たす意義は大きい。GoogleはMetaに真っ向勝負を挑むことで、市場は大いに活性化することが期待されるがそれは2027年以降の話になりそうである。Google最大の強みは「Googleアプリ」の存在と「AndroidOS」「WearOS」「AndroidAuto」との連携にある。これらが連携することで、将来的には「衝突予防」「事故検知」の機能が大幅に向上するかもしれない。
一方、「Meta AI」と「Google Gemini」とのAI競争の側面を持ち合わせており、XR領域の覇権争いはXRデバイスだけでなく、両AIとセットで検証する必要がある。
期待されたAppleは数量を追うことはせず、「クオリティ」を追求する姿勢を採っており、Meta、Googleとは一線を画している。
ARスマートグラスについて、市場を牽引できる製品は登場していないものの、それぞれの陣営からARスマートグラスが登場するのは確実である。
これまでXRデバイス市場は低成長の市場であったが、MetaとGoogleが競合することで市場が盛り上がることを期待したい。
(賀川勝)
■レポートサマリー
●XR(VR/AR/MR)対応HMD・スマートグラス市場に関する調査を実施(2023年)
●XR(VR/AR/MR)360°動画対応HMD市場に関する調査を実施(2020年)
■アナリストオピニオン
●スマートグラスは普及するか?
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